エンティティリストとは?米国の輸出規制と50%ルール、日本企業が確かめること
エンティティリストとは、米国商務省が作る、米国の規制品を渡すのに許可が要る企業や団体の一覧です。米中対立のなかで中国の企業が多く載るようになり、日本で作った製品でも、米国の部品や技術が入っていれば規制の対象になります。
エンティティリストの仕組みと、日本企業に規制がかかる場面、2026年11月に再び適用される予定の「50%ルール」、取引の前に確かめることを図解で解説します。
この記事でわかること
- ・エンティティリストの意味と、ほかのリストとの違い
- ・米中対立のなかで掲載が増えてきた流れ
- ・日本で作った製品にも米国の規制がかかる場面
- ・50%ルールの動きと、取引の前に確かめること
▼目次
1. エンティティリストとは

取引の相手を確かめるためのリストは、国や役所ごとにいくつもあります。なかでも海外と取引する企業が最初に押さえておきたいのが、米国のエンティティリストです。
米国商務省が作る取引規制のリスト
エンティティリストは、米国商務省の産業安全保障局(BIS)が、米国の輸出管理規則(EAR)にもとづいて作っています。米国の安全保障や外交の利益に反する行動をとった、またはそのおそれがあると判断された企業、研究機関、個人が載ります。リストは官報で随時更新され、中国の企業のほか、ロシアや中東、アジアの各国の企業も含まれています。
載っている相手と取引すると
エンティティリストに載っている相手に、米国の規制がかかる製品や技術、ソフトを渡すには、BISの許可が必要です。許可の審査は厳しく、原則として認めない方針がとられている相手も多くあります。許可を得ずに渡すと、規則違反として罰金や輸出の権利の停止を受けるおそれがあり、取引先を失うだけでは済みません。米国の企業から部品を買えなくなることもあります。
ほかのリストとの違い
米国には、財務省が作るSDNリストもあります。こちらは資産の凍結や取引の禁止の対象になる個人や団体の一覧で、規制品かどうかにかかわらず取引そのものが問題になります。日本でも経済産業省が「外国ユーザーリスト」を公表しており、2025年9月の改正で15か国・地域の835団体が載っています。輸出の前にこれらのリストを合わせて確かめるのが基本です。
出典:米国商務省産業安全保障局「EAR Part 744」(2026年10月確認),経済産業省「外国ユーザーリストを改正しました」(2026年10月確認)
2. 米中対立で掲載が増えた経緯
エンティティリストは以前からありましたが、日本企業にとって身近な問題になったのは、米中対立が強まってからです。
ファーウェイの掲載が転機になった
2019年5月、米国は中国の通信機器大手ファーウェイと関連会社をエンティティリストに載せました。世界中の企業がファーウェイに部品を納めていたため、米国の部品や技術を使う日本企業も、取引を続けてよいかを確かめる必要に迫られました。翌2020年には、米国の技術で作った海外製品にも規制を広げる改正が行われ、規制の範囲は米国の外へ大きく広がりました。
半導体と先端技術へ広がった
その後、米国は半導体や人工知能、スーパーコンピューターに関わる中国の企業や研究機関を次々に載せ、先端の半導体と製造装置の輸出も規制しました。米中の経済を切り離す動きはデカップリングとも呼ばれます。中国も外国の制裁に対抗する法律を整えており、米中の制裁と対抗の動きは、両国と取引する日本企業にとって板挟みのリスクになっています。国の安全を経済の面から守る経済安全保障の考え方が、企業の取引先選びにも求められるようになりました。
出典:米国官報「Addition of Entities to the Entity List」(2026年10月確認)
3. 日本から出す取引にも規制がかかる場面

米国の輸出管理規則は、米国から出る取引だけでなく、日本から第三国へ出す取引にもかかることがあります。次の4つの場面を覚えておきます。
米国から仕入れた製品をそのまま出す
米国から仕入れた製品を、日本から別の国へ送ることを再輸出と呼びます。米国の規制がかかる製品なら、日本を経由しても規制は消えません。相手がエンティティリストに載っていれば、BISの許可が必要です。商社や販売代理店として米国製品を扱う企業は、仕入れた時点で製品の規制の区分を確かめておくと、あとで慌てずに済みます。
米国製の部品が一定の割合を超える
日本で作った製品でも、規制のかかる米国製の部品やソフトが価格の25%を超えて入っていると、米国の規制の対象になります。これはデミニミス・ルールと呼ばれ、割合の計算は部品の価格をもとに行います。どの部品が米国製で、規制がかかるものかを、仕入れ先に確かめないと計算できません。部品表を整え、米国製の部品に印をつけておくことが第一歩になります。
米国の技術で作った製品や技術を渡す
米国の技術やソフト、製造装置を使って作った製品も、相手によっては規制の対象になります。ファーウェイへの規制で使われた仕組みで、直接製品ルールと呼ばれます。また、製品だけでなく、米国由来の設計図や技術資料、ソフトを相手に渡すことも輸出として扱われます。メールでのデータの送付や、来日した相手への説明も対象になりうる点に注意が必要です。
出典:米国連邦規則集「15 CFR 734.4 De minimis U.S. content」(2026年10月確認)
4. 2026年11月に戻る予定の50%ルール
これまでのエンティティリストは、載っている名前の企業だけが対象でした。その範囲を、子会社や関連会社にまで広げる決まりが「50%ルール」です。
掲載企業が持つ会社にも規制が広がる
2025年9月、BISは、エンティティリストに載っている企業が合わせて50%以上を持つ外国の会社にも、同じ規制をかける決まりを出しました。関連会社ルールとも呼ばれます。取引先の名前がリストに無くても、株主にリスト掲載企業がいれば規制の対象になるため、取引先の株主まで調べる必要が出てきます。中国の大手企業の子会社や合弁会社と取引する企業ほど、影響を受けやすくなります。
1年間の停止と再開の予定
このルールは、米中の貿易交渉の合意を受けて、2025年11月10日から1年間止められました。米国の官報では、停止は2026年11月9日までで、延長されなければ11月10日から再び適用されるとされています。延長が検討されているとの報道もありますが、2026年10月30日時点で官報での発表は確認できません。米国の発表を確かめながら、取引先の株主を今のうちに調べておくと、どちらになっても対応できます。
5. 取引の前に確かめる3つのこと

規制にかかる取引を避けるには、新しい相手と取引を始める前と、契約を更新するときに、次の3つを確かめます。
名前をリストで調べる
米国政府は、エンティティリストやSDNリストなど複数のリストをまとめて検索できる統合スクリーニングリストを無料で公開しています。取引先の正式な名前に加えて、英語の別名や略称、住所でも検索します。同じ名前の別の会社が載っていることもあるため、住所や事業内容まで照らし合わせて判断します。日本の外国ユーザーリストもあわせて確かめます。
株主を確かめる
取引先の登記情報や公開資料で、株主と親会社を確かめます。リスト掲載企業が株主に入っている場合は、持ち分が50%に届かなくても注意が必要で、取引の目的や最終的な使い道を追加で確かめます。中国やアジアの取引先は、株主の構成を英語で確認しにくいこともあるため、現地の調査会社を使うのも1つの方法です。調べた結果は日付とともに残しておきます。
製品の中身を確かめる
自社の製品に、米国製の部品や技術、ソフトがどれだけ入っているかを調べます。部品の仕入れ先から規制の区分を書いた資料を取り寄せ、部品表と合わせて管理しておくと、取引のたびに調べ直す手間が省けます。日本の外為法による規制の確認も欠かせません。日本の規制と米国の規制は別のものなので、片方だけで判断しないようにします。手順は外為法の記事で解説しています。
出典:米国商務省国際貿易局「Consolidated Screening List」(2026年10月確認),経済産業省「安全保障貿易管理」(2026年10月確認)
6. よくある質問(FAQ)
Q1. 米国の部品を使っていなければ関係ない?
米国製の部品を使っていなくても、米国の技術やソフト、製造装置を使って作った製品は規制の対象になることがあります。また、米国から仕入れた製品を再輸出する場合や、米国由来の技術資料を渡す場合も同じです。さらに、取引先がSDNリストに載っていれば、製品の中身にかかわらず米国の金融機関を通した支払いが止まるおそれがあります。部品だけで判断せず、取引全体で確かめます。
Q2. 取引先がリストに載ったらどうする?
まず出荷を止め、渡そうとしている製品や技術が米国の規制の対象かどうかを確かめます。対象であれば、BISの許可が無いまま渡すことはできません。すでに結んでいる契約の扱いや、在庫の処分、ほかの取引先への切り替えも考える必要があります。判断を誤ると罰則につながるため、輸出管理に詳しい専門家に早めに相談するのが確実です。
Q3. 中小企業でも輸出管理の体制は必要?
必要です。規制は企業の大きさにかかわらずかかり、米国の部品を使った製品を中国やアジアの会社に販売している中小企業も対象になりえます。最初から大がかりな体制をつくる必要はなく、取引先をリストで調べる手順と、製品の中身を記録する表を決めるところから始めます。担当者を1人決め、確認した記録を残すだけでも、もしものときの説明に役立ちます。
7. 米国の輸出規制で迷ったら
エンティティリストや50%ルールの扱いは、製品の中身、取引先の株主、輸出先の国によって答えが変わります。米国の規制と日本の外為法の両方を見る必要があり、社内だけで判断するのは簡単ではありません。
「中国やアジアの取引先が規制にかからないか確かめたい」「自社製品の米国製部品の割合を調べたい」「輸出管理の体制づくりを手伝ってほしい」といった段階から、Digima〜出島〜にご相談ください。輸出管理や国際取引の法務に詳しい支援企業をご紹介します。
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