アメリカの流通事情2025年版|小売トレンド・ディストリビューション戦略の最新動向とは?

アメリカの流通市場はいま、大きな転換期を迎えています。ECの急成長、物流の高度化、そして消費者行動は多様化しています。
コロナ禍を経て、単なる「販売チャネル」ではなく、企業の競争力を左右する戦略インフラとしての存在感が一段と増しています。
本記事では、年間5.5兆ドル規模を誇る米国流通市場の最新動向を俯瞰しながら、日本企業が現地で成果を上げるための実践的なヒントを探ります。
なぜ今、アメリカの流通を深く理解する必要があるのか?その答えを明らかにしていきます。
▼ アメリカの流通事情2025年版|小売トレンド・ディストリビューション戦略の最新動向とは?
1. なぜ今「アメリカの流通」に注目すべきなのか?
アメリカの2025年における年間小売売上は約5兆5,00億ドル(前年の年間成長率3.6%増)で、世界最大規模の消費市場となります。
注目すべきポイントは、その市場規模だけでなく、人口構成の多様性、地域ごとの文化的背景、購買チャネルの複雑さといった多層的な構造は、日本企業にとって挑戦であると同時に絶好の機会にもなります。
引用:JETRO
特に2020年以降に発生したパンデミックの影響から、アメリカ国内の消費者行動と流通構造に決定的な変化をもたらしました。
ロックダウンや物流の停滞を経て、消費者はより柔軟でパーソナライズされた購買体験を求めるようになり、企業側は「どのように届けるか」が競争力の源泉になっています。
その中で急速に進んだのが、ECの拡大とオムニチャネル戦略の主流化です。実店舗とオンラインをシームレスにつなぐ購買導線は、WalmartやTargetのような大手小売店だけでなく、中小ブランドやD2C企業にとっても不可欠な成長戦略となりました。
オンラインで商品を探し、店頭で受け取る「BOPIS(Buy Online, Pick Up In Store)」や、逆に店舗で試してECで購入する行動は、すでにアメリカの消費者にとって日常化しています。
こうした流れに対応する形で、流通業界ではサプライチェーンの再構築やラストワンマイル配送の革新が進み、リテールテックやロジスティクステックへの投資も活発化しました。
アメリカの現在の流通は単なる「モノの移動」ではなく、ブランドの信頼・体験・価値観を届ける最前線へと進化しています。
だからこそ今、アメリカの流通を深く理解することは、市場参入や成長戦略を考える上で、避けて通れない重要な戦略となっています。
2. アメリカ流通の基本構造と特徴
ディストリビューター(卸)と小売の関係性
アメリカの流通は「メーカー → ディストリビューター(卸)→ 小売」を基本として発展してきました。
この構造はとくに食品・日用品・工業部材・医薬品などの分野で現在も広く機能しており、全米規模のサプライチェーンを支える中核インフラといえます。
【ディストリビューターの担う主な役割】
アメリカの卸は単なる「中間業者」ではなく、メーカーと小売を結ぶ戦略的ハブとして多機能を担っています。以下に代表的な役割を整理します。
1. 商品在庫・物流管理
メーカーは全米各地に直接配送することが難しいため、卸が地域単位で在庫を持ち、小売店への配送拠点となる。これにより輸送効率が向上し、リードタイムも短縮される。
2. 販売促進・マーケティング支援
卸は小売業者と密接な関係を築いており、店舗レベルでの商品展開、販促提案、売場づくりのサポートなどを行う。場合によっては、POPツールや販売マニュアルの提供、キャンペーン施策の実行まで担う。
3. 地域展開の足がかり
アメリカでは州ごとに規制や消費特性が異なるため、地域密着型の卸が持つ販売網やネットワークは、メーカーにとって貴重な市場アクセス手段となる。特にローカル系スーパーや専門店への展開では、卸の関係性が重要である。
4. 資金・与信管理
中小小売店に対して、卸が代金回収や信用取引のリスクヘッジを引き受けるケースも多く、メーカーが直接小売と取引する際のリスクを回避する。
大手小売チェーンの台頭と集中化の流れ
アメリカの小売市場ではここ20年、大手チェーンの台頭と寡占化が急速に進んでおり、ごく一部のナショナルチェーンが全体の売上の大半を占める構造が顕著になっています。
【アメリカ国内における小売売上トップに君臨する大手企業】
・Walmart:フルライン+低価格戦略、小売最大手。2024年年間売上 / $533.96 (billions)
・Costco:会員制倉庫型、少品種大量販売。2024年年間売上 / $175.39 (billions)
・Target:ミドルクラス向け総合小売、PB強化。2024年年間売上 / $105.84(billions)
これらの企業は全米に数千店舗のネットワークと高度なロジスティクス網を持ち、販売力・交渉力ともに圧倒的です。
特にWalmartは全米のほぼすべての都市に拠点を持ち、メーカーにとっては「最大の販売チャネル」であると同時に「最も価格交渉が厳しい取引先」でもあります。
- ナショナルチェーン vs 地域密着型:すみ分けと共存
ただし、すべての地域・業種がWalmartのような大手に飲み込まれたわけではありません。現在でも、以下のような「地域密着型小売」が明確なポジションを確立しています。
【地域密着型の特徴】
・商品構成:地元ブランド、オーガニック、民族系商品など差別化
・顧客対応:顔の見える接客、地域イベントとの連動
・店舗運営:独立経営が多く、バイヤーの裁量が大きい
下記の小売店は特定地域やターゲット層に根ざし、大手が入り込めない「商品密度」や「体験価値」で競争しています。
また、中小ブランドにとっては参入の足がかりとして重要なチャネルにもなっています。
【代表的なローカルチェーン・独立小売】
・食品:Kroger(中西部・南部)/H-E-B(テキサス州)/Publix(南東部)
・雑貨・生活:Ace Hardware/True Value
・オーガニック・自然食品:Sprouts/Natural Grocers
3. 近年のトレンドと流通チャネルの変化
D2Cモデルの拡大とブランド直販の動き
アメリカ流通の大きな変化の一つが、「D2C(Direct-to-Consumer)」モデルの急拡大です。
従来の「メーカー → 卸 → 小売 → 消費者」という間接チャネルを介さず、ブランドが自らオンラインで消費者に直接販売するスタイルが、特にミレニアル世代・Z世代を中心に広く浸透しています。
- D2Cとは何か?なぜ注目されるのか?
D2Cはブランドが独自のECサイトやプラットフォームを通じて、消費者に直接商品を販売するモデルを指します。
商品の製造からマーケティング、販売、アフターサービスまで一貫してコントロールできることが特徴です。
【注目される理由】
・中間マージンの排除により、利益率を最大化できる
・顧客データを蓄積し、商品開発やCRMに活かせる
・ブランドの世界観やメッセージを自由に訴求できる
・SNS、インフルエンサー、動画広告との統合的マーケティングが可能
- 越境D2C参入とShopify・Amazonの活用
近年では、日本やアジア発ブランドの「越境D2C」参入も加速しており、アメリカ市場をターゲットにShopifyやAmazonを活用するケースが急増しています。
【Shopify活用の事例】
・日本のアパレル・美容ブランドがShopify Plusを使って米国市場向けに越境展開
・物流は米国内の3PL(Third Party Logistics)と連携し、FBA(Fulfillment by Amazon)やShipBobなどを利用
・顧客獲得はInstagram広告、YouTube、UGC(ユーザー生成コンテンツ)を駆使して行う
【Amazon活用の事例】
・新興家電メーカーや日用品ブランドがAmazon.com内に直営ブランドストアを設け、レビューとSEOで信頼を獲得
・プライム対応(FBA利用)で配送利便性を武器に、小売店舗を通さず全米顧客へ展開
・ブランド認知後に、自社EC(Shopify)へ誘導しLTVを最大化
- D2Cは「流通」ではなく「体験設計」
D2Cの本質は「どこで売るか」ではなく「どう売って、どうつながり続けるか」です
ShopifyやAmazonは単なる販売チャネルではなく、ブランドと顧客を直結するエコシステムの一部として機能しています。
これからアメリカ市場に参入を考える企業にとっては、小売を通さない分、戦略設計と運用の精度が問われる分野であることを認識する必要があります。
ECとリアル店舗の融合(オムニチャネル化)
パンデミック以降、アメリカの小売業界では「ECと実店舗の境界を曖昧にするオムニチャネル戦略」が急速に進化しました。
その象徴的な形が、BOPIS(Buy Online, Pick-up In Store)=オンライン注文・店舗受取です。
- BOPISの定着:利便性とスピード重視の新常態
【消費者側のメリット】
・配送料不要/即日受取が可能
・配送トラブル(遅延・紛失)を回避
・実物確認や返品の手続きが店舗で簡単
【小売企業側のメリット】
・店舗在庫の効率活用
・顧客の来店を促し、ついで買い・追加販売(クロスセル)が期待できる
・配送負荷の軽減(特に「ラストワンマイル」コストの削減)
- 店舗の新たな役割:「配送拠点」としての機能強化
BOPISと並行して注目されているのが、実店舗を「マイクロフルフィルメント拠点」として活用する戦略です。
従来、ECの配送は大型のフルフィルメントセンター(FC)から行われていましたが、以下のような背景から店舗発の出荷が急増しています。
【背景】
・都市部配送のスピード競争(当日配送ニーズ)
・FCからの輸送では時間もコストも増大
・店舗はすでに地域内に多数点在し、在庫保管+ピッキング+配送が可能
【導入例】
・Target:店舗スタッフがEC注文をピック→店内から発送(Shiptと連携)
・Best Buy:店舗在庫からEC注文を即日出荷
・Sephora:店舗を起点にしたBOPIS+翌日配送を強化
・Walgreens:医薬品も対象に「店舗→宅配」モデルを導入
このように「店舗=販売だけでなく配送と体験の拠点」という考え方が、全米の小売企業で共通認識となりつつあります。
パンデミック期にEC需要が爆発的に伸びた一方、アメリカの小売企業は「実店舗の持つ地域接点と物流機能」を見直し、ECと統合的に活用する方向へと進化しました。
今後も、BOPISやストア配送(Store Fulfillment)を軸にしたオムニチャネル化は、アメリカ市場参入の際に必須の戦略視点となるでしょう。
消費者の変化と求められるサステナビリティ対応
近年、アメリカの消費者は単に価格や利便性だけでなく、企業の社会的責任や環境負荷への取り組みを重視するようになっています。
この価値観の変化は、流通市場に大きな影響を与え、サステナビリティ対応を強化したブランドや小売企業の競争力が高まっています。
- サステナブル物流の重要性と取り組み
消費者や規制当局からの圧力を背景に、小売・物流業界ではCO2排出削減や廃棄物削減を意識したサステナブル物流の取り組みが加速しています。
【代表的な施策例】
・グリーン配送:電動配送車やハイブリッド車の導入、配送ルートの最適化による燃料消費削減
・梱包材の見直し:プラスチック削減、生分解性素材や再利用可能な梱包の採用
・返品管理の効率化:返品率低減や再販可能商品の流通促進、リサイクル体制の構築
【企業事例】
・Walmart:配送に電動トラック導入を推進し、2040年までに「サプライチェーンカーボンニュートラル」を目標に掲げる
・Amazon:「Shipment Zero」を掲げ、全配送の50%をカーボンニュートラルにする計画を発表
4. アメリカ流通市場における参入戦略のポイント
販路開拓の選択肢と日系企業の実例に学ぶチャネル構築のリアル
アメリカ市場は、州ごとに異なる商習慣・規制・購買傾向を抱え、かつ競争が極めて激しい市場です。その中で日本企業が成功するには「現地に適した販路戦略」の設計がカギを握ります。
- 販路開拓の主な選択肢
① 現地卸(ディストリビューター)との契約
・メリット:即時に広域の小売ネットワークへ展開可能。販売ノウハウ・既存ルートの活用。
・リスク:販売コントロールが難しい。ブランド認知形成や価格主導権が卸に依存。
向いている業種:食品・日用品・中価格帯の雑貨
②ECチャネルを活用したD2C参入
・メリット:初期費用が比較的安く、マーケティング自由度が高い。フィードバックも早い。
・リスク:物流・返品・CS・広告運用など、自社で抱える業務が多く負担大。
主要プラットフォーム:Shopify、Amazon(FBA/FBM)、Etsy(クラフト系)、Walmart Marketplace
③ B2Bパートナーとのアライアンス
・メリット:現地企業との連携で、販路・業界ネットワークを活かせる。信頼構築しやすい。
・リスク:交渉・契約条件に時間がかかる。相手依存型の成否リスクあり。
例:現地日系スーパー(Mitsuwa, Nijiya)、ローカル小売バイヤー、展示会経由の商社ルート
【成功事例に共通するポイント】
・現地ニーズ適応:単なる日本仕様輸出ではなく、「現地仕様」へ最適化(例:小分けサイズ、英語表記、宗教対応など)
・複数チャネル活用:卸+EC、店舗+展示会など、販路を分散してリスク低減・認知拡大
・ローカルパートナーの選定:商習慣・規制理解のある現地エージェント・コンサルタントの活用
【失敗要因によくあるケース】
・価格設定の失敗:現地競合や物流費を加味せず「日本価格のまま」で高価格になり売れず撤退
・卸任せの丸投げ:ブランド育成や販促を卸に丸投げしてコントロールを失い、価格崩壊・販売不振
・現地対応力の欠如 :カスタマーサポート、返品対応、食品ラベル基準などの不備でトラブル続出
- 現地参入で気をつけたいこと
・小さく始めて、大きく伸ばす:初期はECや限定流通でテストマーケティング → 手応えがあれば卸・実店舗へ拡大
・販売チャネル≠販売戦略:チャネル構築と並行して、現地消費者との「共感」を作るブランディング設計が重要
・物流と法規制を先に抑える:FDA登録(食品)、FPLA対応(表示)、州法(例:カリフォルニアのプロポジション65など)を早期にチェック
展示会・業界ネットワークを活かした初期接点の作り方
アメリカの広大で多様な流通市場においては、展示会・見本市(Trade Shows)を活用した接点作りが今なお非常に有効です。
バイヤーや流通関係者、サプライヤーが一堂に会する展示会は、短期間で多くのリードを獲得できるチャンスであり、実績ある日系企業の多くも初期展開の要として活用しています。
【代表的な展示会とその特徴】
① ASD Market Week(ラスベガス)
概要:全米最大級の総合バイヤー向け展示会。ギフト・雑貨・アパレル・コスメ・玩具・アウトドア用品など幅広いカテゴリを網羅。
開催時期:年2回(春・夏)
来場者層:中小規模リテーラー、オンラインセラー(Amazon・eBay等)、バイヤー、卸業者など
- 活用ポイント
・価格重視のバイヤーが多く「値頃感」が重視される
・大手量販ルートというより、中規模以下のブティックや地域店向け販路に有効
・日本ブランドや新規参入企業にとって「試し売り」的な商談が可能な場でもある
公式サイト:ASD
② Natural Products Expo(West & East)
対象:オーガニック、ナチュラル、サステナブル食品や化粧品など
・Expo West(カリフォルニア):世界最大級のナチュラル系展示会
・Expo East(東海岸):は地域性を意識した規模の小さめな展示会
- 活用ポイント
・Whole Foods、Sproutsなどナチュラル系小売や専門商社との接点に最適
・ESGやサステナビリティ訴求が強いブランドは特に相性が良い
・英語パッケージ、原材料表示など現地基準の準備は必須
③ NY NOW(ニューヨーク)
対象:ライフスタイル・デザイン雑貨・ギフト系に強み
百貨店バイヤー、セレクトショップ、ギフトショップ向けの販路が中心
- 活用ポイント
・日本のデザイン雑貨・工芸品など、差別化要素のあるプロダクトが評価されやすい
・B2C色よりもB2B・展示重視型で、高価格帯商品やブランド志向品に向く
- 展示会を成果に変えるための実務ポイント
【事前準備】
出展商品は「英語パッケージ」「北米基準」対応済みが望ましいです。(食品ならFDA、雑貨ならFPLA基準など)
現地在庫なしでも「MOQ(最小発注数)」「リードタイム」「決済方法」を明示しておくようにしましょう。
簡易ブースでの出店でも問題はありませんが、ブランドストーリーや訴求ポイントの一貫性が重要となります。
【当日の活用方法】
・事前に商談アポイント取得:バイヤーリストや主催者が提供するマッチングサービスを活用しましょう。
・名刺交換+即時フォロー体制:営業資料(PDF)や価格リストはデジタルでも即送付可能な状態に事前に準備しておきます。
・通訳・営業補佐:英語が堪能もしくはネイティブレベルで、現地商習慣に長けたスタッフが対応することが望ましいです。
【展示会後の対応】
商談記録の整理と見込み度別に優先順位をつけたフォローアップを行うようにしましょう。
可能であれば、現地パートナー企業や物流会社との同時商談をセットで進めると効率的となります。
規制と物流コストへの対応策
アメリカ市場では「販売戦略」=「物流戦略」+「規制対応」と言っても過言ではありません。
連邦政府の法体系に加え、州単位で異なる税制・規制・商習慣が存在し、それが流通設計やコスト構造に直結します。
【州ごとの商習慣・規制の違いと対策】
① Sales Tax(州別売上税)
日本のような全国一律の消費税ではなく、州・郡・市レベルで課税率が異なります。
例)カリフォルニア:約7.25%〜10%以上、オレゴン・モンタナ:非課税
一定金額以上の売上または取引件数が発生した州では、「Nexus(課税拠点)」が発生し、税務申告が必要となります。
- 対策
・税務管理には TaxJar や Avalara などの自動計算・申告ツールが有効
・自社EC運営時は特に注意(Shopify + TaxJarの組み合わせが一般的)
② 商習慣・規制の地域差
カリフォルニア州:Prop 65(特定物質に関する警告表示義務)あり → 食品・化粧品・雑貨など幅広く対象となります。
ニューヨーク州:環境配慮型包装、パッケージ回収制度の義務があります。
テキサスや南部:価格・プロモーション訴求に敏感な地域柄であると言えます。
- 対策
・展開予定の州を選定後、その州の小売・通関・規制を熟知したパートナーとの連携が重要
・小売との取引には「製品仕様書(Spec Sheet)+MSDS」の提出を求められることが多い
- FBA(Fulfillment by Amazon)と3PLの活用可能性
① FBA(Fulfillment by Amazon)の特徴
・Amazonが在庫保管・受注処理・配送・返品まで一括代行するサービス
・Amazonでの露出増加(Buy Box獲得)+プライム対象化という利点がある
- 注意点
納品は州ごとに異なるFBA倉庫へ搬送します。結果として複数州に「Nexus」が発生し得ることとなり、長期在庫や不動在庫に対して追加保管料(LTSF)が課される可能性もあります。
向いている商品カテゴリ
回転率が高い・サイズが小さい・返品率が低い商材(例:コスメ、雑貨、食品など)
② 3PL(サードパーティ物流会社)との連携
・EC以外にも、自社サイトやB2B取引にも対応可能な柔軟性の高い物流拠点
・ピッキング・梱包・発送・在庫管理・返品処理まで対応。Amazon連携可能な3PLも多数あり
【代表例】
・ShipBob:D2Cブランド向けに人気。Shopify・Walmart・Amazon連携が容易
・Deliverr:高速配送特化型。Walmart MarketplaceやeBayと親和性が高い
・Rakuten Super Logistics:日系企業との相性が良く、カスタマー対応も比較的柔軟
-3PL活用のメリット
FBAのような複雑な制約が少なく、ブランドコントロールを保持しやすいくなります。
EC以外にもB2B発送や展示会納品、PO対応なども対応できることがメリットであると言えるでしょう。
5. 日系企業の成功事例と今後の可能性
食品・生活雑貨・化粧品に見るローカライズ戦略とマイクロターゲティング
アメリカ市場で成功する日系企業の多くは「高品質」や「日本らしさ」だけでなく、特定ニーズや嗜好に応えるマイクロターゲティング戦略を展開しています。
これは、競争の激しい大衆市場よりも、明確な顧客層を持つニッチ領域において特に有効です。
- カテゴリ別:成功事例とキーポイント
① 食品カテゴリ|冷凍食品・調味料・スナック
・Ajinomoto:冷凍餃子やラーメンを中心に「便利+高品質」な食品をアメリカ国内で展開中。Whole FoodsやCostcoなどにの大手小売店にも販売経路を獲得。
・S&B:カレー粉やわさびなど、ハイブリッドな日本食体験を提案。アメリカ現地の人々に好まれるように味を調整したり、No MSGの食品を展開する。
・Calbee:Jagabeeやかっぱえびせん、Harvest Snapsなど、アジア系・日系スーパーや、アメリカスーパーのアジア食品セクションにて販売中。
【成功の鍵】
「ヘルシー志向」「プラントベース」など、アメリカにおける近代の食トレンドとの接点を作ることと、日本食はヘルシーであるという認識を上手く活用させることで、アメリカでも確実に売上を獲得しています。
② 生活雑貨・キッチン用品|日本の良質なクオリティーの具体化
・Hario:サードウェーブ系コーヒー市場でバリスタ・専門家を通じて浸透。高価格帯でのブランド確立に成功。
・Kokubo:DAISO・ドンキホーテなどを通じて、コストパフォーマンスの高い日用品として浸透。
・MUJI:ニューヨーク・カリフォルニアなどの都市部で「シンプルで環境配慮型」なライフスタイル提案。シンプルなデザインと高品質なアイテムに共感する、感度の高い人々からの人気を博す。
【成功の鍵】
ミニマリズム・環境配慮・日本製クオリティを軸にしたライフスタイルのブランド化を実現することで、アメリカの消費者に刺さる結果となりました。
③ 化粧品・パーソナルケア|“J-Beauty”の進化系
・SHISEDO:アメリカで最も認知度の高い日本のスキンケア・コスメブランド。プレミアムラインだけでなく、ドクターズコスメ・敏感肌対応など様々なラインで注力
・DHC:日本ブランドを前面に押し出しつつ、サプリ+スキンケアの統合提案で定着
・Hada Labo:AmazonやTarget、日系スーパーなどで、敏感肌向け・低刺激処方の訴求が評価され拡大中
【成功の鍵】
韓国コスメ(K-Beauty)との差別化として「機能美・科学的根拠・高品質な処方」のプローチが有効的となりました。
また、美容特化ECとの連携や、美容系インフルエンサー戦略との相乗効果も発揮しています。
アメリカ流通から見たグローバル展開のヒント
アメリカは単なる「巨大消費市場」にとどまらず、グローバル市場へのゲートウェイでもあります。
ここで確立した商品設計・物流モデル・販売チャネルは、カナダ・中南米・欧州・ASEANへと展開するうえでのテンプレートとなり得ます。
- なぜ「アメリカ起点」の展開が有効か?
① 先進的な市場構造:EC比率、オムニチャネル、ロジスティクスなどが進化しており、他地域への転用性が高い
② 多民族・多文化の縮図:グローバルマーケティングに必要な感性・表現・パッケージ訴求を磨ける
③ バイヤーと業界ネットワークの影響力:アメリカ展示会や小売の採用は他国展開への信用につながる
④ 世界最大のECインフラ:Amazon・Shopify・Walmart.comなど、北米を中心に世界に接続された流通網を活用できる
- 今後の展望について
多国展開を見越したSKU設計を意識して下さい。さらに、成分・表示・サイズ・価格帯が多国対応できるものを想定しておくとより良いです。
レビューや販売実績を「武器化」しましょう。英語圏での口コミ・顧客ロイヤルティが、非英語圏でも訴求力になり得ます。
各国バイヤーとの接点はアメリカで築くと良い結果に繋げやすいです。
主要展示会では欧州・アジアのバイヤーも多数来場する可能性が高いと言えます。
Shopify MarketsやAmazon Global Sellingを最大限に活用しましょう。
多国展開を前提にしたテックスタックを選定することで、多くの国で比較的容易にビジネスをスタートさせることができます。
6. まとめ
アメリカ市場で成功するための「流通視点」
アメリカの流通市場は、依然として世界最大規模の市場でありながら、激しい変化と再編の最中にあります。
ECとリアルの垣根が消える中で、オムニチャネル戦略の巧拙が企業の生存を左右し、流通業全体にデジタル対応と物流効率化が求められています。
一方で参入障壁は高く、日本企業にとっては「商品力」だけでなく「流通インフラの理解」や「現地パートナーとの関係構築」がますます重要となっています。
特に日系企業にとっては、拡大するアジアン・マーケットや健康志向の高まりを追い風に、ニッチな分野での勝機も見込まれます。
今後もこの巨大市場において、変化を恐れず、柔軟かつ戦略的に対応していく姿勢が問われるでしょう。
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『Mission - 私たちが海外に進出する企業に果たすべき使命 -』
新しいマーケットでビジネスを創める・広げる・深める・個人を伴走型でデキル化支援
『Vision – 私たちが理想とする世界 -』
もっと自由に(法人・個人)新しいマーケットに挑戦できる世界
『Value – 私たちの強み -』
①伴走者かつ提案者であること
ジブンシゴト(頼まれ・やらされ仕事はしない)をモットーに、事業主人公ではない第三者の私たちだからこそできる提案力
②プロジェクト設計力と管理力
デキル化(ミエル化して終わりではなく)をモットーに、『ゴールは何か』の会話から始めるプロジェクト設計力とその後実現するための管理力
③対応力(幅広いエリアと多様な業種実績700社以上)
設計力・管理力を活かし、現地特派員や協力会社と連携による現地力モットーに、ニッチからポップまで多様な業種の海外進出に対応。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
01:伴走グローバル事業部
海外ビジネス課題を共に考え、目標達成のために共に動くチーム
『Point』
✔︎貴社海外事業部の担当者として伴走
✔︎BtoB・BtoC・飲食店開業など幅広くサポート可能
✔︎各国現地駐在スタッフやパートナー企業と連携が可能
------------------------------------
02:伴走マーケティング事業部
デジタルマーケティング課題を共に考え、目標達成のために共に動くチーム
『Point』
✔︎貴社デジマ事業部の担当者として伴走
✔︎デジマ業務をゼロから運用まで幅広くサポート
✔︎各分野に対応するスタッフやパートナー企業と連携
------------------------------------
03:稟議書作成サポート
海外ビジネスのはじめの一歩を作る、稟議書策定サポート
『Point』
✔︎あらゆる角度から、フィジビリティ・スタディ(実現可能性)を調査・設計
↳過去類似事例(失敗・成功どちらも)から判断材料を調査
↳当社現地スタッフやパートナー企業による調査
↳現地特定の有識者を探索し、インタビュー調査
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04:スポットサポート
海外ビジネス・デジタルマーケティング課題を部分的に解決
『施策と料金イメージ(事例で多い価格帯となります)』
✔︎市場調査:50万円〜80万円〜120万円
✔︎現地視察:国・期間・内容により大きく変動
✔︎会社設立:国・形態・内容により大きく変動
✔︎現地企業マッチング:30万円〜50万円〜80万円〜120万円
✔︎プロモーションサポート:国・形態・内容により大きく変動
✔︎ECサイト制作:80万円〜150万円
✔︎ECサイト運用:20万円〜40万円(月額)
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合同会社サウスポイント
アジアに近い沖縄から海外ビジネスをサポート
2017年7月日本・沖縄と海外の万国津梁の架け橋を目指して、企業の海外展開支援を目的として沖縄・那覇で設立。アジア・欧州を中心に沖縄県内・沖縄県外企業の海外進出・国際展開のサポートを実施しています。2022年7月には観光産業の伸びの著しい石垣市に八重山事務所を開設しております。
沖縄をハブに、台湾・中国・香港・ベトナム・タイ・マレーシア・シンガポール・インドネシア・オーストラリア・ニュージーランド・イギリス・ドイツ・ブラジル各国にパートナーエージェントを配置し、アメリカ合衆国・インドは提携先を設けていますので、現地でも情報収集、視察等も直接支援可能、幅広く皆様の海外展開とインバウンド事業をサポートしております。