【2026年最新】キッコーマンの海外進出戦略に学ぶ|海外売上比率77%を実現した3つの戦略を解説
キッコーマンは2026年3月期、連結売上収益7,455億円のうち約77%、事業利益795億円のうち約85%を海外事業で稼ぎ出しました。しょうゆという和食の調味料が、なぜこれほど世界で稼ぐ商品になったのでしょうか。
「海外で日本の商品を定着させるには何年かかるのか」「現地生産にはどのタイミングで踏み切るべきか」——海外進出を検討する経営者や事業担当者から、こうした疑問をよく耳にします。キッコーマンの歩みは、まさにこの問いへの一つの答えです。
本記事では、キッコーマンの海外売上比率や地域別の事業規模といった最新データをもとに、海外進出の歴史、現地生産を軸にした戦略、そして2025〜2026年の最新動向までを整理し、海外進出を考える企業が参考にできるポイントを解説します。
この記事でわかること
- ・売上・事業利益の8割超を海外で稼ぐキッコーマンの事業構造
- ・1957年の米国進出から70年近い海外展開の歴史
- ・北米・欧州・アジアにまたがる海外生産拠点網の実態
- ・現地生産・用途提案・次のフロンティア開拓という3つの戦略
- ・米国新工場の稼働など2025〜2026年の最新動向
▼【2026年最新】キッコーマンの海外進出戦略に学ぶ|海外売上比率77%を実現した3つの戦略を解説
1. キッコーマンとは|売上・利益の8割超を海外で稼ぐ食品メーカー
キッコーマンは千葉県野田市に本社を置く、しょうゆを主力とする食品メーカーです。2026年3月期の連結決算では、売上収益7,455億円(前期比5.2%増)、事業利益795億円(事業利益率10.7%)、親会社の所有者に帰属する当期利益616億円を計上しました。
このうち国内事業の売上収益は1,696億円、事業利益は115億円にとどまり、残る海外事業が売上収益で約5,759億円(全体の約77%)、事業利益で約680億円(全体の約85%)を占めています。国内のしょうゆ市場がほぼ成熟している一方、海外事業は売上・利益ともに国内を大きく上回る規模に育っており、キッコーマンはすでに「海外企業」と呼んで差し支えない収益構造を持つ企業といえます。
現在の代表取締役社長CEOは中野祥三郎氏で、2025年度を起点とする中期経営計画(2025〜2027年度)では、為替差を除いた売上成長率で年平均5%以上、事業利益率10%以上、ROE12%以上(いずれも2027年度目標)を掲げています。
2. キッコーマンの海外進出の歴史|1957年の米国進出から現地生産体制へ
キッコーマンの海外進出は、1957年に米国サンフランシスコで現地の販売会社を設立したことに始まります。在日米軍関係者がしょうゆの味を気に入っていたことも追い風に、本格的な米国市場開拓へと乗り出しました。1969年には米国で食品卸事業を手がけるJapan Foods Corp.(現JFC International)の経営に参画し、販売だけでなく流通の基盤も固めています。
転機となったのが1973年です。この年、米国ウィスコンシン州に海外初となるしょうゆの生産拠点を設け、現地生産に踏み切りました。化学醤油が主流だった当時の米国市場で、本醸造の風味を保った製品を現地生産することで差別化に成功し、同工場は同州にとって日本企業初の進出案件になったとも伝えられています。同じ1973年には、ドイツ・デュッセルドルフに日本料理店を開設し、欧州進出の足がかりも築きました。
その後も拠点網の拡大は続きます。1980年にはオーストラリアに販売会社を設立し、1983年にはシンガポールに海外2カ所目のしょうゆ生産拠点を設けました(稼働は1984年)。1990年には台湾で合弁会社President Kikkoman Inc.を設立し、1997年にはオランダでしょうゆの生産を開始、1998年には米国2工場目となるカリフォルニア工場を稼働させています。中国でも昆山・北京・天津・上海と事業を広げ、アジアにおける生産・販売網を厚くしてきました。「輸出から現地販売、そして現地生産へ」という段階を一つずつ踏んできたことが、現在の海外事業の土台になっています。
3. 海外事業の規模|地域別に見る売上と収益性
2026年3月期の実績を地域別に見ると、海外事業の中でも北米が中心的な役割を担っていることがわかります。北米の食料品製造・販売事業(しょうゆが中心)は売上収益1,034億円、事業利益290億円で、事業利益率は28.0%に達しました。欧州の食料品製造・販売(しょうゆ)事業も売上収益353億円、事業利益80億円、事業利益率22.6%と高い収益性を維持しています。一方、北米で食品卸売を手がける事業は売上収益3,156億円と規模は大きいものの、事業利益率は7.8%にとどまり、しょうゆ事業とは異なる収益構造を持っています。
| セグメント | 売上収益 | 事業利益率 |
|---|---|---|
| 北米 食料品製造・販売(しょうゆ中心) | 1,034億円 | 28.0% |
| 欧州 食料品製造・販売(しょうゆ) | 353億円 | 22.6% |
| 北米 食料品卸売 | 3,156億円 | 7.8% |
| 国内 食料品製造・販売ほか | 1,696億円 | 6.8% |
海外しょうゆ事業全体で見ると、2025年度の地域別売上構成比は北米が63%、欧州が22%、アジア・オセアニアが14%となっており、北米が今も最大の収益源です。2016年度から2025年度にかけての年平均成長率は、海外しょうゆ事業全体で7.0%、地域別では欧州が10.0%と最も高く、北米6.2%、アジア・オセアニア6.6%が続きます。長期で見ると、海外でのキッコーマンブランドしょうゆ類の販売数量は、1974年度を100とした指数で2024年度には3,136に達しており、50年間で年平均7.1%のペースで拡大を続けてきたことになります。
4. キッコーマンの海外進出を支えた3つの戦略
キッコーマンが70年近くかけて海外売上比率77%という事業構造を築けたのは、偶然の積み重ねではありません。ここでは、その歩みを支えてきた3つの戦略を見ていきます。
戦略1:早い段階での現地生産への切り替え
キッコーマンは米国進出からわずか16年後の1973年に、早くも現地生産へ踏み切りました。輸出だけに頼っていては為替変動や物流コストの影響を受けやすく、価格競争力も保ちにくくなります。現地生産に切り替えたことで、米国市場での価格競争力と供給の安定性を同時に確保し、化学醤油が主流だった市場で本醸造品を定着させる土台を作りました。
この「早期の現地生産移行」という判断は、欧州でのオランダ工場、アジアでのシンガポール・台湾・中国の拠点整備にも引き継がれています。販売が軌道に乗った市場から優先的に現地生産へ切り替えていくことで、各地域で価格と品質の両立を図り、輸出依存から脱却した安定成長の基盤を築いてきました。
戦略2:しょうゆを「調味料」として現地の食文化に根づかせる
海外での成長を支えたもう一つの柱は、しょうゆを単なる和食用の調味料としてではなく、現地の料理にも使える万能調味料として提案してきたマーケティングです。米国では、肉料理やグリル料理にしょうゆを使うレシピ提案を続けたことが、家庭用しょうゆ市場でのシェア拡大につながったと報じられています。しょうゆそのものの輸出ではなく、「現地の食卓に合う使い方」を広めることに力を注いだ点が、他の和食関連商品にはない広がりを生みました。
この積み重ねの結果、米国では数十年をかけて現地のしょうゆ市場で高いシェアを獲得するに至ったと伝えられています。和食ブームに依存するのではなく、現地の食生活そのものに入り込む戦略をとったことが、海外売上比率が国内を大きく上回る事業構造の実現につながったといえます。
戦略3:成熟市場で稼いだ収益を次のフロンティア開拓に再投資する
北米・欧州という高い収益性を持つ成熟市場で稼いだ利益を、新たな市場開拓の原資に回している点も見逃せません。2021年には南米市場開拓のためブラジルに工場を開設し、インドには販売会社を設立しました。茂木友三郎取締役名誉会長は2018年のインタビューで、北米・欧州・豪州・アジアへと広げてきた事業のさらなる拡大に向けて「残った地域を埋めていく」と述べ、南米・インドには5年以内、アフリカには10年以内を目安に販売会社を設立する構想を示しています。
しょうゆになじみの薄い地域では、味そのものより先に「しょうゆとは何か」を知ってもらう必要があり、一足飛びに大きな市場を作ることはできません。だからこそ、既存市場の収益で新市場の種をまき、時間をかけて育てるという長期視点の投資配分が、キッコーマンの海外展開を持続可能なものにしてきました。
5. 2025〜2026年の最新動向|米国新工場と中期経営計画の進捗
直近の大きな動きは、米国ウィスコンシン州ジェファーソンに建設している第3のしょうゆ工場です。北米でのしょうゆ需要拡大に対応するため2024年4月に着工し、2026年の稼働開始に向けて準備が進んでいます。稼働すればキッコーマングループにとって海外9カ所目のしょうゆ生産拠点となり、北米における供給体制はさらに厚みを増すことになります。
2023年6月には、1973年に稼働した米国ウィスコンシン州の工場が稼働50周年を迎え、地元レークジェニーバで記念式典が開かれました。式典に登壇した茂木友三郎名誉会長は同工場を「世界進出のモデル」と位置づけ、インドや南米での事業拡大を進める方針を改めて示しています。地元ウィスコンシン州は、この日を「Kikkoman Day」に制定しました。
中期経営計画(2025〜2027年度)の進捗を見ると、2026年3月期の事業利益率は10.7%、ROEは11.5%と、2027年度目標である事業利益率10%以上・ROE12%以上に近づく水準で推移しています。会社側は、2027年3月期についても海外のしょうゆ事業・卸売事業ともに各地域で成長を継続し、国内事業は売上成長と収益性向上の両立をめざす計画を示しています。
6. 茂木友三郎名誉会長の言葉から読み解く「残った地域」戦略
キッコーマンの海外戦略を語るうえで欠かせないのが、長年グローバル展開をけん引してきた茂木友三郎取締役名誉会長の存在です。前述の通り、同氏は2018年のインタビューで、北米・欧州・豪州・アジアへと広げてきた事業の次の一手として、南米・インド・アフリカを「残った地域」と位置づけ、段階的に市場開拓を進める方針を語っています。
この発言どおり、2021年にはインドへの販売会社設立とブラジルでの工場開設が実現しました。長期ビジョンを公言したうえで、実際に年単位の計画に落とし込んで実行している点は、海外進出を行き当たりばったりにせず、経営トップ自らが長期の地図を描き続けてきたことの表れといえます。
しょうゆになじみの薄い市場を切り開くには、短期の成果を急がず、既存市場の収益で時間を買うという発想が欠かせません。キッコーマンの「残った地域を埋めていく」という姿勢は、成熟市場と新興市場をどう組み合わせて海外展開全体を設計するか、多くの企業にとって参考になる視点です。
7. キッコーマンの事例から日本企業が学べること
キッコーマンの70年近い海外展開の歩みからは、業種や企業規模を問わず応用できるいくつかの教訓が見えてきます。
まず、輸出だけに頼り続けないことです。キッコーマンは米国進出からわずか16年で現地生産に踏み切り、為替や物流コストに左右されにくい事業基盤を早期に築きました。輸出が軌道に乗った段階で現地生産への移行時期を具体的に検討することが、長期的な価格競争力につながります。
次に、商品そのものではなく「使い方」を現地に広めることです。しょうゆを和食専用の調味料としてではなく、現地の料理に合う万能調味料として提案し続けたことが、海外市場での定着を後押ししました。自社の商品を現地の生活習慣にどう組み込んでもらうか、という視点は業種を問わず応用できます。
そして、成熟市場の収益を新市場開拓の原資に回す発想です。北米・欧州で稼いだ利益を、インドやブラジルといった次のフロンティアへの投資に充てる姿勢は、限られた経営資源を長期的にどう配分するかという経営判断そのものです。
最後に、経営トップが長期の方向性を言葉にして示し続けることです。茂木名誉会長の「残った地域を埋めていく」という発言は、一度きりのスローガンではなく、何年もかけて実行に移されてきました。中小企業であっても、海外展開の最終的な到達点を経営者自身が明確に描き、社内外に発信し続けることが、息の長い海外戦略を支える力になります。
8. よくある質問(FAQ)
Q. キッコーマンの海外売上比率はどれくらいですか?
2026年3月期の連結決算では、売上収益7,455億円のうち国内は1,696億円で、残る約5,759億円、比率にして約77%が海外事業によるものです。
Q. キッコーマンはいつから海外進出を始めたのですか?
1957年に米国サンフランシスコで現地の販売会社を設立したのが最初です。1973年には米国ウィスコンシン州で海外初のしょうゆ生産拠点を稼働させ、本格的な現地生産に移行しました。
Q. キッコーマンの海外事業で最も規模が大きい地域はどこですか?
北米です。2025年度の海外しょうゆ事業の地域別売上構成比では、北米が63%を占め、欧州22%、アジア・オセアニア14%が続きます。
Q. キッコーマンは米国でどれくらいのシェアを持っていますか?
報道によれば、米国の家庭用しょうゆ市場で数十年をかけて高いシェアを獲得してきたとされています。化学醤油が主流だった市場に本醸造しょうゆを定着させてきた成果といえます。
Q. キッコーマンは今後どの地域への進出を計画していますか?
茂木友三郎名誉会長は南米・インド・アフリカを「残った地域」と位置づけており、実際に2021年にはインドへの販売会社設立とブラジルでの工場開設を実行しています。
Q. 米国の新工場はいつ稼働しますか?
北米のしょうゆ需要拡大に対応するため、米国ウィスコンシン州ジェファーソンで2024年4月に着工した第3工場が、2026年中の稼働開始に向けて準備を進めています。稼働するとキッコーマングループにとって海外9カ所目のしょうゆ生産拠点となります。
Q. キッコーマンの事例は中小企業の海外進出にも参考になりますか?
はい。輸出から現地生産への早期移行、商品の「使い方」を現地に広める発想、成熟市場の収益を新市場開拓に回す資源配分の考え方は、企業規模を問わず応用できる視点です。
9. 優良な海外進出サポート企業をご紹介
今回は「キッコーマンの海外進出戦略」として、海外売上比率77%という数字の裏側にある現地生産体制の構築と、次のフロンティア開拓に向けた長期戦略をご紹介しました。
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