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訪日客の満足度調査のやり方|NPSと自由記述で改善点を見つける設問設計と回収術

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観光庁の調査では、旅行中に「困ったことはなかった」と答えた訪日客は43.7%にとどまります。裏を返せば半数以上が何かに困ったまま帰国しています。宿泊施設・飲食店・観光施設に向けて、満足度スコアとNPSの違い、設問設計と多言語化の勘所、回収率を上げる導線、自由記述を改善アクションに変える読み方までを実務ベースで解説します。

観光庁が出国前の訪日客4,110人に聞いた調査で、旅行中に「困ったことはなかった」と答えた人は43.7%でした。前年度の51.1%から減っています(出典:観光庁「令和7年度 訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート」)。
裏を返せば、半数以上が何かに困ったまま帰国しているということです。そしてその多くは、現場に伝えられないまま口コミに書かれるか、そのまま忘れられます。
この差を埋める手段が満足度調査です。ところが実際にアンケートを配ってみると、回収できない、点数は高いのに改善点が見つからない、という壁に当たります。原因は聞き方と集め方にあります。
この記事では、宿泊施設・飲食店・観光施設の担当者に向けて、満足度スコアとNPSの使い分け、答えてもらえる設問の作り方、回収率を上げる導線、そして集まった声を改善アクションに変える読み方までを実務ベースで整理します。

この記事でわかること

  • ・満足度スコア・NPS・自由記述(VOC)がそれぞれ何を教えてくれるか
  • ・NPSの計算方法と、点数の読み方
  • ・滞在中の旅行者に答えてもらえる設問数と、多言語化で壊れる設問
  • ・体験直後・帰国前・帰国後で変わる回収タイミングの選び方
  • ・QRコード・無料Wi-Fi・OTAメールという回収導線の使い分け
  • ・国籍別に分けて読む理由と、自由記述の分類・優先順位づけ

1. 何を測るのか:満足度・NPS・自由記述の違い

満足度スコアとNPSは別物

「満足度を測ろう」と決めたとき、最初に決めるべきは何を聞くのかです。よく使われる2つの指標は、似ているようで測っているものが違います。
満足度スコアは「今回のご滞在にご満足いただけましたか」を5段階などで聞くものです。受けたサービスへの評価であり、過去についての質問です。答えやすく、店舗や部門ごとの比較にも使えます。一方で、日本を訪れた旅行者は総じて好意的に答える傾向があり、点数が高く出やすいという弱点があります。4点以上が9割を占めるような結果からは、次に何をすべきかが読み取れません。
NPSは「友人や同僚に勧めたいと思いますか」を0から10の11段階で聞きます。計算方法は決まっており、9と10を推奨者、7と8を中立者、0から6を批判者に分け、推奨者の割合から批判者の割合を引いた値がNPSです。中立者は計算に含めないため、マイナスになることもあります。

この指標の利点は、他人に紹介するという行動を伴う分だけ評価が厳しく出ることです。「満足はしたが、人に勧めるほどではない」という層が中立者として切り分けられ、満足度スコアでは見えなかった差が現れます。
どちらか一方に絞る必要はありませんが、設問数には限りがあります。店舗単位で改善点を探すなら満足度スコア、口コミや再訪につながる強さを見たいならNPS、という選び方が現実的です。

数値だけでは動けない。自由記述が改善の起点になる

ここが満足度調査でもっとも軽視されている点です。点数は現状を教えてくれますが、何を直すべきかは教えてくれません。「満足度3.8点」という結果から、明日やることを決められる担当者はいません。
改善の材料になるのは自由記述です。「スタッフが英語のメニューを探すのに時間がかかった」「ごみを捨てる場所が見つからなかった」といった具体的な記述があって初めて、対応が決まります。数値は改善の効果を後から測るためのものであり、改善の中身を決めるのは言葉のほうです。
参考になるのが観光庁の調査設計です。同庁は5空港での対面アンケート4,110件に加えて、SNSや旅行情報サイトへの投稿、地図アプリ上のレビューから2,000件を抽出して分析しています。設問に答えてもらう形式だけでは拾えない不満や高評価があることを、調査する側が前提に置いているわけです。

この考え方は、規模を落としてそのまま使えます。自社のアンケートに自由記述欄を1つ設け、あわせてGoogleマップやOTAに書かれたレビューを定期的に読む。この2つを並べるだけで、聞かれたから答えた声と、聞かれなくても書いた声の両方が手に入ります。後者のほうが強い感情を伴っていることが多く、優先度の判断に役立ちます。
逆に言えば、自由記述欄のないアンケートは、集計はできても改善にはつながりません。設問を削るときも、この欄だけは最後まで残してください。

2. どう聞くか:設問設計と多言語化

設問は何問まで許されるか

回収率を決めるのは、謝礼よりも設問数です。滞在中の旅行者に答えてもらうのであれば、5問前後、長くても7問程度が限度と考えてください。移動中や会計の合間という状況で聞くことになるため、設問が増えるほど途中離脱が増え、最後まで答えた人も後半は適当に埋めるようになります。
設計の順番も重要です。「聞きたいことを並べてから削る」のではなく、最初に必須の設問を決め、そこに足していく形にします。多くの場合、必須なのは3つです。全体評価が1問、その理由を書いてもらう自由記述が1問、そして国籍または居住地が1問。この3問があれば、点数を国籍別に分けて読み、理由を言葉で確認するという最低限の分析ができます。
残りの枠に、自社が今いちばん知りたいことを入れます。多言語対応の評価なのか、決済手段なのか、清潔さなのか。ここを毎回同じにする必要はなく、四半期ごとに入れ替える運用のほうが実態に合います。
避けたいのは、答えの選択肢を細かくしすぎることです。10段階評価は精度が上がるように見えて、言語や文化によって中間の使い方が変わるため、比較が難しくなります。NPSのように計算方法が定まっているものを除けば、5段階で十分です。
また、名前やメールアドレスを冒頭で求めると回答率は明確に下がります。連絡先が必要な場合は最後に任意項目として置き、取得した個人情報の利用目的を明示してください。

直訳すると壊れる設問がある

日本語で作った設問をそのまま翻訳すると、意図が変わってしまうものがあります。多言語アンケートで最初に点検すべきはここです。
典型が「ふつう」を含む5段階評価です。日本語の「ふつう」は「悪くはない」に近い中立ですが、言語によっては「平凡」「期待外れ」という否定寄りの意味に振れます。選択肢は言葉ではなく、数字と両端のラベルだけを示す形にすると、この揺れを避けられます。
次に敬語と婉曲表現です。「差し支えなければお聞かせください」といった前置きは、翻訳すると意味を持たない文字数の増加にしかなりません。多言語版では前置きを削り、平易な現在形の文にします。
もうひとつ注意したいのがひとつの設問で2つのことを聞いてしまう形です。「スタッフの対応と館内の清潔さにご満足いただけましたか」は、どちらか一方に不満がある人が答えられません。日本語でも避けるべきですが、翻訳を経ると曖昧さが増幅されます。設問はひとつにつきひとつの論点に絞ってください。
対応言語をどこまで広げるかは、実際の来訪者構成から決めます。観光庁の調査は5大市場(中国、韓国、台湾、香港、米国)で各400件以上、タイ・マレーシア・インドネシアで各150件以上といった国・地域ごとの目標件数を設けて回収しています。自社でも来訪の多い上位3か国から着手し、それ以外は英語で受けるという段階的な広げ方が現実的です。
最後に、翻訳後は必ずその言語がわかる人に読んでもらうことをおすすめします。設問文の誤訳は、集計結果そのものを無意味にします。

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3. どこで集めるか:回収率を上げる導線

滞在中に取るか、帰国後に取るか

いつ聞くかによって、集まる答えの性質が変わります。どちらが正しいということはなく、知りたいことに合わせて選ぶものです。
体験直後は、記憶がもっとも鮮明な瞬間です。食事を終えた直後、チェックアウトの直前、アクティビティの終了時に聞けば、具体的な場面についての記述が得られます。細かい改善点を拾いたいならこのタイミングです。一方で、旅行全体のなかでの位置づけは聞けません。まだ旅は続いており、比較対象がないためです。
帰国前は、旅行全体を振り返った評価が得られます。観光庁の受入環境調査が、出国前の旅行者を空港で対面調査しているのはこのためです。同調査は成田・羽田・関西・福岡・新千歳の5空港で実施され、令和7年11月18日から令和8年1月13日にかけて4,110件を回収しています。旅行全体の満足度や再訪意向を聞くなら、この考え方が参考になります。
帰国後は、落ち着いて長い文章を書いてもらえる利点があります。ただし連絡先を取得している必要があり、時間が経つほど記憶は曖昧になります。
実務上は、体験直後に短く聞き、詳しい話は帰国後に任意で聞くという二段構えが扱いやすい形です。前者で件数を確保し、後者で深さを取ります。
なお、観光庁の調査では都市部のみを訪れた人と地方部のみを訪れた人で「困ったことはなかった」の割合が異なり、地方部のみを訪問した人のほうが高いという結果も出ています。同じ設問でも、どこで誰に聞いたかで答えは変わります。自社の結果を業界平均と比べる前に、回収した場所と条件を確認してください。

QRコード・無料Wi-Fi・OTAメールの使い分け

回収方法は、旅行者に新しい手間を求めないものほど成功します。
QRコードは、卓上・レジ横・客室・チェックアウトカウンターなど、視線が止まる場所に置きます。ここで効くのは、読み取った先が母国語で表示されることです。端末の言語設定で自動的に切り替わる仕組みにできれば理想ですが、難しければ最初の画面で言語を選ばせる形でも構いません。日本語の画面が出た時点で、大半の旅行者は離脱します。
無料Wi-Fiは、回収導線としても機能します。接続後に表示されるページにアンケートを置けば、旅行者はすでにスマートフォンを開いており、追加のアプリも会員登録も要りません。ただし接続直後は「早く使いたい」場面なので、ここでは1問だけにして、続きは任意にするほうが結果は良くなります。
OTAや予約システムのメールは、帰国後の回収に向いています。予約時に連絡先を取得しているため、改めて聞く必要がありません。宿泊施設であればチェックアウト翌日から数日以内の送信が目安です。
そして対面での声かけは、もっとも回収率が高い方法です。観光庁の調査が対面式を採っているのも、確実に答えてもらえるからです。人手はかかりますが、繁忙期を外して期間を区切れば実施できます。「1問だけお願いできますか」と伝えて紙を差し出す形なら、スタッフの負担も限定的です。
謝礼については、値引きや特典を付ける場合に景品表示法の規制がかかる場合があります。物品を渡す形にするときは、上限額の確認を忘れないでください。

4. どう読むか:改善アクションにつなげる

国籍別に分けて初めて意味が出る

集まった回答を全体平均で見ているうちは、ほとんど何も見えません。訪日客は単一の集団ではないからです。
観光庁の調査が国・地域ごとに目標件数を設けているのは、この前提に立っているためです。5大市場で各400件以上、東南アジア3か国で各150件以上、欧州で380件程度、オーストラリアで180件程度と、比較できるだけの件数を国・地域別に確保しています。全体の平均値を出すことが目的なら、こうした割当は必要ありません。
自社の規模でここまではできませんが、設問に国籍または居住地を入れておけば、後から分けて読むことはできます。決済手段への不満が特定の国に偏っている、多言語表示への評価が言語圏によって割れている、といった構造は、分けて初めて見えます。
もうひとつ分けて見たい軸が訪日回数です。観光庁の調査では回答者の約7割が訪日2回以上のリピーターで、11回以上の人が13.7%を占めています。初来日の人とリピーターでは期待水準も困りごとも違い、混ぜて平均すると双方の特徴が打ち消し合います。
件数が少なくて分けられない場合は、無理に率で比べないことです。10件に満たない層の割合を出しても、1人の回答で数字が大きく動きます。件数が貯まるまでは、率ではなく実際の記述を読むほうが確かです。

自由記述の分類と優先順位づけ

自由記述は、読んだだけでは改善につながりません。分類して初めて、どこに手を打つべきかが見えます。
最初にやるのは原文の言語のまま目を通すことです。機械翻訳を通すと、皮肉や強い不満のニュアンスが平板になります。件数が多くて全件は難しい場合でも、低評価をつけた人の記述だけは原文で確認してください。
次に、自社で対応できることとできないことに分けます。観光庁の調査で最多だった「ごみ箱の少なさ」(17.2%)は、店舗単位で対応できる部分と、地域全体の課題である部分が混ざっています。「観光地や地域の混雑」(12.9%)や「入国手続き」(10.3%)は、多くの事業者にとって自社では動かせません。動かせないものを一覧に残しておくと、実行できる施策が埋もれます。
対応できるものは、設備・案内表示・スタッフ対応・商品構成といったラベルに振り分けます。第2位の「施設等のスタッフとのコミュニケーション」(15.4%)と第5位の「多言語表示の少なさ・わかりにくさ」(10.9%)は、どちらも言語の問題ですが打ち手はまったく違います。前者は人の教育やツールの導入、後者は掲示物の作り替えです。同じ「言葉が通じない」という記述でも、どちらの話なのかを見極めて振り分ける必要があります。
最後に優先順位です。判断軸は件数の多さと改善コストの低さの2つで足ります。件数が多くコストが低いものから着手し、件数は少ないがコストも低いものを次に回します。件数が多くてもコストが高いものは、予算を確保する案件として別に管理します。
そして着手したら、次回の調査で同じ設問を使って効果を測ります。設問を変えてしまうと前後比較ができません。改善の効果測定こそ、点数の本来の役割です。

5. よくある質問(FAQ)

Q1. 満足度スコアとNPSは何が違いますか?

満足度スコアは受けたサービスへの評価を聞くもので、過去についての質問です。NPSは「友人や同僚に勧めたいか」を0から10で聞くもので、他人に紹介するという行動を伴う分だけ評価が厳しく出ます。満足しているが人には勧めない、という層を切り分けられる点が違いです。

Q2. NPSはどう計算しますか?

0から10の11段階で聞き、9と10を推奨者、7と8を中立者、0から6を批判者に分けます。回答者全体に占める推奨者の割合から批判者の割合を引いた値がNPSです。中立者は計算に含めないため、マイナスになることもあります。

Q3. アンケートの設問は何問くらいが適切ですか?

滞在中の旅行者に答えてもらうなら5問前後、長くても7問程度が限度です。移動中や会計の合間に答えてもらう場面が多く、設問が増えるほど途中離脱と適当な回答が増えます。まず必須の設問を決め、そこから足す順で設計してください。

Q4. アンケートはいつ回収するのが効果的ですか?

体験直後は記憶が鮮明で回答の精度が高く、滞在全体を振り返った評価は帰国前後のほうが正確になります。観光庁の受入環境調査は、出国前の旅行者を空港で対面調査する方法をとっており、旅行全体を対象にするならこの考え方が参考になります。

Q5. 訪日客はどんなことに困っていますか?

観光庁の令和7年度調査では、ごみ箱の少なさが17.2%で最多、次いで施設等のスタッフとのコミュニケーションが15.4%、観光地や地域の混雑が12.9%でした。困ったことはなかったと答えた人は43.7%で、前年度の51.1%から減少しています。

Q6. 自由記述はどう分析すればよいですか?

原文の言語のまま読んでから分類するのが基本です。まず自社で対応できることとできないことに分け、対応できるものを設備・案内表示・スタッフ対応・商品構成などのラベルに振り分けます。件数の多さと改善コストの低さで優先順位を決めます。

6. まとめ

旅行中に「困ったことはなかった」と答えた訪日客は43.7%。半数以上が何かに困ったまま帰国しているという事実が、満足度調査を始める理由のすべてです。
実務は4つに整理できます。
1つ目は測るものを決めること。満足度スコアは高く出やすく、NPSは厳しく出ます。そして改善の中身を決めるのは点数ではなく自由記述です。設問を削るときも、この欄だけは残してください。
2つ目は設問を絞ること。滞在中に聞くなら5問前後が限度で、必須は全体評価・自由記述・国籍の3つです。多言語版では「ふつう」を含む選択肢や敬語の前置き、1問で2つを聞く形が壊れやすいので点検します。
3つ目は手間を増やさない導線で集めること。母国語で開くQRコード、無料Wi-Fi接続後の1問、OTAメールでの後追い。もっとも回収率が高いのは対面での声かけです。
4つ目は分けて読むこと。全体平均には情報がありません。国籍と訪日回数で分け、自由記述は原文で読み、自社で対応できるものだけを件数とコストで優先順位づけします。着手したら、次回も同じ設問で測って効果を確認してください。

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参考文献

・観光庁「訪日外国人旅行者の受入環境に関する調査を実施しました」(2026年4月)
 https://www.mlit.go.jp/kankocho/news08_00039.html
・観光庁「令和7年度『訪日外国人旅行者の受入環境整備に関するアンケート』調査結果」(2026年4月)
 https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001998584.pdf
・観光庁「令和6年度 訪日外国人旅行者の受入環境に関する調査」
 https://www.mlit.go.jp/kankocho/news08_00022.html
・消費者庁「景品規制の概要」
 https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/premium_regulation

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