近年のマレーシアの食品市場とハラール食ビジネスの可能性
マレーシアの食品市場とハラール食ビジネスの可能性について詳しく解説します。
マレーシアはASEAN諸国の中でも人口は少ないものの、所得水準の高い層が多いことが特徴です。そのため、富裕層をターゲットとした日系企業のビジネス展開が活発です。
また、ハラール認証の普及はもちろん、イスラム金融によるイスラムビジネスのハブとしても注目されており、拡大する世界のイスラム市場において、近年より存在感を高めつつあります。
近年ではマレーシアでも日本食の人気が高まっており、日本からの農林水産物や食品の輸出が急増しています。過去10年でその規模は2倍以上に拡大。日本食の普及が着々と進んでいるのが「マレーシア食品市場」の現状なのです。
▼ 近年のマレーシアの食品市場とハラール食ビジネスの可能性
1. マレーシア食品市場の魅力とは?
まず最初にマレーシア食品市場の魅力について、4つのポイントに絞って解説します。
高い購買力と若年層の存在が市場に活力を生み出している
マレーシアの総人口の約70%が15〜64歳の生産年齢層であり、平均年齢は28歳と非常に若い国です。この若年層の存在が市場の活力を生み出しています。さらに、アッパーミドル層以上の比率が高く、購買力が非常に高いため、高級食材や健康食品、贈答品の需要が見込まれます。
例えば、健康志向の高まりとともに、オーガニック食品や高品質の輸入食品に対する需要が増加しています。また、贈答文化が根付いているため、高価なギフトセットも人気です。
アジア・イスラム圏へのゲートウェイとして機能
マレーシアはASEAN地域内での食品輸出が非常に盛んであり、中国やインドなどへの輸出拠点として重要な役割を果たしています。
特にマレーシア政府機関であるJAKIM(マレーシア・イスラム開発庁)が発行するハラール認証は、世界中で高い信頼性を誇り、この認証を取得することで、世界のイスラム市場へのアクセスが大幅に向上します。さらに、マレーシアは英語が準公用語(共通言語)となっており、比較的英語が広く通用するため、ビジネスコミュニケーションが円滑に行える点も大きな利点と言えるでしょう。
日本食が広く一般大衆にも人気
かつては富裕層中心だった日本食が、現在では一般大衆にも広く受け入れられるようになりました。小売店やレストランの数が急増しており、特に健康志向が高まっている現代において、日本食のヘルシーなイメージが受け入れられています。
例えば、糖尿病の罹患率が上昇している背景から、低糖質でバランスの取れた日本食に対する需要が増加しています。また、日本からの農林水産物の輸出が急増しており、過去10年でその規模は2倍以上に拡大しています。
ビザ無しでの訪日が可能になり訪日客数が増加
2013年7月からビザ無しでの訪日が可能となり、訪日客数が急増しました。訪日中に本場の日本の味を体験した消費者が、帰国後も日本食を求める傾向が強まり、日本食レストランや日本食材店の需要が一段と拡大しています。
例えば、訪日観光客が日本のコンビニで食べたおにぎりや弁当を現地でも求めるようになり、それに応える形で多くの日本食ブランドがマレーシアに進出しています。
2. マレーシア食品市場への進出における懸念点と課題解決の戦略
マレーシア食品市場の魅力に続いては、日本企業がマレーシア食品市場への進出した際の懸念点と、課題を解決するための戦略について解説します。
懸念点① 国内市場は相対的に小規模である
■懸念点
マレーシアの人口はASEAN諸国の中で少ないですが、高所得者層が多く購買力は高いです。そのため、進出企業はターゲットを明確に絞ることが重要です。
■課題解決の戦略
高級食材を扱う場合は富裕層や健康志向の高い消費者層をターゲットにする戦略が有効です。また、エリアごとの市場特性を理解し、適切なマーケティング戦略を展開することが求められます。これに加えて、消費者の嗜好やライフスタイルに合わせた商品のローカライズが重要です。
例えば、富裕層向けには高級なオーガニック食品や輸入食品、中間層向けには健康食品や手軽に調理できる商品など、ターゲット層ごとに異なるアプローチが必要です。
懸念点② 他のASEAN諸国と比較して賃金が高い
■懸念点
マレーシアの賃金水準は他のASEAN諸国と比較して高いため、企業は生産性向上や技術導入を通じてコスト削減を図る必要があります。
■課題解決の戦略
自動化技術の導入や効率的な物流システムの構築などが考えられます。これにより、労働コストを抑えつつ、生産性を向上させることができます。
また、従業員の教育やトレーニングを強化し、高付加価値なサービスを提供することで、賃金コストの高騰に対処することができます。具体的には、業務プロセスの効率化やITシステムの導入を通じて、業務効率を向上させる取り組みが重要です。
懸念点③ ハラール認証を取得する必要がある
■懸念点
マレーシアの人口の約70%がイスラム教徒であり、ハラール認証を取得することは必須です。ハラール認証を取得することで、イスラム教徒市場へのアクセスが可能となり、ビジネスチャンスが広がります。
■課題解決の戦略
製品のハラール化に取り組み、ターゲット層に対する効果的なマーケティング戦略を展開する必要があります。
例えば、ハラール食品の認知度を高めるためのプロモーション活動や、現地の文化や習慣に合わせた商品開発が求められます。現地のハラール認証機関であるJAKIMと連携し、認証取得プロセスをスムーズに進めることが重要です。
懸念点④ 外国人労働者の制限がある
■懸念点
マレーシアでは外国人労働者の受け入れが制限されており、労働力不足や管理職人材の確保が課題となっています。そのため、現地での採用と従業員のマネジメント教育に力を入れる必要があります。
■課題解決の戦略
現地従業員に対するトレーニングプログラムを充実させ、長期的なキャリアパスを提供することで、企業の競争力を維持することができます。具体的には、リーダーシップ研修や技術スキル向上のためのプログラムを導入し、現地スタッフの能力を最大限に引き出す取り組みが求められます。
さらに、現地の労働市場の動向を常に把握し、柔軟な労働力配置を実現するための労働契約や勤務形態の見直しも検討すべきです。
3. マレーシアにおけるハラール認証の必要性とその対策
メニューや調理方法をハラール対応にしてイスラム教徒の顧客層を取り込む
ハラール認証は、イスラム教の教えに従い、豚肉やアルコールなどが含まれていない食品や製品であることを示す制度です。この認証を取得するためには、原材料から製造過程、検査、包装に至るすべての段階がイスラム法に適合している必要があります。マレーシアでは、この認証を管理する主要機関がJAKIM(マレーシア・イスラム開発庁)であり、信頼性と厳格さで国際的に高い評価を得ています。
かつて、マレーシアの日本食レストランはハラール未対応であっても、日本人や華僑の顧客で繁盛していました。しかし、近年ではイスラム教徒であるマレー系住民の経済力が向上し、日本食レストランの顧客層に占めるマレー系の割合が増加しています。このため、日本食レストランもハラール対応が必須となりつつあります。
例えば、人気のある日本食チェーン店は、メニューや調理方法をハラール対応にすることで、イスラム教徒の顧客層を効果的に取り込んでいます。具体的には、以下の対策が講じられています。
対策① メニューの見直し
豚肉やアルコールを含む食材を排除し、ハラール対応の代替材料を使用することで、全メニューをイスラム法に準拠させます。また、原材料の調達先もハラール認証を受けた供給元に限定する必要があります。
対策② 調理プロセスの管理
調理器具や調理場もハラール対応のものを使用し、豚肉や非ハラール食材との交差汚染を防ぐための厳格な管理を行います。調理スタッフへのハラール教育やトレーニングも重要です。
対策③ JAKIMとの連携
ハラール認証を取得するためには、JAKIM(マレーシア・イスラム開発庁)やその他の認定機関との緊密な連携が不可欠です。この認証プロセスは非常に詳細かつ厳格であり、製品の開発から製造、流通に至る全ての段階でイスラム法の遵守が求められます。
対策④ プロモーションとマーケティング
ハラール認証を取得したことを強調し、イスラム教徒の顧客層に向けた効果的なマーケティング戦略を展開します。信頼性の高いハラール認証を持つことで、消費者に安心感を提供し、ブランドの信頼性とイメージを向上させることができます。
4. ハラール認証を受けた日本食レストランで賑わう「Tokyo Street」とは?
現地で人気のハラール対応済み日本食レストラン2店をご紹介
マレーシアには、日本を感じられる人気スポット「Tokyo Street(東京ストリート)」があります。
首都クアラルンプールの繁華街Bukit Bintang(ブキッ ビンタン)に位置する巨大ショッピングモール「PAVILION(パビリオン)」内にあり、多くの観光客や地元民が訪れることで知られています。
このエリアにはハラール対応している日本食レストランが増えており、イスラム教徒を含む多くのマレーシア人が訪れているのです。
以下、現地で人気のハラール対応済み日本食レストラン2店を紹介します。
回転寿司チェーン SUSHI KING
1995年創業のSUSHI KINGは、寿司だけでなく様々なメニューを提供するマレーシア最大の寿司チェーンです。2016年にはほぼ全店舗でハラール認証を取得しており、多様なメニューが楽しめる点が人気です。
すき家 Suki-ya
Suki-ya Malaysiaでは、ハラール食品の提供を最優先事項としており、全ての製品がシャリーア法に従って処理されています。Suki-yaのハラール対応メニューは、地元のイスラム教徒にも好評です。
5. 海外進出なら「ワールドバリューコンサルティング」にお任せください
今回は「マレーシアの食品市場とハラール食ビジネスの可能性」について解説しました。
マレーシアは高い購買力、アジアへの中継地点としての位置づけ、そして健康志向の拡大などが相まって、日本食の普及と多様性が魅力的です。
市場の小規模性や賃金コストの高さ、ハラール認証取得の必要性などの懸念点はありますが、これらを克服するための戦略的なアプローチが求められます。
例えば、ターゲット層を明確にし、現地市場に適したマーケティング戦略を展開することで、ビジネスの成功確率を高めることができます。企業は現地の文化や習慣に配慮しながら、柔軟に対応することが重要です。
以上の点を踏まえ、マレーシア市場における食品ビジネスの成功に向けた具体的なステップを計画し、実行していくことが求められます。
海外進出の夢を叶えるためのパートナーとしてご連絡をお待ちしております
私たち「ワールドバリューコンサルティング」の使命は、中小企業の皆様が大きな夢に向かって飛躍し、世界の舞台で輝けるようにサポートすることです。アジア圏への進出、海外進出は未知の領域かもしれませんが、その先には新たな可能性と成長が待っています。
私たちは、あなたの夢を共に追いかけ、成功への道を切り拓いていくことを心から楽しみにしています。
どんな些細なことでも構いません。私たちはいつでも、あなたの夢を叶えるためのパートナーとしてお待ちしております。
(参考文献)
・マレーシア JETRO
・PAVILION(パビリオン) PAVILION
・マレーシアの外食市場規模・シェア分析 -産業調査レポート Mordor Intelligence
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