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「AIIB(アジアインフラ投資銀行)」の現状と今後の展望 | 中国主導のAIIBに日本が参加しない理由とは?

掲載日:2019年08月08日

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AIIBとは、アジアインフラ投資銀行(Asian Infrastructure Investment Bank)の略称です。本稿では、AIIBとは何なのか? その設立の経緯と現在の状況に加えて、中国主導の「AIIB」に日本とアメリカが参加していない理由、さらにはAIIBの今後の展望について解説します。

近年、日本でも度々話題にあがるようになった「AIIB」。しかし、そもそもAIIBとはなんのか? さらに日系企業が海外進出した際にどういった影響があるのか? 日本経済への影響とは? …といった一連の疑問について答えられる方は、あまり多くはいらっしゃらないと思います。

AIIBとは、2013年の10月のAPEC首脳会談で、中国の国家主席・習近平氏によって提唱され、2015年に正式に設立されました。設立から2年以上経った2017年5月、安倍首相はAIIBへの参加をほのめかす発言をし、大きな注目を集めました。…にも関わらず、なぜ日本は参加国として加盟していないのでしょうか?

本テキストでは「AIIB」の解説はもちろん、AIIBに日本が加盟していない理由についても、AIIB設立の経緯を紐解くことで明らかにします。さらにAIIBの存在が日本企業の海外進出に与える影響についても考察していきます。

1. AIIBとはどんな機関なのか

AIIBは中国の存在感が大きい

AIIBとは中国の主導によって設立された国際金融機関のことで、アジアインフラ投資銀行(Asian Infrastructure Investment Bank, AIIB)と呼ばれる、アジア向けの国際開発金融機関です。複数の国によって設立され、アジアの開発を目的として融資や専門的な助言を行う機関の一種で、米国主導のIMF(国際通貨基金)や、日米主導のADB(アジア開発銀行)のような機関です。

2019年4月時点で、AIIBには97カ国・地域が加盟しています。ただ、2017年の時点で、日本とアメリカなどはその参加を見送っている状態です。

また、その議決権の85%は出資比率に応じて、12%は全加盟国、3%は創設メンバーに分配されており、中国は30%近い議決権を保有しています。最重要議案の採決には75%の賛成が必要なので、拒否権を持っているのは事実上中国だけということになります。

インフラ投資は金額が巨大であり、建設期間もリターン回収にも時間がかかるため、民間投資はほとんど集まりにくいので、AIIBのような開発金融機関が必要になります。

2. AIIBの現在

2019年5月現在、設立当初に57ヵ国だった加盟国は、現時点で97カ国

2019年1月にAIIBは設立より3年目を迎えました。2019年5月現在、設立当初に57ヵ国だった加盟国は、現時点で97カ国・地域にまで拡大しています。

その先達とも言える、日米主導で1966年に設立されたアジア開発銀行(ADB)の加盟国・地域が67ヵ国にとどまっている現状を考慮すると、AIIBの場合は、その参加国の多くが「世界を席巻する潤沢なチャイナマネー」目当てに参加したと言っても過言ではないでしょう。

その投資案件についても、2019年4月までにAIIBが承認した案件は39件。その総額は79億4,00O万ドルとされています。そしてその投資案件を世界地図上に描いた場合、そのまま中国の巨大経済圏構想「一帯一路」にトレースすることができるのは言うまでもありません。

さらに先進7カ国であるG7内で見てみると、日本と米国だけがAIIB未加盟となっています。

3. AIIB設立の経緯

アメリカとの対立が原因

中国がAIIBを設立する野心を持つに至った経緯を説明するには、歴史を振り返る必要があります。第2次世界大戦のあと、アメリカはブレトンウッズ体制という世界経済秩序を形成しました。当時はヨーロッパも戦争の影響で焼け野原と化しており、アメリカの経済力は世界でも圧倒的でした。そのためアメリカ主導の、アメリカにとって有利な国際経済秩序が形成されたのです。ブレトンウッズ体制を維持するために作られたIMFは、議決においてアメリカのみが拒否権を保有しています。ADBも日米が合同で拒否権を独占しています。

時代は変わり、中国は現在、世界の名目GDPの12%を占めるほどに成長しています。当然中国は国際金融舞台でのプレゼンスを高めるために、IMFやADBにおける議決権構成の変更を求めますが、アメリカ(と日本)がこれを拒否。発言権もなく改革も進まない状況に業を煮やした中国は、「アメリカの作った国際経済圏の影響の及ばない領域の形成」という野心を持つに至りAIIBが形成されたのです。つまり覇権国であるアメリカが形成した国際ルールへの挑戦という見方もできるのです。

4. なぜ日本は参加国ではないのか?

アメリカの存在と不透明なガバナンス

中国は、日本とアメリカのAIIBへの参加を求めています。日本が長年ADBを通じてアジアを開発してきたノウハウを必要としているのです。要請があるにも関わらず、なぜ日本はAIIBへ参加しないのでしょうか?

1. アメリカへの気遣い

AIIB設立の経緯を見れば、AIIBへの参加をアメリカが快く思わないことは明らかでしょう。中国が設立メンバーの締め切りを2015年3月末とし、各国に参加を募った時、アメリカは日本やヨーロッパの同盟国に参加拒否するように圧力をかけました。

アメリカの意に反し、3月12日にイギリス外務省が参加を表明しました。それに続くかのように3月16日にフランス・ドイツ・イタリアも参加を表明したとき、同盟国の裏切りにアメリカは激怒しました。日本が参加を決めきれない理由には同盟国であるアメリカへの配慮があるのです。

2. ガバナンスの問題

配慮以前にAIIBという機関そのものの信頼を疑う声もあります。

AIIBのような国際開発金融機関には、開発の過程において、近隣の人々や環境への不当な害を減らすためにセーフガード政策を行う責任があります。環境や人々に配慮をすれば当然手続きは煩雑になり、時間もコストもかかります。人権への配慮の薄い中国が主導するAIIBがはたしてセーフガード政策を徹底するのか疑問が残るのです。

また、コストがかかるという理由からAIIBは常駐理事会を置いていません。常駐理事会がないということは中国当局の裁量で意思決定が行われる可能性は十分に考えられます。またAIIBの活動は共産党の言論統制を受けます。つまり報告書はすべて当局の検閲の対象となるのです。透明性という観点から、課題は山積しています。

5. AIIBの今後の展望

アジアのインフラは巨大市場

アジア開発銀行(ADB)が発表した報告書によれば、アジアの新興経済は成長を維持するには今後10年間でインフラ投資を最大26兆ドル(約2,930兆円)必要としています。あまりにも莫大な金額であり、ADBとAIIBを足しても全く足りない規模の需要です。

そのため、メディアで騒がれるような、ADBとAIIBが対立するという構図にはまずならないでしょう。日米が加盟することでガバナンス(統治)がしやすくなる側面もあります。今後のアジアのインフラ需要を満たすためにも多元的な連携が必要となってくるでしょう。

6. 日本企業への影響

案件獲得は難しい現状

AIIBは機材、サービスの調達に国別の制限を設けず、非加盟のメンバーにも開放しています。一方、ADBは加盟メンバーにのみ入札資格を与えている点で異なります。もし、AIIBが、ADBのように制限を設けていれば、日本企業はプロジェクトへの入札を行えなくなってしまうので、不利益があります。しかし制限を設けていない現状を踏まえると、日本の企業にとって日本政府がAIIBに加盟するかどうかはそれほど重要ではありません。

さて、AIIBの活動が本格化すれば、日本の企業が海外のインフラ事業に携わるチャンスが生じます。最近では、インドネシアのロンボク島開発で、AIIBが2億6千ドル(約292億円)の融資をジョコ・ウィドド大統領に提案しました。

ただ、ADBの事業に関する日本企業の受注率は累積で10数%というものですが、近年は新興国の受注が増え日本企業の受注率低下傾向は顕著となっています。そのため、更に激しい競争が予想されるAIIBの案件に関して、日本企業が受注できるかどうかは、厳しい現状であると言わざるを得ません。

日本企業が大手・中小に限らず連携し、技術力を売りとして提案していくことが重要です。各企業の利害関係やしがらみを超えなければなりません。そのために重要な役割を担うのは、日本企業の海外ビジネスをサポートする企業です。彼らが緩衝材や潤滑油となり、大きなプロジェクトを成立させていくことが可能です。AIIB案件の行方を担う海外ビジネスのコンサルタント企業やサポート企業に要注目です。

7. ODAを活用した海外進出という方法もある

「中小企業・SDGsビジネス支援事業」とは?

ちなみに海外のインフラ事業と言えば、ODA(政府開発援助)というキーワードが浮かんでくるのではないでしょうか? こちらを活用した「海外進出」として、JICAの主導する「中小企業・SDGsビジネス支援事業」というものがあります。こちら、下記記事で詳しく解説しておりますので、ぜひご覧ください。

8. 優良な海外進出サポート企業をご紹介

海外進出サポート企業が多数登録

今回は、AIIBの現在と今後の展望、さらには中国主導のAIIBに日本が参加しない理由について解説しました。

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この記事を書いた人

「Digima〜出島〜」編集部

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