日本と世界の再生可能エネルギーの現状と取り組み
再生可能エネルギーとは低炭素のエコなエネルギーの総称です。本テキストでは「日本と世界の再生可能エネルギーの現状と取り組み」と銘打って、再生可能エネルギーとは何か?といった基礎知識から、再生可能エネルギーの種類と特徴、そのメリットとデメリット、日本と世界の再生可能エネルギーに対する取り組みや現状について解説します。
菅首相が2050年までにカーボンニュートラルを実現することを宣言したのは2020年のこと。アメリカも2050年までのカーボンニュートラル実現を目指しており、世界は脱炭素社会の実現へと動いています。
二酸化炭素を排出しないエコなエネルギーは、日本では古くからおなじみの水力発電や、欧米でよく見られる風力発電などがありますが、その割合は年々増え続けており、バイオマス発電など新しい技術も生まれています。
そんなカーボンニュートラル実現の鍵を握る、再生可能エネルギーについて解説していきます。
▼日本と世界の再生可能エネルギーの現状と取り組み
- 1. 再生可能エネルギーとは何か?
- 2. 再生可能エネルギーの種類と特徴
- 3. なぜ再生可能エネルギーに取り組むべきなのか?
- 4. 再生可能エネルギーのメリット&デメリット
- 5. 日本の再生可能エネルギーの現状と取り組み
- 6. 世界の再生可能エネルギーの現状と取り組み
- 7. 世界の再生可能エネルギーに関する各種の現状
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1. 再生可能エネルギーとは何か?
再生可能エネルギーとは低炭素のエコなエネルギーの総称
まずは基本として、再生可能エネルギーとは何かについて簡潔に解説します。
再生可能エネルギーとは、使えば使うほど減っていく化石エネルギーとは違い「二酸化炭素を排出しないこと」「枯渇しないものであること」という特徴を持つ自然界にあるエネルギーのことです。
例えば太陽光や風力、地熱や水力による発電に加え、最近ではバイオマス発電といった、二酸化炭素を排出しないエコなエネルギーとして知られるものがそれにあたります。
つまり再生可能エネルギーとは、低炭素かつエコなエネルギーの総称と捉えるとよいでしょう。
2. 再生可能エネルギーの種類と特徴
この項では再生可能エネルギーの種類と特徴について解説します。
前項でも触れましたが、再生可能エネルギーは「自然界のどこにでも存在しているもの」であり、「二酸化炭素を排出しない」「枯渇しない」という特徴があります。どこにでも存在しているため、海外からの輸入に頼る化石エネルギーとは異なり、国内で生産することができます。
再生可能エネルギーの種類はおもに7つ
再生可能エネルギーにはおもに7種類にわけられます。
① 太陽光発電
② 水力発電
③ 風力発電
④ 地熱発電
⑤ バイオマス発電
⑥ 太陽熱
⑦ その他、自然界に存在する熱
以下よりそれぞれの概要について確認しておきましょう。
① 太陽光発電
太陽光を電気に変換する発電方法であり、すでに日本では一般家庭でも取り入れられるほど身近なものとなっています。日本の導入量は世界でもトップクラスですが、導入コストの問題や、天候に左右されやすく安定供給が難しいというデメリットがあります。
② 水力発電
水に恵まれた日本では、ダムを利用した水力発電は昔から行われていた方法ですが、環境への影響が大きいのがデメリットでした。近年は河川などを利用した中小規模の水力発電も行われています。安定的に電力を作り出すことができますが、太陽光発電と同じく、初期コストがネックとなりやすい発電方法です。
③ 風力発電
欧米では一般的で、日本でも整備が進められている方法です。風力エネルギーは昼夜問わず稼働させることができ、電気への変換率も高いため、効率の良さが大きなメリットですが、風の有無に影響されるため、安定性では弱い面も。風力発電は規模が大きければ大きいほどコストを抑えられるのですが、日本ではまだ大規模な導入には至っていません。
④ 地熱発電
火山の多い日本では安定的にエネルギーを作り出すことができる方法です。地下にあるマグマを熱源として発電するため、発電できる場所が温泉などの施設と近接してしまう可能性があります。日本では東北や九州などで地熱発電所が稼働しています。
⑤ バイオマス発電
廃棄物や間伐材などをリサイクルして発電する方法です。もともと捨てるものを利用して電気を作り出すため、廃棄物の減少にもつながります。こちらも安定供給が可能な発電方法ですが、燃料のもととなる廃棄物の運搬や管理などにコストがかかります。
⑥ 太陽熱
太陽光発電とは異なり、太陽の熱エネルギーを利用して給湯や暖房などに活用するシステムです。単純なシステムなので導入しやすいのですが、太陽を利用するため安定供給が難しく、初期費用がかさむのがデメリットです。
⑦ その他、自然界に存在する熱
寒冷地で活用できる雪氷熱利用や、地中の熱を利用する方法など、さまざまな熱を活用する方法があります。
3. なぜ再生可能エネルギーに取り組むべきなのか?
再生可能エネルギーに取り組むべき3つの理由
このセクションでは、なぜ再生可能エネルギーに取り組むべきなのか、その理由について解説します。
再生可能エネルギーに今取り組むべき理由は、大きく分けて下記の3つになります。
① 二酸化炭素を削減できる
② エネルギーの自給率が上がる
③ 国際競争力の強化
以下にてそれぞれ解説していきます。
① 二酸化炭素を削減できる
地球温暖化問題が深刻な現代において、二酸化炭素排出量の抑制は世界的な課題です。日本は2025年までにカーボンニュートラルを実現することを宣言しており、二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーに取り組むことはカーボンニュートラルを実現する上で絶対条件となります。
② エネルギーの自給率が上がる
再生可能エネルギーは国内で生産することが可能なエネルギーであるため、再生可能エネルギーに取り組むことは国内のエネルギー自給率の向上につながります。また、国内のエネルギー自給率が上がれば、海外から化石燃料を調達する資金も削減することができます。
③ 国際競争力の強化
再生可能エネルギーに関連する産業は今や成長が期待される大きな市場であり、世界各国でさまざまな新技術が研究・開発されています。日本でも新技術の研究は進んでおり、市場が年々拡大しているこの市場に参入しない手はありません。 また、市場規模が大きくなればなるほど、発電設備の整備は進み、地域の活性化や雇用の創出にもつながります。
変革の時期が到来!日本の製造業にチャンスあり
Digima〜出島〜では、1年間の進出相談や海外ビジネスの専門家・企業を対象に実施したアンケートをもとに「海外進出白書」を作成しております。
ここで、海外ビジネスの専門家・企業を対象に「今、最も海外進出のチャンス」がある業種は?」というアンケートを実施したところ、以下のコメントがありました。
このように製造業にはイノベーションの可能性が広がっていると考える専門家の意見が多く見られました。
日本の製造業は、他国に比べてイノベーションが遅れている部分もありますが、再生可能エネルギーに取り組むことで高い技術力を活かせるということです。
参照: 4,000社超を徹底調査! 海外進出白書(2022-2023年版)(Digima〜出島〜)
4. 再生可能エネルギーのメリット&デメリット
続いては、再生可能エネルギーのメリット&デメリットです。早速見ていきましょう。
再生可能エネルギーのメリット
再生可能エネルギーのメリットは、前項の「再生可能エネルギーに取り組むべき3つの理由」でも解説したとおり、環境保護につながることや、国内生産によってエネルギーの自給率が上がることなどが挙げられます。市場が拡大することによって雇用も生まれ、経済の活性化も見込むことができます。
再生可能エネルギーのデメリット
個々のエネルギーについてのメリットデメリットは前項の「再生可能エネルギーの種類」にも解説がありますが、再生可能エネルギーのデメリットとしては、安定的供給が難しいことやコストの高さが挙げられます。
また、エネルギー変換効率がまだまだ低いものも多く、その効率は火力や原子力発電に遠く及ばないのが現状です。今後、さらなる技術の進化が求められます。
5. 日本の再生可能エネルギーの現状と取り組み
日本の再生可能エネルギーの現状
このセクションでは日本の再生可能エネルギーの現状と取り組みについて見ていきましょう。
2020年10月、臨時国会の所信表明演説の中で菅首相は2050年までにカーボンニュートラルを実現することを宣言しましたが、それまでの日本は再生可能エネルギーに対してあまり積極的ではなく、2050年までに二酸化炭素を8割削減する、という目標にとどまっていました。
日本が2050年にカーボンニュートラルを実現するためには、2030年度には再生可能エネルギーの割合を36%以上にする必要があると言われていますが、2019年度の時点で18%となっています。
2019年度時点での世界各国の再生可能エネルギーの割合を見てみましょう。
カナダ:66.3%
イタリア:39.7%
スペイン:38.2%
ドイツ:35.3%
イギリス:33.5%
中国:25.5%
太陽光発電については世界でも設備数が多い日本ですが、この数値を見るとまだまだ遅れていると言わざるを得ません。この調査において、原子力に依存しているフランスは19.6%、トランプ政権のもと規制が緩和されたアメリカは日本よりも低い16.8%となっています。
日本の再生可能エネルギーが遅れた理由とは?
再生可能エネルギーを得るためには発電所などの設備を作る必要がありますが、立地に制約があるなど、場所の問題が一つの理由として挙げられます。再生可能エネルギーは前述したとおりコストが高いため、新規導入が難しいというのも問題となっていました。
また、日本ではバイオマス発電のための原料を輸入に頼っているため、輸入先の国内情勢などに影響を受ける可能性もあります。これは再生可能エネルギーを促進することで得られるメリットの一つ「国内自給率を上げる」ことと逆行している状況でもあります。
コストや立地、原料の問題などから、日本の再生可能エネルギー対策は世界に対して遅れを取ってしまったと言えます。
日本の再生可能エネルギーの取り組み
もちろん、日本も手をこまねいているわけではありません。太陽光発電の導入量は2017年時点で世界3位となっています。
また、日本では新制度によって発電事業を推進することも行われています。再生可能エネルギーの普及を目的として2012年に施行されたFIT制度は、太陽光発電や風力、水力、地熱、バイオマスといった再生可能エネルギーを、国が定める料金で電力会社が一定期間買い取るという固定価格買取制度です。
これにより、FIT制度以前は太陽光発電の累積導入量が約5GWだったのに対し、2017年度には約39GWとなり、太陽光発電の導入に大きく貢献することとなりました。
2050年カーボンニュートラル実現に向けて策定された「グリーン成長戦略」には、成長が期待される14分野における実行計画が記載されており、具体的な実行政策や役立つさまざまなツールについても記載があります。
6. 世界の再生可能エネルギーの現状と取り組み
世界の再生可能エネルギーの現状
日本に続いては、世界の再生可能エネルギーの現状と取り組みについて見ていきましょう。
世界でもっとも発電電力量が多いのは石炭であり、2016年には全体の4割近くを占めていました。中国では石炭の割合が7割近くですが、アメリカではシェールガスの登場以降、石炭よりもガスの割合が多くなっています。
また、原子力発電の割合が7割を超えるフランスでは石炭はほとんど使われていません。このように国によってエネルギー別の発電電力量の割合はさまざまです。
世界の再生可能エネルギーの取り組み
では、世界各国の再生可能エネルギーの取り組みはどのようなものなのでしょうか。欧米と中東で見ていきましょう。
■アメリカ
トランプ政権のもとでは再生可能エネルギーの導入に遅れを取ったアメリカですが、バイデン政権下ではカーボンニュートラルを2050年に実現するとしています。
テキサス州では最大出力63万kwの大規模な太陽光発電所「アクティナ発電所」が建設されました。
■欧州
欧州ではバイオマス発電の割合が他の国・地域に比べて多い傾向にあります。イギリス、ドイツ、イギリス、イタリア、スペインは太陽光、風力による発電が近年増加しています。
■UAE
産油国であるUAEも、近年はグリーン成長を国家戦略として掲げています。世界最大規模の太陽光発電所を建設し、水素を製造することにも意欲的です。
スマートシティ化する計画が進んでいるドバイでは、廃棄物からの発電にも取り組んでいます。
7. 世界の再生可能エネルギーに関する各種の現状
最後のセクションでは、資源エネルギー庁の資料(「国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案」)より抜粋して、世界の再生可能エネルギーに関する各種の現状について見ていきましょう。
世界の再生可能エネルギーの導入状況
世界各国における再生可能エネルギー発電設備は年々増加しています。そのペースは年間約180GW(GW=ギガワット)。1GWが原発1基分ですから、年々かなりの発電量が再生可能エネルギーへと置きかわっていることがわかります。
8. 優良な海外進出サポート企業をご紹介
海外進出サポート企業が多数登録
今回は「日本と世界の再生可能エネルギーの現状と取り組み」と銘打って、再生可能エネルギーとは何か?といった基礎知識から、再生可能エネルギーの種類と特徴、そのメリットとデメリット、日本と世界の再生可能エネルギーに対する取り組みや現状…などについて解説しました。
カーボンニュートラル実現に向けて世界が動く今、再生可能エネルギーの活用はどの国にとっても重要であり、産油国であるUAEも再生可能エネルギーの活用へと動いています。新しいエネルギーの活用は世界にさまざまな影響を与え、新しい産業が生まれる中で経済も大きく動いていくことでしょう。
カーボンニュートラルや再生可能エネルギーは大企業でなくても今後考えていかなければいけない問題であり、海外進出を考える上で各国の取り組みや現状を知ることも今後の世界情勢を考える上で重要となってきます。
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(参照文献)
・「国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案」 資源エネルギー庁
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