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ユニクロの米輸入停止・カゴメの中国撤退の背景を解説 / 「人権デューデリジェンス」が日本企業の海外ビジネスに与える影響とは?

掲載日:2021年07月22日

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「中国の人権問題が日本企業の海外ビジネスに与える影響」と、その背景にある「人権デューデリジェンス」についても併せて解説します。

具体的には、国際社会で問題になっている中国の新疆ウイグル自治区における人権弾圧と、その背景にある人権デューデリジェンスの存在、さらにそれらがユニクロ・カゴメ・ミズノといった大手日本企業の海外事業に、どのような影響を与えているかを考察していきます。

本文内で詳しく解説しますが、2021年5月、日本のファーストリテイリングによるユニクロの男性用シャツが、ウイグル人への強制労働が疑われている中国の新疆ウイグル自治区の綿花で製造された可能性があるとして、同年1月にアメリカへの輸入が差し止められていたことが明らかになりました。

7月には、フランス検察当局が、同人権問題を巡って、衣料品小売り4社に対する捜査を開始したとの発表がありましたが、その4社の中にユニクロのフランス法人も含まれていたのです(※ほかに、スペインのインディテックス(ZARA)、フランスのSMPCグループ(サンドロ・マージュ・クローディ・ピエルロ)、米スケッチャーズの3社)。

また同年4月には、日本のカゴメが、国際社会で中国の人権侵害が批判されたことを受けて、新疆ウイグル自治区で生産されたトマト加工品の使用中止を発表。その影響で中国ではカゴメの不買運動が発生しました。

これらの背景には「人権デューデリジェンス」の存在が深く関係しています。

本文内でくわしく解説しますが、「人権デューデリジェンス」とは、すべての企業は人権を重視した中で企業活動を行うべきだとするものです。欧米諸国を中心に重要視されている価値観ですが、アジアではまだまだ浸透しているとは言えないのが現状です。

しかし国際市場を舞台にビジネスを展開する日本企業が、自社の事業活動にともなう人権侵害のリスクを把握しておくべき必要性は年々高まっているのです。

「Digima〜出島〜」の既存記事『米中対立の今後と日本企業への影響〈1〉 | バイデン政権によって広域化する世界の貿易摩擦』では、アメリカのバイデン政権の誕生によって、トランプ時代以上に米中貿易摩擦の範囲が拡大し、日本が間接的にも影響を受ける恐れがあると論考しました。

なぜなら「トランプからバイデンになっても米中対立が継続する」ことに加わえて、バイデン政権が「日本などの友好国や同盟国と一緒になって中国に対抗するというスタンス」を明確にしているからです。

したがって、バイデン政権下ではトランプ時代以上に国際貿易摩擦の範囲が拡大し、日本企業も間接的な影響を受ける恐れがあるのです。その大きなトピックが今回解説する、「中国の新疆ウイグル自治区における人権弾圧」であり、その背景にある「人権デューデリジェンエス」なのです。

Photo by on 𝗔𝗹𝗲𝘅 𝘙𝘢𝘪𝘯𝘦𝘳 on Unsplash

1. 国際貿易にも深く影響を与える「新疆ウイグル自治区の人権問題」とは

欧米各国が中国に経済的な制裁処置を発動

米バイデン政権の発足以降、アメリカを中心とする欧米諸国(特にイギリス)と中国との対立が先鋭化するなか、大きなトピックとなっているのが、中国西部の新疆ウイグル自治区における人権侵害です。

2021年3月、米国や英国、カナダなどは、中国の習近平政権が、中国に5つある自治区のひとつである新疆ウイグル自治区にて強制労働などの人権侵害を続けているとして経済的な制裁措置を発動しました。

国連など報告によると、中国は同自治区内のイスラム教徒のウイグル人たちを職業訓練所と呼ばれる施設で洗脳教育(中国語、中国文化の習得など)を実施し、また綿花栽培などで強制労働を強いているとしています。当然、習政権はそれに強く反発し、近年はこの「新疆ウイグル自治区の人権問題」が国際経済の領域にも深い影響を与えているのです。

欧米ブランドのH&Mやナイキが中国でボイコットの憂き目に

たとえば、スウェーデン衣料品大手「H&M(ヘネス・アンド・マウリッツ)」は、新疆ウイグル産の綿花はもう使用しないと表明しましたが、それによって中国国内のネットやSNS上では、「外国企業の行動には納得できない」、「もうH&Mの商品なんて買うな」など反発や不買運動を呼び掛ける声が瞬く間に拡大しました。

2021年7月、H&Mは同年3月~5月期の決算を発表しましたが、中国国内での総売り上げが前年同期比で28%も減少し、H&Mの中国国内の店舗数も13減少して489店となったと明らかにしています。

このH&Mの事例こそが、国際政治的なリスクによって経済的大損益を受けた典型的な海外進出事例と言えるでしょう。また、以前より新疆ウイグル自治区産の原材料を使用しないと発表していたNIKEにも不買運動が飛び火した状態となりました。

ちなみに、これらの件を巡って、中国の歌手や芸能人など複数の著名人が、ウイグル人権問題で懸念を表明した欧米を中心とした外国企業との契約解除を相次いで発表したことも話題となりました。

2. ウイグル強制労働をめぐり「ユニクロ」がアメリカで輸出差し止め&フランス司法局から捜査

中国による新疆ウイグル自治区の人権問題が世界の衣料品業界にも波及

ここまで国際的な人権問題を巡って、H&Mなどの欧米ブランドが中国事業において深刻な打撃を受けていることを述べましたが、日本企業も例外ではありません。

現在、日本でもっとも難しい立場に立たされているのがファーストリテイリングが展開する「ユニクロ」です。

2021年4月、フランス国内の人権NGOなどが、中国新疆ウイグル自治区での人権侵害を巡り、ユニクロのフランス法人など4社(他はフランスアパレス大手のSMCP、ZARAを展開するスペインのインディテックス、米国のスケッチャーズ)を、強制労働や人道に対する罪を隠匿している疑いで刑事告発しました。

同人権NGOが告発した背景には、4社が強制労働を強いられるウイグル人が栽培した新疆ウイグル産の綿花を使用していないと断言していないことがあると言われています。

さらに同年7月にはフランス検察当局が、ユニクロの現地法人など4社を、人道に対する罪に関係した疑いで捜査を開始したことが発表されました。

また、同年5月に米国税関当局が公表した文書によると、ユニクロの男性用シャツが、中国の新疆ウイグル自治区で生産された綿花で製造された可能性があるとして、1月に米国への輸入が差し止められていたことが明らかになりました。

そもそもウイグル産の綿花は世界で栽培される綿花の5分の1を占め、安価で質が良いことから世界中の衣料品メーカーが使用しています。中国による新疆ウイグル自治区の人権問題は、日本のユニクロを含めた世界の衣料品業界に大きな影響を与えることとなったのです。

3. 「カゴメ」は新疆ウイグル産のトマトを、「ミズノ」 は新疆ウイグル産の綿の使用停止を発表

新疆ウイグル問題で露呈した日本企業の「中国依存」

ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正氏は、中国の新疆ウイグル自治区をめぐる問題について、2021年4月の決算説明会にて、「政治的には中立であり、ノーコメント」という旨のコメントをしていますが、一部の日本企業では、自社の製品において、新疆ウイグル自治区産の原材料を明確に避ける動きも見られます。

たとえば、大手総合メーカーのカゴメは同年4月、新疆ウイグル産トマトの使用停止を発表しました。カゴメは、品質や調達先の安定性およびコストなどに加え、今回ウイグルでの人権侵害をめぐる国際的な批判を考慮し、総合的に判断したと明らかにしています。

しかし、その後中国のネット上でカゴメのネガティブキャンペーンが一斉に始まり、Weibo(微博 /ウェイボー)などのSNS上では、「もうカゴメの製品は買わない」などの投稿もなされました。

また、スポーツ品大手のミズノも同年5月、新疆ウイグル産の綿花使用を停止する方針を明らかにしています。今後は新疆綿を使用してきた商品とは違う素材への切り替えを検討しているとのことです。

各企業によってスタンスは異なるものの、これらの状況は、良くも悪くも日本企業の中国依存が露呈したものとも言えるでしょう。

4. 中国への経済制裁の範囲を拡大し続ける米バイデン政権

制裁の範囲は水産業・太陽光パネル・ハイテク監視の技術などにも…?

2021年の下半期を迎えた現在も、米バイデン政権は中国への経済制裁の範囲を拡大しており、中国と何らかの関係を持つ制裁対象となる企業が増え続けています。

たとえば5月には、中国・大連に拠点を置く大手水産会社が所有する漁船内でインドネシア人の乗組員らが強制労働に遭っていたとして、バイデン政権は同社が製造する水産製品を一斉に輸入禁止にすると明らかにしました。米当局によると、インドネシア人らは当初説明された業務とは全く違う内容の労働を課せられ、賃金不払いも横行していたとされています。

さらに6月には、ウイグルでの人権侵害に関わった疑いがあるとして、太陽光パネルの材料などを生産する中国企業5社が貿易の制裁対象に追加され、その後7月に入っても同様にハイテク監視の技術などを持つ中国企業14社が追加されました。

今後も欧米と中国との緊張関係が今後も続くことを鑑みれば、アメリカによる制裁や禁輸などの対象となる範囲がさらに広がるだけでなく、中国側の欧米への制裁も激しさを増す恐れがあります。

現時点では、衣料品業界で懸念の声が強いのかも知れませんが、今後その範囲は、水産業や太陽光パネル、さらにはハイテク監視の技術などにも広がりつつあります。

推測の域をでないものの、すでにアメリカ側には多くの制裁対象の候補があり、問題に関連する事象が明らかになり次第、その制裁範囲を拡大していくものと思われます。

もちろん日本企業も例外ではありません。欧米各国が中国への制裁措置を発動することで、直接的・間接的な経済摩擦が生じた延長線上に、第2のユニクロおよびファーストリテイリングのようなブランドおよび企業が出てくることが懸念されます。

現時点で、ユニクロを展開するファーストリテイリングが、なんらかの法的な違反を犯したということはありませんが、事実上、ウイグル人権問題を巡って米国やフランスで経済活動の制限を受ける形になっているからです。

5. 欧米各国で浸透している「人権デューデリジェンス」とは?

国際社会が中国の人権問題を避難する背景にある「人権デューデリジェンス」

中国の新疆ウイグル自治区における人権弾圧が国際社会で問題となっている背景には、欧米各国に深く浸透している「人権デューデリジェンス」の存在があります。

デューデリジェンス(Due Diligence)とは、投資の際に投資対象の企業や投資先の価値やリスクなどを調査することを意味します。

「人権デューデリジェンス」を簡潔に言うと…企業は自社の事業の全ての過程や場所において、人権に関わるリスクを把握し、それを予防および対処する必要がある…ということになります。

言い換えれば、すべての企業は人権を重視した中で事業活動を行うべきだとするものです。そのなかには当然自社のサプライチェーン(供給網)における強制労働や児童労働の排除も含まれます。

先述したように欧米諸国における「人権デューデリジェンス」の価値観は非常に重要なものとされています。2021年の深刻なミャンマー情勢を巡って、飲料品大手のキリンは、市民を弾圧するミャンマー国軍と関係する企業との合弁を解消すると発表しましたが、この背景にも当然、欧米における厳格な「人権デューデリジェンス」の存在があることは言うまでもありません。

6. 優良な海外進出サポート企業をご紹介

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ここまで「中国の人権問題が日本企業の海外ビジネスに与える影響」と銘打って、日本企業が中国で事業を展開するにあたってのリスクと「人権デューデリジェンス」について解説しました。

今回はユニクロが大きな影響を受ける結果となりましたが、今後は中国企業がその先端技術を持っているとされる、太陽光パネルやハイテク監視の技術と関連が深い日本企業が影響を受ける可能性も指摘されています。

言うまでもなく、日本にとって最大の貿易相手は中国です。中国に展開する、また中国企業との関係を持つ日系企業は数えきれません。しかし、欧米諸国が一部の中国企業を制裁対象に指定するなか、ある日本企業が依然としてその中国企業との取引していることが明らかになれば、一部の欧米の政府や企業およびNGOなどが、その日本企業との取引を停止したり、告発したりする可能性は充分にあり得ます。

それが今回解説したユニクロのケースです。米中対立(欧米と中国の対立)の拡大は、国や企業など多くのプレイヤーを巻き込んでいく恐れがあります。海外事業を展開する(あるいは画策している)日本企業なら、今後もその動向を注視する必要があることを心に留めておくべきでしょう。

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