国籍はパラメータ化する――エストニアの「e-residency制度」とは?

エストニアのe-residency制度をご存知でしょうか。
「e-residency制度」とは、外国人であっても、エストニアの国民として電子登録できる、いわばバーチャルな電子国民となれる、世界初の試みとして注目されている制度です。
人口 100万人のエストニアは、2025年までに1,000万人の電子住人を集めようとしています。安倍首相も2年前にエストニアの電子居住者になりました。
電子化によって、人が国を選ぶ時代が来つつあります。ブロックチェーン技術も相まって国家という概念が変わりつつある、その最初期に僕らはいる ということについて、書いてみます。
Photo by Steve Jurvetson on Flickr
▼国籍はパラメータ化する――エストニアの「e-residency制度」とは?
▼アナタの海外ビジネスを成功させるために
1. エストニアと e-residency
誰でも電子的なエストニアの住人になれる制度
ヨーロッパのエストニアは、2014年から e-residenecy システムを採用してます。エストニアに物理的に住んでいなくても、電子的なエストニアの住人になれるという制度です。エストニア大使館で手続きをすることで、日本にいてもエストニアの電子居住者 (e-resident) になれます。
e-residency に登録すると何ができるのでしょうか? たとえば起業や銀行口座の開設など、市民サービスが受けられるようになります。エストニアで登記してビジネスをすれば、(事実上)法人税率は0%です。圧倒的な国際競争力が得られます。
このように「どこに住んでいるか」vs「どこの制度を利用しているか」ということが、別々の概念に分離してきています。東京に住みながら北海道に納税できる、ふるさと納税も似た構図です。すると当然、自分にとって有利になる地域に納税する流れが生まれます。
この流れは「地域に人が従う」構図から「人に地域が従う」という、力関係の逆転を生みます。
こんな時代に、国籍はどういう意味をもつのでしょうか。どこかに「住む」とは、どういうことなのでしょうか。
2. 税制、制度が選択可能になる
「法人の移転」に引き続いて起きる「個人の移転」
地域が人に従うとは、納税する国家を個人が選べてしまうということです。納税者を奪い合うため、税率を下げたり、いろいろな付加価値をつける国家が出てきます。この競争はすでに始まっていて、GoogleもFacebookもAppleも、法人税の低いアイルランドに欧州本社を置いています。そして同じ現象が、大企業からベンチャーへと広がっています。今のところ、競合がいないエストニアは一人勝ちです。エストニアは2017年現在、国民一人あたりのベンチャー数が世界一です。
法人の移転に引き続いて起きるのは、個人の移転です。ノーベル賞の中村教授のような研究者をはじめ、優秀な学生はどんどん国外流出しています。ビジネスパーソンもそうです。国の支配下に個人がいるのではなく、個人に選んでもらう対象としての国、という構図が生まれています。
次のパラダイムシフトは何でしょうか。いま生まれつつあるのは、体は国内にあるけれど、社会的実体は海外にあるという状態の普及です。リモートワークや電子居住が広まると、どこに身体的に住むかと、どこで社会的に活動するかが別々の問題になってきます。それぞれが独立して選択できるパラメータになります。
埼玉に住んで都内に通勤する人がいるように、居住の快適さを追い求める国と、勤務体系の充実を追い求める国が生まれるかもしれません。ハワイに住みながらヨーロッパで仕事が(ネット上で)できるのなら、それを望む人は少なくないでしょう。
3. 貨幣が選択可能になる
国家主導で試みる仮想通貨の発行
居住地や納税先だけでなく、貨幣制度も選べるようになります。
ビックカメラやメガネスーパーは全国どこでも、すでにビットコインで商品の購入が可能です。ネット上ではなく、実店舗での話です。旅行代理店のHISもビットコイン支払いを導入しました。これがもっと進んで、コンビニでSuicaが使えるように、世界中あらゆる場所で仮想通貨が当たり前に使えるようになったらどうでしょうか。
ビットコインでも、イーサリアムでも、リップルでも、自分が使いたい好きな通貨を選べます。東南アジアやアフリカ諸国でUSドルが使えてしまうのと同じで、新システムの浸透は、政府主導ではなく末端からいつのまにか始まります。
エストニアに至っては、国家主導で仮想通貨エストコインを発行 (ICO) しようとしています。EUに反対されていますが、アフリカやアジアの国々がそれぞれ ICO を計画したら、すべてを規制するのは難しいでしょう。
4. 社会インフラが選択可能になる
あらゆるものはパラメータ化される
あらゆる社会インフラは選択可能になり得ます。国鉄や郵政の民営化に始まり、年金 (iDeCo) や電気、ガスと、選択肢は広がる一方です。インフラを整えるにあたって初期投資がかかっていることや、ユーザーのスイッチングコストといった障壁はあります。しかし、コストの問題はテクノロジーの進歩によって一つずつ取り除かれます。
もちろんミクロで見るとパラメータ化されることのデメリットは沢山あって、それは健康保険が民営化された米国で医療インフラが崩壊しているのを見ても分かります。ただ、もし他の条件が同じならば、複数から選択可能な制度の方が競争力をもちます。
最も基礎的なレイヤーでは、あらゆるものはパラメータ化される方向に圧力が働きます。その中で各国・各制度がそれぞれ規制して抗っているのが現状です。いまの制度が完成形ではなく、これまで以上にパラメータ化の流れは進んでいくと考えています。
5. パラメータとは
テクノロジーの進展による「社会制度のパラメータ化」
パラメータ(変数)とは、「一生不変ではなく変更可能」ということです。
2000年前なら住む土地は一生不変で、パラメータではありませんでした。九州で生まれたら、一生かけても九州から外に出れない人ばかりでした。しかし今では、居住地は変更可能なパラメータになりました。また、カースト制のインドでは、職業は生まれつき不変でした。しかし現在では、少なくとも上位カーストの人には職業選択の自由があります。
カースト制を見て前時代的だとか、基本的人権の侵害だとか言うのは簡単です。しかしポイントは、100年後の人からみたら基本的人権の侵害だと思われることを、今のわたしたちもしている可能性があるということです。
ジンバブエに生まれたという理由だけで、ジンバブエドル(10億倍を超えるハイパーインフレで現金が紙切れになった)の使用を強いられたのは、人権侵害ではないのでしょうか。同じ理由で、たとえば国際競争力を40年間失い続けている日本円以外で給与を受け取れないのは、人権の侵害と主張できないのでしょうか。バブル崩壊以降ドル建てで給料が支払われていたら、総収入(購買力ベース)はみな2倍以上の計算になります。
身体的な特徴がどうであれ、自身が感じる性別(ジェンダー)を自分で選択することができる、そうなったのはつい最近のことです。このように、本来パラメータであるものを固定化して強制する制度は、見えない暴力を生みます。
テクノロジーの進展による、社会制度のパラメータ化。これは大きな issue です。未来を考える上で、重要な論点の一つだと感じています。
6. 優良なエストニア進出サポート企業をご紹介
御社にピッタリの海外進出サポート企業をご紹介します
「Digima〜出島〜」には、厳正な審査を通過した優良な海外進出サポート企業が多数登録しています。当然、複数の企業の比較検討も可能です。
「海外進出コンサルティングに必要な費用を知りたい」「海外現地に駐在事務所や支社などの現地拠点を作りたい」「海外から商材を輸入したい」「海外進出をしたいが何から始めていいのかわからない」 ……といった、多岐に渡る海外進出におけるご質問・ご相談を承っています。
ご連絡をいただければ、海外進出専門コンシェルジュが、御社にピッタリの海外進出サポート企業をご紹介いたします。まずはお気軽にご相談ください。
(当コンテンツの情報について)
当コンテンツを掲載するにあたって、その情報および内容には細心の注意を払っておりますが、掲載情報の安全性、合法性、正確性、最新性などについて保証するものではないことをご了承ください。本コンテンツの御利用により、万一ご利用者様および第三者にトラブルや損失・損害が発生したとしても、当社は一切責任を負わないものとさせていただきます。
海外ビジネスに関する情報につきましては、当サイトに掲載の海外進出支援の専門家の方々に直接お問い合わせ頂ければ幸いです。
この記事が役に立つ!と思った方はシェア
海外進出相談数
27000
件突破!!
最適サポート企業を無料紹介
コンシェルジュに無料相談
この記事をご覧になった方は、こちらの記事も見ています
オススメの海外進出サポート企業
-
株式会社ダズ・インターナショナル
東南アジア・東アジア・欧米進出の伴走サポートが強み
私たちは東南アジア・東アジア・欧米進出の伴走サポートを強みとしております。
対応する主要各国にメンバーを配置し、海外進出後も支援できる体制を整えています。
事業開始から20年弱、850社を超える成功も失敗も含めた実績・ノウハウから積極的に支援します。
昨今の国際情勢を見てみると良くも悪くも変動性が高く、かつウェブ・SNS等の膨大な情報が仇となり、
リアルタイムかつ最適な情報を獲得することが難しい時代です。
私たちはこの状況に対応すべく、現地のリアルを理解し、支援できる体制づくりにこの数年力を入れています。
特に強化しているエリアは現在日本企業の進出が増加傾向にあるASEAN各国です。
2025年、カンボジア・プノンペンにも新しい拠点を追加しております。
どの国が最適か?から始まる、海外進出のゼロ→イチを伴走する支援をさせていただきます。
------------------------------------
■サポート対象国(グループ別)
海外進出支援や活用・生活を支援する対象とする国は以下の通りです。
※サポート内容により、対応の可否や得意・不得意な分野はあります。
↳欧米(アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ)
↳アジア①(タイ・カンボジア・ベトナム・マレーシア・インドネシア・フィリピン・ラオス)
↳アジア②(日本・香港・シンガポール・台湾・韓国)
↳アジア③(ドバイ・サウジアラビア・インドバングラデシュ・モンゴル・ミャンマー)
------------------------------------
■海外進出(前)支援
日本企業の海外ビジネスのゼロイチを共に考え、目標達成のために共に動くチーム
対象法人:これから海外進出を開始する企業 / 海外事業担当者不在、 もしくは海外事業担当者が不足している企業
契約形態:①伴走支援(月額 10万円〜)②スポット支援(施策により変動)
『ポイント』
✔︎ゼロ地点(「海外で何かやりたい」のアイデア段階)から伴走サポート
✔︎BtoB・BtoC・店舗開業など幅広い進出支援に対応
✔︎現地で対応する駐在スタッフを各国に配置
✔︎現地で専門分野に特化したパートナー企業・個人と提携
『対応施策』
⚫︎海外進出の準備・設計・手続き/申請サポート
↳各種市場調査・事業計画設計(稟議書策定) /会社設立/FDA等申請等
⚫︎BtoC販売促進サポート
↳マーケティング企画設計/分析/SNS運用/ECモール出品〜運用
↳プロモーション(広告運用/インフルエンサー施策含む)/各種制作
⚫︎BtoB販路開拓サポート
↳現地パートナー起業候補の探索〜交渉〜契約/展示会サポート
↳セールスマーケティングキット制作
⚫︎飲食店開業サポート(ほか店舗開業サポート含む)
↳エリアマーケティング〜テナント居抜き探索
↳現地人材候補の探索〜交渉〜契約/現地店舗運営代行
------------------------------------
■海外進出(後)支援
現地日系企業の現地での集客課題を共に考え、目標達成のために共に動くチーム
対象法人:すでに海外へ進出済みの企業 / マーケティング関連業務の担当者不在、もしくは不足している企業
契約形態:①伴走支援(月額 500ドル〜)②スポット支援(施策により変動)
『ポイント』
✔︎丸投げ(担当者もいない・知識もない)ウェルカムの代行サポート
✔︎BtoB・BtoC・店舗運営など幅広い集客支援に対応
✔︎現地で対応する駐在スタッフを各国に配置
✔︎現地で専門分野に特化したパートナー企業・個人と提携
『対応施策』
⚫︎マーケティング関連施策サポート
↳各種マーケティングリサーチ
↳デジタルマーケティング全般の企画設計/分析/PDCA改善
⚫︎セールス支援サポート
↳インサイドセールス全般(営業代行/メルマガ配信)
⚫︎各種プロモーションサポート
↳MEO/SEO/リスティング広告/インフルエンサーマーケティング
↳EC運用/SNS運用
⚫︎各種制作サポート
↳サイト/LP/ECサイト/オウンドメディア/コンテンツ(記事・動画)
------------------------------------ -
GoGlobal株式会社
企業のグローバル戦略を一気に加速!最短2週間で海外進出・雇用を実現
企業の海外進出に関連する一連のサービス
1. Employer of Record(“EOR” = 海外雇用代行)サービス
・GoGlobalの現地法人において貴社の指定する人員を雇用代行します。貴社は手間と時間の掛かる法人設立(法人登記、ライセンス取得、銀行口座開設)、および法人設立後の維持管理業務(バックオフィス体制の構築、決算、税務申告、給与計算、規則策定、等)の負担なく、海外で迅速に事業を開始できます。EORで雇用した社員の状況はGoGlobalが提供するシステム上でいつでも閲覧可能です。EORを利用することで貴社は、自身で現地法人で社員を雇用する場合と同様に事業を展開しつつ、管理負担を大幅に削減することが可能となります。
2.海外採用代行サービス
・貴社の海外事業に必要な人材の採用を支援します。GoGlobalの持つアジア各国及びアメリカのリクルーティング会社とのネットワークを活用し、数多くの候補者の中から貴社の事業を成長のために最適な人材の採用を支援します。 -
グローハイ株式会社
日本企業の世界での売上達成の実現に特化したサービスを提供します
日本に留まらず更なる成長を目標にグローバルに挑戦し続ける日本企業にとって信頼のおける長期的なパートナーであり続けることが私たちの企業使命だと考えております。日本企業の幹部や海外展開のプロジェクトリーダーと共にアメリカに本社を構える私たちの多様な専門性、経験、文化的背景を持つ人材、過去にアメリカや中国やヨーロッパで培ってきたビジネスプロセス、現地ネットワークを最大限に活用し各クライアント特有のビジネス目標を達成させます。
グローハイは戦略コンサルティング、プロジェクトマネジメント、オペレーションサポートと幅広い分野で海外で成功する為の下記のようなサポートを実施しております。
・アメリカ、ヨーロッパでの売上達成
・アメリカ、ヨーロッパでの販路拡大
・アメリカ、ヨーロッパでのECサイト構築とデジタルマーケティングサポート
・効率的かつ低リスクでのアメリカ進出、ヨーロッパ進出
・戦略的パートナーマネジメント
・アメリカでのM&A
・アメリカでの会計、人事、法務の業務委託
グローハイはこれまでに中小企業から大企業まで様々な規模、業界の数多くの日本企業のアメリカ進出、中国進出、ヨーロッパ進出を成功に導いてきました。 -
株式会社クイック
海外進出前後における人材紹介・人材派遣サービスを【日本語及び現地公用語】で提供!
社名:株式会社 クイック
所在地 <大阪本社>〒530-0018大阪市北区小松原町2-4 大阪富国生命ビル
<東京本社>〒107-0052東京都港区赤坂2-11-7 ATT新館
創業 1980年9月19日
設立 1980年9月30日
資本金 3億5,131万円(2024年3月31日現在)
決算期 3月31日
代表者 代表取締役会長 和納 勉
代表取締役社長 川口 一郎
グループ従業員数 1,925名(2024年10月1日現在)
連結売上高 294億8,718万円 (2024年3月期実績)
事業所 大阪本社、東京本社、東京、名古屋、神戸
取引金融機関 三菱UFJ銀行 梅田中央支店
三井住友銀行 梅田支店
監査法人 EY新日本有限責任監査法人
厚生労働大臣許可番号 株式会社クイック 有料職業紹介事業 27-ユ-020100 -
Social Zero株式会社
少数精鋭のグローバルビジネス支援企業の弊社だからできる事
Social Zero株式会社は、伴走型の包括支援で企業様の海外進出をご支援させて頂いております。
当社はコンサルティングだけではなく、現場に赴き当事者目線で共に事業を作り上げていく事を大切にしております。
15年間の海外事業経験を基に、少数精鋭チームで常に最新の市場情報やお客様の課題に合わせた最適なご提案をさせて頂きます。
弊社の海外進出支援は、企業様の海外市場参入を成功に導くため、市場調査から現地拠点の設立、マーケティング支援、営業支援至るまで、あらゆるフェーズで総合的なサポートを提供します。