ブラジルのAIデータセンター視察|タンボレ・ペセン・エルドラード3拠点の違い
ブラジルは、中南米のデータセンター(DC)投資の約60%を占める最大市場です。三井物産戦略研究所によると、2022年から2025年の3年間のDC容量の年平均成長率は、中南米が11.7%で、中東・北アフリカ(10.1%)、欧州(7.25%)、日本・韓国(8.7%)を上回りました。米国は18.5%です。
ByteDance(TikTokの親会社)、Microsoft、AWSが投資を発表または計画している一方、税制優遇は動いています。輸出奨励地区(ZPE)でのDC事業を対象に含めた暫定措置令MP1307/2025号は2025年7月21日に施行されました。連邦税を免除するReDataの暫定措置は2026年2月25日に失効し、2026年9月1日に上院がReDataの法案(PL 278/2026)を承認しました。
この記事では、市場の規模と投資の状況を確かめたうえで、3つの視察先を比べます。視察先は、サンパウロ州バルエリ市のタンボレ地区、セアラ州のペセン輸出加工区(ZPE)、リオグランデドスル州エルドラードドスル市です。送電網の接続申請の動きと、視察の実行計画も整理しました。
この記事でわかること
- ・ブラジルのDC投資の規模と、ByteDance・Microsoft・AWSの投資の状況
- ・タンボレ、ペセンZPE、エルドラードドスルの3拠点の違いと、視察前に確認したい点
- ・送電網の接続申請の動きと、ZPEの税制優遇の最新の状況
- ・3拠点の視察の実行計画(発注構造の把握から帰国後の行動まで)
▼目次
1. ブラジルのデータセンター市場|中南米投資の約60%と各社の投資

ブラジルのDC市場の規模と成長、各社の投資、電力と税制の状況の順に確かめます。数字は三井物産戦略研究所のレポートと各社の報道にもとづきます。
市場規模|中南米のDC投資の約60%
三井物産戦略研究所のレポートは、ブラジルを、中南米全体のDC投資の約60%を占める最大市場と位置づけています。世界のDC容量に占める中南米の割合は2%ほどです。ブラジルデータセンター協会(ABDC)は、国内のDC数を162施設と推定しています(2025年2月時点)。
2022年から2025年の3年間のDC容量の年平均成長率(CAGR)は、中南米が11.7%、中東・北アフリカが10.1%、欧州が7.25%、日本・韓国が8.7%、米国が18.5%です。データはBloombergNEFで、算出は三井物産戦略研究所です。
出典:三井物産戦略研究所「中南米のデジタルハブとして台頭するブラジル―再エネ大国はデータセンター事業を新産業にできるのか―」(2026年5月)
各社の投資|ByteDance・Microsoft・AWS
ByteDanceは、ブラジル北東部のセアラ州のDCに、2,000億レアル超(377億ドル)を投じる計画だと、South China Morning Postが2025年12月に報じています。将来形の報道で、計画段階の内容です。
Microsoftは、DCDによると、2024年9月に3年間で147億レアルの投資を発表しました。BNamericasは2026年2月に、AI向けのデータホール2室が稼働し、第1期が1月に稼働したと伝えています。AWSは、DCDによると、2034年までに101億レアル(18億ドル)を、ブラジルのDC事業に投じるとしています。
このほか、三井物産戦略研究所は、地場のEleaがリオデジャネイロで計画する「Rio AI City」が2032年までに最大3.2GWに、米DigitalBridge傘下のScala Data Centersがリオグランデドスル州で計画する「Scala AI City」が最大4.75GWに拡張できる設計だと紹介しています。
出典:三井物産戦略研究所「中南米のデジタルハブとして台頭するブラジル―再エネ大国はデータセンター事業を新産業にできるのか―」(2026年5月)、South China Morning Post「ByteDance’s TikTok to invest more than US$37 billion in Brazil data centre」(2025年12月4日)、DCD「Microsoft to invest $2.7bn in cloud and AI infrastructure in Brazil」(2024年9月27日)、BNamericas「Microsoft activates its first two AI data halls in Brazil」(2026年2月12日)、DCD「AWS to invest $1.8bn expanding Brazilian data center operations」(2024年9月12日)
電力と税制|再エネ88.2%とZPEの税制優遇
三井物産戦略研究所によると、ブラジルの電源構成の88.2%(2024年)が再エネで、そのうち水力が55.3%です。
税制では、ジェトロの短信によると、ルーラ大統領が2025年7月21日に、ZPEでのDC建設を促進するため、暫定措置令(MP)1307/2025号を即日施行しました。ZPEの恩典を受けるには、税引き前売上高(暦年ベース)の80%以上の輸出が求められます。
連邦税を免除するReData(暫定措置令1318/2025号)は、TMCによると2026年2月25日に失効しました。その後、PL 278/2026が2026年9月1日に上院で承認されたと、上院の記事は伝えています。
出典:三井物産戦略研究所「中南米のデジタルハブとして台頭するブラジル―再エネ大国はデータセンター事業を新産業にできるのか―」(2026年5月)、ジェトロ・ビジネス短信「ブラジル、国外向けデータセンター事業に税恩典を付与」(2025年8月15日)、TMC「Senado deixa caducar MP do Redata e cria impasse sobre benefícios fiscais a data centers」(2026年2月26日)、Senado Notícias「Incentivo para instalação de data centers no Brasil é aprovado pelo Senado」(2026年9月1日)
2. 3つの視察先を比較する|タンボレ・ペセンZPE・エルドラードドスル
3つの視察先は、DCの集積地区、ZPE内の計画、計画地と、段階が異なります。先に表で比べ、そのあとで各拠点の内容を示します。
3つの視察先の比較|種別・所在・電力
3つの視察先を、種別、所在地、報じられている状況、視察前に確認したい点で並べます。表の内容は、各拠点の説明の章で出典を示します。
| 比較軸 | サンパウロ州タンボレ | セアラ州ペセンZPE | エルドラードドスル(RS州) |
|---|---|---|---|
| 拠点の種別 | データセンターが所在する地区 | 輸出奨励地区(ZPE)内のDC計画 | Scala AI Cityの計画地 |
| 所在地 | サンパウロ州バルエリ市タンボレ地区 | セアラ州サンゴンサロ・ド・アマランテ市 | リオグランデドスル州エルドラードドスル市 |
| 報じられている状況 | Aligned(旧ODATA)のSP03が所在 | ByteDance向けDC。データホール20室、2027年第3四半期に稼働開始の見込み | 初期容量54MW、最大4.75GW。市の条例が2024年12月に可決 |
| 視察前に確認したい点 | 各施設の電力供給と接続の状況 | ZPEの恩典の要件(売上高の80%以上を輸出)の運用と、税制の最新の法令 | 許認可と電力接続の進捗 |
表のとおり、タンボレはDCが所在する地区、ペセンはZPE内のDC計画、エルドラードドスルは計画地と、段階が異なります。見に行く段階を先に決めておくと、現地で得られる情報の種類が揃います。
タンボレ|バルエリ市のDC所在地区
サンパウロ州バルエリ市のタンボレ地区には、datacentermapによると、Aligned(旧ODATA)のSP03(Alameda Araguacema, 187)が所在します。同サイトは、ODATAが2023年にAlignedに取得されたと記しています。
出典:datacentermap「ODATA SP03 in Sao Paulo」
ペセンZPE|ByteDance向けDC計画
ペセンの輸出加工区(ZPE)は、2010年6月16日の連邦政令で、サンゴンサロ・ド・アマランテ市に創設されました。運営するZPE Ceará公式サイトは、ペセン複合施設の企業としています。
Diário do Nordesteによると、ByteDance(TikTok)のDCは、Omniaが建設を担い、データホールは20室で、2027年第3四半期の稼働開始を見込んでいます。ZPEの恩典を受けるには、ジェトロの短信が伝えるとおり、税引き前売上高(暦年ベース)の80%以上の輸出が求められます。この運用が、視察での確認の中心になります。
出典:ブラジル下院の法令データベース「Decreto 16/06/2010」(ペセン輸出加工区の創設)、ZPE Ceará公式サイト、Diário do Nordeste「Data center do TikTok avança para fase de montagem e receberá aviões com máquinas da China」(2026年5月2日)、ジェトロ・ビジネス短信「ブラジル、国外向けデータセンター事業に税恩典を付与」(2025年8月15日)
エルドラードドスル|Scala AI Cityの計画地
リオグランデドスル州エルドラードドスル市では、米DigitalBridge傘下のScala Data Centersが「Scala AI City」を計画しています。初期容量は54MWで、最大4.75GWまで拡張できる設計です。DCDによると、市の議会が支援の条例を2024年12月に可決しました。
視察では、計画がいつ動き出すかを、現地の担当者に確かめてください。
出典:三井物産戦略研究所「中南米のデジタルハブとして台頭するブラジル―再エネ大国はデータセンター事業を新産業にできるのか―」(2026年5月)、DCD「Brazilian local government passes law to support Scala's AI City data center campus」(2024年12月20日)
3. 電力網リスク|送電網の接続申請は12件から52件へ

DCの建設には、電力の確保が欠かせません。ここでは、三井物産戦略研究所のレポートから、送電網の接続申請の動きと、政府の送電網整備の計画を確かめます。
接続申請の動き|2024年5月の12件から2025年6月の52件
三井物産戦略研究所によると、鉱山エネルギー省への送電網接続申請は、2024年5月時点の12件に対し、2025年6月時点では52件に増えました。申請が約1年1か月で約4.3倍(52÷12で算出)になった計算です。
すべてのプロジェクトが接続許可を得た場合、DC向けの電力需要は、2035年までに2025年の2.5GWから13.2GWへ拡大する可能性があります。2.5GWは、国家電力系統運用者(ONS)が2025年9月時点で接続許可を出したプロジェクトの電力需要の累計です。
出典:三井物産戦略研究所「中南米のデジタルハブとして台頭するブラジル―再エネ大国はデータセンター事業を新産業にできるのか―」(2026年5月)
送電網の整備計画と視察での確認
同レポートによると、政府は、DCや水素の需要に対応する送電網の整備に、今後10年間で約240億ドルの投資を想定しています。
視察では、接続申請の状況、接続許可までの見込み、自前の電源の有無を、3つの拠点で同じ質問として聞いてください。
出典:三井物産戦略研究所「中南米のデジタルハブとして台頭するブラジル―再エネ大国はデータセンター事業を新産業にできるのか―」(2026年5月)
4. 3拠点の視察の実行計画|6つの要素

視察を成果につなげるには、誰に何を確認し、どの拠点を回り、帰国後に何をするかまで決めておく必要があります。ここでは、視察前後に確認したい6つの要素を示します。
データセンター進出の発注構造の把握
投資する側と、設備や工事を担う側の関係を、渡航前に整理します。ハイパースケーラーが自社で建設する案件と、コロケーション事業者の施設とでは、窓口になる相手が異なるかを確かめる必要があります。拠点ごとに、建設や設備の発注を誰が担っているかを、訪問先に確認してください。
渡航前に確定させる自社の条件
類似規模のプロジェクトの実績、ブラジルの電気規格への適合状況、ZPEの輸出比率(80%以上)への対応可否、現地での保守の体制、資金調達の方法、ポルトガル語や英語での対応力を、渡航前に一覧にします。現地で即答できるように、社内で確定させておきます。
視察する3拠点の選び方
サンパウロ州、セアラ州、リオグランデドスル州は離れた別々の州です。何拠点を回るかは、社内で決めた視察の目的と優先度に沿って決めます。
ブラジル視察のメンバー構成
電気設備の技術者、現地の法務・税務の助言者、データセンター分野の専門用語に対応できるポルトガル語の通訳、関係構築を担う事業開発の責任者を候補に、目的に合わせて構成します。送電網の接続や電力購入契約の話題が多いため、通訳には電力分野の用語への対応力を確認してください。
ブラジルの現地で聞く質問リスト
訪問先が変わっても同じ質問を聞き、答えを同じ表に書き込みます。質問は次の6つです。(1) 送電網の接続申請の状況と、接続許可までの見込み。(2) 電源が使えない場合の備え。(3) 再エネの電力購入契約の条件。(4) ZPEの輸出比率の要件をどう満たすか。(5) 建設の人員の確保状況。(6) 冷却方式と水の使用量。
「税制優遇は確実に受けられますか」という質問は、答えが現時点の法令に左右されます。「現時点で有効な措置は何か」「法律になった後の適用条件はどうなるか」と尋ねてください。
ブラジル視察の帰国後にやること
帰国後は、3拠点の回答を同じ表にまとめ、電力接続の実現性を、現地の担当者や専門家に照会します。そのうえで、狙う拠点と、参入の形(設備の供給、工事の下請け、ZPEへの投資など)を絞り込み、税制の最新の法令を確認して、投資判断の時期を決めます。時期の目安は、社内で設定してください。
▶ 推奨アクション
・ZPE Ceará公式サイトで、輸出加工区の制度と立地の最新情報を確認する
・三井物産戦略研究所のレポートで、市場規模と送電網の接続申請のデータを確認する
・データセンターの電力・税制の確認先と、ZPEに詳しい現地専門家の紹介をDigima〜出島〜に相談する
5. ブラジル視察のよくある質問
ブラジルのデータセンター視察について、視察前に押さえたい3つの点に答えます。通訳、税制優遇、相談先の順に並べています。
現地では通訳が必要ですか。
送電網の接続や電力購入契約、税制の話題を扱う場合は、データセンター分野の専門用語に対応できるポルトガル語の通訳の手配を検討してください。
ZPEの税制優遇は確実に使えますか。
確実とは言えません。2025年7月21日に施行されたMP1307/2025号は、ZPEでの国外向けデータセンター事業を対象に含めました。連邦税を免除するReDataの暫定措置は2026年2月25日に失効しました。その後、2026年9月1日に上院がReDataの法案(PL 278/2026)を承認したと上院の記事は伝えています。
ブラジルのデータセンター視察の相談は、どこにすればよいですか。
電力と税制は公開資料で確認し、法人設立や契約はブラジルの専門家に相談します。送電網の接続申請の動向は三井物産戦略研究所のレポート、ZPEの制度と立地はZPE Cearáの公式サイトで確認できます。相談先が決まらない段階では、専門家の紹介から始めるのが近道です。Digima〜出島〜では、専門コンシェルジュが内容をヒアリングし、ブラジルの条件に合う支援企業を3〜5社に絞って無料で紹介しています。
6. ブラジルの現地視察はDigima〜出島〜に相談
ブラジルのデータセンター進出を検討する企業が、視察の前に整理しておきたい点をまとめます。
ブラジルのDC市場は、中南米の投資の約60%を占めます。一方で、税制優遇の法令は、2026年2月のReData失効から9月の上院承認へと、動きが続いています。
だからこそ、視察の前に、どの段階の拠点を見に行くのか、何を確認するのかを整理して、現地に入ることが大切です。同じ質問を持って3つの拠点を回ると、自社が関われる場面が見えてきます。
Digima〜出島〜では、ブラジルへの進出やデータセンター関連事業の検討を支援する専門家・現地パートナーを無料でご紹介しています。視察後の進出検討から、現地パートナー探し、税制の最新動向の確認まで、貴社の状況に合わせた支援企業をお探しできます。まずは無料の海外進出タイプ診断で、自社に合った進出スタイルを確認してみてください。
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