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訪日外国人の保険・補償対応ガイド|事故や急病で事業者が困らないための備え方

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訪日外国人の27%は旅行保険に未加入のまま来日しています。宿泊施設・体験事業者・観光施設に向けて、入国後でも加入できる保険の案内方法、施設賠償責任保険など事業者側の備え、事故発生時の対応手順、多言語同意書と免責条項の限界までを実務ベースで解説します。

訪日外国人の受け入れで見落とされやすいのが、事故や急病が起きたときの備えです。観光庁の調査によると、訪日旅行にあたって民間医療保険に加入した人は約73%。およそ4人に1人は、無保険のまま日本を旅しています(出典:観光庁「令和5年度 訪日外国人旅行者の医療に関する実態調査」)。
宿泊先やアクティビティの現場で体調を崩したりけがをしたりしたとき、支払い手段のない旅行者と医療機関の間で板挟みになるのは、受け入れた事業者です。そして対応の巧拙は、そのまま口コミに残ります。
この記事では、訪日客に案内できる保険の仕組みから、事業者自身が備えるべき保険、事故発生時の手順、同意書と免責条項の限界までを実務ベースで解説します。

この記事でわかること

  • ・訪日客の保険加入状況と、未加入者が生む現場のリスク
  • ・入国後でも加入できる保険の内容と、事業者からの案内方法
  • ・施設賠償責任保険・傷害保険など事業者側が備える補償
  • ・多言語同意書に書くべき項目と、免責条項が効かない範囲

1. なぜ訪日客の保険が事業者の問題になるのか

加入率は73%。27%が未加入のまま来日している

観光庁が国内5空港で3,069人に実施した調査では、今回の訪日旅行にあたって民間医療保険に加入したと答えた人は約73%でした。未加入の理由としては「滞在日数が短い」「体力・健康に自信がある」という回答が多くを占めています(出典:観光庁「令和5年度 訪日外国人旅行者の医療に関する実態調査」)。
同じ調査では、旅行中に病気やけがをしたと答えた人が約4%いました。つまり「自分は大丈夫」と考えて未加入で来日した人の一定数が、実際に医療機関を必要としています。
短期滞在の外国人は日本の公的医療保険に加入していないため、医療費は全額自己負担です。数日の入院でも数十万円に達することがあり、旅行中の想定を大きく超えます。

支払えない事態が起きると、現場が板挟みになる

問題は、金銭的な負担が誰にかかるかがはっきりしないまま事態が進むことです。医療機関は診療を行い、患者は支払えず、間に立った宿泊施設やツアー会社が対応を求められる——という流れは実際に起きています。
法律上、事業者に支払い義務が生じるわけではありません。しかし現場では「連れてきた責任」を感じて立て替えてしまうケースがあり、それが回収できないまま終わることもあります
あらかじめ役割を決めておけば、この曖昧さは減らせます。誰が救急要請をするのか、誰が保険会社に連絡するのか、費用は誰が負担するのか。事前に線を引いておくことが、現場を守ることにつながります。

事故対応の巧拙は口コミに直結する

もう一つ見落とせないのが、対応の質が評判を左右する点です。旅行中のトラブルは記憶に強く残るため、投稿される口コミの熱量も高くなります。
興味深いのは、事故そのものより「そのあとどう扱われたか」が評価を分けることです。けがをしても、すぐに人を呼び、病院まで付き添い、保険の手続きを助けてもらえた旅行者は、感謝の投稿を残すことがあります。逆に、たらい回しにされたと感じた場合の投稿は厳しいものになります。
保険と補償の備えは、リスク管理であると同時に、顧客体験の一部でもあるという視点を持ってください。

2. 訪日客に案内できる保険|入国後でも加入できる仕組み

入国後に加入できる保険があることを知らない旅行者が多い

日本政府観光局(JNTO)は、訪日外国人向けに日本へ入国したあとでもオンラインで加入できる保険を案内しています。治療費の補償に加えて、通訳サービスや医療機関の紹介、医療費のキャッシュレス対応に関する交渉といったサービスが付帯するのが特徴です(出典:日本政府観光局「具合が悪くなったとき」)。
ところが、観光庁の調査でこの保険に加入したと答えた人はわずか5%でした。さらに、この保険を知らなかった人のうち3割は「知っていたら加入したと思う」と回答しています(出典:観光庁「令和5年度 訪日外国人旅行者の医療に関する実態調査」)。
つまり最大の障壁は、必要性の否定ではなく認知の不足です。事業者が伝えるだけで防げるトラブルがあるということになります。

どの場面で案内するか|予約時・到着時・受付時

案内のタイミングは早いほど効果があります。最も自然なのは予約確認メールに1行入れる方法です。渡航前であれば自国の保険にも加入できるため、選択肢が広く残ります。
次に有効なのがチェックインや受付の場面です。この時点ではすでに入国しているため、案内できるのは入国後でも加入できる保険に限られます。館内の案内資料に加入方法を記載しておくと、スタッフの負担なく伝わります。
アクティビティを提供する事業者の場合は、申込フォームに保険加入の有無を確認する項目を設けると、未加入者を把握した上で受け入れられます。当日の朝に慌てて確認するより、はるかに現実的です。

多言語での伝え方とツールの用意

案内文は短くしてください。長い説明は読まれません。「日本の医療費は高額になることがあります」「保険は入国後でも加入できます」の2点と、加入ページのQRコードがあれば足ります。
JNTOのサイトには訪日客向けの医療機関利用ガイドが用意されているため、これを印刷して受付に置くのも手です。自前で翻訳を作るより正確で、公的機関の資料であることが信頼にもつながります。
注意点として、特定の保険商品を勧める形にすると、実質的な販売行為とみなされる可能性があります。保険の募集には登録が必要なため、公的機関の案内ページを示すにとどめ、商品選択は本人に委ねる形が安全です。

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3. 事業者側が備える保険

施設賠償責任保険|自社に過失がある場合の備え

訪日客の保険とは別に、事業者自身の備えも必要です。基本となるのが施設賠償責任保険で、施設の管理や業務の遂行に不備があり、他人にけがをさせたり持ち物を壊したりした場合の賠償責任に備える保険です。
床が濡れていて転倒した、設備の不具合で負傷したといったケースが典型例になります。外国人客特有のものではありませんが、訪日客の場合は治療費が高額になりやすく、帰国後の対応が必要になることもあるため、補償額の設定は慎重に検討してください。
なお補償の範囲や免責事項は商品や引受保険会社によって異なります。自社で起こりうる事故を具体的に挙げた上で、それが対象になるかを個別に確認することが重要です。

傷害保険・イベント保険|過失がなくても対応できる備え

事故には、事業者に過失がないものも含まれます。参加者自身の不注意による転倒や、持病の発作などです。賠償責任保険はこうした場合には基本的に使えません。
そこで組み合わせるのが、参加者のけがそのものに対して保険金が支払われる傷害保険やイベント保険です。体験型のアクティビティやツアーを提供する事業者にとっては、実質的に必須の備えといえます。過失の有無を争う前に治療費を手当てできるため、初期対応が円滑になります。
参加者数や期間に応じて掛けられる商品もあるため、常時契約が難しい場合は開催ごとの加入を検討してください。

保険でカバーできない範囲を把握しておく

重要なのは、保険が万能ではないと理解しておくことです。地震や噴火に起因する事故、参加者の故意による行為、既往症に起因する症状などは、対象外とされることが少なくありません。
また、言語対応の不備によって説明が伝わらなかったことが原因の事故は、事業者側の過失として問われうる領域です。多言語の案内を整えることは、集客のためだけでなく、リスクを減らす行為でもあります。
体験型ビジネスにおける安全管理の考え方は訪日外国人向け体験型ビジネスの記事でも触れています。契約前に、想定シナリオを保険会社に提示して確認しておいてください。

4. 事故・急病が起きたときの対応手順

初動|救急要請と記録の残し方

最優先は人命の確保です。判断に迷う状態であれば、迷わず119番通報してください。言語が通じない場合でも、多くの消防本部で多言語対応の通訳を介した通報が可能になっています。
並行して行うべきなのが記録です。発生した時刻、場所、状況、目撃者、実際に取った対応を、その場で書き残します。写真が撮れる状況であれば現場の写真も残してください。後日の保険請求や、責任の所在をめぐる話し合いで、この記録が判断の材料になります。
記憶は驚くほど早く曖昧になります。落ち着いてから書こうとせず、対応中でも要点だけはメモを取る運用にしてください。

保険会社のアシスタンス窓口への連絡

患者本人が保険に加入している場合、次に確認するのは保険証券とアシスタンス窓口の連絡先です。多くの旅行保険には24時間対応の窓口が用意されており、日本語で対応してもらえる場合もあります。
この窓口に連絡すると、保険会社が医療機関と直接やり取りし、患者が窓口で立て替えずに済むキャッシュレス精算につながることがあります。患者本人に手続きを任せるより、事業者が窓口に電話を入れるほうが早く進むケースが多いのが実情です。
本人が証券を持っていない場合でも、クレジットカードに付帯している保険が使えることがあります。カード会社の連絡先も確認してみてください。

医療機関との連携をあらかじめ作っておく

事故が起きてから受け入れ先を探すのでは間に合いません。平常時のうちに、近隣で外国人患者に対応できる医療機関を把握しておくことが重要です。
確認しておきたいのは、診療時間、対応できる言語、クレジットカード決済の可否の3点です。これらを1枚の連絡先リストにまとめてフロントや事務所に備えておけば、担当者が不在でも対応できます。
可能であれば、事前に一度あいさつをしておくとやり取りが円滑になります。医療機関側も外国人患者の受け入れ先として認知されたいと考えている場合が多く、双方に利点があります。地域の観光協会が受け入れ医療機関の情報を持っていることもあるため、問い合わせてみてください。

5. 同意書・免責事項の整え方

多言語の同意書に入れておくべき項目

アクティビティや体験を提供する事業者にとって、参加同意書は基本の備えです。最低限入れておきたいのは、活動に伴う危険の内容、参加者に求める健康状態や年齢などの条件、持病やアレルギーの申告欄、緊急連絡先、保険加入の有無です。
持病の申告欄は特に重要で、事故が起きたときに原因を切り分ける材料になります。あわせて、加入している保険の有無を書いてもらえば、緊急時の連絡先確認が早くなります。
言語は、来訪者の多い言語を優先して用意します。機械翻訳のままにせず、内容が法的な意味を保っているかを確認してください。理解できない言語の書面に署名させても、説明したことにはなりません。

免責条項が効く範囲と、その限界

同意書に「一切の責任を負いません」と書けば安心、と考えるのは誤りです。消費者契約法では、事業者の損害賠償責任の全部を免除する条項は無効とされています。責任の一部を免除する条項についても、事業者の故意または重大な過失による場合は無効です。さらに、軽い過失の場合にのみ適用されると明示していない一部免除条項も無効とされています(出典:消費者庁「消費者契約法 逐条解説」)。
つまり、包括的な免責文言は書いても機能しません。同意書の価値は責任の回避ではなく、危険を具体的に説明し、参加者がそれを理解した記録を残せる点にあります
そのうえで、実際の賠償に備えるのは保険の役目です。書面と保険は代替関係ではなく、両方が必要だと考えてください。

6. よくある質問(FAQ)

Q1. 訪日外国人はどれくらい旅行保険に加入していますか?

観光庁の調査では、訪日旅行にあたって民間医療保険に加入した人の割合は約73%でした。裏を返せば約27%が未加入のまま滞在しており、未加入の理由としては滞在日数の短さや健康への自信が多く挙げられています。

Q2. 日本に入国したあとでも加入できる保険はありますか?

あります。日本政府観光局(JNTO)が案内している訪日外国人向けの保険は、入国後でもオンラインで加入でき、治療費の補償に加えて通訳サービスや医療機関の紹介、キャッシュレス対応の交渉が付帯します。ただし加入率は5%にとどまっています。

Q3. 同意書に「一切責任を負わない」と書けば免責されますか?

免責されません。消費者契約法では、事業者の損害賠償責任の全部を免除する条項は無効とされています。一部を免除する条項も、事業者の故意または重大な過失による場合は無効です。同意書は責任回避の手段ではなく、リスク説明の記録として位置づけてください。

Q4. 事業者はどんな保険に入っておくべきですか?

自社に過失があった場合に備える施設賠償責任保険が基本です。体験型のサービスを提供する場合は、参加者のけがに対応する傷害保険やイベント保険を組み合わせます。補償範囲は商品や引受保険会社によって異なるため、想定される事故を挙げて確認してください。

Q5. 事故が起きたとき、まず何をすべきですか?

人命の確保が最優先で、必要なら迷わず119番通報します。並行して、発生時刻・場所・状況を記録に残します。その後、患者本人の保険契約を確認し、保険会社のアシスタンス窓口へ連絡すると、医療機関との精算がスムーズになる場合があります。

7. まとめ

訪日客の約27%は旅行保険に加入しないまま日本を旅しており、そのうちの一定数が実際に医療機関を必要としています。無保険の旅行者が高額な医療費に直面したとき、間に立つのは受け入れた事業者です。
やるべきことは3つに整理できます。
1つ目は案内で、入国後でも加入できる保険があることを予約時や受付時に伝えます。知らなかっただけの旅行者が多く、伝えるだけで防げるトラブルがあります。
2つ目は自社の備えで、施設賠償責任保険を基本に、体験型サービスなら傷害保険を組み合わせます。
3つ目は手順の共有で、救急要請・記録・保険会社への連絡・医療機関の連絡先までを1枚にまとめておきます。
免責文言を並べても、消費者契約法の下では責任は免れません。書面で危険を説明し、保険で実損に備える。この2つを揃えることが、現場と顧客の双方を守ります。

8. 優良な海外進出サポート企業をご紹介

「Digima〜出島〜」には、厳正な審査を通過した優良な海外進出サポート企業が多数登録しています。

訪日外国人の受け入れにおけるリスク対策は、保険の設計だけでなく、多言語の同意書や案内資料の作成、現場スタッフ向けの対応手順の整備までを含みます。インバウンド領域に実績のある企業に相談することで、自社の業種と規模に見合った備えを過不足なく決められます。
「今の体制でどこまで対応できるのか」「何から整えるべきか」といった段階のご相談でも構いません。無料でご相談いただけますので、お気軽にお問い合わせください。

参考文献

・観光庁「令和5年度 訪日外国人旅行者の医療に関する実態調査」(2024年6月)
 https://www.mlit.go.jp/kankocho/news08_00002.html
・日本政府観光局(JNTO)「具合が悪くなったとき」
 https://www.jnto.go.jp/emergency/jpn/mi_guide.html
・消費者庁「消費者契約法 逐条解説」
 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/consumer_contract_act/annotations
・観光庁「外国人患者受入体制の充実及び医療費不払の防止」
 https://www.mlit.go.jp/kankocho/seisaku_seido/kihonkeikaku/inbound_kaifuku/ukeire/kankochi/kanja.html

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