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海外進出の流れと手順|社内準備から契約・撤退判断までの順番と先に済ませる確認

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海外展開の担当になった中小企業の方に向けて、海外進出の手順を6つの段階に分け、段階ごとに決める内容と順番、輸出だけで始める場合に対象外にできる手順、先に済ませる確認を示す記事です。

海外進出の手順は、社内準備から契約後の管理、撤退の判断まで続きます。順番を知らないまま動くと、国を決める前に展示会へ申し込む、契約の直前に輸出規制の確認が残っている、といった手戻りが起こりえます。

Digima〜出島〜の海外進出白書(2025-2026年版)では、海外進出支援に携わる企業・専門家の担当者151名に、海外進出に必要な期間を尋ねています。進出決定までは「3ヶ月〜半年」が33.1%、進出決定から進出までは「半年〜1年」が35.1%で、それぞれ最多でした。

この記事では、海外進出の手順を6つの段階に分け、段階ごとに何を決めるかを順に示します。海外展開の担当になった方が、自社はいまどの手順にいて、次に何を決めるのかを確かめられる構成です。

この記事でわかること

  • ・海外進出の手順と、6つの段階の順番
  • ・段階ごとに決める内容と、社内説明に使える調査データ
  • ・輸出だけで始める企業が対象外にできる手順
  • ・該非判定、商標、HSコードなど、先に済ませる確認

1. 海外進出の流れ|6つの段階と決める内容

海外進出の流れを6つの段階で示した図。社内準備、国と市場、売り方、輸出の条件、現地確認と相手探し、契約と運用の順に進む
図:海外進出の流れ(6つの段階)

海外進出の手順を、決める内容ごとに6つの段階へまとめます。段階の順番と各段階で決めること、海外進出にかかる期間の調査結果を確認します。

海外展開の担当になったばかりの方は、最初に全体の地図を持っておくと、いま調べている内容がどの段階の話なのかを確かめながら進められます。上司や役員に進み具合を報告するときも、段階の名前で伝えられます。この章を読み終えると、6つの段階の並びと、進出までに見込む期間を社内で説明する材料がそろいます。

海外進出の6段階と各段階で決めること

段階 決めること
1. 社内準備 海外に出る目的、体制と予算、出せる数量、規格と輸出規制
2. 国と市場 狙う国、需要、競合、商標
3. 売り方 輸出か拠点か、販売の経路、買い手、営業資料
4. 輸出の条件 品目コード、関税、輸入規制、貿易条件、価格、代金回収
5. 現地確認と相手探し 視察先、現地で聞く内容、代理店の候補、テスト出荷
6. 契約と運用 契約の内容、契約後の管理、継続か撤退か

表:海外進出の6段階と各段階で決めること

社内準備と、国と市場の段階は、社内で進められる内容が中心です。売り方が決まると、輸出の条件より後の段階で取り組む手順が変わります。

たとえば輸出だけで始める企業は、現地に拠点を作るための手順を対象外にできます。対象外にできる手順は第8章にまとめています。

6つの段階は、前の段階で決めた内容を次の段階で使う順に並んでいます。社内準備で決めた目的と出せる数量は国選びの基準になり、国と市場で決めた国は売り方を選ぶ前提になります。輸出の条件で決めた価格や支払条件は、現地で相手と話すときの材料になります。

段階を飛ばして先へ進むと、あとで前の段階に戻って決め直す場面が出てきます。いま取り組んでいる作業がどの段階に当たるかを、表で確かめながら読み進められます。

海外進出にかかる期間|支援企業151名の回答

区間 最多の回答 割合
進出決定まで 3ヶ月〜半年 33.1%
進出決定〜進出まで 半年〜1年 35.1%
進出後〜軌道に乗せるまで 3年以上 38.4%

表:海外進出に必要な期間(支援企業の担当者151名の回答)

海外進出白書(2025-2026年版)の第3部は、海外進出支援に携わる企業・専門家の担当者151名へのアンケートです。調査期間は2025年4月〜5月です。海外進出に必要な期間を3つの区間に分けて尋ねています。

「進出後〜軌道に乗せるまで」は「1年〜2年」も37.7%あり、「3年以上」と合わせると76%が1年以上と答えています。

社内で予算と期間を説明するときは、進出するまでの期間と、進出してから軌道に乗るまでの期間を分けて示します。2つを分けると、いつまでに何が終わる計画なのかが伝わります。

3つの区間を通して見ると、検討を始めてから事業が軌道に乗るまでには、年単位の時間を見込むことになります。計画を立てるときは、区間ごとに目標の時期を置きます。

2. 海外進出の準備|目的・社内体制・輸出規制の確認

最初の段階は、国を選ぶ前に社内で済ませる手順です。海外に出る理由を言葉にし、出せる数量と、輸出してよい品かどうかを確かめます。

国や売り方の検討に入る前にこの段階を置くのは、あとの判断の前提になるためです。目的が決まっていないと国を選ぶ基準が定まらず、出せる数量が分からないと買い手に条件を示せません。この章では、社内準備で決める内容を表で確認したあと、支援企業が企業に求める準備と、輸出規制の確認である該非判定を順に見ていきます。

社内準備の手順一覧|目的・体制・補助金・供給能力・規格・輸出規制

手順 決めること・確かめること
目的 海外に出る目的を社内で説明できるようにする
体制と予算 社内の体制と予算を決める
補助金 海外展開で使える補助金と申請の時期を調べる
供給能力 自社がどれだけ輸出できるかを整理する
規格と認証 海外で求められる規格と認証(製品がその国の基準を満たすことを第三者が確かめる手続き)を把握する
輸出規制 日本側の輸出規制に当たらないかを確認する

表:社内準備の段階で決めること

目的から供給能力までは社内の合意と数字の整理、規格と認証・輸出規制は製品そのものの確認です。供給能力の手順では、海外向けに継続して出せる数量を整理します。

海外に出る目的の整理のしかたは海外進出の目的・メリットとは?失敗しない進出理由の整理方法と成功事例で、社内の役割の分け方は海外進出に必要な社内体制とは?人材・役割・外注の考え方で確かめられます。

この数量は、あとで価格表を作るときや、代理店と最低購入数量を話し合うときの前提になります。

補助金には申請できる時期が決まっているものがあるため、国や売り方を決める前から調べておきます。規格と認証は、売る国によって求められる内容が変わります。この段階では、自社の製品がどの種類の規格や認証の対象になりそうかを把握しておき、国が決まったあとに詳しく確かめます。

輸出規制の確認は、製品そのものの性質で決まる部分があるため、国を決める前に着手できます。詳しい内容は、この章の該非判定の項目で説明します。

事業計画と予算|支援企業の74.8%が求める準備

海外進出白書(2025-2026年版)の第3部では、支援企業の担当者151名に「海外展開企業に準備・備えてほしいこと」を尋ねています。最多は「事業計画策定」の74.8%でした。

2位は「法的規制の確認」で56.3%、3位は「財務(予算策定)」で43.0%、4位は「知的財産権の保護」で35.8%です。

この4項目には、それぞれ対応する手順があります。事業計画と予算は社内準備の段階、規制の確認は社内準備と輸出の条件の段階、知的財産は国と市場の段階(商標)と輸出の条件の段階(模倣品への備え)に当たります。

支援企業に相談するときも、この4項目を先に整理しておくと、相談の内容が具体的になります。すべてを完成させてからでなくても、分かっている範囲を書き出すところから始められます。

該非判定|輸出者が自分で行う輸出規制の確認

日本から品物や技術を輸出するときは、日本側の輸出規制に当たらないかを先に確かめます。経済産業省によると、規制対象となる品目をリスト化し、輸出するときに経済産業大臣の許可を必要とする制度をリスト規制と呼びます。輸出する品がリスト規制に当たるかどうかを判断することを、該非判定といいます。

経済産業省は該非判定を行わないため、輸出者が自ら行います。輸出者が判定できない場合は、製造者などから該非判定書を入手して使えます。その場合も、判定結果の内容は輸出者が責任を持って確認します。

リスト規制に当たらない品でも、大量破壊兵器等や通常兵器の開発等に用いられるおそれがある場合は、経済産業大臣の許可が必要です。この制度をキャッチオール規制といいます。対象は食料品と木材を除くすべての品目で、対象地域は輸出令別表第3の地域以外の国・地域です。

リスト規制とキャッチオール規制のどちらにも当たらないと輸出者が判断した場合、許可を取得する必要はありません。

出典:経済産業省「申請の流れ(輸出が初めての方へ)」

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3. 進出先の国選びと市場調査|商標の確認まで

2つ目の段階では、狙う国を決め、その国に需要と競合がどれだけあるかを調べます。最後に、自社の商品名が現地で先に登録されていないかを確かめます。

この段階の作業は、日本にいながら進められる情報収集が中心です。現地へ行く前に、公開されている統計や資料で分かることを先に調べておくと、あとの現地視察で確かめる内容を絞れます。この章では、国と市場の段階で決める内容を表で確認し、担当者が課題に挙げる項目と、海外での商標の扱いを順に取り上げます。

国と市場の手順一覧|国選び・需要・競合・商標

手順 決めること・確かめること
国選び どの国を狙うかを決める
市場調査 狙う国に需要があるかを確かめる
競合調査 現地で誰と競合するかを調べる
商標 商標(商品名やロゴなど、自社の商品を他社と区別する目印)を現地で先に登録されていないかを確認する

表:国と市場の段階で決めること

狙う国を絞ってから、市場調査と競合調査に入ります。国を絞らないまま調べると、調べる範囲が国の数だけ広がるためです。

商標は、国が決まった時点で確認できます。売り始める前に済ませる確認として、あとの章でも取り上げます。

国選びでは、候補の国を挙げたうえで、社内準備で決めた目的と出せる数量に合う国へ絞り込みます。市場調査では、その国で自社の商品に近いものがどのくらい売れているか、誰が買っているかを調べます。競合調査では、現地で同じ買い手に向けて売っている企業と、その価格や売り方を調べます。

市場調査と競合調査の結果は、売り方を選ぶときと、輸出価格を作るときに使います。調べた内容は、出典と調べた日付を添えて残しておくと、社内で説明するときの根拠になります。

情報収集と現地調査|担当者193名が挙げる課題

海外進出白書(2025-2026年版)の第2部は、自社の海外ビジネス展開を検討したことのある担当者193名へのアンケートです。海外展開における課題として最も多かったのは「現地パートナー探し」の57.0%でした。

次いで「情報収集」が46.6%、「現地調査の実施」が34.7%です。情報収集は国と市場の段階、現地調査と現地パートナー探しは現地確認と相手探しの段階に当たります。

情報収集を課題に挙げた担当者は、半数近くにのぼります。調べる範囲が広いときは、国を絞ることと、調べる項目を需要と競合の2つに分けることから始めます。現地調査は費用がかかるため、日本で調べられる内容を先に済ませ、現地でしか確かめられない内容に絞って計画します。

海外の商標|国ごとに必要な保護

特許庁によると、商標の保護は世界的に属地主義(その国の範囲内でのみ保護されること)が採用されています。それぞれの国で商標を保護するには、その国の法律に基づく保護が求められ、多くは商標登録です。そのため、日本での登録とは別に、売る国での保護が必要になります。

保護を求める方法は2つあります。保護を求める国に直接出願する方法と、マドリッド協定議定書に基づく国際登録を利用する方法です。国際登録は、日本国特許庁を通じて行います。どちらを選ぶかは出願人が決められます。

商標の確認は、売る国が決まった時点で行います。現地で先に同じ名前が登録されていると、その名前で売れなくなるおそれがあるためです。確認と出願の方法は、知的財産の専門家に相談できます。

出典:特許庁「マドリッド協定議定書による国際出願について(初めての方へ)」

4. 輸出か現地法人か|売り方と買い手の決定

進出形態で分かれる手順の図。拠点を作らず輸出する場合は自社で輸出・代理店に売ってもらう・越境ECで売るの3つ、現地に拠点を作る場合は駐在員事務所・支店・現地法人の3つに分かれる
図:進出形態で分かれる手順(輸出か現地拠点か)

3つ目の段階は、海外進出の形を決める分かれ道です。拠点を作らずに輸出で始めるか、現地に拠点を作るかで、後に続く手順が変わります。

進出の形は、かけられる費用と人手、現地でどこまで自社が関わるかによって選びます。輸出で始めて、あとから拠点を作る進み方もあります。この章では、売り方の段階で決める内容と選択肢を表で確認したあと、進出形態の調査結果、現地に拠点を作る場合に加わる手順、海外進出白書で最も多い相談内容の順に見ていきます。

売り方の手順一覧|進出形態・販売経路・買い手・英文資料

手順 決めること・確かめること 選択肢
進出形態 輸出で売るか、現地に拠点を作るかを決める 拠点を作らず輸出で始める/現地に拠点を作る
販売の経路 どの売り方で始めるかを選ぶ 自社で輸出する/代理店に売ってもらう/越境EC(日本から海外の消費者へ直接売るネット通販)で売る
買い手 誰に売るかを決める なし
英文資料 英文の会社案内と価格表を用意する なし

表:売り方の段階で決めることと選択肢

進出形態と販売の経路は、選んだ内容によって進む先が分かれます。現地に拠点を作ると決めた企業には、拠点づくりの手順が加わります。

買い手と英文資料の手順は、どの売り方を選んだ企業にも共通です。買い手の種類を決めてから、その買い手に見せる英文の資料を用意します。

なお、この記事では、商品を買い取って自ら売る販売店も含めて代理店と呼んでいます。

販売の経路の3つの選択肢は、自社がどこまで関わるかが違います。自社で輸出する場合は、買い手探しから契約、出荷までを自社で行います。代理店に売ってもらう場合は、現地での営業を代理店に任せます。越境ECは、ネット上の売り場を通じて海外の消費者に直接売る方法です。

どれか1つに決める必要はなく、国や商品によって組み合わせることもできます。

進出形態の調査結果|最多は拠点を設けない形の53.4%

海外進出白書(2025-2026年版)の第2部(担当者193名)では、海外展開の進出形態として「拠点は設けない(パートナー/販売代理店)」が53.4%で最多でした。「現地法人設立」は39.4%、「拠点を設けない(越境EC)」は23.8%です。

現地法人は、進出先の国の法律に基づいて設立する自社の会社です。拠点を設けずに売る企業は輸出の手順へ、現地法人を設立する企業は拠点づくりの手順へ進みます。

最も多いのは拠点を設けない形ですが、現地法人設立も4割近くあります。どちらかが正しいということではなく、自社の目的と、かけられる費用と人手で選びます。社内で進出の形を説明するときは、この割合を、ほかの企業の選び方を示す材料として使えます。

現地に拠点を作る企業に加わる手順

現地に拠点を作ると決めた企業には、次の手順が加わります。

  • どの形態で拠点を作るかを選ぶ。選択肢は、駐在員事務所(一般に営業や契約は行えず、調査と連絡を行う拠点。扱いは国によって異なる)、支店(日本の会社の一部として現地に置く拠点)、現地法人
  • 用地と工業団地の選び方を確かめる
  • 会社設立の手続きと、外国企業に対する規制を確かめる
  • 現地の税務と会計の方法を決める
  • 現地で人を採用する方法を決める
  • 駐在員のビザを取得する
  • 設立した現地法人の運営と報告の方法を決める

輸出だけで始める企業は、これらの手順を対象外にできます。あとから拠点を作ると決めた時点で、拠点の形態を選ぶところから順に取り組みます。

拠点づくりの手順は、国ごとの制度によって内容が変わるため、国が決まってから詳しく調べます。

海外販路の相談|海外進出白書で最も多い相談内容

海外進出白書(2025-2026年版)の第1部は、Digima〜出島〜に寄せられた海外ビジネスの相談4,218件の集計です。調査期間は2025年4月〜2026年3月です。相談内容は「海外販路拡大(営業代行・販売代理店探し)」が22.9%で首位でした。

売り方を選び、買い手を決める作業は、この相談内容に重なります。

買い手を決めるときは、相手が企業か消費者か、企業ならどの業種でどの立場の会社かを具体的にします。買い手が具体的になると、英文の会社案内と価格表に書く内容が決まります。

会社案内には、買い手が知りたい実績と、供給できる数量を書きます。価格表には、価格とあわせて取引の条件を書きます。取引の条件は、次の輸出の条件の段階で決めていきます。

5. 輸出の実務|HSコード・関税・貿易条件・代金回収

輸出の実務の順番の図。品目を特定、相手国の条件、取引の条件、代金の回収の順に、HSコード、関税、EPA、輸入規制と表示、貿易条件、輸送と保険、輸出価格、支払条件、与信調査、為替と送金を確かめる
図:輸出の実務の順番(品目コードから代金回収まで)

4つ目の段階は、6つの段階のなかで手順が最も多い部分です。品目コードを起点に、関税、輸入規制、貿易条件、価格、代金回収の順に決めていきます。

初めて輸出に取り組む担当者にとっては、聞き慣れない言葉が続く段階でもあります。それぞれの手順は前の手順の結果を使って進むため、表の上から順に確かめていくと、次に何を調べるかが決まります。この章では、輸出の条件の段階で決める内容を表で確認し、HSコード、EPAと特定原産地証明書、インコタームズ、代金回収の順に取り上げます。

輸出の条件の手順一覧|品目コードから代金回収まで

手順 決めること・確かめること
HSコード 自社品のHSコード(輸出入の品目を世界共通で分類する番号)を調べる
関税 相手国の関税(輸入する国が品物にかける税金)がいくらかを調べる
EPA EPA(経済連携協定。協定を結んだ国どうしで関税を下げる取り決め)を使って関税を下げる
輸入規制と表示 相手国の輸入規制と表示の決まりを確かめる。品目別に、食品/化粧品/医療機器/電気製品/機械・部品/繊維・雑貨に分かれる
知的財産 模倣品と技術の流出を防ぐ
貿易条件 どの貿易条件で契約するかを決める
輸送と保険 輸送と貨物の保険を決める
輸出価格 輸出価格を作る
支払条件 代金の支払条件を決める
与信 相手が支払えるかを確かめる
為替と送金 為替(円と外貨の交換。交換の比率は変動する)と送金のリスクを抑える

表:輸出の条件の段階で決めること

HSコードが決まると、関税とEPAを調べられます。輸入規制と表示は、自社の品目に当たる分野だけを確かめます。

貿易条件、輸送と保険、輸出価格は、この順につながっています。運賃と保険料をどちらが負担するかが決まると、輸出価格を計算できます。

輸入規制と表示の決まりは、相手国の制度です。日本側の輸出規制である該非判定とは別に確かめます。知的財産の手順では、模倣品が出回ることと、技術や図面が外に流れることへの備えを考えます。商標の確認は国と市場の段階で済ませているため、ここでは特許や契約上の取り決めなど、商標以外の備えを確かめます。

この段階で決めた内容は、見積書や契約書に書く項目になります。決めた日付と根拠を残しておくと、相手との交渉で条件を説明できます。

HSコード|6桁目までが国際共通の番号

財務省貿易統計の説明によると、税関での輸出入申告は9桁の統計品目番号で行います。このうち6桁目までは、HS条約に基づいて国際的に統一されています。

7桁目以降は国内で細かく分けた番号で、輸出と輸入では必ずしも同じではありません。統計品目番号は、輸出統計品目表で調べられます。

HSコードは、関税を調べるときの入口になります。相手国の関税は品目ごとに決まっているため、番号が分からないと税率を調べられません。この章で取り上げるEPAの手続きでも、最初にHSコードを確認します。

番号を調べるときは、自社の製品が何でできていて、何に使うものかを整理してから、輸出統計品目表の該当する分類を探します。財務省貿易統計の説明では、税関ホームページに掲載されている関税率表解説や分類例規集が、番号を見つける参考になるとされています。

出典:財務省貿易統計「統計品目番号の調べ方」

EPAと特定原産地証明書|日本商工会議所が示す7ステップ

EPAの関税を使うときに関わるのが、特定原産地証明書です。日本商工会議所は、EPAに基づく特定原産地証明書の指定発給機関です。

同会議所は、証明書を取得するまでの流れを7つのステップで示しています。最初のステップは、輸出する産品のHSコードの確認です。続いて、EPA税率の有無と税率、産品に係る規則、原産性(その品がEPAの定める原産品の条件を満たすこと)を確認します。

その後に、企業登録、原産品判定依頼、発給申請の順で進みます。発給申請を行うのは、原則として産品の輸出者です。

EPAを使えるかどうかは、相手国との間に協定があるか、自社の品目に協定の税率が設定されているかで決まります。使える場合は、買い手が支払う関税が下がるため、価格の交渉で材料になります。

出典:日本商工会議所「特定原産地証明書取得までの流れ」

インコタームズ2020|11の規則と契約書への明示

貿易条件を決めるときに参照するのが、インコタームズです。ジェトロによると、インコタームズは国際商業会議所(ICC)が制定した、貿易取引条件とその解釈に関する国際規則です。

インコタームズ2020は2020年1月1日に発効し、11の規則があります。あらゆる輸送形態に適した規則が7つ、海上および内陸水路輸送のための規則が4つです。

インコタームズは法律でも条約でもありません。採用する場合は、契約書にその旨を明示する必要があります。

貿易条件が決まると、売り手と買い手のどちらが運賃や保険料を負担するかがはっきりします。見積もりを出す前に、どの規則を使うかを買い手と確かめます。契約書には、規則の名前とあわせて、インコタームズ2020を使うことを書きます。

出典:ジェトロ「インコタームズ2020」

代金回収|支払条件・与信調査・為替の確認

支払条件、与信、為替と送金の3つは、売った代金を受け取るための確認です。支払条件の手順では、前払いにするか後払いにするか、L/C(信用状。買い手の取引銀行が、条件どおりの書類と引き換えに支払いを約束する書面)を使うかといった支払条件を決めます。

与信の手順では、与信調査(取引相手に支払い能力があるかを調べること)を行います。あわせて、貿易保険(輸出代金を回収できなくなったときの損失を補う保険)を使うかどうかを検討します。

為替と送金の手順では、為替の変動で受取額が変わるリスクと、相手国からの送金に関する規制を確かめます。

3つの確認は、契約を結ぶ前に済ませます。支払条件は契約書に書く項目なので、与信調査の結果を見てから決めます。

6. 現地視察と代理店探し|テスト出荷まで

5つ目の段階では、現地に行って確かめる内容を決め、売ってくれる相手を探します。本契約の前に、少量を送って試すところまでを扱います。

ここまでの段階は社内と日本国内で進められましたが、この段階からは現地の相手と直接やり取りします。視察や面談には費用と時間がかかるため、何を確かめに行くのかを先に決めておくことが大切です。この章では、現地確認と相手探しの段階で決める内容を表で確認し、現地パートナー探しの調査結果と、テスト出荷の役割を順に見ていきます。

現地確認と相手探しの手順一覧|視察先・質問・展示会・代理店候補・テスト出荷

手順 決めること・確かめること
視察先 現地で何を見に行くかを決める。視察先は、展示会/工業団地/現地の売り場/卸売市場に分かれる
視察での質問 視察で何を聞くかを決める
展示会 展示会に出展するか、来場して見るだけにするかを決める
代理店探し 代理店の候補を集める
代理店の見極め 代理店が適切かを見極める
テスト出荷 テスト出荷(少量を実際に送って確かめること)を行う

表:現地確認と相手探しの段階で決めること

視察先は、確かめたい内容で選びます。買い手や競合の製品を見るなら展示会、店頭の価格と並べ方を見るなら現地の売り場、流通の様子を見るなら卸売市場です。

工業団地は、現地に拠点を作る企業が候補地を確かめる視察先です。輸出だけで始める企業は、工業団地の視察を対象外にできます。

視察で聞く内容は、行く前に決めておきます。価格、数量、取引の条件、規制への対応など、自社の判断に必要な項目を質問の形で書き出します。展示会には、出展して自社の商品を見せる方法と、来場して買い手や競合を見る方法があります。初めての国では、まず来場して様子を確かめる方法もあります。

代理店については、候補を集める手順と、見極める手順を分けています。候補を複数集めてから比べるためです。

現地パートナー探し|担当者の57.0%が挙げる課題

海外進出白書(2025-2026年版)の第2部(担当者193名)では、海外展開における課題として「現地パートナー探し」が57.0%で最多でした。

同じ海外進出白書の第3部(支援企業の担当者151名)でも、海外進出の成否を分ける要因として「現地パートナー」が68.9%でトップです。2つは別のアンケートですが、海外展開を検討・実施する側と支援する側の両方が、現地パートナーを上位に挙げています。

代理店の候補を集める手順と、候補を見極める手順が、この課題に当たります。

代理店を見極めるときは、扱っている商品、販売先、営業の体制を確かめます。候補が1社だけだと比べられないため、複数の候補を集めてから判断します。

テスト出荷|本契約の前に少量で確かめる手順

テスト出荷では、少量を実際に送り、輸送、相手国での輸入の手続き、現地での売れ方を確かめます。

輸出の条件の段階で決めたHSコード、関税、貿易条件、支払条件を、実際の取引で一度通す機会になります。確かめた結果は、契約の内容を整理するときの材料になります。

テスト出荷で確かめる内容は、先に書き出しておきます。届くまでの日数、輸送中の破損の有無、相手国の税関での手続き、表示やラベルへの指摘、買い手の反応などです。

うまくいかなかった点は、本契約の前に直せます。数量が少ないうちに問題を見つけ、条件や表示を直してから本契約に進みます。代理店の候補と一緒にテスト出荷を行うと、その代理店の動き方を確かめる機会にもなります。

7. 販売店契約と契約後の管理|撤退判断まで

最後の段階は、代理店との契約と、契約したあとの管理です。続けるか撤退するかの判断と、撤退を決めたあとの手続きまでを含みます。

契約を結んだ時点で海外進出が終わるわけではありません。海外進出白書(2025-2026年版)では、支援企業の担当者151名の回答で、進出後に軌道に乗せるまでの期間は「3年以上」が38.4%で最多でした。この章では、契約と運用の段階で決める内容を表で確認し、販売店契約で決める項目と、リスク管理の検討状況を順に取り上げます。

契約と運用の手順一覧|契約・契約後の管理・撤退

手順 決めること・確かめること
契約の項目 契約で何を決めるかを整理する
契約書 契約書を固める
代理店の管理 契約後に代理店に動いてもらう方法を決める
トラブルへの備え クレームや価格の崩れなど、契約後のトラブルに備える
継続か撤退か 続けるか撤退するかを判断する
撤退の手続き 撤退を決めたあとの手続きを進める

表:契約と運用の段階で決めること

契約の項目と契約書は契約を結ぶまで、代理店の管理とトラブルへの備えは契約したあとの管理です。継続か撤退かの判断と撤退の手続きは、海外事業を見直すときの手順です。

撤退の手続きは、現地法人などの海外子会社を置いた企業が行う清算(会社をたたむための法的な手続き)を扱います。

契約後の管理では、代理店に任せきりにしない仕組みを決めます。販売の状況を報告してもらう頻度、販売の目標、情報を共有する方法などです。トラブルへの備えでは、クレームを受けたときの対応の窓口と、値引きなどで価格が崩れたときの取り決めを確かめます。

継続か撤退かの判断は、あらかじめ決めた基準に照らして行います。基準の考え方は、この章のリスク管理の項目で取り上げます。

販売店契約で決める項目|独占権と最低購入数量

契約書を作る前に、代理店と取り決める項目を整理します。代表的な項目が、独占権(その国や地域で自社商品を売る権利を1社だけに与えること)と、最低購入数量(相手が一定の期間に買い取る最低限の量)です。

独占権を与えるかどうかと、最低購入数量をいくつにするかは、社内準備で整理した出せる数量と、テスト出荷の結果をもとに決めます。整理した内容は、契約書の条文にします。

独占権を与えると、自社はその国や地域で、ほかの相手に売れなくなります。そのため、独占権を与える場合は、最低購入数量や契約の期間とあわせて決めます。最低購入数量を決めておくと、独占権を与えた相手がどの程度売るつもりなのかを数字で確かめられます。契約書の内容は、国際取引に詳しい弁護士に確認を依頼します。

リスク管理の検討状況|導入した企業は11.4%

海外進出白書(2025-2026年版)の第2部(担当者193名)では、リスク管理の検討状況について「導入は考えていない」が42.0%で最多でした。「導入した」は全体の11.4%です。

同じ海外進出白書は、海外事業を3年以上実施している企業を「成功企業」と定義しています。成功企業では、「導入した」が20.3%でした。

継続か撤退かの判断は進出したあとの手順ですが、判断の基準そのものは、社内準備で目的と予算を決めるときに社内へ示せます。

海外進出白書は、「導入した」と答えた企業の対策として、コンサルティング会社や海外専門の弁護士の手配、国際商標・特許登録を挙げています。撤退の基準は、期限、投資額の上限、判断する人を決めておく形で示せます。

8. 対象外にできる手順と先に済ませる確認|輸出だけで始める場合

どの売り方でも先に済ませる3つの確認の図。該非判定は国を決める前、商標は国を決めた時点、HSコードは関税を調べる前に済ませる
図:どの売り方でも先に済ませる3つの確認

すべての手順に、同じ時期に取り組む必要はありません。売り方によって対象外にできる手順と、どの売り方でも先に済ませる確認を分けて示します。最後に、自社がいまどの手順にいるかを確かめるチェックリストを置きます。

兼任で海外展開を担当する場合は、使える時間に限りがあります。自社の売り方に関係しない手順を先に外し、どの売り方でも必要になる確認から手を付けると、限られた時間を必要な手順に回せます。手順の全体を見たうえで、自社に必要な範囲を決めるための章です。

輸出だけで始める企業が対象外にできる手順

手順 内容 対象外にできる理由
現地拠点づくり 拠点の形態、用地、会社設立、税務会計、採用、ビザ、運営 現地に拠点を作らないため
工業団地の視察 拠点の候補地の確認 拠点の候補地を確かめる手順のため
撤退の手続き 海外子会社の清算 海外子会社を置かないため

表:輸出だけで始める企業が対象外にできる手順

対象外にできるのは、いずれも現地に拠点を置く企業のための手順です。輸出を続けるなかで現地に拠点を作ると決めた時点で、これらの手順が対象に戻ります。

輸出だけで始める企業が、最初から現地拠点の手順まで調べようとすると、調べる範囲が広がります。表の3つを対象外にすると、輸出に関わる手順に時間を回せます。

反対に、現地に拠点を作ると決めている企業でも、輸出の条件の段階は省けません。現地で売る商品を日本から送る場合は、輸出の手続きが同じように必要になるためです。

対象外にした手順は、なくなるわけではありません。事業が広がって拠点が必要になった時点で、あらためて取り組みます。社内には、対象外にした手順とその理由をあわせて伝えておくと、あとで方針を見直すときに経緯をたどれます。

該非判定・商標・HSコード|どの売り方でも先に済ませる確認

  • 該非判定:経済産業省によると、リスト規制は、どの国に、どのような用途で輸出するかに関係なく規制対象となり得ます
  • 商標:特許庁によると、商標の保護は属地主義で、それぞれの国での保護が求められます
  • HSコード:日本商工会議所が示す特定原産地証明書の取得の流れでも、最初のステップはHSコードの確認です

3つとも、輸出、代理店、越境ECのどれを選んでも必要になる確認です。該非判定は国を決める前に、商標は国を決めた時点で、HSコードは関税を調べる前に済ませます。

3つに共通するのは、あとから問題が見つかると、それまでに進めた手順をやり直すことになる点です。早い時点で済ませておくと、やり直す範囲を小さくできます。

出典:経済産業省「申請の流れ(輸出が初めての方へ)」、特許庁「マドリッド協定議定書による国際出願について(初めての方へ)」、日本商工会議所「特定原産地証明書取得までの流れ」

海外進出の現在地チェックリスト

次の8つの問いを上から順に確かめます。最初に「いいえ」になった問いの手順が、いま取り組む手順です。

  • 海外に出る目的を、上司に1文で説明できるか
  • 輸出してよい品かどうかを、自社で判定したか
  • 狙う国を決めたか
  • 輸出で始めるか、現地に拠点を作るかを決めたか
  • 自社品のHSコードと相手国の関税を調べたか
  • 代金の支払条件を決めたか
  • 代理店の候補を集めたか
  • 契約で決める項目を整理したか

8つの問いは、6つの段階のそれぞれから、先へ進む前に答えが必要になる手順を選んでいます。社内で進み具合を報告するときにも、そのまま使えます。

「いいえ」が複数あっても、上から順に1つずつ取り組みます。答えに迷う問いは、まだ決まっていないものとして扱います。

9. 海外進出の流れと手順のよくある質問

海外進出の流れと手順について、よくある質問に答えます。

取り上げるのは、何から始めるか、どのくらいの期間がかかるか、どの進出形態が多いか、どこに相談するかの4つです。いずれも、海外展開の担当になった方が、社内への説明にそのまま使える内容です。回答には、海外進出白書(2025-2026年版)の調査結果を使っています。調査の対象と人数を回答ごとに書いているので、社内の資料に引用するときも、対象と人数をあわせて示せます。

海外進出は何から始めればよいですか。

海外に出る目的を社内で説明できるようにすることから始めます。続いて体制と予算、海外向けに出せる数量、規格と輸出規制の確認へ進み、その後に狙う国を決めます。海外進出白書(2025-2026年版)では、支援企業の担当者151名のうち74.8%が、企業に備えてほしいこととして事業計画策定を挙げています。

海外進出にはどのくらいの期間がかかりますか。

海外進出白書(2025-2026年版)で支援企業の担当者151名に尋ねた結果では、進出決定までは「3ヶ月〜半年」が33.1%、進出決定から進出までは「半年〜1年」が35.1%で、それぞれ最多でした。進出後に軌道に乗せるまでの期間は「3年以上」が38.4%で最多です。

海外展開の進出形態で最も多いのはどれですか。

最も多い回答は、拠点を設けずに現地のパートナーや販売代理店を通じて展開する形です。海外進出白書(2025-2026年版)で、海外ビジネス展開を検討したことのある担当者193名に進出形態を尋ねた結果、「拠点は設けない(パートナー/販売代理店)」が53.4%で最多でした。「現地法人設立」は39.4%、「拠点を設けない(越境EC)」は23.8%です。

海外進出の相談はどこにすればよいですか。

いま取り組んでいる段階に合う専門家に相談します。該非判定や関税のような制度は公的機関の公開資料で確かめられますが、国選び、代理店探し、契約書の確認には、その国と分野の実務を知る専門家が必要です。Digima〜出島〜では、海外ビジネス専門のコンシェルジュがお困りごとをうかがい、貴社の海外進出に最適な専門家を無料でご紹介しています。

10. 海外進出の手順はDigima〜出島〜に相談

海外進出の手順は、社内準備、国と市場、売り方、輸出の条件、現地確認と相手探し、契約と運用の6段階に分かれます。輸出だけで始めるか、現地に拠点を作るかで、取り組む手順は変わります。

海外進出白書(2025-2026年版)では、担当者193名のうち57.0%が、海外展開における課題として現地パートナー探しを挙げました。国選び、輸入規制の確認、代理店探し、契約のように、社内だけでは進めにくい手順があるときは、その手順から相談できます。

Digima〜出島〜では、海外ビジネス専門のコンシェルジュが状況をうかがったうえで、貴社の段階と課題に合う専門家を無料でご紹介しています。ご紹介のあとに契約する義務はありません。止まっている手順があるときは、Digima〜出島〜にご相談ください。

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