【2026年最新】マレーシアでの会社設立ガイド|法人形態・手続き・費用・必要書類をわかりやすく解説
マレーシアは東南アジアの中でもビジネス環境の整備が進み、日本企業の進出先として高い人気を誇ります。英語が広く通じるビジネス環境、ASEAN域内へのアクセスの良さ、比較的低い事業コスト、そして親日的な国民性が、進出先としての魅力を高めています。
JETROの調査によると、2025年時点でマレーシアに拠点を置く日系企業は約1,500社にのぼり、製造業を中心にIT・サービス業での進出も増加しています。本記事では、マレーシアでの会社設立を検討する日本企業向けに、法人形態の選び方から設立手続き、費用、ブミプトラ政策などの注意点まで2026年最新情報をもとに解説します。
この記事でわかること
- ・Sdn. Bhd.・支店・駐在員事務所・EOR/PEOなど法人形態ごとの特徴と選び方
- ・CCM(SSM)登録から銀行口座開設までの設立手続きの流れ
- ・設立費用・資本金の目安とブミプトラ政策・外資規制の注意点
▼マレーシアでの会社設立ガイド
1. マレーシアでの法人形態の種類と特徴
マレーシアで日本企業が選択できる主な進出形態は以下の4つです。事業目的・進出規模・外資規制の状況に応じて最適な形態を選びましょう。
Sdn. Bhd.(Sendirian Berhad/非公開有限会社)
日本企業のマレーシア進出で最も一般的な法人形態です。マレーシア会社法2016(Companies Act 2016)に基づいて設立され、独立した法人格を持ちます。株主の責任は出資額に限定され、有限責任で事業を運営できます。
株主は最大50名まで、取締役は最低1名(マレーシア居住者)が必要です。外資100%での設立が認められる業種も多く、現地での営業活動、契約締結、収益事業のすべてを行えます。法人税率は24%で、中小企業向けの軽減税率も適用されます。
支店(Branch Office)
日本本社の延長としてマレーシアに設置する拠点です。独立した法人格を持たず、本社と同一の法的主体として扱われます。本社の事業と同じ範囲の活動を行え、マレーシアで得た利益には法人税24%が課されます。
ただし、マレーシアでは卸売業・小売業・飲食業などの一部業種で外国企業の支店設立が認められていません。また、支店の債務は本社が全責任を負うため、リスク管理の観点からSdn. Bhd.を選択する企業が多い傾向にあります。支店の設立にはCCM(SSM)への登録のほか、登録手数料としてRM5,000〜RM70,000が必要です。
駐在員事務所(Representative Office)
市場調査や情報収集を目的とした拠点で、営業活動や収益事業は一切行えません。設置期間は通常2〜3年に限定されており、更新も認められますが、あくまでも一時的な拠点という位置づけです。
設立手続きはMITI(国際貿易産業省)またはMIDA(マレーシア投資開発庁)への申請で行います。本格進出前のリサーチ拠点として活用し、事業性が確認できた段階でSdn. Bhd.へ移行するのが一般的な流れです。
EOR/PEO/GEO(雇用代行サービス)
近年注目を集めている進出形態で、現地に法人を設立せずにマレーシアで人材を雇用できるサービスです。EOR(Employer of Record)事業者が法的な雇用主となり、給与支払い・社会保険・税務処理などを代行します。
法人設立の初期費用や時間を大幅に削減でき、最短数週間でマレーシア事業を開始できます。少人数での市場参入や、現地の事業可能性を検証するフェーズに特に適しています。事業拡大後にSdn. Bhd.へ移行する企業も増えています。
2. 会社設立の手続き・流れ(ステップバイステップ)
マレーシアでSdn. Bhd.を設立する際の一般的な手続きを、6つのステップで解説します。
ステップ1:会社名の承認申請
まず、CCM(Companies Commission of Malaysia/マレーシア会社委員会、マレー語略称SSM)のオンラインポータルで会社名を申請します。申請費用はRM50で、通常1〜3営業日で結果が通知されます。
承認された会社名は30日間有効です。既存の商号と同一・類似の名称や、政府機関の名称を含むもの、不適切な表現を含む名称は却下されるため、候補を複数用意しておきましょう。会社名の末尾には「Sdn. Bhd.」を付す必要があります。
ステップ2:必要書類の準備
設立登記に必要な主な書類は以下の通りです。
・会社定款(Constitution)
・スーパーフォーム(Super Form):取締役・株主・会社秘書役の情報を一括で申請する統合申請書
・取締役・株主の身分証明書(パスポートのコピー)
・取締役・株主の住所証明書
・登記住所(Registered Address)の証明書
・法定宣誓書(Statutory Declaration):取締役による宣誓
日本からの書類は英訳が必要です。法定宣誓書はマレーシア国内のコミッショナー・フォー・オースの面前で署名する必要があるため、現地代理人への委任が一般的です。
ステップ3:CCM(SSM)への設立登記申請
CCMのオンラインポータル「MyCoID 2.0」を通じて、スーパーフォームと必要書類を提出します。登記手数料はRM1,000です。書類に不備がなければ、通常3〜5営業日で登記が完了し、会社登録番号が発行されます。
登記完了後、CCMから法人登記証明書を取得できます。2017年以降、紙の設立証明書は廃止され、電子証明書が発行される形式に変わっています。
ステップ4:会社秘書役の任命
マレーシア会社法2016では、法人設立後30日以内にマレーシア居住者の会社秘書役(Company Secretary)を1名任命することが義務づけられています。会社秘書役はMASB(マレーシア会計基準審議会)の会員資格を持つ者、またはCCMにライセンスを登録した専門家でなければなりません。
会社秘書役はCCMへの年次申告、取締役会・株主総会の議事録作成、会社法上の各種届出などを担当する重要な役職です。通常はコーポレートサービスプロバイダーに外部委託します。
ステップ5:法人銀行口座の開設
法人登記完了後、マレーシア国内の銀行で法人口座を開設します。Maybank、CIMB、Public Bankなどの地場大手銀行のほか、HSBC、Standard Charteredなどの外資系銀行も選択肢です。
口座開設には取締役の本人確認(対面)が原則必要で、開設までに2〜4週間かかるのが一般的です。事業計画書や取引先情報の提出を求められることもあるため、事前に準備しておきましょう。
ステップ6:税務登録・ライセンス取得・雇用パス申請
法人設立後、LHDN(マレーシア内国歳入庁)への法人税登録を行います。SST(Sales and Service Tax)の登録は、年間課税売上がRM500,000を超える場合に義務づけられます。
業種によっては個別の事業ライセンスが必要です(製造業のMIDAライセンス、飲食業の地方自治体許可など)。日本人駐在員の就労には雇用パス(Employment Pass)の取得が必要で、ESD(Expatriate Services Division)のオンラインポータルから申請します。
3. 会社設立にかかる費用・資本金の目安
設立時にかかる主な費用
マレーシアでSdn. Bhd.を設立する際の費用の目安は以下の通りです(2026年現在)。
・会社名申請費用:RM50(約1,700円)
・法人登記手数料:RM1,000(約34,000円)
・会社秘書役の年間報酬:RM1,200〜RM4,800(約41,000〜164,000円)
・登記住所の提供サービス:RM1,200〜RM3,600/年(約41,000〜123,000円)
・設立代行サービス手数料:RM3,000〜RM10,000(約102,000〜340,000円)
・監査費用(初年度):RM3,000〜RM8,000(約102,000〜273,000円)
※1リンギット=約34円で換算(2026年3月時点)
設立代行サービスを利用する場合、初年度の総額はRM8,000〜RM25,000程度が目安です。支店の場合は登録手数料がRM5,000〜RM70,000と高額になります。
資本金の目安
マレーシア会社法2016では、Sdn. Bhd.に法定の最低資本金額は定められていません(RM1から設立可能)。ただし、実務上は以下の点を考慮して資本金を設定する必要があります。
・雇用パス(EP)取得への影響:外国人駐在員のEP取得には、払込資本金RM500,000(約1,700万円)以上が目安とされています。ポジションや業種により異なりますが、資本金が少なすぎるとEP審査で不利になります。
・業種別の要件:製造業では「フルタイム従業員75名以上、または株主資本RM250万以上」がMIDAライセンスの基準となるケースがあります。卸売・小売業では外資参入にRM100万以上の払込資本金が求められます。
・WRT(Wholesale, Retail and Trade)ライセンス:卸売業はRM100万以上、小売業はRM100万以上の払込資本金が条件です。
日本企業のマレーシア現地法人では、RM100,000〜RM1,000,000の範囲で資本金を設定するケースが多く、雇用パスの取得を見据えてRM500,000以上とする企業が一般的です。
4. 会社設立時の注意点
ブミプトラ政策と外資規制
マレーシアにはブミプトラ政策(Bumiputera Policy)と呼ばれる、マレー系住民を優遇する経済政策があります。業種によっては、資本のうち30%以上をブミプトラが保有することが求められます。
ただし、すべての業種に一律に適用されるわけではありません。製造業でMIDAの認可を受けた場合や、MDEC(マレーシア・デジタル・エコノミー公社)認定のデジタル企業、イスカンダル地域の特区など、外資100%が認められるケースも多くあります。進出する業種・地域ごとに規制内容を確認することが重要です。
MIDA(マレーシア投資開発庁)の活用
MIDA(Malaysian Investment Development Authority)は、外国企業のマレーシア投資を促進する政府機関です。製造業やサービス業で一定の条件を満たす投資案件には、パイオニアステータス(5〜10年間の法人税免除)やITA(投資税額控除)などの優遇措置を付与しています。
MIDAは東京にも事務所を構えており、進出前の段階から相談が可能です。特に製造業での進出を検討する場合は、早期にMIDAへコンタクトを取ることで、最適な投資インセンティブの適用を受けられる可能性があります。
現地居住取締役の確保
Sdn. Bhd.の設立には、マレーシアに主たる居住地を有する取締役が最低1名必要です(会社法2016 Section 196)。マレーシア国籍者のほか、永住権保持者や就労ビザ保持者もこの要件を満たします。
設立時点では自社社員がまだマレーシアに居住していないケースがほとんどです。そのため、設立代行業者が提供するノミニーディレクターサービスを利用し、雇用パス取得後に自社社員へ交代する流れが一般的です。
雇用パス(Employment Pass)の取得
日本人駐在員がマレーシアで就労するには、ESD(Expatriate Services Division)が管理する雇用パスの取得が必要です。雇用パスにはカテゴリー1(月額給与RM10,000以上、最長5年)、カテゴリー2(月額給与RM5,000〜RM9,999、最長2年)などの区分があります。
申請にはEPオンラインシステムを通じて行い、審査期間は通常2〜4週間です。払込資本金や事業実績、雇用するポジションの必要性なども審査の対象となります。
監査義務と会計年度
マレーシアでは、すべてのSdn. Bhd.に監査済み財務諸表の作成が義務づけられています(一定の免除要件あり)。設立から18ヶ月以内に最初の監査報告書を提出する必要があります。
会計年度は自由に設定できますが、日本の親会社と合わせて3月末または12月末とするケースが多いです。監査法人はマレーシアで登録された公認会計士でなければなりません。
5. よくある質問(FAQ)
Q1. マレーシアで会社設立にかかる期間はどれくらいですか?
CCM(SSM)へのオンライン申請後、書類に不備がなければ通常3〜5営業日で法人登記が完了します。ただし、会社名の事前承認や必要書類の準備期間を含めると、全体で3〜6週間程度を見込むのが一般的です。設立代行サービスを利用すれば、書類準備から登記完了まで最短2〜3週間で対応可能な場合もあります。
Q2. マレーシアの会社設立に必要な最低資本金はいくらですか?
Sdn. Bhd.の場合、法律上の最低資本金はRM1(約34円)です。ただし、雇用パス(EP)の取得には払込資本金RM500,000以上が目安とされ、業種によってはさらに高額な資本金が必要です。資本金は設立後に増資することも可能なので、段階的に増やしていく方法もあります。
Q3. ブミプトラ政策は外資企業にどの程度影響しますか?
業種によって大きく異なります。製造業でMIDAの認可を受けた場合は外資100%が認められるケースが多く、IT・デジタル分野もMDEC認定で外資100%が可能です。一方、卸売・小売業や建設業などでは、一定割合のブミプトラ資本保有が求められる場合があります。進出する業種ごとに最新の規制を確認することが重要です。
Q4. マレーシアの法人税率と税制優遇はどのようなものですか?
法人税率は24%です。中小企業(SME:資本金RM250万以下かつ年間売上RM5,000万以下)は、課税所得RM150,000まで15%、RM150,001〜RM600,000まで17%の軽減税率が適用されます。また、MIDAを通じたパイオニアステータス(最大10年間の法人税免除)やITA(投資税額控除60〜100%)などの優遇措置もあります。
Q5. 支店とSdn. Bhd.はどちらがよいですか?
多くの日本企業はSdn. Bhd.を選択します。Sdn. Bhd.は有限責任で本社のリスクが限定され、税制優遇やMIDAの投資インセンティブの対象にもなります。一方、支店は本社の信用力をそのまま活用でき、本社との損益通算が可能な点がメリットです。ただし、卸売・小売・飲食業では支店設立が認められていないため、これらの業種ではSdn. Bhd.が必須となります。
Q6. 日本に居ながらマレーシアで会社設立できますか?
設立代行サービスを利用すれば、日本にいながら手続きを進められます。ただし、法定宣誓書の署名や銀行口座の開設には、取締役の渡航が求められるケースがあります。最近はビデオ通話での本人確認に対応する銀行も増えていますが、事前に確認が必要です。
Q7. EOR/PEO/GEOと法人設立はどちらを選ぶべきですか?
まだマレーシア市場の可能性を探る段階であれば、法人設立のコストと時間を省けるEOR/PEOがおすすめです。数名の雇用で事業を試し、市場性が確認できたら自社法人(Sdn. Bhd.)へ移行するステップが合理的です。一方、最初から大規模な事業展開や製造拠点の設立を予定している場合は、Sdn. Bhd.の設立が適しています。
Q8. マレーシアでの会社設立を専門家に依頼するメリットは?
CCM登録代行、会社秘書役の手配、銀行口座開設サポート、ブミプトラ政策への対応、MIDAへの投資申請など、設立手続きと規制対応を一括で任せられます。マレーシア特有の外資規制やライセンス要件は業種ごとに異なるため、専門家に依頼することで見落としを防ぎ、設立後のコンプライアンスリスクを軽減できます。
6. まとめ
マレーシアでの会社設立は、CCM(SSM)を通じたオンライン手続きで比較的スムーズに進められます。日本企業にはSdn. Bhd.(非公開有限会社)が最も一般的な形態で、外資100%が認められる業種も多く、MIDAの投資インセンティブを活用すれば税負担の軽減も可能です。
設立にあたっては、ブミプトラ政策による外資規制の確認、現地居住取締役の確保、雇用パス取得に必要な資本金水準の把握など、マレーシア特有の要件を事前に理解しておくことが重要です。設立費用は設立代行サービスを利用する場合で初年度RM8,000〜RM25,000程度が目安です。
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