EOR(雇用代行)とは?仕組み・費用・サービスの選び方を解説【海外採用向け2026年版】
海外で人材を採用したいけれど、現地法人の設立にはコストも時間もかかる——そんな悩みを抱える企業が増える中、「EOR(Employer of Record)」と呼ばれる雇用代行サービスへの注目が高まっています。EORを使えば、海外拠点を持たない状態でも現地の人材を合法的に採用し、給与・社会保険・現地法規制への対応まで一括で任せることができます。
本記事では、EORの基本的な仕組みと定義から、利用手順・費用の目安・サービス選びのポイントまでを体系的に解説します。よく混同されるGEO・PEOとの違いも整理し、「自社にEORが向いているかどうか」を判断できる情報をお届けします。
海外進出の初期段階で現地採用を検討している経営者・人事担当者の方、リモートで海外エンジニアや営業スタッフを採用したいと考えている方に、特にお役立ていただける内容です。
この記事でわかること
- ・EOR(Employer of Record)の基本的な仕組みと定義
- ・EORが注目される背景と活用場面
- ・EOR・GEO・PEOの違い
- ・EORサービスの利用手順(ステップ別)
- ・EORサービスを選ぶ際のポイントと費用の目安
- ・EOR活用のメリットと注意点
▼EOR(雇用代行)とは?仕組み・費用・サービスの選び方を解説【海外採用向け2026年版】
1. EOR(Employer of Record)とは?基本的な仕組みと定義
EOR(Employer of Record)とは、「記録上の雇用主」を意味する言葉で、企業が直接現地法人を設立することなく、EOR事業者が現地の法律上の雇用主として従業員を雇用し、その管理業務を代行するサービスです。日本企業が例えばシンガポールで人材を採用したい場合、通常は現地法人を設立して現地の雇用法に基づいた契約を結ぶ必要があります。しかしEORを活用すると、すでにシンガポールに法人を持つEOR事業者がその従業員を雇用し、日本企業はEOR事業者を通じてその人材を活用できる仕組みになっています。
具体的には、EOR事業者が給与計算・社会保険料の納付・現地の労働法規制への対応・雇用契約書の作成といった「雇用主としての義務」を担います。一方、日常の業務指示や成果管理・評価は依頼企業(日本本社)が行います。法律上の雇用主と実際の業務上の指揮者が分かれる点がEORの特徴であり、これによって現地法人設立という大きなハードルを乗り越えることが可能になります。
EORは「雇用代行」とも呼ばれ、海外人材のリモート採用が一般化した近年、特にIT・テック系企業や製造業の海外展開初期段階で広く利用されるようになりました。国ごとに異なる複雑な労働法制を熟知したEOR事業者に任せることで、コンプライアンスリスクを最小化しながら迅速に海外採用を進められるのが最大のメリットです。
2. EORが注目される背景と海外採用への活用場面
EORへの関心が高まっている背景には、大きく3つの変化があります。第一に、リモートワークの普及によって「物理的な拠点がなくても海外人材と協働できる」という認識が企業の中に広がったことです。コロナ禍を経て、優秀な人材が世界中に散らばって働くスタイルが定着し、日本企業も国内採用だけでなくグローバルな人材獲得を視野に入れるようになりました。
第二に、現地法人設立のコスト・時間・手間への現実的な課題です。一般的に現地法人を設立するには数ヶ月から1年程度の期間と、数百万円規模の初期コストがかかります。さらに設立後も会計・税務・労務管理のためのランニングコストが継続的に発生します。市場検証もまだ途中の段階で、これだけのリソースを投じることに慎重な企業が多く、EORによる「まず人を置いてみる」アプローチが現実的な選択肢として浮上しています。
第三に、海外進出の形態が多様化したことです。かつての海外進出は「工場を建てる」「営業拠点を置く」という大規模投資が前提でした。しかし現在は、現地の代理店開拓、越境EC、業務委託、そしてEORによるリモート採用など、段階的かつ低リスクな参入手法が選ばれるようになっています。特に中小・スタートアップ企業が「まず現地で動いてみる」ための手段としてEORを活用するケースが顕著に増えています。
3. EOR・GEO・PEOの違いをわかりやすく解説
EOR・GEO・PEOはいずれも「海外での雇用を代行するサービス」という大枠では共通していますが、それぞれ異なる概念・対象を持ちます。まずEOR(Employer of Record)は、先述の通り「法律上の雇用主」として機能するサービスです。クライアント企業が現地法人を持たない状態でも、EOR事業者が雇用主として法的責任を担います。
GEO(Global Employment Organization / Global Employment Outsourcing)は、EORを包含するより広い概念で、国際的な雇用管理を総合的にアウトソーシングするサービスを指します。GEOはEORの機能に加えて、ビザ取得支援、渡航管理、グローバル人材の給与一元管理なども含む場合があります。EORが「単一国での雇用代行」に特化しているのに対し、GEOは複数国をまたぐグローバル人材管理全体をカバーするイメージです。
PEO(Professional Employment Organization)は「共同雇用」に近い概念で、クライアント企業とPEO事業者が雇用主としての責任を分担します。PEOはアメリカで発展した制度で、クライアント企業が現地に法人を持つことを前提としているケースが多く、既存法人の人事・給与管理をアウトソーシングする際に利用されます。現地法人を持たない状態での採用を想定している場合は、EORを主軸に検討するのが適切です。
4. EORサービスの利用手順【ステップ別】
EORサービスの利用はおおむね次のような流れで進みます。まず最初に行うのは「EOR事業者の選定と契約」です。自社が採用したい国・職種・採用人数を整理したうえで、複数のEOR事業者に問い合わせて見積もりと対応可否を確認します。進出先の国にEOR事業者が自社法人を持つかどうか(ダイレクトEOR)は、コンプライアンス上の安全性に直結するため必ず確認しましょう。条件が合致したら、EOR事業者とのサービス契約(クライアント契約)を締結します。
次に「採用候補者の選定」を行います。採用面接・選考自体はクライアント企業(日本本社)が担い、採用する人材を決定します。EOR事業者は採用プロセスに直接関与しないのが一般的ですが、現地の報酬水準・法定福利厚生の水準などについてアドバイスを受けることができます。採用が決まったら、EOR事業者が現地の法律に基づいた雇用契約書を作成し、従業員と締結します。
続いて「業務開始とオンボーディング」です。雇用契約の締結後、従業員は法律上はEOR事業者の社員として就業を開始しますが、業務上の指示・日々のコミュニケーションはクライアント企業が担います。EOR事業者は毎月の給与計算・社会保険料の納付・税務申告などを代行し、クライアント企業にはサービス料を含めたインボイスが発行されます。従業員が増員になった場合や、退職・契約終了の際の手続きもEOR事業者が現地法に基づいて対応します。
なお、EOR活用は「現地法人設立までのブリッジ」として使われるケースも多く、事業が軌道に乗り採用人数が増えてきた段階で、EOR利用を終了して自社現地法人を設立するという移行パターンも一般的です。移行のタイミングや手順についても、EOR事業者に事前に確認しておくとスムーズです。
5. EORサービスを選ぶ際のポイントと比較軸
EORサービスを選ぶ際に最も重要なのは、進出予定国に自社法人を持つ「ダイレクトEOR」かどうかです。現地に自社法人を持たず、現地の別会社を使うアグリゲーター型のEORは、コストは安くなる傾向がありますが、現地法規制の対応スピードやコンプライアンス品質にばらつきが生じるリスクがあります。安心して利用するためには、対象国での自社法人保有を明示しているサービスを優先しましょう。
次に確認すべきは対応国の範囲と実績です。現在進出を検討している国だけでなく、将来的に展開を考えている地域もカバーしているかを確認しておくと、将来の乗り換えコストを節約できます。また、同じ業種・規模の企業での導入実績があるかどうかも、サービス品質を見極める上で重要な判断材料です。特にアジア展開を主軸とする場合、東南アジア各国での経験が豊富なEOR事業者を選ぶと安心です。
サポート体制も見逃せないポイントです。現地の労働法は改正頻度が高く、最新情報へのキャッチアップが遅れると法令違反のリスクが生じます。日本語でのサポートが受けられるか、緊急時の対応体制はどうか、専任担当者がつくかなどを事前に確認しましょう。契約前に複数社から提案を受け、費用だけでなくサポート品質・対応スピードを総合的に比較することをおすすめします。
6. EOR利用にかかる費用の目安
EORサービスの費用体系は事業者によって異なりますが、主な課金方式は「月額固定型」と「給与パーセンテージ型」の2種類に大別されます。月額固定型は従業員1名あたり月額300〜800ドル程度(事業者・国によって幅があります)を支払う形式で、給与水準にかかわらず費用が一定なため、高給与人材を採用する場合にコストを抑えやすい特徴があります。給与パーセンテージ型は従業員の月額給与に対して15〜30%程度を上乗せする形式で、採用初期のコスト予測がしやすい反面、高給与になるほど負担が増えます。
初期費用として、サービス開始時にセットアップ費用(数万〜数十万円程度)が別途かかるケースもあります。また、国によって法定の社会保険料・福利厚生の水準が異なるため、同じEORサービスを使っても国ごとに総コストが変わる点を認識しておく必要があります。現地法人設立・維持にかかるトータルコスト(登記費用・会計税務コスト・現地管理スタッフの人件費など年間数百万円規模)と比較すると、採用人数が少ない段階ではEORのほうがコスト効率に優れるケースが多いです。
費用感を正確に把握するためには、複数のEOR事業者に対して採用予定人数・対象国・想定給与レンジを伝えたうえで具体的な見積もりを取り寄せることが欠かせません。見積もり取得の段階から、Digima〜出島〜のコンシェルジュサービスを活用すると、適切な事業者への絞り込みと比較検討をスムーズに進めることができます。
7. EOR活用のメリットと注意点
EORを活用する最大のメリットは、現地法人設立なしに迅速かつ合法的に海外採用を開始できる点です。現地法人の設立には通常数ヶ月〜1年程度かかりますが、EORを使えば数週間〜1ヶ月程度で採用を開始できます。さらに現地の複雑な労働法・税務法・社会保険制度への対応をEOR事業者に任せられるため、コンプライアンスリスクを大幅に低減できます。海外人材の採用経験がない企業でも、EOR事業者のサポートを受けながら安全に進められることも大きな強みです。
一方で、EOR利用にはいくつかの注意点もあります。まず、従業員からみると「雇用主がEOR事業者」になるため、雇用関係の説明が複雑になりやすく、従業員の帰属意識・ロイヤルティに影響する可能性があります。また、EOR事業者を通じた間接的な雇用関係であるため、突発的な労働トラブルへの対応スピードが直接雇用と比べて遅くなるケースもあります。加えて、採用人数が増えてくると月額費用の総額が大きくなり、一定規模を超えると現地法人設立のほうが経済的に有利になる場合があります。
EORはあくまで「海外進出初期段階のブリッジ手段」として位置づけ、事業の成長フェーズに応じて現地法人設立への移行タイミングを事前に設計しておくことが、長期的な海外展開を成功させるポイントです。EOR活用の目的と出口戦略を明確にしたうえで利用することをおすすめします。
8. よくある質問(FAQ)
Q. EORと現地法人設立ではどちらが向いていますか?
スモールスタートで現地の人材を試験的に採用したい、または現地法人設立コスト・手間を避けたい場合はEORが向いています。長期的に大規模な拠点を構える計画がある場合は、まずEORで市場を検証し、軌道に乗ってから現地法人を設立するという段階的アプローチが現実的です。
Q. EORサービスの利用にかかる費用はどれくらいですか?
従業員1名あたり月額300〜800ドル程度(固定型)または月額給与の15〜30%程度(パーセンテージ型)が一般的です。対象国や事業者によって異なるため、複数社から見積もりを取ることをおすすめします。
Q. EORはどのような企業規模・業種で利用されていますか?
スタートアップから大手企業まで幅広く利用されています。ITサービス企業が海外エンジニアをリモート採用するケース、製造業が進出先の市場調査担当者を採用するケースなど、「現地法人なしで海外人材を採用したい」ニーズがあればどの業種・規模でも活用可能です。
Q. EORを使う場合、日本本社と現地従業員の指揮命令関係はどうなりますか?
法律上の雇用主はEOR事業者ですが、業務上の指示・管理はクライアント企業(日本本社)が直接行う形が一般的です。ただし国によって「偽装請負」リスクへの対応が必要なため、EOR事業者との契約内容を事前に弁護士等に確認することを推奨します。
Q. EORは全ての国で利用できますか?
対応国はEOR事業者によって異なります。大手サービスでは150カ国以上に対応するものもありますが、外資規制が厳しい国や法整備が不十分な国では対応が難しいケースもあります。進出予定国への対応可否と、その国に自社法人を保有しているかを必ず確認しましょう。
Q. Digima〜出島〜ではEOR関連の支援を受けられますか?
はい。Digima〜出島〜では海外人材採用・EOR活用・現地法人設立など、幅広い支援企業をご紹介しています。「どのEORが自社に合うかわからない」「EORと現地法人を比較して判断したい」といったご相談を無料でお受けしています。
9. 海外進出の相談はDigima〜出島〜へ
海外ビジネス支援プラットフォーム「Digima〜出島〜」では、EOR・海外採用・現地法人設立・販路開拓など、海外進出に関わる多様な支援企業を無料でご紹介しています。シンガポール・ベトナム・タイ・インドネシア・インドなどアジア主要国をはじめ、欧米・中東まで幅広い地域に対応した専門家が登録しています。
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