【完全ガイド】海外現地採用と雇用代行(EOR/PEO)の違いと活用法|リスクを抑えた人材確保のポイント

グローバル市場への挑戦が加速する中、多くの日本企業にとって「現地採用のあり方」は進出計画の成否を左右する重要なテーマとなっています。単に人材を採用するだけではなく、現地の法律や労働慣行、税務、コンプライアンスに適切に対応することが求められます。従来は現地法人を設立し、直接雇用する方法が一般的でしたが、近年では雇用代行(EOR/PEO)を活用し、法人設立なしにスピーディーに現地で人材を配置する動きが増えています。この仕組みによって、進出初期のコストやリスクを抑えつつ、柔軟な体制構築が可能となりました。一方で、それぞれの方法には異なる特性や留意点が存在し、企業の成長ステージや戦略によって適した選択は変わります。本記事では、現地採用と雇用代行それぞれの仕組みや特徴、比較ポイント、導入の流れまでをわかりやすく解説し、海外進出における人材確保の最適解を考えるヒントをお届けします。
▼ 【完全ガイド】海外現地採用と雇用代行(EOR/PEO)の違いと活用法|リスクを抑えた人材確保のポイント
海外現地採用とは?基本と仕組み
現地法人を設立し、直接雇用する方法
海外現地採用の基本は、進出先に現地法人を設立し、その法人が雇用主として従業員を直接雇用する仕組みです。この方法では、自社の意思決定や企業文化を現地の組織へ直接浸透できるため、ブランドの一貫性を保ちやすい利点があります。また、現地法人の設立により、販売・サービス提供・請求・雇用までの一貫したビジネス運営が可能になり、中長期的に事業基盤を築けます。ただし、現地法人を立ち上げるには、会社登記やライセンス取得、現地での銀行口座開設、雇用契約の整備など、相応の時間とコストが必要です。特にアジアや欧米では労働法や税務規制が複雑で、地域によっては法改正も頻繁に行われます。日本本社で決めたルールをそのまま当てはめるだけでは適切な労務管理が難しいため、現地専門家や弁護士の支援を受けながら慎重に準備を進める必要があります。
採用・労務管理の流れ
現地採用を行う際、まずは募集から採用プロセスの設計が必要です。現地の求人媒体や人材紹介会社を活用し、応募から面接、オファー通知までのフローを整えます。採用後は現地法に基づいた雇用契約書を締結し、給与体系や福利厚生、社会保険の加入などを適切に整えます。地域ごとに定められた最低賃金や残業手当、有給休暇の規定などを遵守する必要があり、運用には専門知識が不可欠です。また、給与計算・税金の源泉徴収・社会保険料納付などの労務管理業務も発生します。さらに、定期的な人事評価や研修制度を整えることで、現地スタッフの定着とモチベーション維持につながります。現地法人の責任者と日本本社が協力しながら、現地従業員との信頼関係を築き、安心して働ける仕組みを整えることが求められます。
国ごとの規制とコンプライアンスの重要性
海外現地採用で最も留意すべきポイントが、国ごとに大きく異なる雇用・労務規制です。例えば、解雇のルールや試用期間の設定、有給休暇や退職金制度などは、地域や業種によって大きな差があります。欧米では雇用保護が強固で、正当な理由がなければ契約解除が難しい場合もありますし、アジアの一部では外国人雇用の枠や労働許可の取得が厳格に管理されています。規制を誤解したまま契約や運用を始めると、罰金や訴訟リスクが発生するだけでなく、企業のブランド信頼にも影響が及びます。こうしたリスクを避けるには、現地法律事務所や労務コンサルタントと連携し、最新の規制情報を常に把握する体制が不可欠です。現地採用を円滑に進めるためには、コンプライアンスを軸に据えた綿密な準備が重要になります。
現地採用のメリットと課題
ブランドの一貫性と組織文化を直接浸透できる
現地採用の大きなメリットは、企業のブランドや経営理念を現地組織に直接伝え、一貫した価値観でチームを育てられる点です。自社が雇用主となることで、採用基準や評価制度、育成方針を日本本社と共有しながら運用でき、従業員に安心感や帰属意識を持ってもらいやすくなります。特にサービス業やBtoCビジネスの場合、現地スタッフの行動や接客品質がブランドイメージに直結するため、一体感ある組織運営が重要です。また、現地法人の拠点があることで、サプライヤーや取引先、行政機関との関係性を深めやすく、ビジネス全体を長期視点で展開できます。現地での知名度や信頼を積み上げるために、直接雇用の選択肢は有効な手段といえるでしょう。
中長期での経営基盤の構築
現地採用を通じて自社の基盤を構築することは、中長期的な事業運営にとって大きな強みとなります。現地法人の存在は、現地政府や金融機関からも正規事業体として認識されやすく、許認可取得や融資、優遇制度の申請などで優位に立つ場面があります。また、現地の文化や市場動向に精通した人材が社内に蓄積されることで、商品企画や営業活動の解像度が上がります。ローカルマネージャーを育成し、現地独自の戦略を組み立てられるようになると、競争優位の基盤を築けるでしょう。一方で、中長期での成長には、採用だけでなく育成やリテンション、人事制度の構築が欠かせません。現地スタッフが安心して働ける環境を整え、適正な評価とキャリア形成を支援する体制が求められます。
設立コスト・運営負担・労務リスクの大きさ
現地採用の最大の課題は、立ち上げや運営にかかる負担とリスクの大きさです。法人設立には登記や許認可取得、現地弁護士への依頼、事務所契約など多くの工程が伴い、数百万円規模のコストがかかることも珍しくありません。さらに運営が始まると、給与計算や税務申告、社会保険加入、労務トラブル対応など複雑な業務が継続的に発生します。特に、法改正や規制変更が多い国・地域では、コンプライアンスを誤ると高額な罰金や訴訟に発展するリスクがあります。現地スタッフの採用や退職時に発生する手続きも煩雑で、現地法人の責任者だけで全てを把握するのは困難です。これらの負担を軽減するために、現地の専門家との連携や外部サポートの活用が不可欠といえます。
雇用代行(EOR/PEO)とは?新しい選択肢
EOR/PEOの仕組みと役割
雇用代行(EOR:Employer of Record、PEO:Professional Employer Organization)は、現地法人を設立しなくても、現地で従業員を雇用・管理できる仕組みです。具体的には、雇用代行会社が現地での「名義上の雇用主」となり、採用手続き、雇用契約の締結、給与支払い、税金の納付、社会保険加入、勤怠管理などを一括して代行します。一方、日々の業務指示やパフォーマンス管理は日本企業が行えるため、実質的には「自社の社員」と同様の運用が可能です。EORやPEOは複数国にサービス基盤を持つグローバル企業も多く、現地規制や労務リスクに精通している点が大きな安心材料です。従来の現地採用と比較し、スピード感を持って人材を確保し、初期リスクを抑えた形で市場参入できることから、テストマーケティングや短期プロジェクト、早期立ち上げを目指す企業で急速に利用が広がっています。
法人設立なしで現地採用・雇用管理が可能
EOR/PEO最大の特徴は、現地法人を設立しなくても、正規雇用の形で現地スタッフを採用できる点です。通常、海外で人を雇うには現地法人が必要ですが、EORを利用することで「雇用主」と「指揮命令者」の役割を分離し、雇用契約や社会保険・税務は代行会社が担います。そのため、法人登記や許認可取得の時間・コストが不要となり、数週間程度で採用が完了するケースもあります。特に進出初期やテストマーケット段階では、ビジネスの成果や成長の見通しが定まらないことが多く、こうした柔軟な仕組みがリスク低減に貢献します。また、将来的にビジネスが拡大し現地法人を設立した後には、雇用関係を自社に移管することも可能です。この柔軟性とスピードが、多国展開を進める日本企業にとって大きな魅力となっています。
迅速・低コストでの人材配置の実現
現地採用と比べて、EOR/PEOを活用することで、採用までのリードタイムを大幅に短縮できます。通常、現地法人の設立やライセンス取得、銀行口座開設には数か月以上かかることが珍しくありませんが、EORではすでに現地に登記・労務基盤を持つ代行会社を活用するため、採用決定から1〜2か月以内に人材配置を完了できるケースも多いです。また、設立コストが不要な分、初期投資を抑えられる点も大きなメリットです。加えて、現地の給与計算や税務処理、保険加入、退職時の手続きなど煩雑な労務管理を全て代行会社が担ってくれるため、本社はコア事業に専念できます。こうした迅速性と低コスト、コンプライアンス面の安心感が、近年EOR/PEOが注目される理由の一つです。
現地採用とEOR/PEOの比較
コスト・スピード・管理範囲の違い
現地採用とEOR/PEOを比較する際、最も大きな違いはコストと立ち上げスピード、管理の範囲です。現地採用の場合、法人設立や許認可取得、事務所契約などに多額の初期費用と時間がかかります。設立後も、現地法規に準じた労務管理や税務申告を自社で遂行する必要があり、専門スタッフの配置が不可欠です。一方EOR/PEOは、すでに現地に基盤を持つ代行会社が雇用管理を一括で請け負うため、初期投資を最小限に抑えつつ、数週間から1~2か月で採用が完了します。ただし、EORでは日々の業務指揮は日本企業が行えるものの、雇用主は代行会社であるため、解雇手続きや一部労務条件の最終決定は委託先の運用ルールに沿う必要があります。このようにコスト・スピード・管理権限のバランスを踏まえ、目的や進出ステージに応じて最適な方法を選ぶことが大切です。
リスク分担とコンプライアンス対応
海外での雇用は、国ごとに労働保護が強く、解雇規制や賠償リスクが高いケースが珍しくありません。現地採用の場合、すべての雇用契約・給与計算・社会保険・税務処理を自社で担う必要があり、コンプライアンス上の責任も全て現地法人に帰属します。これは中長期で組織を育てる上では合理的ですが、進出初期はリスクが大きいと言えます。一方、EOR/PEOは雇用契約の主体が代行会社となるため、労務違反や訴訟リスクが一定程度代行会社に吸収される仕組みです。代行会社は各国の法律に精通し、最新の規制にも迅速に対応できるため、進出企業側は安心して事業展開に注力できます。ただし、全てを任せきりにするのではなく、契約内容や権利義務の範囲を事前にしっかり確認することが不可欠です。
成長ステージに応じた使い分け
現地採用とEOR/PEOは、企業の成長ステージに応じて最適な選択肢が異なります。進出初期やテストマーケット段階では、事業の成果が見えにくく、法人設立リスクを取るのが難しい場合が多いです。そのため、スピード感を重視しつつ、コストとリスクを抑えたい場合にはEOR/PEOが適しています。一方、一定規模の売上や現地ネットワークが育ち、安定的なビジネス展開が視野に入ってきた段階では、現地法人設立と現地採用へ移行することで、ブランドの浸透や組織文化の形成を主導できるようになります。重要なのは「最初からどちらか一方に固定する」のではなく、まずEORで柔軟に市場を検証し、成長とともに現地法人へスムーズに切り替えるような戦略を描くことです。進出の全体計画の中で、段階的に適切な方法を選択する視点が求められます。
EOR/PEO活用の具体的メリット
テストマーケット進出の迅速化
EOR/PEOを活用する最大のメリットの一つは、現地法人の設立手続きを経ずにすぐ人材を配置できる点にあります。新市場への進出は、商習慣や消費者ニーズの調査に時間がかかり、初期投資が膨らむことが多いものです。しかしEORであれば、既に現地に雇用基盤と体制を持つ代行会社を通じて、数週間から1〜2か月で採用を完了できます。例えば、現地営業担当やマーケティング人材を先行的に配置し、市場調査や販路開拓を小規模にテストする動きが容易になります。事業の将来性を確かめるフェーズでは、なるべく固定コストや撤退リスクを低く保つことが重要です。EORはまさに「試しながら育てる」アプローチを支援する仕組みといえます。成果が見えた段階で、必要に応じて現地法人への切り替えも可能です。
スモールスタートで事業運営が可能
現地採用では、一定規模の組織やオフィスが必要になる一方、EOR/PEOを活用すると少人数からの事業運営がしやすくなります。現地に営業所を構えなくても、在宅勤務やフレキシブルな働き方を許容しながら、代行会社の労務管理のもとで人材を運用できるため、初期のスモールスタートに最適です。特に、グローバルで複数国を同時にテストする場合や、短期プロジェクトのために人材を確保したい場合には、この仕組みが大きな強みになります。また、給与計算や保険加入、税務申告などの複雑な手続きは全てEOR側が実施するため、日本本社の負担が大幅に軽減されます。こうした柔軟性は、海外展開のハードルを下げ、経営判断をスピーディーにする効果をもたらします。
現地労務・税務リスクを最小限に抑える
国ごとの労働法や税制は複雑で、現地採用では知らないうちに規定を逸脱し、罰金や訴訟リスクを抱えるケースもあります。EOR/PEOを利用すれば、雇用契約の名義人が代行会社となるため、法令遵守は基本的にEOR側の責任範囲に含まれます。現地の専門知識を持つ人事労務のプロフェッショナルが契約条件を整備し、コンプライアンスを常に最新の状態に保つため、安心感が格段に高まります。また、社会保険や退職給付、現地特有の規制などにも代行会社が精通しており、突発的なトラブルに対するリスクヘッジが可能です。これにより、日本本社はコア業務に集中でき、現地の労務リスクを最小限に抑えながら海外ビジネスを推進できます。初めての海外進出でも、制度や手続きの不安なく運営できるのがEORの魅力です。
導入の流れと注意点
契約時の確認ポイント
EOR/PEOを導入する際は、サービス内容や責任範囲を正確に把握し、契約条件を十分に確認することが重要です。まず、雇用契約書の主体がEOR会社になるため、従業員との関係性や指揮命令権の位置づけを明確にしておきます。また、給与体系や手当、福利厚生の適用範囲、解雇手続きなどの具体的なルールも契約で詳細に取り決める必要があります。国ごとに異なる法制度に基づく規定が反映されるため、サンプル契約書を入手し、現地専門家や弁護士のレビューを受けるのがおすすめです。さらに、情報管理やデータ保護の責任分担、万一の労務トラブル時の対応フローも事前に確認することが大切です。契約内容の理解が不十分なまま導入を進めると、後から運用でトラブルになる恐れがあります。丁寧に条件を整理し、納得できる契約にすることが成功の第一歩です。
費用体系とサービス範囲
EOR/PEOの費用は、大きく分けて人件費と管理手数料に分かれます。人件費は現地での給与・社会保険・税金を含む実コストで、国や職種により大きく異なります。管理手数料はEOR会社のサービス提供料で、給与の一定割合や固定月額で算定されるのが一般的です。このほか、初期導入費用や契約更新料、解約時の手続き費用が発生する場合もあります。サービス範囲は、採用代行から給与計算、税務申告、社会保険加入、退職処理まで幅広く、事業規模やニーズに応じて必要なオプションを選ぶ形です。費用と範囲はベンダーや国によって大きく異なるため、複数社から見積もりを取り、比較検討することが重要です。費用が安価に見えても、サービスが限定的だったり追加料金が多く発生するケースもあります。契約前に詳細を十分に確認し、トータルコストを把握しておきましょう。
将来的に現地法人へ移行する場合の手順
EOR/PEOを活用した後、事業が拡大し現地法人を設立するタイミングが訪れることも珍しくありません。その場合は、雇用契約の移管や労務手続きが必要です。多くのEOR会社では「ノバック(移管)サービス」と呼ばれる仕組みを用意しており、EORが雇用主から外れ、現地法人が直接雇用契約を引き継ぐ流れになります。この際、従業員の同意や契約書の再締結、社会保険や税務手続きの切り替えが必要となります。移行時に条件変更が伴う場合は、トラブル回避のため事前に明確な説明が必要です。また、現地法人設立の準備は早めに進め、許認可や銀行口座、事務所確保などを並行して進めるとスムーズです。成長ステージに応じた移行プランを最初から描いておくことで、リスクを最小限に抑え、事業拡大に柔軟に対応できます。
まとめ
海外で人材を確保する手段として、現地採用と雇用代行(EOR/PEO)はそれぞれ異なる特性と強みを持っています。現地採用は、自社で現地法人を設立し、ブランドの一貫性や組織文化を浸透させられる一方で、登記や労務管理、税務対応の負担が大きく、立ち上げには時間もコストもかかります。これに対し、EOR/PEOは法人設立を省略しながら迅速に現地人材を雇用できる仕組みです。進出初期の不確実性が高いフェーズでも、リスクを抑えてスモールスタートが可能となり、テストマーケットや短期プロジェクトの人材配置に非常に有効です。将来的に現地法人へ移行する際も、スムーズな契約切り替えを支援するサービスが整備されているため、段階的な成長計画に柔軟に対応できます。いずれの方法を選ぶにしても、成功の鍵は「自社の成長段階と目的に合わせて選択肢を組み合わせる視点」と「現地の法規制や商習慣への深い理解」です。十分な準備と信頼できるパートナーとの協力体制を築き、安心して海外ビジネスに挑戦していただければと思います。
なお、海外での事業展開にあたり、EOR(Employer of Record)サービスを活用することで、法人設立を行わずに現地での人材採用・雇用管理が可能になります。弊社では、現地の法規制に準拠した給与計算、社会保険手続きなどを一括でサポートし、スムーズかつ効率的に事業を開始できる環境を提供しております。
海外展開に伴う採用や人事・労務に関するご相談がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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