【2025年度版】オーストラリアの“自然派志向”に応えるには？コスメブランドが現地で共感を得る商品開発のコツ

掲載日：2025年06月17日

ワールド・モード・ホールディングス株式会社

2025年3月11日発売の日経MOOK「中堅・中小企業のASEAN進出」2025年版にて、ワールド・モード・ホールディングス（WMH）の海外進出支援に関する取り組みが紹介されました。本誌は、日本企業がASEAN市場へ進出する際に必要な基礎知識や、各分野での成功事例をまとめた一冊です。WMHは、海外での人材採用支援や店舗運営サポートなどを通じた ASEAN地域での実績・事例を中心に、見開き2ページにわたって掲載されています。 ASEAN市場への展開を検討されている企業様にとって、実践的なヒントやパートナー選びの参考として、ぜひご一読ください。

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オーストラリアは、自然環境への高い意識と健康志向が社会全体に浸透している国です。こうした背景のもと、コスメ市場でも「自然派・オーガニック・無添加・動物実験フリー」といった価値観が、今や当たり前の条件となっています。そのため、日本ブランドがオーストラリア市場で評価を得るには、単なる“ナチュラル成分”以上の戦略が不可欠です。消費者は製品そのものだけでなく、その成分の由来、製造背景、ブランドの価値観までを厳しく見極めています。

本記事では、オーストラリア市場の自然派コスメの特性を整理し、日本ブランドがどのように商品開発やブランディングを進めるべきかを、具体例や実務的な視点とともに解説します。現地で“選ばれるブランド”となるためのヒントを、ぜひ戦略設計に役立ててください。

▼ 【2025年度版】オーストラリアの“自然派志向”に応えるには？コスメブランドが現地で共感を得る商品開発のコツ

1.オーストラリアの“自然派コスメ”市場とは？
2.自然派志向に合致する商品開発5つの視点
3.自然派消費者の信頼を得るためのブランド姿勢
4.自然派ブランドとして成功した日本ブランドの事例
5. 現地販売・販路戦略の実務
5.まとめ：“自然派”は製品だけでなく、ブランドの在り方そのもの

1.オーストラリアの“自然派コスメ”市場とは？

「ナチュラル＝当たり前」の成熟市場

オーストラリアのコスメ市場では、ナチュラル・オーガニック・無添加・動物実験フリーといった価値観はもはや「選ばれる理由」ではなく、製品選びの前提条件として定着しています。特にZ世代やミレニアル層を中心に、「ナチュラルであること」は化粧品の基本的要素であり、それを満たした上でブランドのストーリー性や付加価値を重視する消費者が多いのが特徴です。こうした背景から、成分や製造過程に妥協があれば、すぐに口コミやSNSで見抜かれてしまう市場ともいえます。

改めて重要なのは、自然派であることを謳うだけでなく、その中身の誠実さや一貫性をどれだけ消費者に伝えられるかです。成分の出どころ、処方の透明性、環境への配慮といった側面を、製品コンセプトにしっかりと組み込むことが求められています。

消費者は“裏側”を見ている

オーストラリアの自然派コスメユーザーは、パッケージデザインやキャッチコピーといった表面的な魅力だけでは納得しません。彼らが重視するのは、原料の産地や調達方法、製造背景、さらにはブランドの価値観や社会貢献への姿勢です。つまり「この製品を選ぶことが、自分の価値観やライフスタイルの一部になる」という感覚が大切にされています。

このため、単に自然派成分を使用するだけでなく、それをどのように調達し、誰がどんな思いで作っているのか、環境や地域社会とどのように向き合っているのかを開示・発信する姿勢が、購買動機に大きく影響します。ブランドの裏側を正直に、かつ具体的に語れることが、現地で共感を得る第一歩となります。

2.自然派志向に合致する商品開発5つの視点

① 成分設計：植物由来＆エビデンス重視の処方

オーストラリア市場では「植物由来成分」を謳うだけでは十分ではなく、その成分がどのような機能性を持ち、どんな根拠（エビデンス）があるのかまで示す必要があります。例えば、カカドゥプラムの抗酸化作用、ティーツリーの抗炎症効果、アロエベラの保湿力など、現地で親しまれている植物成分とその機能性の融合が求められます。自然派＝効果が弱いという先入観を持たれないよう、処方の段階から機能性とナチュラルの両立を徹底することが大切です。

さらに、成分に関する情報はパッケージや公式サイト、SNSなどあらゆるチャネルで明示する工夫が必要です。科学的根拠を持つ成分設計こそが、現地消費者の信頼を勝ち取る道といえるでしょう。

② 処方思想：“避けるべき成分”への配慮

オーストラリアの自然派志向市場では、「何を使っているか」だけでなく「何を使っていないか」も重視されます。特にパラベン、鉱物油、SLS（ラウリル硫酸ナトリウム）、合成香料・着色料といった成分は、非配合であることをしっかりと消費者に示す必要があります。動物実験フリーやビーガン対応も、評価軸として無視できません。

さらに、COSMOS、ACO、Vegan Australiaなどの認証取得は第三者的なお墨付きとして強い説得力を持ちます。オーストラリア市場では、成分の誠実さを裏付ける証明や認証の有無が、選ばれるブランドになるか否かを左右するのです。

③ 肌質と気候への対応：乾燥＋紫外線ケアを重視

オーストラリアは紫外線が非常に強く、肌トラブルや乾燥、老化への悩みが深刻です。そのため、商品開発では「高保湿」「肌バリア強化」「アフターサンケア」といった機能を組み込むことが現地ニーズに直結します。特にSPF製品に関しては、オーストラリアの厳格なTGA（Therapeutic Goods Administration）の規制を遵守する必要があります。

乾燥対策と紫外線ケアを両立させる処方、さらにその効果を科学的に説明する情報発信が、消費者からの信頼を得るカギとなります。肌悩みに真正面から応える姿勢が、ブランドの価値を高めるのです。

④ 使用感と香り：軽やかで自然な仕上がり

オーストラリアの消費者は、使用感や香りについても強いこだわりを持っています。強い香料や重たいテクスチャーは敬遠されやすく、軽やかで自然な仕上がりが好まれる傾向にあります。エッセンシャルオイルなど自然由来の香りを繊細に設計し、使うたびにリラックスできるような心地よさを意識することが求められます。

さらに、塗布後のべたつきの少なさや、暑い気候下でも快適に使える処方は、高評価につながります。製品の第一印象として「心地よさ」をしっかりと設計することが、リピート購入を促すポイントです。

⑤ パッケージ：環境負荷への配慮を“見える化”

パッケージのサステナビリティは、オーストラリア市場において大きな訴求力を持ちます。再生素材、リサイクル可能な容器、詰め替え対応パッケージといった工夫はもちろん、環境配慮をどのように消費者に「見せるか」が重要です。たとえば、QRコードから製品の環境配慮設計について詳細を紹介する専用ページに誘導するなど、情報の透明性を高める施策が効果的です。

見た目の“エコ感”だけではなく、実際の環境負荷軽減に取り組んでいる事実を具体的に発信することで、消費者の共感と信頼を得ることができます。

3.自然派消費者の信頼を得るためのブランド姿勢

“透明性”こそ最大のブランド資産

オーストラリアの自然派コスメ市場では、成分の安全性やナチュラルさはもはや当然の前提条件です。消費者がさらに重視するのは、ブランドとしての透明性と誠実さです。原材料の調達元、製造工場の環境、サプライチェーンの管理状況まで、隠さずに開示し、消費者が納得できる情報を提供することがブランド資産となります。

パッケージ、公式サイト、SNS、店舗体験を通じて、一貫した「正直なブランド」であることを体現する必要があります。曖昧な表現やごまかしは逆効果となり、ブランドイメージを損なうリスクをはらんでいるのです。

SDGs的価値観への共鳴

現地の消費者の多くは、化粧品を購入する行為そのものを「自分の価値観を示す選択」として捉えています。そのため、単に製品の品質が良いだけでなく、ブランドが地球環境保全やジェンダー平等、動物保護などの社会的価値にどのように貢献しているかが、選ばれる理由になります。SDGsの理念に基づいた取り組みを明確にし、発信することが強い共感を生み出します。消費者とブランドの「価値観の接点」を積極的に作ることが重要です。

“人”と“場所”を感じるストーリーテリング

オーストラリアの自然派市場では、「誰が、どのような思いで作ったか」「どの土地の文化や素材が背景にあるか」といった物語が、製品の価値を大きく高めます。成分や機能だけでなく、その背後にある作り手や土地のストーリーを語ることで、消費者の心に響くブランド体験を提供できるのです。ストーリーは共感を生み、リピーターを育てる力になります。

4.自然派ブランドとして成功した日本ブランドの事例

■ A社（精油系スキンケア）

オーストラリア原産の精油を用いた商品設計に日本独自の処方技術を掛け合わせ、現地でも“癒しの処方”として注目。容器は竹素材＋再生PET。サステナブル設計が高評価を得た。

■ B社（ビーガン対応ヘアケア）

動物性成分不使用・無添加・低刺激で開発。Vegan Australia認証取得と共に、サロン専売ルートとEコマースを両軸展開し、自然派層＋高感度層の両者を獲得。

■ C社（伝統植物×現代科学）

日本の薬草文化を“Botanical Science”という切り口で紹介。エシカルパッケージと社員の顔が見えるSNS運用で、現地セレクトショップから取り扱いオファーを獲得。

5. 現地販売・販路戦略の実務

小売先選定：信頼構築の起点をどこに置くか

オーストラリアで自然派コスメを展開する際、どの小売先を起点とするかはブランドの信頼性を左右する重要な要素です。MeccaやDavid Jonesといった高感度な百貨店やセレクトショップは、自然派・オーガニックコスメの旗艦的存在であり、これらの販路を選ぶことでブランド全体の価値が底上げされます。さらに、ローカルのオーガニック系専門店やライフスタイルショップも、現地密着型のブランディングには有効です。

また、バイヤーとの関係構築や出店交渉の際には、成分・背景・認証を英語で詳細に説明する資料を準備することが不可欠です。販路選定そのものが、現地市場との信頼構築の第一歩となるのです。

越境EC活用：オンラインの信頼もリアルに通じる

オーストラリアでは越境ECの存在感が増しており、Nourished Life、Amazon.au、Shopifyといったオンラインチャネルも自然派ブランドの認知拡大に大きく貢献しています。特に、現地レビューや購入者の声、星付き評価がリアル店舗への来店動機にもつながる傾向が強まっています。EC上で得た信頼は、リアルの販路拡大や小売交渉においても重要な武器となるのです。

また、英語圏消費者向けにローカライズされた商品ページや、SNSと連動したストーリー発信、FAQの充実が必要です。オンラインとリアルの信頼構築を並行させる姿勢が、ブランド成長の基盤になります。

KOL・インフルエンサー活用：共感型PRの重要性

オーストラリアの自然派市場では、ナチュラル志向やサステナブルライフを体現するKOL（Key Opinion Leader）やインフルエンサーとの協業が極めて効果的です。単発のPR投稿ではなく、製品背景やブランド哲学まで含めた長期的なコラボレーションが、消費者の深い共感を呼び起こします。特に「自分の価値観とマッチしている」と感じられるKOLの推薦は、購買への強力な後押しとなります。

KOL選定時にフォロワー数だけでなく、投稿の一貫性や価値観の相性、コメント欄の熱量まで精査することが肝心です。誠実なブランド体験を拡散するための「共感型PR設計」が成功のカギを握ります。