海外市場で選ばれるブランドは何が違うのか?2026年の消費者価値観の変化から読み解く
経済的な不安やデジタル疲れが広がるなか、消費者が「価値」を感じる基準は大きく変化しています。
ユーロモニターインターナショナルの「Voice of the Consumer: Lifestyles Survey 2026」によると、消費者が商品やブランドに求めるものは、単なる価格や機能だけではなくなりつつあります。価値観への共感、人とのつながり、そして自分らしさを実現できるかどうかが、購買行動やブランドロイヤルティを左右する重要な要素になっています。
本稿では、2026年に企業が注目すべき5つの消費者変化と、それらがブランド戦略に与える影響について解説します。
▼ 海外市場で選ばれるブランドは何が違うのか?2026年の消費者価値観の変化から読み解く
「節約」の意味が変わった:価値を見極めることは賢さの証明
物価上昇への不安は依然として消費者の大きな課題です。2026年初頭に実施された調査では、72%の消費者が日常生活費の上昇に不安を感じていると回答しています。
しかし、節約に対する考え方は従来とは変わりつつあります。
かつて節約は家計を守るための個人的な行動でした。しかし今では、「賢い買い物をすること」そのものがポジティブな自己表現として認識されるようになっています。
世界の消費者の43%は「お得な商品を見つけることが好き」と回答しており、41%は少なくとも週に1回オンラインで価格比較を行っています。
この変化を後押ししているのがSNSです。
たとえばTikTokでは、高価格帯ブランドの代替品を紹介する「#dupe」トレンドが人気を集めています。手頃な価格の商品を見つけることが、単なる節約ではなく、賢い消費者であることの証明として共有されているのです。
こうした環境では、プライベートブランド商品の展開、価格の透明性、パーソナライズされた特典プログラムなどを通じて、「お得さ」と「消費者の自己認識」を結び付けられるブランドが支持を集めやすくなっています。
常時接続の時代から、選択的なつながりの時代へ
インターネットは生活インフラとして定着しています。
57%の消費者は「インターネットがなければ困る」と回答している一方で、32%は「オンライン状態でいること自体が日常的な大きなストレスになっている」と答えています。
つまり、人々はデジタルを必要としている一方で、その情報量や接触頻度に疲れも感じているのです。
その結果、多くの消費者は大量の情報が流れる大規模SNSから離れ、より限定的で落ち着いたコミュニティや環境を求めるようになっています。
企業側もこうした変化に対応し始めています。
重要なのは接触回数ではなく、接触の質です。
たとえばハイネケンは「Social Off Socials」というキャンペーンを展開し、スマートフォンを使わないリアルイベントへの参加を促しています。ブランドがあえて「オフラインの交流」を提案することで、より価値のある体験を提供しているのです。
今後のブランドには、消費者の認知的な負荷を減らし、分かりやすく快適な顧客体験を提供することが求められるでしょう。
コミュニティが購買を動かす時代
消費者の購買判断において、コミュニティや身近な人々の影響力はますます高まっています。
調査では、約3人に1人の消費者が「自分と価値観を共有するブランドから商品を購入した経験がある」と回答しています。また49%は、企業による地域コミュニティへの積極的な関与を重視しています。
近年のサプライチェーンの混乱もあり、消費者の間ではローカルブランドや独立系ブランドに対する信頼感が高まっています。
こうした流れを受け、多くのグローバル企業は「グローカル(Global+Local)」戦略を強化しています。
例えば、Whirlpoolはインド市場向けに製品機能を最適化し、Coca-Colaは中国市場で地域文化を取り入れたマーケティングを展開しています。
また、Red Bullがパリで開催したeスポーツ大会「Kumite」は、参加者同士の交流やコミュニティ形成を重視したイベントとして注目を集めました。
商品やサービスだけでなく、「誰とつながるか」「どのコミュニティに属するか」が、ブランド選択の重要な基準になっているのです。
ラグジュアリーの定義が変わる:「所有」から「体験」へ
ラグジュアリー市場も大きな転換期を迎えています。
従来のようなステータスシンボルとしての所有ではなく、自分にとって意味のある体験や価値を重視する方向へと移行しています。
その象徴の一つがリセール市場です。
現在、リセール市場の規模は416億米ドルに達しており、循環型消費や手の届きやすさを重視する消費者の増加を反映しています。
55%以上の消費者が体験型消費を優先しており、22%は今後さらにユニークな体験への支出を増やす予定と回答
出所:Euromonitor Voice of the Consumer: Lifestyles Survey, 2026年1月~2月実施(n=40,225)
ブランドもこの変化に適応しています。
たとえばRolexは中古市場を正式なエントリーポイントとして位置付け、新規顧客の獲得につなげています。
また、Augustinus Baderの「DUA」は、科学的な裏付けとポップカルチャーを融合させることで、Gen Zやミレニアル世代向けに高い共感性を持つ商品展開を行っています。
これからのラグジュアリーとは、より多くの人が参加できる一方で、自分らしさや憧れを感じられる「価値ある体験」を提供することだと言えるでしょう。
「気分を良くしてくれる商品」が選ばれる
消費者は今、機能や価格だけで商品を選んでいるわけではありません。
ストレスの増加、デジタル疲れ、対面での交流機会の減少などを背景に、感情面での満足感を重視する傾向が強まっています。
「その商品がどのような気持ちにさせてくれるのか」
これがブランド評価の重要な基準になっているのです。
企業もこうしたニーズに応えるため、ウェルネスと楽しさ、安心感と利便性を組み合わせた商品開発を進めています。
たとえばMarks & Spencerの「Brain Food」シリーズは、英国栄養財団と共同開発され、認知機能やメンタル面のサポートを求める消費者に向けて展開されています。
感情的な価値を提供できるブランドは、価格競争に巻き込まれにくく、長期的なロイヤルティを獲得しやすくなります。
今後の展望:ロイヤルティは「目的」への共感から生まれる
これからの消費者は、価格の安さだけでブランドを選ぶわけではありません。
手頃な価格であること、情報過多の時代でもストレスなく利用できること、そしてブランドに本物らしさを感じられること。
こうした要素が組み合わさって初めて、消費者にとっての「価値」が生まれます。
ブランドが競争優位を築くためには、
- 価格的価値を消費者のアイデンティティと結び付ける
- 意思決定の負担を軽減する
- すべての顧客接点に意味を持たせる
- コミュニティとの本質的な関係を構築する
ことが重要です。
今後、成功するブランドは、節約を前向きな価値として位置付け、意図的で質の高い消費体験を提供し、コミュニティとの真のつながりを育む企業になるでしょう。
なお、ユーロモニターは世界有数の市場調査会社です。創業以来50年以上、ビジネスインテリジェンス、国際市場分析そして消費者インサイトを提供することで、企業の皆様をサポートしてきました。私たちの調査ソリューションは、特定の都市から、国、地域そして世界市場までをカバーし、顧客が抱く戦術的および戦略的課題に対応しています。市場調査でお困りの方や、海外進出にあたって不安材料がある、どこから手を付けたら良いのか分からない、といったお悩みをお持ちの方は、一度お気軽にお問い合わせください。皆さまのビジネスニーズに合わせた市場調査ソリューションを提案いたします。
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