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欧州特許の基礎知識 | ヨーロッパで特許を取得するための3つの出願方法

掲載日:2020年01月17日

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欧州特許の基礎知識というテーマで、ヨーロッパで特許を取得するための3つの出願方法について解説します。

結論から言うと、2020年現在、欧州での特許取得においては、「EPC 出願」「PCT 出願」「欧州単一特許 出願」の3つの出願方法が存在します(※2020年時点で実際に機能しているのは2つ)。

そもそも特許権の効力は、特許を取得した国の領域においてのみ有効となっています。よって、欧州はもちろん、海外などの外国で特許権を取得する際には、権利を取得したい国ごとに特許権を取得する必要があります。

今回はヨーロッパで特許を取得するための3つの出願方法について解説します。

1. 欧州で特許を取得するための3つの出願方法とは?

欧州特許には「EPC 出願」「PCT 出願」「欧州単一特許 出願」の3つの方法がある

現在、欧州(ヨーロッパ)において特許権を取得するためには、大きく分けて下記の3つの方法(※2020年時点で実際に機能しているのは2つ)があります。

① EPC(欧州特許条約)出願
欧州特許条約(EPC)にのっとった、単一の特許出願(EPC出願)を、欧州特許庁(EPO)に提出する出願方法。特許取得後は、多数のヨーロッパの国々で効力を発揮する。

② Euro-PCT(特許協力条約)/ PCT国内移行 出願
特許協力条約(PCT = Patent Cooperation Treaty )にのっとり、所定国の特許庁に提出する出願方法がPCT(国際出願)制度。PCTの締結国は130ヵ国以上あり、所定国に所定の言語で提出することで、PCTの全ての締結国へ同時に出願したと同等の効果が得られる。

そもそも欧州特許は、欧州特許条約に基づいて欧州特許庁に提出される国際出願( PCT )によって取得できるが、ここで紹介する「Euro PCT出願」とは、このPCT国際出願の〝国内移行〟を指し、〝Euro-PCTルート〟とも称される。

③ 欧州単一特許制度による出願
後述するが、上記2つの出願制度には問題点が存在する。それを解消する新しい欧州特許制度の枠組みが「欧州単一特許制度」。

もともと2017年前半に発効が見込まれていたが、そもそもイギリスの批准を発効要件としていたため、イギリスのEU離脱(ブレグジット)が決定したことから、発効が大きく遅れており、現時点では2020年頃に発効されることが予想されている。

次項からは、欧州での特許を取得する際の3つの出願方法(※2020年時点で実際に機能するのは2つ)である「EPC(欧州特許条約)出願」「PCT(特許協力条約)出願」のそれぞれを詳しく見ていきましょう。

2. EPC(欧州特許条約)出願制度の概要 | メリット&デメリット

欧州特許条約(EPC)の概要

そもそも特許権の効力は、特許を取得した国の領域においてのみ有効となっています。したがって、海外などの外国で特許権を取得する際には、権利を取得したい国ごとに特許権を取得する必要があります。

しかし、欧州諸国は、1977年10月、ヨーロッパ特許付与に関する協定である「欧州特許条約( EPC = European Patent Convention )」を発効。その条約にともなって「欧州特許庁( EPO = European Patent Office )」も新設されました。

これによって、欧州特許出願として出願し、しかるべき審査を受けることで、欧州各国での特許権の付与がされる制度が確立されたのです。

欧州特許条約(EPC)の基本

EPC(欧州特許条約)の最大の特徴は、ひとつのEPC出願で、EPCと締結している複数の欧州諸国の特許が同時に取得できることにあります。

2020年1月現在、EPCの締結国は38ヵ国(※締結拡張国は2ヵ国)となっています。(※1)

※1
欧州特許条約の締結国:
アルバニア、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、スイス、キプロス、チェコ、ドイツ、デンマーク、エストニア、スペイン、フィンランド、フランス、英国、ギリシャ、クロアチア、ハンガリー、アイルランド、アイスランド、イタリア、リヒテンシュタイン、リトアニア、ルクセンブルク、ラトビア、モナコ、マケドニア、マルタ、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、セルビア、スウェーデン、スロベニア、スロバキア、サンマリノ、トルコ

締結拡張国:
ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロ

欧州特許条約(EPC)のメリット

EPCのメリットとしては、特許を取得する指定国数(だいたい3〜5ヵ国程度)が多くなると、各国別に出願するよりも、出願費用が安くなることが挙げられます。

つまり、ドイツ・フランス・スペインなどの3ヵ国で権利を取得したい場合は、欧州特許庁(EPO)に、これらの3ヵ国を指定して1つの欧州特許出願をし、しかるべき審査を受けて、特許が付与されると、これらの3ヵ国で特許が有効になるという仕組みです。

仮に全ての条約締結国を指定すると、EPC締結国全てにおいて特許の効力が有効となります。

欧州特許条約(EPC)のデメリット

EPCのデメリットとしては、欧州特許出願登録後に、実際の法的拘束力を持たせるために、各国レベルでの有効化(バリデーション)手続きが必要となることです。

具体的に、バリデーション(有効化)手続きとは…Address for Serviceの登録、庁費用の支払い、明細書翻訳の提出…などの各国ごとの手続きが必要とされます。

そもそも欧州特許庁(EPO)は、欧州特許をひとつの窓口で行うことを目的に、1977年に設立された執行機関です。ただ、欧州特許(EPC)は、各国の法規制で保護される特許をひと束ねにしたもので、欧州複数国を一括して保護する単一の特許ではありません。

したがって、先述した各国ごとのバリデーション(有効化)手続きが必要となります。この手続きには、翻訳を含む事務的な作業コストが発生するため、出願者は一部の国に限定して出願するケースが多く、本来のひとつの窓口として機能していないという実情があるのです。

こういった状況から、後項にて解説する、現在はまだ発効されていない、欧州での3つめの出願方法である「欧州単一特許」制度の設立が進められているのです。

3. Euro-PCT(特許協力条約)/ PCT国内移行 出願の概要 | メリット&デメリット

Euro-PCT(特許協力条約)/ PCT国内移行 の概要

特許協力条約(PCT = Patent Cooperation Treaty)に基づく国際出願である「PCT出願」とは、ひとつの出願願書を条約に従って提出することによって、PCT加盟国である全ての国に同時に出願したことと同じ効果を得ることができる出願制度です。

PCTの締結国は130ヵ国以上あり、所定国に所定の言語で提出することで、PCTの全ての締結国へ同時に出願したと同等の効果が得られるのです。

ただ、PCT出願の場合、その審査や特許付与は、各国へ国内移行してから各国別に行われます。つまり、PCT出願にもとづいて各国指定で特許を取得するには、各指定国ごとにPCT出願の明細書などの全文の翻訳書類を提出する必要があり、それがPCTの「国内移行手続き」と呼ばれています。

欧州特許は、欧州特許条約に基づいて欧州特許庁に提出されるPCT(国際出願)によって取得できますが、このPCTの欧州諸国での国内移行手続きが、〝Euro-PCTルート〟と称される 「Euro-PCT(特許協力条約)出願」となります。

「Euro-PCT(特許協力条約)出願」は、そのほかの欧州特許出願と同様の方法で、その特許要件が審査され、同じ特許権を享受することができます。

Euro-PCT(特許協力条約)/ PCT国内移行 のメリット&デメリット

例えば、PCT出願の場合、日本国特許庁等の指定官庁に対して出願手続きを行うことにより、条約加盟国全てに同時に出願をしたことと同じ効果が得られます。

ただ、PCT出願だけでは特許権を取得することはできません。

PCT出願を行った後に、特許権の取得を希望する条約加盟国の国内手続きへ移行し、その国の審査を通過する必要があるのです。

国内手続きの移行期限は条約加盟国により異なりますが、優先日から30ヵ月を移行期限とする国が多いようです。

4. 欧州単一特許制度の概要 | メリット&デメリット

欧州全域で有効な単一の特許権の認可を目的とした制度

ここまで読んでいただければ、上記2つの「EPC(欧州特許条約)出願制度「欧州単一特許制度」「Euro-PCT(特許協力条約)/ PCT国内移行 出願制度」において、それぞれデメリットが存在することが理解できたと思います。

そのデメリットを一言で表すと…「欧州全域で有効な単一の特許権を認可する制度が存在しない」ことに尽きます。

ここで紹介する「欧州単一特許制度( European Patent with Unitary Effect )」とは、それらのデメリットを解消する単一制度として、当初は2017年の発効が見込まれていました。しかしイギリスのEU離脱(ブレグジット)を受けて、2020年現在、その発効が大きく遅れています。

ここでは「欧州単一特許制度」の概要について見ていきます。

手続きの途中までは従来のEPO(欧州特許条約)出願と同じ流れ

欧州単一特許の取得手続きは、EPO(欧州特許条約)出願と同様に、欧州特許庁(EPO)に出願および審査手続きをする必要があります。

その後、欧州単一特許の取得を希望する場合は、特許の取得から1カ月以内にEPOに単一特許の請求をする必要があります。仮にEPOに単一特許の請求をしなかった場合は、従来の欧州特許として扱われます。

要するに、手続きの途中までは従来のEPO(欧州特許条約)出願と同じ流れで進み、特許の取得後に、従来の欧州特許か単一特許かの選択をすることができるのです。

また、単一特許を選択しても、後述する欧州単一特許制度の批准国でないEPO(欧州特許条約)締結国については、従来どおりバリデーション(有効化)手続きを経ることで各指定国内で特許権を取得することが可能になります。

英国のEU離脱が「欧州単一特許制度」に与える影響とは?

この新しい「欧州単一特許制度」は、2つのEU規則と、統一特許裁判所協定および裁判所規則が揃って成立することになっています。

この欧州単一特許制度に加盟する資格があるのはEU加盟国の28ヵ国に限られています。ただ、EU離脱を表明しているイギリスは、先述の統一特許裁判所協定の批准国3ヵ国のひとつであり、イギリスがEUを離脱した際は、「欧州単一特許制度」の発効に大きな影響があることが言うまでもありません。

現在、「欧州単一特許制度」は、同協定の発効を前提としているため、2020年現在、未導入となっています。

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今回は「欧州特許の基礎知識」と銘打って、ヨーロッパで特許を取得するための3つの出願方法について考察しました。本文中でも解説しましたが、イギリスのEU離脱によって、今後、欧州での特許取得の出願方法に大きな変化が起こる可能性は高いと言えるでしょう。

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