なぜ世界はカーボンニュートラルを2050年までに実現すべきなのか?

「なぜ世界はカーボンニュートラルを2050年までに実現すべきなのか?」と銘打って、カーボンニュートラルとはなにか?といった基礎的な知識から、今後の実現に向けた方法や対策、その課題や問題点、日本を含めた世界各国での取り組みの実例などをわかりやすく解説していきます。
地球温暖化が問題視されはじめたのは1970年代のこと。1985年には地球温暖化問題に関する初めての世界会議がオーストリアのフィラハで開かれました。ここで取り上げられたことにより、二酸化炭素による地球温暖化問題は世界に広く知られることとなったのです。
それから36年。2021年においてもまだまだ地球温暖化は深刻な問題です。その鍵を握るのが「カーボンニュートラル」。本テキストでは、このカーボンニュートラルについて取り上げ、わかりやすく解説していきます。
▼なぜ世界はカーボンニュートラルを2050年までに実現すべきなのか? | 実現に向けた方法と対策・課題と問題点・取り組み事例…ほか
- 1. カーボンニュートラルとは何か?
- 2. なぜカーボンニュートラルに取り組むべきなのか?
- 3. 2050年のカーボンニュートラル実現に向けて
- 4. カーボンニュートラルを実現するための方法と対策
- 5. カーボンニュートラルの課題と問題点
- 6. 日本政府によるカーボンニュートラルへの取り組み事例
- 7. 世界各国のカーボンニュートラルへの取り組み事例
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1. カーボンニュートラルとは何か?
カーボンニュートラルとはなにか?
まずは基本として、カーボンニュートラルとは何かについて簡潔に解説します。
カーボンニュートラルとは、二酸化炭素に代表される温室効果ガスの排出と吸収を同じ量にして、排出を実質ゼロにすることです。
カーボンニュートラルを実現するためには排出量を減らすと同時に吸収量を上げる必要があるため、温室効果ガスを吸収してくれる森林などの保護が重要となってきます。
菅首相が国会での所信表明演説の中で日本政府として初めて表明
菅義偉首相は2020年10月、臨時国会の所信表明演説の中で、2050年までにカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すと宣言しました。
日本政府はそれまで、脱炭素の目標数値を2050年に8割削減としていました。それを明確にゼロにすると宣言した菅首相の演説は海外からも称賛され、大きな話題となりました。
「カーボンニュートラル」の「ニュートラル(中立)」の意味とは?
前述したように、カーボンニュートラルとは温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることであり、排出と吸収のバランスを取ることでプラスマイナスゼロとすることを言います。
「ニュートラル」とは中立、中間や化学用語の中性(酸性でもアルカリでもない性質)を意味する言葉であり、この場合は排出と吸収を同量にすることを指します。
2. なぜカーボンニュートラルに取り組むべきなのか?
世界がカーボンニュートラルに取り組むべき理由
地球温暖化による危機が叫ばれて久しい現代ですが、世界の平均気温は上がり続けており、工業化する前の1850年頃と比べると、2017年の時点ですでに1℃上昇していることが発表されています。
NOAA(米海洋大気局)とNASA(米航空宇宙局)によると、2020年の世界の平均気温は観測史上2番目に高かったことがわかっています。欧州とアジアでは20世紀の平均気温を2℃以上上回っていると発表されました。
海水の温度が上がることで海面が上昇し、国土が海に消えてしまうことも実際に起き始めています。最悪の事態が起きれば2100年までにニューヨークやサンフランシスコが水没するという予測もあり、地球温暖化は今すぐにでも止めなければいけない大問題なのです。
その鍵を握るのがカーボンニュートラル。温室効果ガスの排出量を実質ゼロにし、地球温暖化に歯止めをかける重要な取り組みです。
カーボンニュートラルが世界で注目される背景とは?
前述したように、地球温暖化は今ここにある危機であり、世界中の国が一丸となって取り組むべき問題です。2015年に採択されたパリ協定や2019年の国連気候サミットなど、多くの場で各国が地球を守るためのさまざまな取り決めを行っています。
今や民間にも気候変動を憂慮する動きは広まっており、環境活動家として知られるグレタ・トゥーンベリ氏が15歳のとき、「気候のための学校ストライキ」と称した登校ストライキを起こしたことは大きな話題となりました。
このように民間でも個人法人共に気候変動への意識は高まっており、地球温暖化への対策であるカーボンニュートラルに世界中から注目が集まっています。
3. 2050年のカーボンニュートラル実現に向けて
2050年までのカーボンニュートラルが必要な理由とは?
では、カーボンニュートラルの実現はなぜ2050年までに必要なのでしょうか? パリ協定では産業革命以前と比較して平均気温上昇を1.5℃に抑えるという目標を掲げています。そのためには一刻も早く温室効果ガスの排出を抑え、2050年までにカーボンニュートラルを実現することが必要なのです。
2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略とは?
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、日本は具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか? 経済産業省が関係省庁と連携して策定した「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」には成長が期待される14分野における実行計画が記載されています。
ここで成長が期待される14分野とされている産業は下記のとおりです。
<エネルギー関連>
洋上風力・太陽光・地熱
水素・燃料アンモニア
次世代熱エネルギー
原子力
<輸送・製造関連>
自動車・蓄電池
半導体・情報通信
船舶
物流・人流・土木インフラ
食料・農林水産業
航空機
カーボンリサイクル・マテリアル
<家庭・オフィス関連>
住宅・建築物・次世代電力マネジメント
資源循環関連
ライフスタイル関連
また、グリーン成長戦略では、企業が前向きにカーボンニュートラルに取り組めるよう、さまざまな政策ツールについても紹介されています。
4. カーボンニュートラルを実現するための方法と対策
2050年までにカーボンニュートラルを完全に実現するのは決して容易なことではありませんが、実現するためにはどのような方法があるのでしょうか。以下よりそれぞれ見ていきましょう。
カーボンニュートラルを実現するための方法
カーボンニュートラルを実現するためには、温室効果ガスの排出削減と吸収量アップが基本的な考え方です。
排出量を抑えるには、省エネやエネルギー効率アップ、CO2を排出しない発電方法を利用することなどが考えられますし、吸収量を増やすためには、植林など自然環境の保護だけでなく、大気中のCO2を除去するDACCSなどの「ネガティブエミッション技術」を利用することが考えられます。
カーボンニュートラルを実現するための技術
鉄鋼業はCO2の排出量がほかの産業に比べて多いため、技術開発が急がれていました。本製鉄、JFEスチール、神戸製鋼所の国内高炉3社と日鉄エンジニアリングによる、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託事業「COURSE50」プロジェクトは、水素を利用した新技術でCO2を3割削減することに成功しました。
水素を利用した技術は化学産業でも開発されており、水素とCO2からプラスティックの原料であるオレフィンを作り出す技術「人工光合成」が注目を集めています。
身近な例だと、すでに一般的になっているEV車の技術もカーボンニュートラルを実現するための技術のひとつです。
5. カーボンニュートラルの課題と問題点
カーボンニュートラルの問題点と懸念事項
このセクションではカーボンニュートラルの課題について見ていきましょう。
2050年にカーボンニュートラルを実現するためには、2030年の時点でCO2を45%削減しなければいけません。これはかなり厳しい目標数値と言えるでしょう。
CO2を排出しない発電方法に切り替えていくためには、現在の日本の状況では必然的に原子力発電に頼ることとなります。東日本大震災の影響もあり、これから原発を増やすというのはなかなか難しいことなのではないでしょうか。
また、カーボンニュートラルを達成した数値の検証も難しい問題だと言われています。
6. 日本政府によるカーボンニュートラルへの取り組み事例
2021年5月に地球温暖化対策推進法が改正
日本政府は、先に挙げた「グリーン成長戦略」だけでなく、さまざまな取り組みを行っています。
2021年5月には地球温暖化対策推進法が改正されました。
中央環境審議会・産業構造審議会はコロナ後を見据えた「地球温暖化対策計画」の見直しを行い、総合資源エネルギー調査会は「エネルギー基本計画」においてエネルギー政策の道筋を示しています。また、国と地方が地域における脱炭素の具体的実現について検討を行う場も設けられることとなりました。
7. 世界各国のカーボンニュートラルへの取り組み事例
世界の多くの国々が2050年までのカーボンニュートラル実現に向けて動いています。新規事業における雇用創出によって、経済の活性化を同時に狙う国も多いようです。
イギリスの取り組み事例
イギリスは、2030年までに政府が1.7兆円を支出する計画を立案しており、この計画によって民間投資が誘発されることによって、25万人の雇用が創出されると想定しています。
EUの取り組み事例
10年間で120兆円が投じられる「グリーンディール」投資計画では、水素エネルギーや洋上再生可能エネルギーを推進する戦略や、メタンの排出削減戦略などを掲げています。
また、EUは気候法による中期目標と長期目標を掲げています。2030年には55%削減を拘束力のある目標として設定。2050年にはEU域内のカーボンニュートラルの実現を目指しています。
ドイツの取り組み事例
ドイツでは、先端技術支援による景気刺激策6兆円のうち、8000億円が水素関連技術、3000億円が充電インフラ、1兆円がグリーンエネルギーの技術開発に投じられます。
フランスの取り組み事例
フランスでは2015年のエネルギー移行法によって、5年毎に「SNBC(国家低炭素戦略)」と「PPE(エネルギー多年度計画)」を策定することが定められています。これは地球温暖化対策の2大計画と言われており、これを軸に2050年のカーボンニュートラル達成を目指します。
韓国の取り組み事例
韓国では5年間でグリーン分野に3.8兆円を政府が投じることとなっており、それによって66万人近い雇用が創出されるとしています。
中国の取り組み事例
2020年9月の国連総会一般討論において、中国が「2060年までにカーボンニュートラルの実現を目指す」と表明したことが大きな話題になったのは記憶に新しいところです。中国は世界の石炭消費量の半数を占めており、今後の具体的な政策に注目が集まります。
アメリカの取り組み事例
アメリカは政権交代によって取り組みの方向性がかなり変わっています。トランプ政権下では環境規制を緩和する方向に動いていましたが、バイデン政権においては2050年までにカーボンニュートラルを実現するとしており、そのために「最新かつ持続可能なインフラを構築するため、高報酬の正規雇用を創出する」としています。
8. 優良な海外進出サポート企業をご紹介
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今回は「なぜ世界はカーボンニュートラルを2050年までに実現すべきなのか?」と銘打って、カーボンニュートラルの基礎知識から、今後の実現に向けた方法や対策、その課題や問題点、日本を含めた世界各国での取り組みの実例…などについて解説しました。
長らく問題視されてきた地球温暖化問題ですが、事態は非常に深刻なところまで来ており、世界各国が一丸となってカーボンニュートラルに取り組む必要があります。
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(参照文献)
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