世界の最低賃金ランキング(2020年版) | 「平均年収」「最低年収」「最低時給」から解説
「世界の最低賃金ランキング(2020年版)」を「最低年収」「最低賃金」「平均年収」の3つのトピックから解説していきます。
さらに「日本の最低賃金」が先進国で最低&アジアでトップ圏内という事実と、日本企業が海外進出した際の「最低賃金という指標」の重要性について、さらにはベースアップを続ける「東南アジア諸国の最低賃金の最新情報」についても考察していきます。
「日本企業の海外進出」という観点から見ると、本テキストの重要ポイントは、日本企業が自社のサービス・商品を海外展開する際に、その国の「最低賃金」というファクターが重要な指標になるということです。
ご存じのように世界的に「最低賃金の引き上げ」は常識になりつつあります。ただ、日系企業がアジア諸国に海外展開するメリットとして、人件費や原材料費などの生産コストを削減できるという利点は、いまだに大きなインセンティブになっています。
しかしグローバル化が進み、各途上国が経済発展することによって、先述のように、世界の最低賃金は軒並み上昇傾向にあります。つまり「アジアなどの途上国なら人件費を抑えられる」というメリットは、次第に薄れつつあるのが21世紀における海外ビジネスの常識なのです。
しかし従来どおりの「単なるコスト削減」ではなく、所得が増えている途上国を魅力的な市場としてとらえた「販路拡大のための進出」も増えています。なぜなら人々の年収がアップすれば、その消費も拡大し、人々が住む国・地域が魅力的なマーケットとして成長していくからです。
つまり海外事業を展開する際、その国の「最低賃金」という指標は、「人件費の節約」という従来の目的に加えて、「新たな消費市場のリサーチ&事業展開」においても重要な指標となるということです。
本テキストでは、そんな新たな世界の潮流を踏まえた上で、『世界の最低賃金ランキング』を、日本企業が海外進出する際の指標となる「人件費の節約」と「新たな消費市場の開拓」という2つのファクターで考察していきます。
▼世界の最低賃金・平均年収ランキング(2020年版) | 先進国で最低・アジアでトップ圏内の日本の最低賃金
- 1. 世界の最低賃金ランキング(OECD加盟国ランキング)
- 2. アジア諸国における最低賃金の現状は?
- 3. アジア・オセアニア各国の最低賃金を比較
- 4. アジア諸国の最低賃金の最新情報
- 5. 「従業員の賃金上昇」という問題に悩む日系進出企業
- 6. 「最低賃金」から読み取れる海外ビジネスのチャンスとは?
- 7. 最低賃金だけじゃない!? 「世界各国の消費傾向を知る重要性」について
▼アナタの海外ビジネスを成功させるために
1. 世界の最低賃金ランキング
先進国では最低レベルの日本の最低賃金の実態
では、さっそく「世界の最低賃金ランキング」を見ていきましょう。
まずこのセクションでは、OECD(経済協力開発機構)が発表している、「実質最低賃金(real minimum wage)のランキング(2020年)」の最新のデータから見ていきます。
ランキングの基準は「最低年収(ドル)」としていますが、そこに「最低時給(ドル)」「平均年収(ドル)」を加えて、合計3つの項目で構成しています。
■世界の最低賃金ランキング(2020年版)※OECD加盟国
(「最低年収」「最低時給」「平均年収」)
出典: OECD 「Real minimum wages | Annual / Hourly 」「Average annual wages」
ちなみに「OECD(経済協力開発機構)」とは、ヨーロッパ諸国を中心に、日本アメリカを含めた38ヵ国が加盟している国際機関です。
1960年の設立以来、その加盟国は南北アメリカ、ヨーロッパ、アジア太平洋地域にまで広がっています。その多くは先進国となっていますが、メキシコ、チリ、トルコといった新興国も加盟しています。
※2014年3月12日の会合以降、理事会は、ウクライナ情勢を巡って、ロシアのOECD加盟手続きに関する活動を延期しています
※中国・インドなどは加盟していないので、アジア諸国の最低賃金に関しては後項にて別データで考察していきます
次項からは、「最低年収」「最低時給」「平均年収」の3つのトピックをランキング形式でクローズアップしていきます。
世界の最低賃金ランキング(年収換算)
まずは「最低年収」から見ていきましょう。
OECD加盟国における最低賃金ランキング(年収換算)のトップ10ヵ国には…
最低賃金ランキング(年収換算)のトップ10
■1位:ルクセンブルク(26,908.7ドル)
■2位:オーストラリア(25,464.6ドル)
■3位:オランダ(25,454.5ドル)
■4位:ニュージーランド(24,555.1ドル)
■5位:ドイツ(24,435.1ドル)
■6位:ベルギー(23,139.6ドル)
■7位:イギリス(23,044.9ドル)
■8位:フランス(22,206.5ドル)
■9位:韓国(22,206.5ドル)
■10位:アイルランド(21,526.2ドル)
…という結果となりました。
いわゆる“世界の賃金ランキングトップの常連国”が顔を並べているなかで、唯一のアジア勢である韓国が9位にランクインしていることに注目です。
世界の最低賃金ランキング(時給換算)
続いて「最低時給」で見ていきましょう。
OECD加盟国における最低賃金ランキング(時給換算)のトップ10ヵ国には…
最低賃金ランキング(時給換算)のトップ10
■1位:オーストラリア(12.9ドル)
■2位:ルクセンブルク(12.6ドル)
■3位:フランス(12.2ドル)
■4位:ドイツ(12.0ドル)
■5位:ニュージーランド(11.8ドル)
■6位:オランダ(11.3ドル)
■7位:ベルギー(11.2ドル)
■8位:イギリス(11.1ドル)
■9位:カナダ(10.5ドル)
■10位:アイルランド(10.3ドル)
…最低時給のランキングも、最低年収と同じ国々がランクインしています。
世界の平均年収ランキング
最後に「平均年収」で見ていきましょう。
OECD加盟国における平均年収ランキングのトップ10ヵ国には…
平均年収ランキングのトップ10
■1位:アメリカ(69,392ドル)
■2位:アイスランド(67,488ドル)
■3位:ルクセンブルク(65,884ドル)
■4位:スイス(64,824ドル)
■5位:オランダ(58,828ドル)
■6位:デンマーク(58,430ドル)
■7位:ノルウェー(55,780ドル)
■8位:カナダ(55,342ドル)
■9位:ベルギー(54,327ドル)
■10位:ドイツ(53,745ドル)
…という結果となりました。
注目すべきはやはり1位にランクインしたアメリカでしょう。
最低賃金が年収・時給ともに低いのに対して、平均年収となるととたんに世界1位となるところに、格差社会アメリカの現実が如実に表れていると言えます。
日本の「最低年収」「最低時給」「平均年収」ランキングは?
そして、気になる日本のランキングですが…
最低年収ランキング
■14位:日本(16,989.5ドル)
最低時給ランキング
■14位:日本(8.2ドル)
平均年収ランキング
■22位:日本(38,515ドル)
という結果となっています。
OECDに加盟している同じアジア諸国である韓国に後塵を拝し、年収・時給ともにアジア諸国では最下位(OECD加盟国内)となってしまいました(※1)。またOECD加盟国の先進国(※2)の中では、アメリカを少し上回ることで、なんとか最下位を免れた結果となっています。
※1.
2021年現在、東京都の最低賃金時間額は1,013円(2020年度)
※2.
先進国の定義は複数あるが、本テキストでは、世界銀行によって「高所得国」に分類される国々(2016年時点の一人当たり国民所得(GNI)が12,235米ドル以上の国々)とする
2. アジア諸国における最低賃金の現状は?
アジア諸国ではトップ圏内の日本の最低賃金
OECD加盟国ランキングに続いては、OEDCに加盟していない「アジア諸国における最低賃金の動向(月給)」を見てみましょう。
出典: MUGF BK Global Business Insight 臨時増刊号 AREA Report 507 『アジアの最低賃金動向(2018年12月)』
国単位で見ると、やはり中国の最低賃金の高さが目にとまります(上海(市内):367ドル、深セン:333ドル)。
さらにタイ(バンコク:282ドル)、マレーシア(262ドル)、インドネシア(ジャカルタ特別州:259ドル)、フィリピン(マニラ首都圏:249ドル)の3ヵ国が拮抗しています。
それら3ヵ国に続いて、カンボジア(182ドル)、ベトナム(ハノイ・ホーチミン・ハイフォンの都市部:179ドル)の2ヵ国が追随しており、少し遅れてミャンマー(101ドル)が続く形となっています。
上記を踏まえて、改めて日本の最低賃金を見てみると、確かに先進国においては最下位クラスの日本の最低賃金ですが、アジア諸国の中では依然としてトップであることが、お分かりいただけたと思います。
実質最低賃金とは?
このセクションの最後で改めて「実質最低賃金」について補足しておきます。
実質最低賃金とは、消費者価格指標と購買力平価説をもとに算出されており、各国の物価や賃金の変動を考慮した“実質的な労働報酬”として測定されているものです。(※ちなみに今回引用したデータは、各国の最低賃金としての「時給および月給」を米ドルに換算したものになります)
つまり、実質賃金とは、その国の景気と連動したもので、各国の賃金額を物価指数で割った値であり、その国ならではの賃金の持つ本来の値打ちを表しています。ですから、単純に賃金額だけで、その国が豊かである、あるいは貧しいなどと一概には判断できないことはご了承ください。
3. アジア・オセアニア各国(都市別)の最低賃金を比較
アジア・オセアニア各国における都市別の最低賃金を比較した結果は…?
では、このセクションからは、さらに国・地域を拡大して、アジア・オセアニア各国における都市別の賃金比較を見ていきましょう。
下記の表は、アジア・オセアニア各国における都市別の「製造業の一般工の平均月額賃金の比較」となっています。
出典: MUFG BK Global Business Insight臨時増刊号 AREA Report 5145 『アジア・オセアニア各国の賃金比較 (2019年5月8日)』
近年の高い経済成長を背景に、アジア各国の都市で賃金の上昇が続いていることは、多くのメディアで伝えられていますが、それらのアジア諸国と比較した場合、当然ながら日本(データでは横浜)の平均月収(2,834ドル)は、群を抜いて高いことが分かります。
また、前項のデータ同様に、シドニー(オーストラリア)がトップの3,637ドル。2位がオークランド(ニュージーランド)で3,003ドル。
3位の横浜(日本)に続いて、4位がソウル(韓国)で2,208ドル。5位が香港で2,212ドル。6位がシンガポールで1,946ドル。7位が台北(台湾)で1,097ドルとなっており、その他8位以降は1,00ドル以下という結果となりました。
4. アジア諸国の最低賃金の最新情報
毎年最低賃金のベースアップが続くアジア各国
ランキングの上位ではないものの、近年アジアの各都市では、法定賃金の引き上げが続いており、当然ながらタイやベトナムやインドネシアやカンボジアといったアジア諸国でも、最低賃金のベースアップが毎年実施されています。
このセクションでは、毎年最低賃金のベースアップが続くアジア各国の最新情報を見ていきます。
タイの最低賃金の最新動向
タイ政府は、2019年1月にバンコクの最低賃金を1.8%引き上げ、日額331バーツ(約1,200円)となりましたが、さらに2020年1月より、5~6バーツ(約18円~約22円、1バーツ=約3.6円)引き上げる方針を発表しました。
引き上げ案では、全国を賃金水準ごとに10地域に分類しており、最低賃金が最も高くなるのはチョンブリー県とプーケット県(336バーツ)、続いてラヨーン県(335バーツ)やバンコク都(331バーツ)となっています。
タイの最低賃金は2017年から改定が続いており、従来より4年間かけて段階的に引き上げる方針としていましたが、2020年1月1日よりタイ国内のほとんどの地域において、法定最低賃金が引き上げられたことになります。
ベトナムの最低賃金の最新動向
2016年まで毎年10%以上の賃金上昇が続いていたベトナム。
2017年1月1日より法定最低賃金を平均で7.3%増することが決められていましたが、2018年に最低賃金に関する協議が行われ、2019年の最低賃金を5.3%に引き上げることで合意。
2020年1月からは、ハノイやホーチミンなどの主要都市では5.7%引き上げとなっており、月額442万ドン(約21,000円)となっています。
例年だと1月1日付で毎年最低賃金を改定していたベトナムですが、2021年は同日付の改定を実施しておらず、2020年の最低賃金を継続しています。
インドネシアの最低賃金の最新動向
インドネシア政府は、2018年の最低賃金について、17年と比較して8.71%増としていましたが、2019年1月には8%の引き上げを実施。
2020年1月からは、ジャカルタで8.5%の引き上げで月額約428万ルピア(約34,000円)となっており、近年は8%台の上昇率となっています。
2020年10月、インドネシア労働省は、コロナ禍の国内経済の状況に配慮して、2021年の最低賃金を2020年と同等に調整するよう地方首長に回状を出していました。
2021年の最低賃金が最も高い地域は、西ジャワ州カラワン県の月額479万8,312ルピア(約35,987円 / 1ルピア=約0.0075円)。最も安いのはジョグジャカルタ市で、206万9,530ルピアとなっています。
カンボジアの最低賃金の最新動向
アパレル縫製業の発展が著しいカンボジアですが、2018年10月に、被服業及び製靴業に従事する労働者の月額最低賃金を月額182ドルとする旨を政府が発表。
カンボジアの法廷最低賃金は、2016年140ドル、2017年153ドル、2018年170ドル、2019年182ドルと急激な引き上げが実施されていましたが、新型コロナによる経済停滞の影響を受け、近年では最低の上昇率となっていました。
2020年9月、カンボジア労働職業訓練省は、2021年の最低賃金を月額192ドルに設定する省令を発表。2020年と比較すると2ドル増(1.1%増)となっており、新たな最低賃金は2021年1月1日から適用されました。
ミャンマーの最低賃金の最新動向
2018年5月、ミャンマー政府は、全国一律日額3,600チャット(約3.4ドル)の法定最低賃金を4,800チャットに引き上げました。
現在の最低賃金は2020年5月から見直しの対象となっています。
フィリピンの最低賃金の最新動向
2018年11月、フィリピンの労働雇用省は、マニラ首都圏の日額最低賃金(非農業部門)を25ペソ引き上げた537ペソ(10.6ドル)とすることを決定。
2018年はインフレ率が過去最高水準の5.2%を記録したことで、マニラ首都圏を含む多くの地方が最低賃金を引き上げました。しかし翌2019年は、通年のインフレ率が2.5%に抑えられたことで、最低賃金を引き上げた地方は、コルディリェラ、イロコス、東ビサヤ、西ビサヤ、カラガの5地方のみとなりました。
中国の最低賃金の最新動向
2018年4月1日、上海の法定最低賃金が、これまでの2,300元から2,420元(348.75ドル)に引き上げられました。
中国国内で最も最低賃金が高い都市は、上海市となっており、2019年4月の改定で月額最低賃金が従来比120人民元アップの2480元となっています。
中国の都市全体で見てみると、かつては毎年1割以上の賃上げが実施されていましたが、近年は2年〜3年に一度の改訂となっている都市が多いようです。
2020年は新型コロナ感染症拡大の経済への影響から、江西省や福建省などの一部の地域を除き、法定最低賃金は据え置かれています。
香港の最低賃金の最新動向
これまで香港では2年に一度最低賃金の見直しが行われており、2017年5月より、それまでの時給32.5香港ドル(約464円)から34.5香港ドル(約493円)に変更。
2019年5月1日からは、時給34.5香港ドル(約497円)から37.5香港ドル(約510円)に引き上げられましたが、2年目の見直し年となった2021年は、現行の時給37.5香港ドルで据え置くことが発表されています。
シンガポールの最低賃金の最新動向
シンガポールでは、原則的に最低賃金は定められておらず、給与支払額は労使の交渉と合意により決定されています。
具体的には、清掃業・警備業・造園業については最低賃金に関する規定があるものの、それ以外の業種については、最低賃金に関する法律上の規制はありません。
5. 「従業員の賃金上昇」という問題に悩む日系進出企業
上昇傾向にある途上国の給与昇給率
ここまで読んでいただければ、日本企業が多数進出を果たしてるアジア各国の最低賃金が軒並み上昇を続けていることが充分にご理解いただけたと思います。
下記は、JETROによる『2020年度 アジア・オセアニア進出日系企業実態調査』からの「賃金の前年比昇給率(2020年度→2021年度)」と、「経営上の問題点」に関するアンケート調査からの抜粋になりますが、本稿のテーマである「最低賃金の上昇」が、海外展開時の大きな問題として存在していることが分かります。
出典:2020年度 海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編) 『9. 賃金(1) 前年比昇給率』
出典:2020年度 海外進出日系企業実態調査(アジア・オセアニア編) 『4. 経営上の問題点(1)』
「賃金の前年比昇給率」のデータからもわかるように、発展途上国ほど前年からの給与昇給率が高くなっているのが分かります。また「経営上の問題点について」における海外進出をしている日系企業が経営上の問題点として挙げているのは、その全体の割合こそ下がってはいるものの、2020・2019年ともに「従業員の賃金上昇」が、それぞれ56.4%・65.8%ともっとも多くなっています。
掲載した調査の対象となった日系企業の進出先は、アジア全域及びオセアニアの計20ヵ国ですが、上記の「従業員の賃金上昇」を問題点に挙げた進出国別の内訳としては、インドネシア(77.4%)が最多で7割を超えており、そこから韓国(66.7%)、ベトナム(65.8%)、中国(63.3%)が続いています。
6. 「最低賃金」から読み取れる海外ビジネスのチャンスとは?
「最低賃金」の上昇は海外ビジネスにおいて必ずしもマイナスではない
前項で解説したように「最低賃金」の上昇に悩む日系企業が多いのは事実です。そうした企業は、製造業やIT業などに多く、海外で製品やソフトウェアを「安く」製造することによって利益を増やそうとしています。
しかし、小売業やサービス業、飲食業などといった、現地の市場を対象とした海外ビジネスにおいては、「最低賃金」の上昇は必ずしもマイナスではありません。
視点をずらせば、むしろメリットともとらえることが可能なのです。
なぜなら現地従業員の所得が増えるということは、現地の消費力を強化し、将来的に、小売業やサービス業、飲食業といった業種の顧客単価の増加に繋がっていくからです。
このことから…
・「最低賃金が低く、かつ上昇率も高くない国は、生産拠点への進出に有望」
・「最低賃金の上昇率が大きい国は、販路拡大先として有望」
…ということが言えます。
もし、あなたが海外ビジネスを検討していて、自社の進出先の選定を考慮しているならば、今回掲載した「世界の最低賃金ランキング」を参考に、この「最低賃金」というファクターを、自社の商品およびサービスを海外展開する際の指標として加えてみることを強くオススメします。
7. 最低賃金だけじゃない!? 「世界各国の消費傾向を知る重要性」について
中国とアメリカの消費動向を予測するための2つのトピックとは?
ここまで「最低賃金」というファクターが海外ビジネスにおける重要な指標となり得ることを解説してきました。
このセクションでは、そんな最低賃金と同一線上にある大きなファクターである「世界各国の消費傾向を知る重要性」について解説します。
自社の商品およびサービスを海外展開する際に、その国の生活者(消費者)の消費傾向を知ることは必要不可欠であり、グローバリズムが浸透する21世紀においては、その重要性は増すばかりです。
今回は、世界経済を牽引する2大国である中国とアメリカにクローズアップして、今後の両国の消費動向を予測する上で知っておきたい2つのトピックをご紹介します。
① 中国市場を牽引するデジタルネイティブ世代の「90後(ジョウリンホウ)」とは?
2020年の国勢調査によると中国の総人口は14億1,000万人となっています。日本同様に少子高齢化が懸念されている中国ではありますが、いまだ人口の50%以上が40歳未満で構成されています。
中国の世代区分として、生まれた年代に「後」をつけて呼ぶことがありますが、現在の中国国内でもっとも消費意欲が高いのが1990年代生まれの「90後(ジョウリンホウ)」であるとされています。
その一人あたりの消費金額は2017年の時点で3万5,107元(約56万円 1元=約16円)と、「80後(バーリンホウ)」「70後(チーリンホウ)」に続く3位ですが、前回調査(2015 年)と比較した際の伸び率がもっとも高い2.7倍であったというJETROによる調査レポート(※1)があります。
また同調査レポート(※2)によると「90後」の若者たちを中心とする世代は、いわゆるデジタルネイティブ世代とされており、中国のネット利用者(2020年12月時点で9億8,900万人)の中でも、40歳以下がその半数をしめていることに加えて、その半数のうち「90後」「00後(リンリンホウ)」が含まれる20代が約3割とされています。
そして、世界のデジタルネイティブ世代の例にもれず、彼ら「90後」「00後」はオンラインでの消費活動が活発なことに特徴があります。事実、中国のEC大手アリババは、同社が運営するECプラットフォーム「天猫(Tモール)」における国内最大のECセール「独身の日」の売り上げの46%が、彼ら「90後」「00後」によるものだったと発表しています。
これらのデータから今後の中国マーケットの消費動向を考えた場合、それを支えていくのは、20代〜30代のデジタルネイティブ世代であり、ECを始めとするオンライン市場はさらに拡大していく…ということは容易に想像できると思います。
※参照
「多様化する若者の消費動向、新たなトレンドも(中国)」JETRO
※1:
優鋪「2018消費動向報告」よりJETROが分析
※2:
中国インターネット情報センター「第42回中国インターネット発展状況統計報告」よりJETROが分析
② コロナ禍後に高水準を記録したアメリカの消費者物価指数
中国に続いては世界最大の経済大国であるアメリカの消費動向に関するトピックです。
アメリカのみならず、世界中でコロナ禍後の消費活動が懸念されていますが、2021年5月のアメリカの消費者物価指数(CPI=Consumer Price Index)が、前年同月比で5%上昇したことが大きな話題となりました。
消費者物価指数とは、米労働省労働統計局が毎月発表する、消費者が購入するモノやサービスなどの物価の動きを把握する統計指標ですが、上述の5%アップは、12年9ヵ月ぶりの高水準でした。もちろん新型コロナウイルスの影響で落ち込んでいた前年からの反動もありますが、前月比でも0.6%アップという、市場の予想を大きく上回った結果となったのです。
その要因としては、全米でのワクチン接種の拡大や給付金などの政府の経済対策を背景とした、モノやサービスへの急激な需要の増加があります。
事実、項目別に見てみると、前年比で航空運賃が24.1%、中古車が29.7%、ガソリンが56.2%と急激な上昇を見せていることから、人々の移動に費やす消費が急速に増えていることがうかがえます。また輸送サービスの11.2%アップに加えて、家賃2.1%、食品2.2%、衣料品5.6%と軒並み上昇したことで、景気が堅調となりつつある中でのインフレが懸念されるほどでした。
しかし、アメリカ連邦準備制度理事会(= FRB / アメリカの中央銀行制度である連邦準備制度の最高意思決定機関)は、これらの物価上昇は、コロナ禍の停滞の反動に過ぎず、インフレは一過性であるとしたのです。
事実、各先進国の2021年5月の消費者物価指数と比較してみると、イギリスで2.1%、ドイツで2.4%、フランスで1.4%、日本にいたっては0.1%となっており、先進国に限れば、消費者物価の上昇の急激な高まりは、アメリカ1国に限定されたものであることは間違いないでしょう。
ただ確実に言えることは、新型コロナウイルスのパンデミックのような、いわゆる〝想定外〟の事象が発生すると、アメリカのように一時的ではあるものの、人々が消費する商品・サービスの価格が急激に変化するという事実は心に留めておくべきです。
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今回は「世界&アジア諸国の最低賃金ランキング」と、海外ビジネスにおける「最低賃金という指標」の重要性、先進国で最低・アジアでトップの「日本の最低賃金」と、年々ベースアップを続けるアジア諸国の最低賃金の現状について解説しました。
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