【2025年5月版】日本企業の海外進出実態調査レポート|アメリカ・中国依存減少とASEANシフトの加速

2025年5月も、海外ビジネス支援プラットフォーム「Digima~出島~」には、海外展開を目指す日本企業から多数の具体的な相談が寄せられました。特に4月から5月にかけては、相談元の企業規模や業種、進出希望エリア、相談内容の傾向において大きな変化が見られました。
中でも特徴的だったのが、アメリカ・中国依存の減少とASEAN市場への関心の高まりです。背景には、2025年4月に発表されたトランプ政権の相互関税政策があり、日本企業のサプライチェーンや進出計画に大きな影響を与えました。これに伴い、アメリカ・中国市場のリスクを分散しようとする動きが活発化し、ベトナム・タイ・シンガポールなどASEAN諸国への注目が急速に高まっています。
本レポートでは、2025年5月に寄せられた実際の相談データを基に、「業種別」「企業規模別」「進出希望国別」「相談内容別」の4項目から、日本企業の最新海外ビジネストレンドを詳しく分析していきます。
※プライバシー保護のため、相談内容の一部を改編して掲載しています。
▼ 【2025年5月版】日本企業の海外進出実態調査レポート|アメリカ・中国依存減少とASEANシフトの加速
製造業・卸売/小売業の動きとサプライチェーン再編の兆し
製造業の相談比率が倍増、背景にあるリスク分散と生産拠点の多極化
2025年5月、製造業からの相談割合は23.6%に達し、前月の10.7%から倍増しました。この急増の背景には、トランプ政権による相互関税政策の発表が大きく影響しています。従来、中国やアメリカを主要生産・輸出先としていた企業が、関税リスクや先行き不透明感を回避すべく、生産拠点の多極化やASEANシフトを模索し始めた結果といえるでしょう。
特に目立ったのは、ベトナム、タイ、インドネシアなどASEAN諸国におけるOEM先や生産委託先の新規開拓相談です。多くの企業が「中国依存からの脱却」を念頭に置き、品質・コスト・物流の観点からASEANでの生産能力を確保する戦略を加速させています。
<相談内容例>
「中国のサプライチェーンから徐々に脱却するため、ベトナムとインドネシアに生産を分散させたい。進出支援や現地の法規制、税制の最新情報を教えてほしい」
「相互関税政策の影響でアメリカ向け部材の関税負担が増加。ASEANからの直接輸出に切り替えるため、最適な生産国とパートナーを探している」
卸売・小売業の越境EC需要が高水準維持、BtoC型販路の国際化が進行
卸売・小売業からの相談は、5月も43.6%と高い水準を維持しました。オンライン販路の整備や越境EC、SNSマーケティングの普及により、特にBtoC型ブランドや小規模小売事業者が積極的に海外市場に挑戦する傾向が顕著です。
為替市場での円安基調も後押しし、海外需要の取り込みを狙った動きが活発化。特に、アジア圏・中東の新興市場や米国市場向けに、日本製商品を直接販売するための相談が多く寄せられました。
<相談内容例>
「越境ECを使ってシンガポールとタイで日本製雑貨の販売を始めたい。現地物流体制や決済方法、プロモーション戦略について詳しく知りたい」
「これまで国内向けのみだったが、インバウンド需要の復調もあり、東南アジア向けの直接販売チャネルを開拓したい」
このように、製造業が「生産・供給側の見直し」に動く一方で、卸売・小売業は「販売・マーケティング側の国際化」を進める構造が見えてきました。いずれも相互関税政策の外圧が、企業の戦略転換を促進する要因となっています。
大企業・中堅企業の相談比率が増加、進出検討から実行段階へ
大企業・中堅企業の割合が急伸、500名以上の企業が全体の約2割に
2025年5月の相談データでは、「10名以下」の小規模企業が圧倒的多数を占めていた構造に変化が見られました。500名以上の企業が全体の17.4%(5001名以上:10.9%、501~1000名:6.5%)を占め、前月の2.2%(51~100名まで含む)と比べて大きな伸びを記録しています。
背景には、トランプ相互関税政策や地政学リスク、為替変動といった外部環境の急変に対し、資本力のある大企業・中堅企業が進出計画を具体化させ、スピーディーに実行に移し始めたことが挙げられます。
特に製造業・インフラ関連の企業が、現地法人設立や大型プロジェクトの拠点設置、輸出入体制の再構築といった具体的な行動を起こし始めており、「情報収集・比較検討フェーズ」から「実行フェーズ」への移行が顕著です。
<相談内容例>
「これまで中国工場に集中していた生産を分散し、インド・ベトナムに大型拠点を新設する計画です。現地の進出支援や政府インセンティブ情報を教えてほしい」
小規模企業も一定比率維持、次世代型起業家による機動的な海外展開
一方で、10名以下の小規模企業も45.7%と依然として大きな存在感を放っています。前月(71.7%)からは減少したものの、スタートアップや少人数経営の事業者が、越境ECやデジタルサービスを活用し、機動的に海外販路を拡大しようとする動きは根強く残っています。
彼らは特に、越境ECモール出店や海外SNSを使ったマーケティング、現地パートナーとのアライアンス構築に関する相談が目立ちます。小規模ゆえの柔軟性を生かし、トライアル的に進出を試みる姿勢が見受けられました。
<相談内容例>
「ベンチャー企業で、日本酒の輸出販売を行っています。シンガポールでの試験販売と、現地のレストラン・小売店への提案方法を相談したい」
進出希望国の多様化とアメリカ・中国依存の減少
トランプ相互関税政策が後押し、アメリカへの進出検討が一段と加速
2025年5月のデータでは、進出希望国として「アメリカ」が全体の23.9%(前月比+6.3pt)を占め、引き続きトップの座を維持しました。これは、米国が持つ巨大消費市場としての魅力に加え、2025年4月に発表されたトランプ政権による相互関税政策が大きく影響しています。
同政策により、日本企業は「アメリカからの関税優遇措置を活かした輸出・生産体制の見直し」「早期の現地法人設立」「現地調達比率の引き上げ」を急ぐ動きを強めています。特に、自動車・機械・電子部品分野でこの傾向が顕著で、現地の進出支援会社や法律・税務の専門家に対する相談が増加しました。
<相談内容例>
「これまで日本からの直接輸出に頼っていましたが、トランプ政権の政策を受け、現地法人を設立し、北米市場向けの現地生産比率を高めたい。具体的な設立ステップとインセンティブ情報を知りたい」
東南アジア・インド・中東への関心が上昇、中国依存の脱却志向が鮮明に
一方で、「中国」は進出希望比率が13.5%(前月比-4.7pt)と大きく減少しました。背景には、地政学リスクや政策リスク、為替変動リスクに加え、米中間の貿易摩擦が長期化し、予見可能性が低下していることがあります。
代わって、ベトナム(9.8%)・インド(7.4%)・UAE/サウジアラビアなど中東圏(3.6%)への注目度が上昇。これらの地域は、比較的安定した政治環境、人口ボーナス、インフラ整備の進展といった理由で、製造業・インフラ業を中心に新たな生産・販売拠点として検討され始めています。
特に製造業では、「チャイナ・プラスワン」からさらに一歩進んだ「多国分散型の生産体制」へのシフトが鮮明となり、相談内容も具体的な進出プラン策定やサプライチェーン再設計に及んでいます。
<相談内容例>
「これまで中国・上海に集中していた拠点を、インドとベトナムに分散する計画です。各国の法人設立・労務・物流体制の構築支援について相談したい」
相談内容別の傾向変化と実務的支援ニーズの高まり
販路拡大・輸出実務の相談が最多、実行フェーズへのシフトが鮮明に
2025年5月に「Digima~出島~」へ寄せられた相談内容では、越境ECなども含めた「販路拡大」関連の相談が全体の42.7%(前月比+3.1pt) と多く、続いて「輸出・輸入実務」「通関・物流」「現地法人設立」の順となりました。これまでの情報収集段階から、具体的な実行準備や実務相談にシフトしている様子が色濃く表れています。
特に、越境ECやオンライン商談会の活用によるテスト販売から、リアル拠点設置への関心の移行が目立ちます。BtoC分野では、現地でのブランド認知拡大やリピーター確保を目的としたマーケティング・販売パートナー探しの相談が急増。一方、BtoB分野では、展示会出展や現地代理店契約に関する具体的な支援依頼が多く寄せられました。
<相談内容例>
「東南アジア市場向けに越境ECでテスト販売を行っていますが、現地物流倉庫の確保と通関業務について詳しく知りたいです。あわせて現地でのSNS広告運用の支援も検討しています」
法務・税務・人材確保など複合的な相談も増加、総合支援への期待が拡大
さらに特徴的なのは、法務・税務・労務・人材確保といった複合的な支援を求める相談が増えている点です。特にアメリカ・インド・UAEといった進出希望国においては、相互関税政策対応・複雑な税務申告・ビザ発給手続き・現地幹部候補人材の確保 までを視野に入れた総合相談が寄せられました。
これは、海外展開が単なる輸出や取引開始にとどまらず、現地での持続可能な事業運営やリスクマネジメントを重視する企業が増えていることを示しています。特に中小企業・スタートアップ層にとって、個別の専門家ではなく、ワンストップで全体像をサポートできるパートナーの重要性が一段と高まっています。
<相談内容例>
「北米向けに現地法人設立を進める中で、税務、労務、ビザ、人材採用、現地での広告戦略まで包括的に相談できるパートナーを探しています。どこから着手すべきか、優先順位を整理したい」
まとめ
2025年5月の相談動向からは、日本企業の海外ビジネス戦略が大きな転換期を迎えている様子がうかがえます。
特に、トランプ政権の相互関税政策が引き金となり、アメリカ・中国市場への過度な依存を見直し、ASEAN市場での新たなチャンスを追求する動きが加速しました。
また、大企業・中堅企業の相談比率が高まっている点も注目で、従来の「試行型」から「本格実行型」への移行が鮮明です。これからは、ASEANでの現地パートナー戦略やデジタル販路の活用を軸に、リスク分散と成長機会を両立するグローバル戦略が求められる時代に突入したと言えるでしょう。
「Digima~出島~」では、今後もリアルな相談データを基に、日本企業の海外ビジネストレンドを毎月発信してまいります。海外進出をお考えの企業の皆様は、複数の専門家の提案を比較し、最適なパートナーを見つけることで、変化の時代に確実な一歩を踏み出してください。
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