海外事業戦略の重要性「よくある失敗事例から学ぶ」〜中小企業のための海外ビジネス成功完全マニュアル Vol.1〜
「海外事業戦略」とは進出成功までのルートを指し示す正確な地図であるべきです。つまり、海外事業戦略なくして海外進出の成功はあり得ません。
今回より『中小企業のための「海外ビジネス成功完全マニュアル」』というシリーズとして、日本の中小企業の皆さまに役立つ情報を、全12回に渡ってお届けします。
シリーズ第1回では、海外ビジネスの成功を左右する「海外事業戦略」の重要性について詳しく解説していきます。
多くの海外進出検討企業が陥りがちな失敗例や、成功に向けた戦略の立て方をお伝えし、これから海外展開を目指す中小企業の皆様が確実に成功への一歩を踏み出せるよう、具体的なアドバイスをご提供します。
どうぞ最後までお付き合いください!
▼ 海外事業戦略の重要性「よくある失敗事例から学ぶ」〜中小企業のための海外ビジネス成功完全マニュアル Vol.1〜
1. 「海外事業戦略」とは進出成功までのルートを指し示す正確な地図である
私は、海外進出を検討している中小企業の皆様を支援するにあたって、こんなたとえ話をします。
「海外事業とは長距離ドライブです。皆様はドライバーです。そして「海外事業戦略」とは長距離ドライブに絶対必要な地図であり、私たち専門家は皆様を目的地に導くカーナビのようなものです…」
つまり、地図が正確であれば、海外事業という長距離ドライブを最短距離で事故無く終えることができますし、カーナビがタイミングよく適時適切にドライバーにアドバイスすれば、運転もスムーズ、リアルタイムで交通規制や渋滞に対応できるでしょう。
しかし、なぜか海外ビジネスでは、まるで近所のスーパーにでも行く感覚で、海外事業戦略というドライブに必要な地図も無く、ましてや専門家というカーナビも搭載せずに、海外事業に臨む方が多いのが事実です。そして、国内事業でうまくいっているグッドドライバーほど、このミスを冒してしまいがちなのです。
なぜか海外事業がうまくいかない!? やり手A社長の失敗事例
下記は、私が中小企業の海外ビジネスの支援の現場で、実際に見聞した様々な事例をもとに〝よくあるケース〟としてまとめた「海外進出の失敗事例」です。
■X県のやり手社長Aさん:地元開催の香港フェアに意気込んで出展するも結果は…?
40代のAさんはX県の地方都市Y市で食品製造業を営んでいます。従業員はパートを含め80名ほど、その地域では大変有名な老舗企業で、看板商品は地域の名物にもなっています。
Y市もX県も少子高齢化が進み、市場が縮小していることにAさんは危機感を感じています。そのため、Aさんは積極的に県外へ営業を行い、大手量販店への販路拡大に成功、地元では「やり手社長」との評判です。2年前に現会長の父から事業を引き継いだ時に国の補助金を申請して生産設備をリニューアルし、生産余力もあります。
あるとき地元の高校の先輩で、旧知のB社長から、X県主催の『香港X県フェア』に誘われました。子どものころから好奇心旺盛なAさん、早速フェアの事務局のX県中小企業支援センターへ話を聞きにいったところ、県から渡航費に補助金が出て、英語と中国語ができる支援センターの職員も同行するとのことで、『香港X県フェア』へ出店することにしました。
実はAさんはB社長に会う前に、地元大手スーパーの仕入担当から「Aさんの会社の商品、X県の有名観光地Z島を訪れるインバウンド観光客に売れているみたいですよ。」とも聞いていたので、香港でも売れると自信を持っていました。
ところが、Aさんが自信を持っていた商品はなかなか売れませんでした。試食をしてくれて、美味しい!(とたぶん広東語か英語で)言ってくれるところまではいいのですが、その後が続かないのです。Aさんは拙い英語や翻訳機でコミュニケーションを取ろうとしますが、思ったようには行きません。
フェア中に何度か支援センターの仲介で香港と中国の会社との商談の機会もあったので、会社案内のページをネットで訳したものをパンフレット代わりにし、翻訳機を通じて会話しながら説明しましたが、慣れない貿易用語に戸惑う間に、「またの機会に」と言われ、商談が流れてしまいした。
結局売上は3日間で日本円換算で10万円にも満たず、売上歩合を引くと旅費の自己負担分にもならないという営業的には厳しい結果となりました。
それから数年、Aさんは毎年香港X県フェアに出店し続けています。毎回手ごたえは感じていますが、Aさんの商品が海外で沢山売れるようにはなっていません。会長職に退いた先代や幹部社員は海外事業を厳しい目で見ており、Aさんは悶々とした思いを持ち続けているようです…。
〝海外事業戦略なき海外進出〟はあなたの会社をダメにする!?
このAさんのような事例は、中小企業の海外ビジネス支援の現場にてよくお見かけします。
いざ海外に出ようというのに、英語の会社案内やカタログもなく、海外向けの見積書も準備せずに展示会や商談をする会社は実は珍しくありません。
成果の出ない海外ビジネスを長く続けることは、海外ビジネスで直接的にかかった費用以上に、組織の統制や士気にダメージを与えます。組織で共有されるべき戦略の無い海外展開の結果、Aさんの会社にも不協和音が出てきているようです。このままでは海外進出はおろか、国内事業にも悪影響を与えかねません…。
今回の失敗要因は、「海外事業戦略」という成功までのルートを指し示す正確な地図を持たずに、道案内をするカーナビも搭載せずに、ただやみくもに「海外進出」という長距離ドライブをスタートさせてしまったことにあるのです…。
2. 海外事業戦略の策定手順〜失敗を成功に変える3つのステップ〜
では、Aさんはどのような海外事業戦略を立てれば良かったのでしょうか?
ここからは、そのアウトラインとなる、海外事業戦略の策定方法について3つのステップ順に解説します。
(戦略の具体例は次回以降のシリーズでより詳しく解説します。ご期待ください!)
海外事業戦略の策定手順 ①「海外でも売れる」ストーリー作り
まず最初に取り組むべきことは「貴社の商品やサービスが海外でも売れるストーリーを作る」ことです。ストーリー作りには、マーケティングでよく使う分析手法を応用するとわかりやすく作れるかと思います。
応用しやすい代表的な分析方法として…
① 3C分析
企業(Company)、顧客(Customer)、競合(Competitor)の3つの要素を分析し、事業の成功要因を探る手法
② 4P分析
製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、プロモーション(Promotion)の4つの視点からマーケティング戦略を構築する手法
③ STP分析
セグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)を通じて市場を細分化し、最適なターゲット市場を選定し、競争優位を確立する手法
といった各手法が挙げられます。
これらの分析手法を駆使して、海外でも売れるストーリーを考える必要があるのです。
幸いにして、Aさんの会社の商品は、インバウンド観光客に売れているようですので、3C分析のうちの顧客分析、具体的にはどの国(や地域)の方が、どんな買い方をして、どんな消費をしているのかを探るのが、最初の切り口となりそうです。
実際に、どのような分析手法を用いて、「海外でも売れる」ストーリー作り
をしてくかは、次回シリーズにて詳しく解説します。
海外事業戦略の策定手順 ② 「バリューチェーン(価値連鎖)」分析
売れそうなストーリーが明確にできたら、次は自社がお客さまへ提供している価値がどのようにして生み出されて、つながっているのかを、いろいろな要素ごとに分析します。
この価値のつながり分析のことを「バリューチェーン分析」といい、経営やマーケティングの教科書ではよく出てくる分析手法です。
バリューチェーン分析では一般的に「自社の価値はどこでどのように生み出されているのか」を分析するために使われますが、海外事業戦略の策定においては、それに加えて「その価値は海外でも評価されるのか」「海外でも国内と同じように価値を生み出せるか?」ということも併せて考えていく必要があります。
それらを踏まえて、Aさんの場合は、自社の持つ価値(バリュー)がどこにあり、かつその価値は海外でも認めてもらえるものであるかを分析する必要があるのです。
このバリューチェーン分析を用いた具体的な分析方法についても、次回シリーズで詳述します。
海外事業戦略の策定手順 ③ 「事業化可能性調査(フィジビリティスタディ)」の実施
ストーリーを作り、自社の価値がはっきりしたら、それが実現できそうかの裏付けとなる的確な海外市場調査が必要です。この調査のことを「事業化可能性調査」と言います。(またはフィジビリティスタディ(略してF / S)とも言います。)
事業化可能性調査には、居ながらにしてできる「デスクリサーチ」と、現場で実施する「フィールドワーク」の2つの方法があり、うまく組み合わせることで、費用対効果の高い調査ができます。
ここで大事なことは、売れるストーリー作りと、バリューチェーン分析してから、的を絞って事業化可能性調査を行うことです。なぜなら、一口に海外といっても日本の何倍もある市場であり、国や地域ごとに経済発展の度合いや政治体制も違い、文化も歴史も違うため、あれもこれもと調査していると莫大な費用と時間がかかるためです。
さてAさんといえば事前調査を全くしていないようでした…。海外進出においては、進出前に「事業化可能性調査調査(フィジビリティスタディ)」をするべきなのですが…。
海外進出における「事業化可能性調査調査(フィジビリティスタディ)」についても、次回シリーズで詳しく解説していきます。
3. 海外事業戦略の実行にはPDCAを回す仕組みと組織作りが重要
ここまで海外事業戦略の策定におけるアウトラインを解説しました。
実際に海外事業戦略を実行するには、PDCAを回す仕組みと、海外事業戦略を実行するための組織作りも重要です。
国内事業と比較した場合、海外事業においては、このPDCAを綿密かつ速いサイクルで回す必要があります。
私はこれまでに世界43の国と地域を訪問してビジネスをしてきました。
そこで得た結論は「海外ビジネスでは、やってみてからわかることも多い」ということです。
適切な海外事業戦略を作り、的確な事業化可能性調査をすることは重要です。しかし、ビジネスには不確実性はつきもので、海外であれば不確実性は高まります。
そこで、PDCAを速く回すことで、必要であればすぐに軌道修正を行える体制を作っておくことが大事になります。
そのような素早い対応を中小企業で実現するには、組織作りが重要です。社長以下の社員がどのように取り組むのか、外部人材をどう活用するのか等、考えることは多数あります。
そういえば、Aさん、海外ビジネスはほとんど1人でやってて、会社でも浮いてるみたいですね…。
Aさんがまず取り組むべきことは、「組織全体で海外事業戦略を共有し、実行する体制を整える」ことだったのです。
この「PDCAを回す仕組みと組織作り」の実践法についても次回シリーズにて詳しく解説します!
4. 海外事業戦略の策定・実行なら「サウスポイント」にお任せ下さい!
あなたの会社の「海外事業戦略」は大丈夫ですか?
ここまで海外事業戦略の作り方のアウトラインを駆け足で解説しましたが、皆さんの会社には明確な「海外事業戦略」はありますか?
記事を読んで「Aさんの会社、まるでうちの会社…」と「うちあたい(※)」した方も少なくないのでは?
※「うちあたい」とは、当社のある沖縄の方言で「心当たりがあってギクッとしたこと」を指します
Aさんの会社の海外事業戦略が今後どうなっていくかについては、次回以降の記事で詳しくお伝えしますのでお楽しみに!
沖縄の優位性を活かしながら、沖縄・日本全国の企業の海外展開を支援
私たち、合同会社サウスポイントは、アジアに地理的・文化的に近い沖縄(那覇・石垣)を拠点に、沖縄の優位性を活かしながら、沖縄・日本全国の企業の海外展開を支援しています。
加えて本稿で解説している「中小企業の海外事業戦略策定のご支援」も幅広く承っております。
〝うちあたい〟してしまった企業の皆さま、ぜひお気軽に「サウスポイント」までご相談ください。
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