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アジア新興国で急増する「中間層・富裕層」 〜各国の割合と実態〜

掲載日:2017年12月27日

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今回は、アジア新興国で拡大している「中間所得層」・「富裕層」に着目し、かつて発展途上と呼ばれていた国の市場の変化を分析します。

かつての「開発市場」から「消費市場」へと変化しつつあるアジア諸国でのビジネスを考えたとき、その国の「中間層」や「富裕層」への理解を深めることは、非常に重要なポイントです。本稿では、「中間層」と「富裕層」の定義と、アジア新興国におけるその実態、さらには両者がカギを握る、アジア新興国の市場ならではのビジネスチャンスを解説していきます。

Photo by Moyan Brenn on Flickr

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1. 「中間所得層」・「富裕層」の定義とは?

「年間可処分所得」の額が指標

現在、世界で「中間所得層」と「富裕層」が増加しています。特に著しい経済発展を見せるアジアなどの新興国を中心に、「貧困層」から「中間層」へ、さらには「富裕層」が増加しているのです。

では、アジア新興国で増加しつつある「中間層」・「富裕層」の定義とはどういったものなのでしょうか。一般的には1人当たりの、年間の個人所得から税金や社会保険料を引いたものである「年間可処分所得」の額が指標とされています。

経済産業省「通商白書」(2009)の定義によれば、家計あたりの年間可処分所得が5,000ドル超(約56万円超)35,000ドル以下(約400万円以下)の層を「中間層」、35,000ドル超を「富裕層」とされています。

次項では、その「中間層」や「富裕層」が増加していることで注目されている、アジア新興国・4ヵ国の実態をご紹介します。各国の中間所得層・富裕層の消費動向を追うことで、それぞれの国での商機が見えてきます。

2. インドネシアの中間層・富裕層

【人口】:約2億6,000万人(2016年)
【GDP】:約9,400億ドル(2016年)
【1人あたりのGDP】:約3,600ドル(2016年)

世界4位の人口数であるインドネシアでは、中間層・富裕層人口が2020 年には1億4,100万人になるという予測が立てられています。また、首都ジャカルタのみならず、各地域での伸びも期待されています。中間・富裕層が 50 万人以上居住する都市も 54 都市と 2 倍に拡大するといわれています(THE BOSTON CONSULTING GROUP調査)。

「中間層」・「富裕層」を中心に、売れる商品は必要性を満たす商品から利便性、快適性を満たす商品へと移行し始めています。そのため、歴史的に親日国家であることも後押しし、質のいい「日本製品」への需要が高まっているのです。

また、2014年時点で17.14%であったインターネット普及率が、2016年には50%まで急拡大しました。すでにネット使用者は1億3,000万人まで増加しています。国境を超えたオンラインショッピングサイト利用の拡大も、インドネシア「中間層」・「富裕層」の消費意欲を後押ししています。今後、日用品、自動車、耐久消費財を始め、金融サービス等への消費も拡大することが予測されます。

また、赤道にまたがる13,466もの大小の島により構成されているインドネシアでは、島によってマーケットが変化する特徴があります。「中間層」・「富裕層」は倍増するものの、居住環境のばらつきも出てくるため、彼らをターゲットとする際は、注力する都市を拡大していく必要に迫られることも予測できます

3. インドの中間層・富裕層

【人口】:約13億人(2016年)
【GDP】:約2兆2,500億ドル(2016年)
【1人あたりのGDP】:約1,800ドル(2016年)

2020年までにアメリカを抜き、世界最大の中間層市場となる可能性があると言われている中国ですが、その次の10年で、インドに抜かれる予測が立っています。その背景には中国以上のインドならではの急激な人口増加があります。

2022年には両国とも人口は約14億人に達するも、以後インドの人口が中国を上回ると予測されています。2030年には中国は人口減少に転じる一方、インドの人口は増え続け、15億人にまで到達。さらに2050年には、17億人にまで増加すると見られています(ワシントン・ポスト紙)。

人口増加とともに急増しているのが、「中間層」そして「富裕層」です。人口増加による市場拡大を見込んだ外資企業の投資が集まっています。それとともに、未整備であったインフラが整い、国内経済が成長しています。2016年末にはインドのGDPがイギリスを超え、世界第5位となったことが発表されています(米経済誌フォーブス)。格差はまだまだあるものの、インドに拠点を置き100万ドル以上の資産を持つ人は、25万人に到達しました。2018年には43万7.000人となり、2023年までにはその倍になると予測されています(資産情報機関の『Wealth X』の調査)。

今後、中国と同様にインドでは、贅沢品の消費が伸びることが予測されます。日本国内にも「爆買い」をするインド人観光客が増えるかもしれません。また、インド国内では自動車や家電の販売が拡大しはじめています。スズキや三洋ブランドがすでに進出をし、販路を開拓しています。今後は、インバウンドでインドの「中間層」・「富裕層」をターゲットにしたビジネス、インド国内での高級品や自動車販売などにさらなる商機が拡大します。

4. タイの中間層・富裕層

【人口】:6,800万人(2016年)
【GDP】:約3,900億ドル(2016年)
【1人あたりのGDP】:約5,600ドル(2016年)

2012年のGDP成長率は、7.3%と高い成長率だったものの、2014年にはわずか0.9%まで下がったタイ経済。ASEANの中でも成熟に近づいている国と言えます。そのため、首都バンコクを中心に「中間層」・「富裕層」の数も多く、2020年には実に8割以上の世帯が「中間層」以上になると言われています。また、「富裕層」も2020年にはついに10%を超える予測です。

富裕層の拡大に伴い、国民の投資への関心が高まっています。アメリカでのドナルド・トランプ大統領の就任が決定後、新興国からアメリカに投資マネーが流出しました。マレーシアでは外資企業などの投資マネーの流出で深刻な通貨危機に陥ったほどでした。しかし、タイでは国民の投資が、ほとんど国内投資で占められていたため、さほどの影響はありませんでした。「中間層」・「富裕層」のさらなる拡大により、そうした投資活動もますます拡大するでしょう。

一方で、タイは人口の伸び率が鈍化し、日本同様にASEANの中でも少子高齢化が進んでいる国のひとつです。そんな人口動態においては、「中間層」・「富裕層」をターゲットとした「福祉介護」「医療事業」の成長が期待できます。

5. マレーシアの中間層・富裕層

【人口】:約3,000万人(2016年)
【国内総生産(GDP)】:約3,000億ドル(2016年)
【1人あたりのGDP】:約1万ドル(2016年)

富裕層が人口の約2割を占めるマレーシア。世界銀行の分類で高所得国とされているシンガポール、ブルネイに次ぎ、ASEANの中でも、もっとも経済発展が進んでいる国のひとつです。今後も増加傾向にある富裕層・中間層に向けた、日本企業の商品やサービスのビジネスチャンスが拡大していることは言うまでもありません

日本の集団主義と勤労倫理を学ぶという、1981年に始まった「ルックイースト政策」もあり、日本への関心は高まっています。そのため、日本製の衣料品や生活品などの人気が高まっています。2016年10月には首都クアラルンプールに、「中間層」・「富裕層」向けの日本製品のみを取り扱う伊勢丹もオープンしています。いまだに、日本では当たり前でも現地にはないものが多く、早期進出で「オンリーワン」になれる可能性も高くなっています。

また、深刻な通貨安を迎えているマレーシアでは、国内の「中間層」・「富裕層」はリスクヘッジのため、海外への投資を積極的に行っています。富裕層をターゲットととした投資ビジネスにも商機が広がっていると言えるでしょう。

6. 欧米では減少、アジアでは急増する、中間層と富裕層

逆転する購買力

ロイターによると2030年における世界の「中間層」は、2014年の約20億人から倍増し、49億人になる見通しです。

 

しかし、欧米では「中間層」が縮小していくことが予測されています。アメリカでは、現在50%である中間層が22%まで落ち込みます。また、先進国の経済は低成長を続けます。北米や欧州の中間層の購買力は今後十数年、年率0.6%しか伸びないと言われいます。

一方、現在、世界の全ての「中間層」の30%程度を占めている、中国、インド、インドネシア、ベトナム、タイ、マレーシアなどのアジア諸国では、2030年の比率が64%にもなる予測です。また、アジア開発銀行の試算によると、アジアの「中間層」の購買力は2030年まで年率9%で成長を続けます。欧米市場よりもアジア市場が魅力的になろうとしているのです。

特に増加が著しいのが中国です。安い人件費や膨大な人口を背景にした製造請負業が大きく成長しました。そうした経済成長は、急激な所得の増大をもたらしました。日本でも「爆買い」と言われたように、その購買意欲は国外にも及び、そうした消費が国内の二次的な成長をも後押ししていくことになります。

7. 「開発市場」から「消費市場」へと変化するアジア

市場が変化すれば、需要のある商品もサービスも変わる

このような流れから、新興国市場に変化が生まれます。経済成長により、国民の個人所得が上がり、年間可処分所得も上がります。そして、発展途上であった「開発市場」から「消費市場」へと移行しつつあるのです。

つまり、経済的に豊かになる人が増加することで、今まで手に届かなかったものが、手に入れらるようになるのです。より質のいい製品を求める「消費市場」に移り変わっています。

中間所得者層拡大により、特に自動車や日用品の需要は急激に伸びます。そして、「中間層」から「富裕層」が増えることで今度は、保健衛生や医療サービス、教育や教育娯楽の需要が高まります。かつて、発展途上国と呼ばれてきた国々は経済成長を遂げ、「開発市場」から「消費市場」へと移り変わりつつあるのです。海外進出を検討する際、そういった市場の変化を見極め、柔軟に対応することが重要なのです。

8. まとめ

新興国で誕生する新しい消費市場

これまで多くの外資系企業が、新興国の可能性に投資してきました。投資は雇用を生み、雇用が国民の生活を豊かにします。アジア諸国では、未開発であったインフラや都市開発も進みました。そのようにして、年率6〜10%の著しい経済成長を続け、国の発展とともに「中間層」や「富裕層」が増加したのです。それと同時に、発展途上であった新興国各国において消費市場としての商機が拡大しているのです。

そういった傾向は、もちろん日本企業にとっても大きなチャンスとなります。少子高齢化に悩む日本市場から脱し、急成長する新興市場へと販路を広げようとする企業が増加しているのも当然といえます。

これまで発展途上国と言われていた国々は、急激な勢いで成長を続けています。進出を考える日本企業はそういった各国の動きを知り、マーケットを理解する必要があります。「開発市場」から「消費市場」へと変化し続けるアジア市場に参入するならばなおのこと、ターゲットである「中間層」と「富裕層」の動向に気を配る必要があるのです。

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