アジア進出企業の「人事制度」事情は? 福利厚生と業績に相関性【事例あり】

多くの日系企業にとって、海外事業の成否が今後の企業存亡を占う重大な要素であることは言うまでもありません。そしてその中でも地理的に近いアジアはもはや、日系企業にとって無視できない重要な事業エリアとなっています。
そこで、アジア9ヵ国と英国・ドイツに拠点を持つ【株式会社ジェイエイシー リクルートメント】では、『アジア人材戦略レポート』と題し、「グローバル競争を勝ち抜く日系企業の人材戦略」についてアンケート調査・考察を実施。それらの調査を元に、日系企業がグローバル競争で勝ち抜いていくために「今何をすべきか?」をテーマに、少しでも皆様のヒントになればとの想いで、オリジナルのレポートを作成いたしました。
全6回シリーズからなる本レポートでは、アジアで好業績を収めている企業の特徴を、「採用」「育成」「人事制度・福利厚生」「給与」「社内コミュニケーション」の5つの観点から探し出し、現地でのヒアリング調査によって集めた人事課題やその取り組み事例をご紹介していきます。
人材が時に「人財」と表現される様に、企業経営において人への投資が重要事項と捉えられている一方で、人材に関する取り組みは中長期(というよりその企業が存続する限り永遠)に及び、業績に与える影響を可視化することは極めて困難です。
私は、仕事柄、日々多くの企業経営者や海外事業責任者、人事責任者の方々とお会いしていますが、海外事業において人や組織の問題を抱えていない企業などないと断言します。
本レポートを通じ、自社の人事課題の把握や今後に向けた打ち手の話し合いを始めるなど、海外事業に携わる皆様が、今抱える問題から一歩でも前進されるきっかけにして頂けることを願っています。
▼ アジア進出企業の「人事制度」事情は? 福利厚生と業績に相関性 【事例あり】
1. 共通制度は「18%」、現地に合わせた制度が不可欠か
本レポートでは、「直近の業績について、売上・利益・成長性・収益性など、貴社が最重要視するKPIの達成状況はどうか?」という質問に対して、「大幅に達成している」「達成している」と回答した企業を、「達成企業」と位置付け、それ達成企業の回答と、そうでない企業の回答の2つを比較しながら考察していきます。
シリーズ第4回では、海外での「人事制度・福利厚生」について解説していきます。
【その他の回答例(原文のまま)】
・合弁パートナー企業の制度をそのまま導入
・グローバルで統一されている人事制度を一部採り入れ独自で設計
・本社の人事制度の設計思想を元に独自の人事制度を設計
・会社を買収したが、人事制度は元のまま継承
・設立支援企業から制度のドラフトを入手し、それを元にカスタマイズ
リージョンで共通の人事制度を運用しているとした企業が18%ありましたが、現地取材をした企業の中には「拠点間異動を前提とするリージョン共通の人事制度を運用しているにも関わらず、拠点間異動は(人心の問題で)現実的でなく、それよりも「その国に合った制度」を運用する方が全体最適になると思う」といった意見もありました。
グローバル全体やリージョン内での人事制度統一が必ずしも現地法人にとってメリットばかりではないという点は、本社やリージョナルHQ、現地法人それぞれが意識しておくべきことです。制度導入にあたっては、国際間異動の必要性と有効性、現実的な異動の可否を見極めることが重要です。
また、昨今日系企業による海外企業のM&Aも増えていますが、「M&Aした企業については無理に自社の制度を導入することはせず、研修プログラムのみ共有している」といったつながり方をしている企業もありました。
「現行の人事制度は、現在の組織や事業運営・経営理念等に対して適切に設計されているか?」との質問に対し、「大いにうまくいっている」「どちらかと言えばうまくいっている」と回答した企業は全体の66%となりました。また、設計は「大いにうまくいっている」「どちらかと言えばうまくいっている」のに、そのポリシー通りに運用が出来ていないとした企業が7%ありました。
また、合弁パートナー企業の制度を元に設計している企業では「うまくいっている」ケースが目立ちました。現地系企業がこれまでの試行錯誤の末、その地の雇用事情に適した制度を作り上げている為と言えるでしょう。
一方、「うまくいっていない」企業の中には「独自の人事制度をゼロから設計したものに、組合の圧力による修正が加えられている。」事例もあるなど、人事制度を作る上での障害もあるようです。
2. 福利厚生と業績に相関性あり! 進出企業の事例は?
福利厚生は一般的に人材採用や定着、モチベーションアップに効果があるとつながると考えられていますが、達成企業と未達成企業で比較したところ、達成企業の方が全体的に福利厚生の導入に積極的であることが分かりました。
一方で、福利厚生の内容を個別に見てみると、インセンティブトリップを導入している企業が140社余りありますが、その内業績目標を達成しているのはわずか14%という結果になっています。全体の達成企業割合が32%ですので、これでは「達成につながらない」どころか「達成の妨げとなっている」とも言えそうな数値です。もしかすると、インセンティブトリップ獲得に手が届きそうなチームはモチベーションアップにつながる反面、そうでないチームのモチベーションがダウンしてしまい、そのマイナス効果の方がプラスの効果よりも大きいのかもしれません。
また、とある企業では「3年限定で住宅手当を支給しているが、手当がなくなった時に、3年で昇給した金額と手当とが相殺されてしまうことからそれが引き金となり離職につながってしまった」といった事例もあるなど、導入には慎重さも求められます。
ここで、福利厚生を充実させることで効果を実感できている企業の事例をご紹介します。
【事例:研修の充実】
給料条件は他社より悪いが定着性は良い。取り組んでいるのは研修を昔から充実させていたのと、5Sで職場を評価するアワード、そして、改善提案をしたら無条件で一回1万ルピー(約百円)をプレゼントするといったこと。改善提案は年4,000件ほど出る。それを元にどんどん改善していくので、スタッフも納得感が強い。
【事例:社内コミュニティの形成など】
社内ではフリードリンク、アイスが一日一つ無料、フリーアドレス。会社の社用車も、土日は社員にガソリン付きでフリーレンタルしている(一人年二回まで利用可)。これらはコストはそこまでかからず離職率が改善した。また、スポーツアクティビティは最も効果がいい施策の一つ。三人以上の社員のサークル活動はすべて認めている。スポーツのコミュニティを作ることで、日本人駐在員との交流の場にもなる上、健康増進で医療費を削減できる。
3. まとめ
福利厚生を手厚くする企業が成功する
本記事では主に人事制度と福利厚生に絞って、調査結果を共有しました。しっかりとした制度を構築し、福利厚生を手厚くする(できる)企業が、海外ビジネスを成功させているようです。しかし、人事制度に置いて重要なのは、なんといっても「給与」でしょう。下記の記事でも詳しく取り上げているので、是非参考にしてみてください。
『アジア人材戦略レポート』 全6回シリーズ
■ Vol.1 【離職率】「アジア進出日系企業の平均離職率は「15.5%」、進出成功に与える影響は?」
■ Vol.2 【採用】「アジア各国の「採用」事情は? 成功企業の採用戦略は「チャネル拡大」」
■ Vol.3 【育成】「【事例あり】海外人材育成と業績は連動する! 成功企業の育成プログラムとは?」
■ Vol.4 【人事制度・福利厚生】「アジア進出企業の「人事制度」事情は? 福利厚生と業績に相関性 【事例あり】」
■ Vol.5 【給与】「アジア進出企業の「給与」事情、「給与テーブルの見直し」がビジネス成功につながる」
■ Vol.6 【社内コミュニケーション】「アジア進出企業を徹底調査! 成功のポイントはコミュニケーションの方法・頻度?」
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オススメの海外進出サポート企業
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YCP Group 
自社事業の海外展開実績を活かしてアジア圏への海外展開を完全代行、調査やM&Aもサポート
マッキンゼー/ボストンコンサルティンググループ/ゴールドマンサックス/P&G出身者を中心とする250人規模の多機能チームが、世界20拠点に構えるグループ現地法人にて事業展開する中で蓄積した成功&失敗体験に基づく「ビジネス結果に直結する」実践的かつ包括的な海外展開サポートを提供します。
YCPでは各拠点にてコンサルティングサービスだけでなく自社事業を展開しています。市場調査フェーズからスキーム構築/定常的なビジネスマネジメントまで、事業主として一人称で取り組んできたからこそ得られた現地市場ノウハウや専門知識を活用し、教科書的な「べき論」に終始せず、ヒト/モノ/カネの観点から海外展開リスクを最小化するためのサービス開発を行っています。
<主要サービスメニュー>
・海外展開完全代行:
事業戦略~実行までの各フェーズにて、全ての業務を完全に代行
・海外調査:
マクロデータに表れない市場特性を探るための徹底的なフィールド調査を踏まえたビジネスに直結するインサイトを提供
・海外M&A:
買収後の統合実務や定常経営実務までを包括的にサポート -
カケモチ株式会社
インドネシア市場に特化して、市場調査、越境ECや会社設立支援などを提供している、インドネシア進出の専門会社です。
インドネシア進出前から進出後に至る業務を多岐に渡って支援。
多国展開はしておらず、インドネシア市場を専門にして、日本語が話せるインドネシア人スタッフを多数採用しています。
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・ビザ申請
■インドネシア人集客支援
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まずはお気軽にご連絡をください。 -
株式会社セカラボ
海外進出をゼロから伴走、包括的にサポート
私たちセカラボの正式名称は「セカイ・マッチ・ラボ」です。
「セカイ」=世界各国での事業活動
「マッチング」=最適なパートナーとの取引
「ラボラトリー」=調査と分析にもとづいた活動
という理念です。
世界各国での事業活動において何よりも重要なのは、
調査と分析に基づいた活動と最適なパートナーとの取引であると考える私たちが「セカイ・マッチ・ラボ」の理念のもと、海外進出企業のサポートをします。
「ミッション=伴走」
海外進出支援の現場では、多くの企業から「何から着手したらよいのか、何が必要不可欠なのか?がわからない」という相談を受けます。
調べても色々な情報があり、どれが自社にマッチしたものなのかも判断できないというのがこれまで多くの企業から聞いている相談の中でもダントツで多いものです。
私たちは、海外進出支援という立場としてどんなサポートが企業にとって意義があるのかを学習していく中で、"伴走する"ということが役割だと結論づけました。
「言ってくれれば手伝いますよ」というスタイルではなく、
「何が必要かを一緒に考えましょう」というスタイルでなければ、本当の支援にはなりづらいため、一緒に考え、一緒に行動するというスタンスを大切に考えています。
「BtoB 進出ソリューション」
私たちがBtoB海外進出・新規事業展開に必要不可欠だと考えるのは下記の3つです。
◇俯瞰を担当するプロジェクトマネジメントの存在
進出企業(主観)でもなく、現地企業(客観)でもない第三者である私たち(俯瞰)がこの立場を担います。
プロジェクトに必要な要素を俯瞰視野でも見ることはとても重要です。
「どうしたいか、したくないか」という当事者の考えとはまた別に「どうすべきか、すべきでないか」という考えにより、プロジェクトのズレ・モレを軽減・解消することができるのもプロジェクトマネジメントならではの役割です。
◇各国各分野の専門家・専門企業の協力
海外進出は、対象とする国を熟知する人・企業や必要となる対応分野におけるプロフェッショナルの存在により、安定した事業推進が実現します。
私たちのGlobal CxO Partnarsにより、専門力と現地対応力の安定した進出計画・事業推進が可能となります。
◇現地取引先企業との連携・協力関係
対象とする国で成功したければ、現地の企業との取引・連携・協力関係が必要です。
特にBtoBは、現地企業との相性・関係がそのまま事業成功に繋がると言っても過言ではありません。
私たちのサポートの根底には、これらの必要不可欠な要素を補うことにあります。
「BtoC 進出ソリューション」
私たちがBtoC海外進出・新規事業展開に必要不可欠だと考えるのは下記の3つです。
◇俯瞰を担当するプロジェクトマネジメントの存在
進出企業(主観)でもなく、現地消費者(客観)でもない第三者である私たち(俯瞰)がこの立場を担います。
プロジェクトに必要な要素を俯瞰視野でも見ることはとても重要です。
「どうしたいか、したくないか」という当事者の考えとはまた別に「どうすべきか、すべきでないか」という考えにより、プロジェクトのズレ・モレを軽減・解消することができるのもプロジェクトマネジメントならではの役割です。
◇各国各分野の専門家・専門企業の協力
海外進出は、対象とする国を熟知する人・企業や必要となる対応分野におけるプロフェッショナルの存在により、安定した事業推進が実現します。
私たちのGlobal CxO Partnarsにより、専門力と現地対応力の安定した進出計画・事業推進が可能となります。
◇現地消費者の行動を理解するためのマーケティング活動
対象とする国で成功したければ、現地の消費者の行動・心理を理解することが必要です。
特にBtoCは、現地のターゲットとするペルソナの行動・心理に対する理解と歩み寄りがそのまま事業成功に繋がると言っても過言ではありません。
私たちのサポートの根底には、これらの必要不可欠な要素を補うことにあります。
■事業内容
◇海外進出総合支援
◇日本進出総合支援
◇新規事業開発支援
◇海外事業再編支援
◇海外ビジネスベンダー選定
◇海外ビジネスマッチング
◇海外販路開拓事業
◇海外ビジネス総合代理
◇その他、上記に付帯する業務 -
MRKS International LLC / マークスインターナショナル合同会社
20年以上の実績をベースに、インドネシアに特化して支援。日本人が実稼働している現地拠点と各分野のプロが、確実に迅速にインドネシア進出をサポートいたします。
インドネシアに特化した進出コンサルティングファームです。東京とインドネシア・ジャカルタに拠点があります。
マッキャンエリクソン / 電通 / J. Walter Thompsonなどで20年以上にわたり、国際マーケティングに従事した代表が、インドネシアにてデジタルマーケティングの会社を設立運営の後、東京とジャカルタにおいてコンサルティング会社を設立し日本企業様のインドネシア進出を多面的に支援しております。
ご提供サービス
【パッケージサービス】
○コンサルティング顧問契約
○戦略策定から事業運営までワンストップ支援
○ご進出プランの資料・提案書作成(フィージビリティスタディ)
【個別サービス】
(進出ご検討段階)
○無料オンライン相談
○市場調査(市場環境、競合環境、規制調査、消費者調査)
○現地視察(訪問先アレンジからアテンドまで)
○テストマーケティング(展示会出展サポートなど)
○現地パートナー探し及びマッチング支援 など
(進出ご決定後)
○各種法務手続き(会社設立や必要な許認可取得、駐在員VISA取得など)
○各種税務・人事労務施策支援
○マーケティング・プロモーション支援
○クリエーティブ開発支援
○営業開拓支援
○FC展開支援 など
弊社の特長は、クライアント企業様の社内(他部門や上層部など)に向けた「資料・企画書」の作成からもサポートを行う点です。また、現地では、信頼ある法務・労務・税務の専門家や、デザインやコピーラインティング(英語・インドネシア語)、動画撮影編集などクリエーターともタッグを組んでおります。 -
GLOBAL ANGLE Pte. Ltd.
70か国/90都市以上での現地に立脚したフィールド調査
GLOBAL ANGLEは海外進出・事業推進に必要な市場・産業調査サービス、デジタルマーケティングサービスを提供しています。70か国90都市以上にローカルリサーチャーを有し、現地の言語で、現地の人により、現地市場を調べることで生きた情報を抽出することを強みとしています。自社オンラインプラットホームで現地調査員管理・プロジェクト管理を行うことでスムーズなプロジェクト進行を実現しています。シンガポール本部プロジェクトマネージメントチームは海外事業コンサルタント/リサーチャーで形成されており、現地から取得した情報を分析・フォーマット化し、事業に活きる情報としてお届けしております。
実績:
東アジア(中国、韓国、台湾、香港等)
東南アジア(マレーシア、インドネシア、ベトナム、タイ等)
南アジア(インド、パキスタン、バングラディッシュ等)
北米(USA、メキシコ、カナダ)、南米(ブラジル、チリ等)
中東(トルコ、サウジアラビア等)
ヨーロッパ(イタリア、ドイツ、フランス、スペイン等)
アフリカ(南アフリカ、ケニア、エジプト、エチオピア、ナイジェリア等)