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輸出する商品の選び方|粗利率・輸送性・現地適合・規制リスクの4軸で最初の1品を決める

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輸出する最初の1品は、国内の売れ筋ではなく粗利率・輸送性・現地適合・規制リスクの4軸で選びます。中小企業の海外展開実施率13.3%、成功要因2位が「製品等の現地市場ニーズへの適合」33.8%という公的データをもとに、自社商材を5点満点で採点し30日で1品に絞り込む手順を解説します。

海外に出す最初の1品を、社内で「いちばん売れているもの」から選んでいないでしょうか。国内の主力商品をそのまま海の向こうへ持っていく決め方は、最も自然に見えて、最も外しやすい選び方です。国内で売れる条件と、海外で通る条件が、ほとんど重ならないからです。

中小企業基盤整備機構が全国の中小企業経営者・経営幹部1,000社に実施した調査では、海外展開を実現できた要因の第2位に「製品等の現地市場ニーズへの適合」(33.8%)が挙がっています。商品をそのまま持っていって通るわけではない、ということが、実際に海外へ出た会社の側から語られています。

本記事では、どの国に出すかを決める前に「どの商品を出すか」を決める実務手順を扱います。粗利率・輸送性・現地適合・規制リスクという4つの軸で自社商材を5点満点で採点し、最初の1品を1つに絞り込むまでを、公的統計と採点例で解説します。出張も調査会社も使わず、社内の数字と公開情報だけで30日以内に決められる進め方です。

出典:中小企業基盤整備機構「中小企業の海外展開に関する調査(2024年)アンケート調査報告書」(令和6年3月)

この記事でわかること

  • ・国内の売れ筋から輸出商品を選ぶと外れる理由を、判断軸に分解して説明できるようになる
  • ・粗利率・輸送性・現地適合・規制リスクという4軸の定義と、5点満点での採点方法
  • ・3商材を横並びで比べる採点表の作り方と、差が出る軸の読み取り方
  • ・なぜ「国を決める前に商品を決める」ほうが合理的なのか(選び直しコストの差)
  • ・食品輸出の規制を確認する公的な情報源と、確認を打ち切ってよい基準
  • ・次の30日を週ごとに割った、最初の1品を確定させるまでの実行計画

1. なぜ「国内の売れ筋」から輸出すると外れるのか

輸出する1品を国内の販売実績で選ぶと、高い確率で外れます。理由は商品の良し悪しではなく、比べる軸が揃っていないことにあります。まずはその構造を整理し、4つの軸で採点するという解き方にたどり着くまでを確認します。

「いちばん売れているから」は、比較できる情報になっていない

海外に出す商品を決める会議は、たいてい好みの言い合いになります。「これがいちばん売れているから」「これは社長の自信作だから」「これはうちの看板だから」。どれも本当のことですが、並べても比べようがありません。国内の販売実績・思い入れ・ブランド上の位置づけという、違う土俵の話が同時に出ているからです。

比べられないものを並べると、最後は声の大きさで決まります。そして声の大きい商品は、たいてい国内の主力商品です。ここが出発点の誤りになります。

国内で売れる条件と、海外で通る条件はほとんど重ならない

国内で売れている商品は、国内の流通・価格帯・食習慣・使用習慣に最適化された結果として売れています。一方、輸出する商品に求められるのは、運賃と関税を乗せても粗利が残ること、長距離輸送と現地の温度帯に耐えること、現地の生活のなかに使いどころがあること、相手国の法規制を通過できることです。

2つの条件リストは、ほとんど重なりません。だから「国内で売れている」という情報は、輸出する1品を選ぶ材料としてほぼ役に立ちません。逆に言えば、重ならないと分かってさえいれば、選び方は変えられます。

軸を先に決めれば、誰が採点しても同じ結論になる

やることは単純で、見る軸を先に決めてから商材を並べます。軸が先にあれば、議論は「どの商品が好きか」ではなく「この軸で何点か」に変わります。点数で並べば社内の合意形成も早く、役員会には結論ではなく採点表を出せば説明が済みます。

本記事で使う軸は、粗利率・輸送性・現地適合・規制リスクの4つです。この4つを選んだ理由は、いずれも短期の営業努力では覆せない性質を持つからです。

2. 最初の1品は何で決めるのか|粗利率・輸送性・現地適合・規制リスクの4軸

輸出商材を選ぶ4つの評価軸(粗利率・輸送性・現地適合・規制リスク)と各軸の判定基準
図:最初の1品はこう決める|4つの評価軸(各5点満点)

商材選定に使う軸は、粗利率・輸送性・現地適合・規制リスクの4つです。いずれも短期の営業努力では動かせない条件で、ここに絞ることで議論が点数の比較に変わります。各軸が何を見るものなのか、5点満点をどう付けるのかを順に整理します。

粗利率は、定価ではなく「値引き後の実売価格」で計算する

1つ目の軸は粗利率です。原則は、定価ではなく値引き後の実売価格を基準にすること。定価で計算すると、どの商材も実態より高い粗利率に見えてしまい、順位が入れ替わるおそれがあります。

輸出では、この粗利から輸送費・保険料・通関費用・現地の流通マージンが引かれていきます。国内で成り立っていた粗利率が、海を渡った瞬間に成り立たなくなるケースは珍しくありません。したがって粗利率の薄い商材は最初の1品に向きません。精度は1円単位まで必要なく、商材間の順位が正しく付けばよいので、桁が合う概算で足ります。

輸送性で見るのは重さ・温度帯・賞味期限の3点

2つ目は輸送性です。見るのは重さ、温度帯、賞味期限(または製品の耐用期間)の3点。軽くて常温で長持ちするものほど点が高く、重い・要冷蔵/要冷凍・短期で劣化する、のいずれかに当たると点が下がります。

液体商材が典型的につまずくのはここです。1リットルの液体は容積あたりの単価が低く、重量がそのまま運賃に効きます。国内配送なら吸収できた重量コストが、海上輸送・保険・通関を乗せた瞬間に粗利を食い尽くします。そして重さは後から変えられません。容量を小さくする、粉末化する、現地で希釈する形にするといった設計変更を伴うため、短期の調整余地がほとんどない軸です。

現地適合は「そのまま使える場所があるか」で判定する

3つ目は現地適合です。判定基準は「現地の生活・厨房・工程のなかに、そのまま使える場所があるか」。少量から試せる、使い方を一言で説明できる、現地に同等品が少ない、という条件を満たすほど点が高くなります。

逆に点が下がるのは、現地にすでに似たものがあって違いを説明しづらい商材、既存の業務用ルートが固まっていて割って入りにくい商材です。ここで重要なのは、点が低いのは商品の品質が低いからではないという点です。「重い・液体・競合が濃い」といった条件が重なっているだけで、国内では主力であり続けてかまいません。最初の1品に向かないだけです。

規制リスクだけは、通るか通らないかの二値で効く

4つ目は規制リスクで、この軸だけは性質が違います。粗利率・輸送性・現地適合は程度の問題ですが、規制は通るか通らないかの二値で効きます。通らなければ、他の3軸が満点でも結果はゼロです。

とはいえ、商品を決める段階で全項目をクリアさせる必要はありません。確認すべきは、添加物・表示・必要書類・商標の4点について「未確認が何件残っているか」です。未確認の件数を数え、件数が少ない商材ほど高い点を付けます。具体的な確認手順は第6章で扱います。

4軸に共通するのは「あとから変えにくい」こと

この4つを選んだのは、いずれも営業努力で短期に覆せない性質を持つからです。重さは変えられません。現地に競合が密集している事実も変えられません。規制は交渉の対象になりません。粗利率は改善できますが、原価構造の見直しには時間がかかります。

逆に、商談の回数、パンフレットの出来、展示会での見せ方といった「あとから変えられるもの」は軸に入れません。変えられるものを比較軸に入れると、努力次第という結論になって決まらなくなるからです。

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3. 実際に採点するとどうなるか|3商材を横に並べて比べる

軸の定義だけでは、自社の商材にどう当てはめるかが見えません。ここでは架空の食品メーカーを例に、3つの商材を4軸で採点し、合計点で最初の1品が決まるまでの過程をたどります。登場する数値はすべて説明用の架空の設定です。

比べるのは、だしパック・めんつゆ・粉末だしの3商材

採点に使うのは、架空の食品メーカー「デジマ食品」です。だしパック・めんつゆ・業務用粉末だしを製造しているという設定で、海外売上比率0%、海外専任者なし、国内の展示会で名刺交換した相手から英語のメールが1通届いたところ、という状況とします。もっとも多い入口です。

この章で登場する粗利率・点数・未確認件数はすべて、説明のために設定した架空の値であり、実在の企業・商品の実績ではありません。自社で採点する際は、必ず自社の実数に置き換えてください。

粗利率と輸送性を入れた時点で、順番は見え始める

まず粗利率を入れます。架空の設定値として、だしパック42%、めんつゆ28%、粉末だし33%とします。いずれも値引き後の実売価格から算出した数字という想定です。

次に輸送性を入れます。だしパックは小袋で軽く、常温輸送が可能で賞味期限も長い。めんつゆは1リットルの液体で重い。粉末だしは10kgの大袋でこれも重い。この2軸を入れた時点で、すでに順番が見え始めます。国内なら成立していた28%が、船賃・保険・通関を乗せた瞬間に成立しなくなるからです。輸出で最初につまずく典型が、この重量と粗利の組み合わせです。

現地適合と規制リスクを入れると、1品に絞れる

現地適合を見ます。だしは和食の入口になる商材で、少量から試してもらいやすく、使い方の説明も短く済みます。一方、めんつゆのような液体調味料は現地にも類似品があり、棚に並べたときの違いを説明しづらい。粉末だしは現地の業務用ルートがすでに固まっており、新規参入の難度が高い。

規制リスクは未確認項目の件数で数えます。架空の設定として、だしパックは未確認1件、めんつゆと粉末だしはそれぞれ3件残ったとします。ここまで入れると合計点はだしパック17点、粉末だし11点、めんつゆ9点となり、最初の1品はだしパックに決まります。

商材スクリーニングの採点表(4軸・各5点満点/架空の例)

評価軸(各5点満点) 家庭用だしパック めんつゆ(1L・液体) 業務用粉末だし(10kg)
粗利率(実売ベース) 4点(42%) 2点(28%) 3点(33%)
輸送性(重さ・温度帯・賞味期限) 5点(軽量・常温・長期保存) 2点(1Lの液体・重量が運賃に直結) 3点(10kg大袋・常温だが重い)
現地適合(そのまま使えるか) 4点(少量から試せる・説明が短い) 2点(現地に類似品・差が説明しづらい) 2点(業務用ルートが固まっている)
規制リスク(未確認項目の残数) 4点(未確認1件) 3点(未確認3件) 3点(未確認3件)
合計 17点 9点 11点
判定 最初の1品として着手 現地生産・委託製造を含めた出し方の検討へ 既存ルートの参入余地を調べてから判断

※上表の企業・商材・数値はすべて、採点手順を説明するための架空の設定値です。

点が低い商材は「出す物」ではなく「出し方」の話に移る

横並びにすると、差がどこで付いたかが読み取れます。粗利率は4対2対3、輸送性は5対2対3、現地適合は4対2対2、規制リスクは4対3対3。だしパックは4軸すべてで負けていません。

一方、めんつゆの点が低いのは商品が悪いからではありません。重い・液体・現地に類似品がある、という条件が重なっているだけです。国内では主力であり続けてよく、ただ最初の1品には向かない。これが「売れている商品から出すと外す」という話の中身です。

点が低かった商材は、出す物としてではなく出し方の話に移ります。現地で製造委託する、ライセンス供与する、最初の1品が軌道に乗ってから追いかける。選択肢は残っています。

4. 国と商品、どちらを先に決めるべきか

海外展開の検討は「どの国に出すか」から始めがちですが、順番を逆にしたほうが合理的です。選び直しにかかるコスト、国内営業との違い、候補国の広がり方という3つの観点から、商品を先に決めるべき理由を確認します。

国の選び直しは費用が沈み、商品の選び直しは社内で完結する

国を選び直すと、そこまでに積んだ関係も、調べた規制も、会った相手も一度リセットになります。渡航費は戻らず、展示会に出展していればその費用も沈みます。一方、出す商品を選び直すのは自社の中だけで完結するので、明日からやり直せます。追加費用は実質ゼロです。

意思決定の原則として、決め直しが利くほうを先に固めるのが合理的です。安いほうから決める。これが国より商品を先にする最大の理由になります。

国内で販売先を1社増やすのと、輸出するのでは問われる力が違う

販売先をもう1社増やすとき、国内で探すのと海外に出すのとでは、問われる能力が変わります。国内でもう1社足す場合、商品は現状のままで通り、勝負どころは営業力です。ただし相手は同じ業界の相場を知っており、市場そのものが人口減少とともに縮むため取り合いになります。値段も既存取引先と比較されます。

輸出で1品出す場合は前提が変わります。まず商品そのものが問われ、営業活動の前に「物が通るかどうか」の判定があります。その代わり相場が違うので値付けを自分で作れますし、伸びている市場に入れます。どちらが良いという話ではありませんが、海外は商品が先に問われるという違いは押さえておく必要があります。

商品を先に絞ると候補国は広がり、国を先に絞ると候補が狭まる

重くて液体で現地に競合品がある商材は、ベトナムに持っていっても台湾に持っていっても同じ理由で止まります。運賃で粗利が消え、棚で違いが説明できない。国を変えても解決しません。

逆に、軽くて常温で日持ちして、現地に使いどころがあり、規制の壁が低い商材なら、複数の国を同時に検討できます。つまり、先に商品を絞ると候補国が広がり、順番を逆にすると候補が狭まります。この非対称性も、商品を先に決める理由になります。

5. 他社はどこから始めているのか|実施13.3%、入口は直接輸出44.4%

中小企業の海外展開の実施内容(直接輸出44.4%・直接投資39.8%・生産販売委託38.3%・間接輸出21.8%・越境EC4.5%)
図:入口は越境ECではない|海外展開の実施内容(n=133・複数回答)

自社の進め方が妥当かどうかは、他社の実態と並べると判断しやすくなります。ここでは中小企業基盤整備機構が全国1,000社に実施した調査をもとに、実施率・実施内容・成功要因・課題の4点を順に確認します。

海外展開を行っている中小企業は13.3%、製造業でも5社に1社

中小企業基盤整備機構が全国の中小企業経営者・経営幹部1,000社を対象に、令和6年2月6〜7日にWebアンケート方式で実施した調査(実施機関:株式会社ネオマーケティング)によれば、「海外展開を行っている」企業の割合は13.3%です。これに「予定はある」2.1%、「関心はある」15.6%を加えて31.0%。裏を返せば「行っておらず、関心もない」企業が69.0%を占めます。

従業員規模別では101人以上が37.7%、21〜100人が15.9%、20人以下が6.6%と、規模が小さいほど実施率が下がります。業種別では製造業が20.2%と最も高く、卸売業18.0%が続きます。製造業ですら5社に1社であり、輸出している会社はまだ明確に少数派です。

入口は越境ECではなく直接輸出|44.4%対4.5%

海外展開を行っている133社に実施内容を聞くと(複数回答)、「海外へ直接輸出している」が44.4%で最も多くなっています。次いで「海外への直接投資を行っている」39.8%、「海外企業へ生産・販売を委託している」38.3%、「海外へ間接輸出している」21.8%と続きます。一方で「越境ECを行っている」は4.5%にとどまります。

越境ECは話題に上りやすいものの、実際の入口としては例外的に少ないのが実態です。大半の会社は拠点を作るより先に、まず物を売るところから始めています。最初の一歩が「どの商品を輸出するか」の判断になるというのは、統計上もそのとおりということになります。

成功要因の2位は「現地市場ニーズへの適合」33.8%

同じ調査で海外展開を実現できた要因を聞いた設問(n=133、複数回答)では、「信頼できる現地パートナーの開拓」が54.9%で最も高く、次いで「製品等の現地市場ニーズへの適合」33.8%、「顧客の開拓」33.1%、「既存の取引先からの要請」31.6%と続きます。

注目すべきは2位です。製品を現地のニーズに合わせられたことを、実現できた理由として3社に1社が挙げています。そして合わせられるかどうかは、どの商品を持っていくかでほとんど決まります。合わせる余地が構造的にない商材も存在するからです。商品選定は現地適合の前段階ではなく、現地適合そのものの一部だと言えます。

人材・為替・パートナーの3課題も、商品が決まらないと手を打てない

課題を聞いた設問(海外展開を行っている・予定がある・関心がある企業の計310社、複数回答)では、「海外事業に対応できる人材がいない」32.9%、「為替変動リスクがある」32.9%、「信頼できる現地パートナーの開拓ができない」31.9%が上位に並びます。

ただし、この3つはいずれも出す商品が決まらないと手の打ちようがありません。どんな人材を採るかは、英語力が要るのか食品規制の知識が要るのかで変わり、それは商品で決まります。どのパートナーを探すかも、小売ルートか業務用ルートかで変わり、これも商品で決まります。為替にいくら備えるかは、何をいくらで売るかが決まって初めて計算できます。課題の順番として、商品選定は人材やパートナーより前に来ます。

出典:中小企業基盤整備機構「中小企業の海外展開に関する調査(2024年)アンケート調査報告書」(令和6年3月)

6. 食品輸出の規制はどこまで調べてから決めるのか

規制は通るか通らないかの二値で効くため、後回しにすると決めたあとで引き返すことになります。とはいえ商品を決める段階で全部を調べる必要はありません。確認を打ち切ってよい範囲と、無料で使える公的な情報源を整理します。

見るのは4点、判定は「未確認2件以上なら先頭にしない」

規制の確認は、着手前に全部を調べようとすると終わりません。商品を決める段階では次の4点に絞ります。①相手国で使えない添加物・原材料が含まれていないか。②現地語での表示(原材料・アレルゲン・栄養成分など)を用意できるか。③輸入時に必要な証明書をそろえられるか。④商標が現地ですでに取られていないか。

この4点それぞれについて「確認済み/未確認」を記録し、未確認の件数を数えます。判定基準は明快で、未確認が2件以上残る商材は最初の1品にしない。これだけで、決めたあとに引き返す事故はほぼ防げます。

公開情報だけで足りる|調査会社に発注する段階ではない

確認は公開情報で足ります。農林水産物・食品であれば、ジェトロが国・地域別に「日本からの輸出に関する制度」を整理しており、品目別の輸入規制・輸入手続き・食品添加物の扱いを調べられます。農林水産省も「各国の食品関連規制」として相手国ごとの規制情報の入口をまとめています。いずれも公開情報として読みにいくもので、この段階で外部に調査を発注する必要はありません。

出典:ジェトロ「農林水産物・食品 日本からの輸出に関する制度」/農林水産省「各国の食品関連規制」

商標は無料で横断検索できるが、最終確認は各国の登録簿で行う

商標については、世界知的所有権機関(WIPO)のGlobal Brand Databaseで、各国・地域の商標データベースを横断して無料で検索できます。自社ブランド名・商品名を入れて、候補国での先行登録の有無を確認します。

ただしWIPO自身が注意しているとおり、同データベースは主要なコレクションを収録しているものの網羅的ではありません。ここで見つからなかったことを「登録されていない」と断定せず、最終的には各国・地域の知的財産庁の登録簿でも確認します。

出典:WIPO「Global Brand Database」

▶ 推奨アクション
・自社の主力3商材について、ジェトロ「農林水産物・食品 日本からの輸出に関する制度」で該当品目のページを開き、添加物・表示・必要書類を「確認済み/未確認」で記録する
・自社ブランド名・商品名をWIPO Global Brand Databaseで検索し、候補国での先行登録の有無を確認する
・自社商材で本当に通るのか、どの国なら規制の壁が低いのかは、Digima〜出島〜の無料相談で現地専門家に確認する

7. 30日で最初の1品を決めるには、何から手をつけるのか

30日で最初の1品を決める週ごとの実行計画(1週目実売粗利・2週目輸入規制・3週目現地EC価格・4週目採点)
図:30日で最初の1品を決める|週ごとの実行計画

4軸で採点するために必要な材料は、社内の数字と公開情報だけで揃います。ここでは30日を週ごとに割り、1週目から4週目までに何をどこまで終わらせるかを具体的に示します。

1週目|商材ごとの実売粗利を経理に出してもらう

最初の週にやるのは1つだけです。経理部門に依頼して、商材ごとの値引き後の実売粗利を出してもらいます。定価ベースの数字ではない点を明確に伝えます。既存の販売データがあれば通常は1日で出ます。

この段階で、比較対象とする商材を3つに絞っておきます。商材が1つしかない場合は、用途・容量・パッケージで割って3つ作ります。家庭用と業務用、小容量と大容量、単品と詰め合わせ。割り方は自由でかまいません。

2週目|候補国を1カ国だけ決めて、輸入規制を読む

2週目は、候補になりそうな国を1カ国だけ選び、その国の輸入規制を読みます。複数国を同時に調べません。1カ国に絞ることで、規制の読み方そのものを覚える効果も得られます。

全文を読む必要はなく、自社商材に関係する項目だけでかまいません。第6章の4点(添加物・表示・必要書類・商標)に対応する箇所を拾い、「確認済み/未確認」を記録します。

候補国の選び方に迷う場合、前掲の中小機構調査では海外展開の予定・関心がある国・地域としてベトナム36.1%、北米(米国・カナダ)28.7%、中国(香港・マカオを除く)27.4%、タイ27.1%、台湾25.5%が上位に挙がっています(n=310、複数回答)。ただしこれは他社の関心であって自社の適地ではありません。出発点の目安として扱ってください。

出典:中小企業基盤整備機構「中小企業の海外展開に関する調査(2024年)アンケート調査報告書」(令和6年3月)

3週目|現地のECで、同じ用途の商品の価格を10件見る

3週目は、候補国の現地ECサイトで同じ用途の商品の販売価格を10件調べます。見るのは絶対額ではなく、日本の店頭価格との差です。現地価格が日本より高ければ、運賃と関税を乗せても吸収できる余地があることになります。逆に現地のほうが安ければ、その商材でその国に出すのは相当に厳しいと判断できます。

10件という数字に厳密な根拠はありませんが、価格帯の上下と中心が見える最小限のサンプル数として設定しています。ブランド品と量販品が混ざるので、記録の際に区別しておくと後で使いやすくなります。

4週目|4軸で採点し、最初の1品を確定する

最後の週に、1〜3週目で集めた材料を4軸に落とし込んで採点します。粗利率は1週目の実数、輸送性は自社の出荷データ、現地適合は3週目のEC調査、規制リスクは2週目の未確認件数。すべて手元に揃っています。

ここまで、社内の数字と公開情報だけで完結します。出張も調査会社も要らず、追加費用は発生しません。採点表を役員会に出して最初の1品を確定させたら、そこから先が本来の海外展開の実務になります。

▶ 推奨アクション
・経理部門に「商材別・値引き後の実売粗利」の抽出を今週中に依頼する
・候補国を1カ国に絞り、農林水産省「各国の食品関連規制」で該当する規制ページを確認する
・4週目に採点表を諮る役員会・経営会議の日程を、いま押さえる
・採点後の進出形態や現地パートナーの選定は、Digima〜出島〜の無料相談で専門家を紹介してもらう

8. なぜ今、輸出商材の選定を急ぐのか

ここまでの手順は、いつ着手しても使えるものです。ただし今この作業を急ぐべき理由が、国が公表している統計に表れています。電力需要という最も物理的な数字から、その背景を確認します。

20年下がり続けた日本の電力需要が、増加見込みに転じた

「AIが進むと、物を作る仕事は要らなくなるのではないか」。製造の現場でよく聞かれる問いですが、統計はむしろ逆を示しています。

資源エネルギー庁が2026年5月20日に公開した解説記事によれば、この20年ほどの日本の電力需要は省エネ対策や人口減少傾向などを要因として減少してきましたが、データセンターや半導体工場の新増設といったDXの進展、電動車や産業の電化といったGXに伴って電力需要の増加が見込まれています。20年間下がり続けた数字が向きを変えました。国がデータセンター業に対し、電気使用量やPUE(電力使用効率)の報告と公表を求める措置を2026年4月から施行したのも、電気の使われ方がそれだけ変わってきたことの裏返しです。

出典:資源エネルギー庁「増加が見込まれるデータセンターの電力需要をどうする?さらなる省エネを進める新たな制度に注目!」(2026年5月20日)

足りるかどうかは、すでに供給計画の段階で議論になっている

その電力が足りるかどうかも、すでに供給計画の段階で論点になっています。資源エネルギー庁が2026年5月13日の審議会に提出した資料では、2026年度供給計画の取りまとめの結果として、2028年度以降の需給バランスが複数のエリアで信頼度基準を超過する厳しい状況になったことが示されました。2026年度中に休廃止となる火力電源371万kWのうち126万kWが、2026年度供給計画で初めて計上されたことも指摘されています。

同資料はさらに「将来の電力需給シナリオに関する検討会」報告書(2025年7月)を引き、2040年に需要が11,000億kWhとなるケースでは、経年火力3,900万kWを全てリプレースしてもなお供給力が1,300万kW不足する結果になったことを紹介しています。AIの話をしているつもりが、議題は発電所と送電線になっている、というのが現在地です。

出典:資源エネルギー庁「今後の供給力確保について」次世代電力・ガス事業基盤構築小委員会 安定供給ワーキンググループ 資料5(2026年5月13日)

作れる会社の価値は上がったが、買い手は日本の中にいない

ここから言えることは単純です。AIが賢くなるほど、物を作って運ぶ仕事が必要になります。計算も冷却も送電も、最後は誰かが作った設備の上で動いています。サーバーを冷やす部材も、電気を送る線も、それを収める筐体も工場から出てきます。食品や日用品でも同じで、調味料はAIが作りませんし運びもしません。

つまり物を作っている会社にとって、この流れは悪い知らせではありません。問題は次にあります。値段が上がったその物を、誰が買うのか。第5章で見たとおり、海外展開を行っている中小企業は13.3%にとどまります。買い手が日本の外にいるなら、出す商品を決めるのは早いほうがよいということになります。

9. よくある質問

輸出商材の選定でよく寄せられる質問に、要点だけ簡潔にまとめました。

輸出する商品は、どうやって選べばよいですか。

粗利率・輸送性・現地適合・規制リスクの4軸で自社商材を5点満点で採点し、合計点の高いものから着手します。国内の販売実績は選定基準に入れません。国内で売れる条件と海外で通る条件はほとんど重ならないため、売れ筋から選ぶと運賃や規制でつまずきやすくなります。

商材が1つしかない会社でも、この選び方はできますか。

できます。用途・容量・パッケージで割れば、比べる対象は自社で作れるからです。家庭用と業務用に割る、小容量と大容量に割る、単品と詰め合わせに割る。これだけで比較対象が3つになります。重要なのは商品数ではなく、同じ軸で並べて差を見ることです。

国を決めるのと商品を決めるのは、どちらが先ですか。

商品が先です。国を選び直すと、築いた関係・調べた規制・渡航費がリセットになります。一方、出す商品を選び直すのは社内で完結するため、費用をかけずにやり直せます。決め直しが利くほうを先に固めるのが合理的です。

食品を輸出する場合、規制はどこまで確認してから商品を決めますか。

添加物・表示・必要書類・商標の4点について「未確認が何件残っているか」を数えるところまでで足ります。全項目をクリアさせる必要はありません。未確認が2件以上残る商材を最初の1品にしないという基準を置くだけで、決めたあとに引き返す事故はほぼ防げます。

越境ECから始めるのと、直接輸出から始めるのはどちらが多いですか。

直接輸出が圧倒的に多数です。中小企業基盤整備機構の2024年調査では、海外展開を行っている企業133社のうち「海外へ直接輸出している」が44.4%で最多、「越境ECを行っている」は4.5%にとどまります。越境ECは入口としては例外的に少ないのが実態です。

10. 輸出する最初の1品の選定はDigima〜出島〜に相談

輸出する最初の1品は、国内の売れ筋ではなく、粗利率・輸送性・現地適合・規制リスクの4軸で決めます。この4つはいずれも営業努力では短期に覆せない条件であり、点数化すれば社内の合意も早くなります。そして採点に必要な材料は、社内の数字と公開情報だけで揃います。

商品より先に国を決めると、選び直すたびに関係も費用も沈みます。逆に商品を先に絞れば、候補国はむしろ広がります。物が合っていなければ、どの国に持っていっても同じところで止まるからです。

Digima〜出島〜では、世界各国の海外進出支援の専門家・法律事務所・会計事務所・実績ある日系企業を無料でご紹介しています。選んだ1品で本当に通るのかの検証から、候補国の規制確認、現地パートナーの選定、輸出実務まで、貴社の状況に合わせたサポートが可能です。まずは無料の海外進出タイプ診断で、自社に合った進出スタイルを確認してみてください。

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