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世界に4,500ヵ所以上! 中国・ASEANで開発が進む「経済特区」とは?

掲載日:2018年08月31日

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経済特区という言葉はご存じでしょうか。中国を始め、ベトナム、マレーシアなど、東南アジアを中心に外資系企業を集積させた「経済特区」と呼ばれる地域があります。

現在、世界140ヵ国4,500ヵ所の経済地域があると推定されています。また、域内の会社に勤める人も6,600万人おり、そのうち3,000万人は、中国で働いているとされているのです(2015年時点、国連調べ)。

このように世界各国に点在している経済特区ですが、本稿では、経済特区という言葉が広まった中国を始め、東南アジアの経済特区について解説します。

 

photo by tomislav domes on flickr

1.経済特区とは?

なぜ経済特区が必要なのか

国連のレポートによると、経済特区を整備する目的は、4つあるとされています。


(1) 外資系企業を誘致するため(To attract Foreign Direct Investments (FDIs))
(2) 雇用機会を創出するため(To create employment opportunities)
(3) より広範な改革への足がかりにするため(To be the stepping stone of wider reforms)
(4) 新しい方針や経済発展施策の研究施設として作用させるため(To act as a laboratory for new policies and economic development approach (Farole, 2011).)

出典:UN Industrial Development Organization “ECONOMIC ZONES IN THE ASEAN”(編集部訳)


経済特区のような施策は古代からありますが、現代的な経済特区として最初に世界で整備されたのは、アイルランドのシャノンです。1959年に誕生した「シャノン経済特区」は、空港近くに整備され、工業団地の施設を使用してもらいながらも、無税の輸出志向型工業対象に開かれました。このシャノンのモデルは、1960年代のプエルトリコやスペインで採用されました。その他、国連のような国際団体、日本でも採用されています。

 

1965年には、世界で初めて「輸出加工区」を基礎に作った経済特区が台湾の高雄市で誕生しました。輸出加工区は、先のシャノンモデルと似ていますが、外資系企業を誘致して雇用を拡大、産業を発展させるという点で異なります。ブリタニカ国際大百科事典によると、

 
国内の一定区域を関税制度の枠外におき,そこに外国資本を誘致して保税加工業を興し,雇用の拡大と外貨収入の増大をはかろうという目的で設置される一種の保税地域。輸出加工区に輸入された原材料は,加工して輸出されれば関税は免除され,また進出した外国企業には,通常は租税の減免,投資活動の保障,投資業務窓口の一元化,輸出手続の簡素化その他の優遇措置が与えられる。

出典:コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「輸出加工区」


この高雄モデルから現在のような外資を誘致する経済特区が生まれたと考えられます。また、シャノンモデルでは、国連の提示した4つの目的は満たしていませんが、高雄モデルから、つまり「輸出加工区」である経済特区から4つの目的が生まれたと考えられます。現在でもインドネシアやマレーシアの経済特区にもこの高雄モデルが生かされています。

経済特区のメリットとは?

現在の「輸出加工区型」経済特区に進出するにあたり、外資系企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

一例として、経済特区を整備している中央アジアのカザフスタンの投資発展省によると、

1. 法人税、地価税、相続税、付加価値税等税金の免除
2. 経済特区からの輸出、または特区で輸入する場合の関税免除
3. 海外駐在員雇用手続きの簡素化

 

のメリットがあると述べています。また、物価が安い等の外的要因もメリットとして挙げることができます。例えば、カザフスタンの場合、通貨はテンゲで1テンゲ=約0.3円となっており、物価も安く人件費も安いです。

2. 中国・ASEANの経済特区

ここからは、ASEAN諸国と中国の経済特区を紹介したいと思います。

中国の経済特区

中国では、1979年より5ヵ所(広東省深セン、珠海、汕頭、福建省厦門、海南省)、2017年に河北省が経済特区として指定されています。深センは、「アジアのシリコンバレー」と呼ばれており、世界有数のIT産業都市となっています。

この特区には、IT業界だけではなく、不動産業界やコンサルティング業界も日本から進出しています。マカオの近隣にある珠海では、「珠海ハイテク産業開発区」が整備されており、日本からはメーカーを始め商社、物流会社も進出しています。汕頭、厦門は、前者2者と比較すると、進出している企業は少なく、また進出している企業も中小企業が多い印象です。

海南省は、リゾート開発に力を入れており、上記4つの経済特区とは、異なった様相を呈しています。去年新しく経済特区として認定された河北省では、ハイテク企業の集積地を目指すという方針があります。今後、日本からはIT企業や最先端技術を有する企業が進出していく可能性があります。

ベトナムの経済特区

ベトナムでは、経済特区が50以上、工業団地も300以上ある為、全てを紹介することは難しいですが、その中でもホーチミン市にある「タントゥアン輸出加工区」と呼ばれる経済特区には、日本企業が多く進出しています。

進出している企業は、メーカーがやはり多いです。タントゥアン輸出加工区にある会社のうち、約40%を日系企業が占めています。また、ハノイにある「ノイバイ工業団地」には、全入居企業企業のうち約半数が日系企業であり、いずれも日系企業の存在感が強いことが伺えます。

ベトナムには、1200社の日系企業がベトナムに進出していますが、多くはこのような工業団地、輸出加工区に進出するのが定石だと思われます。

マレーシアの経済特区

近年、経済特区として、「ジョホールバル」という都市が注目を集めています。日系企業も最近支店や工場を置くようになりました。マレーシアでは、この経済特区への不動産投資がトレンドになっています。

シンガポールと比べて非常に安価に物件が購入することができ、また経済特区内では、海外からも物件を購入できます。その場合法人税が免除されるという経済特区ならっではの特典もついてきます。今後も、日系企業がジョホールバルに進出する可能性は大いにあります。

カンボジアの経済特区

次にカンボジアの経済特区について見ていきます。カンボジアには、現在32の経済特区が認可されています。その中でも「プノンペン経済特区」や「シアヌーク港経済特区」がとくに有名です。

「プノンペン経済特区」には、全企業のうち、日系企業が半数以上を占めています。一方「シアヌーク港経済特区」では、工場と輸出入の玄関口がつながっていることから、製造した製品をそのまま輸出することができます。この経済特区には、日系企業は少ない為、大量生産を行なう企業や、大きい商品を製造する企業にとっては、進出の余地があると考えられます。

タイの経済特区

タイの経済特区には、「東部経済回廊(ECC)」という地域があり、ここでは、次世代自動車、航空関連、デジタル関連等の最先端産業に携わる外資系企業を誘致しています。また、最近では政府が新しく東部沿岸地域に経済地域を整備することを発表しました。

この経済特区では、東部経済回廊と異なり、医療やロボットのような研究・開発に積極的に投資し、そのような事業に携わる企業を誘致する方針です。現在、タイ政府が積極的に日本に誘致を呼びかけているため、今後、タイに進出する企業は増加すると思われます。

ミャンマーの経済特区

ミャンマーには、現在整備を進めている「ティラワ経済特区」があります。これは、2012年から、日本とミャンマーが共同で整備を進めており、第一区が完成しました。その他、JICAによる「ダウェー経済特区」の開発が計画されています。

現状、日系企業が2011年と比べて6倍の企業が進出しており、海外進出としては、特に魅力的な国と考えられます。今後も日系企業のミャンマー進出は増加傾向の見込です。

ラオスの経済特区

ラオスもミャンマーと同様、経済特区開発ラッシュですが、特に「ビタパーク経済特区」と「サワン・セノ経済特区」に日系企業が進出しています。

両者とも国内の経済特区とは税制の観点から優遇されており、「サワン・セノ経済特区」では100を超える日系企業が進出しています(ビタピークは30以上)。他の経済特区では、観光等のサービス業、非製造業が主流ですが、上記2つの経済特区では、製造業が多く進出しています。

フィリピンの経済特区

フィリピンでは、PEZA(フィリピン経済特区庁)が経済特区を管理しています。フィリピンでは現在300以上の経済特区があり、1000社を超える日系企業がフィリピンに進出しています。フィリピンの経済特区に進出できる企業は以下のように限られています。

(1) 輸出製造業
(2) ITサービス輸出
(3) 観光業
(4) 医療ツーリズム業
(5) 農産業関連輸出製造業
(6) 農産業関連バイオ燃料製造業
(7) 物流及び倉庫サービス業
(8) 経済特区の開発及び運営
(9) 施設提供業
(10) 公益事業

出典:黒田法律事務所「第17回 フィリピン経済特区に関するQ & A」

特徴としては、業種専門の経済特区がある点です。フィリピンでは、「製造業専門」経済特区や「ITパーク」といったITに特化した経済特区があります。

3.まとめ

以上、経済特区について見てきました。各国によって経済特区の定義や進出している企業の業態の違いはありますが、いずれも「外資系企業をいかにして取り込んでいくか」という点に関しては共通しています。

経済が低迷しているといわれる中国ですが、新しく経済特区を認可することによって、国内産業を盛り上げていこうとする方針があると伺えます。紹介した東南アジア3ヵ国は、まだ発展途上国であることから、進出を検討するメリットは十分にあると思われます。



(参考文献)
・UN Industrial Development Organization “ECONOMIC ZONES IN THE ASEAN” http://u0u0.net/IsE1
・コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「輸出加工区」http://u0u0.net/IsDN
・深圳日本商工会 http://u0u0.net/IsDd
・Science portal of China http://u0u0.net/IsDd
・DIAMOND Online http://diamond.jp/articles/-/73021
・ビナBIZ http://www.vina-finance.com/jpsp/
・キャリアリンク http://u0u0.net/IsCT
・海外不動産投資隊 http://ant.co.jp/?p=318#i
・CAMBODIA BUSINESS PARTNERS http://u0u0.net/IsDa

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