カントリーリスクとは | カントリーリスクの定義・分類・対応方法・指標を解説

「カントリーリスク」とは、投資対象となる国・地域における、政治・経済・社会制度・法規制・自然災害・技術革新…といった様々な変化がもたらす影響(リスク)を指します。
世界において、国境を超えた経済的な結びつきが深まるに従って、海外貿易や投資など、海外ビジネスはより身近で一般的なものとなりました。他国とビジネスを行う上で知っておきたいのが、今回解説する「カントリーリスク」です。
本テキストでは海外進出はもちろんのこと、現在のグローバル経済に関わるビジネスパーソンならば知っておくべき「カントリーリスク」について解説します。具体的には、カントリーリスクの意味や定義、重要性や指標などの基礎知識について詳しくレクチャーしていきます。
▼カントリーリスクとは | カントリーリスクの定義・分類・対応方法・指標を解説
▼アナタの海外ビジネスを成功させるために
1.カントリーリスクとは
カントリーリスクとは、海外ビジネスを行う際に通常起きうる商業リスクとは別に、相手国の政治経済・社会環境といった国特有の問題や変化によって起こりうるリスクのことです。治安や政治が安定しない途上国ほどカントリーリスクは高まる傾向があります。
海外ビジネスを行う際には必ず把握しておかなければいけないものだと言えます。
カントリーリスクの意味
この2年間で、中国を取り巻く世界情勢は大きく変化しています。
カントリーリスクとは一般的に、「海外ビジネスにおける国特有のリスク」のことですが、下記のようにさまざまな意味で使われることがあります。
・ビジネスにおける相手国の信用度
・対象とする国の政治経済や治安などが不安定であり、ビジネス的にリスクが高いこと
・(金融商品の売買時に)途上国への投資がハイリスクハイリターンであること
・相手国の投資的なリスク全般
カントリーリスクの定義
詳しくは後述しますが、日本を代表する格付け会社R&Iはカントリーリスクの定義を「海外投融資や貿易を行う際、個別事業・取引の相手方がもつリスクとは別に、相手国・地域の政治・社会・経済等の環境変化に起因して、当初見込んでいた収益を損なう、又は予期せず損失が発生する危険」と定めています。
国際収支の悪化等から外貨不足に陥り、個別事業・取引に関わる元本・配当・利息や代金の国外送金が制限されるか、あるいは不可能となる。
急激なインフレーションや為替相場の変動などで、個別事業・取引に関わる元本・配当・利息や代金の受取金額が大幅に目減りする。
革命などによる政権交代で、新政権が債務の継承を拒否する。個別事業・取引の相手先の資産に対し、国有化や、国家権力による収容・没収等の危険性が増大する。
内乱、暴動、外国の侵略、戦争等により、現地における個別事業・取引の遂行に支障を来たす。
国際関係、国際情勢の変化により、個別事業・取引の円滑な推進・遂行が困難になる。
2. カントリーリスクの重要性
カントリーリスクの意味や定義を理解したところで、次はカントリーリスクの重要性について知っておきましょう。
なぜ海外進出および海外投資においてカントリーリスクは重要なのか?
近年、企業が抱えるリスクの中でもカントリーリスクは非常に重要な存在となっています。
海外進出や投資など、海外ビジネスには大きなメリットがありますが、言葉も文化も異なる国とビジネスを行うのは決して簡単ではありません。すべてのリスクを把握し対応するのは困難なことですが、商習慣、政治的な影響や治安、災害など考えうるカントリーリスクとしっかり向き合うことこそが海外ビジネスを大きな成功へと導く近道だと言えるでしょう。
3. カントリーリスクの要因と分類
カントリーリスクの重要性がおわかりいただけたでしょうか。この項ではカントリーリスクの要因、その4つの分類について解説します。
カントリーリスクの要因は大きく4つに分類できる
カントリーリスクの要因は大きく分けて4つに分類できます。「政治リスク」「経済リスク」「社会リスク」「自然リスク」です。それぞれ詳しく見ていきましょう。
① 政治リスク
政権交代や政策の変更など、政治的な要因から来るリスクのことです。実例としてはミャンマーの民政化や2014年のタイの軍事クーデター、2018年の北アイルランド国境問題などがあげられます。
② 経済リスク
例えば国債の債務不履行、急激なインフレ、通貨の下落など、経済的な要因から来るリスクのことです。実例としては10年を超えるハイパーインフレが続くジンバブエの情勢や、1997年のアジア通貨危機などがあげられます。
③ 社会リスク
宗教や文化、歴史的な事情によってテロや紛争、不買運動などが起こるリスクのことです。実例としては中国の反日活動による不買運動や、2016年のベルギー連続テロ事件があげられます。
近年、何かと話題になる大気汚染なども社会リスクのひとつでしょう。
④ 自然リスク
自然災害もカントリーリスクの一つであり、日本は地震や津波が多く、自然リスクの高い国と言えます。地震や津波だけでなく、噴火や火災、地盤沈下なども自然リスクの一つです。2011年のタイ大洪水や2018年のノートルダム大聖堂火災などが実例としてあげられます。
4. カントリーリスクの対応方法
4つのカントリーリスク分類について理解を深めてきましたが、その対応方法についても知っておきたいところです。この項ではカントリーリスクの対応方法について解説します。
① カントリーリスクを事前に認識しておく
まずはカントリーリスクを把握することが必要です。相手国におけるさまざまなリスクを認識するためには、OECD(経済協力開発機構)や、日本を代表する格付け会社であるR&Iが発表しているカントリーリスクの格付け情報などを確認するといいでしょう。
カントリーリスクの指標については次項で詳しく解説します。
② 貿易保険を活用する
さまざまなリスクを予測したとしても、想定外は起こり得ます。海外取引のリスクをカバーしてくれる貿易保険を活用するのもカントリーリスクへの対応方法の一つです。貨物の損害だけをサポートする海上保険とは異なり、貿易保険はカントリーリスクをしっかりサポートしてくれるため、カントリーリスク対応の強い味方です。
日本における貿易保険は全額政府出資の日本貿易保険(NEXI)だけでなく、民間の保険会社が扱うものもあります。
貿易保険については下記のテキストに詳しく書かれています。ぜひご一読ください。
③ 為替予約を活用する
貿易保険以外にも、為替予約を活用するリスク対策もあります。
輸出を行う企業にとって、為替変動のリスクは常に起こり得るカントリーリスクです。多くの輸出関連企業が輸出計画を立てる段階で為替予約をし、リスク対策を行っています。
④ リスクを分散させておく
カントリーリスクに限らず、リスク分散はリスク管理の基本です。カントリーリスクにおけるリスク分散方法としては海外拠点の分散や移転などがあげられます。近年、中国におけるカントリーリスク(中国リスク、チャイナリスクとも)対策として、東南アジアにも生産拠点を置く企業が増えています。
5. カントリーリスクの指標について
カントリーリスクの対応策として、まずはカントリーリスクを事前に認識しておくことが必要であることは前項で述べたとおりです。
では、カントリーリスクの指標にはどのようなものがあるのでしょうか。
① カントリーリスクの調査項目
カントリーリスクについての調査はさまざまな各付会社や調査会社が行っており、その調査項目は国の財政状況、国際収支、対外債務などです。
依頼内容やレポートの種類によって調査項目は異なりますが、金融に関する情報だけでなく政治リスクなども考慮され、総合的に格付けが行われます。
② 格付会社それぞれのランクについて
■日本貿易保険(NEXI)
日本貿易保険(NEXI)はOECDカントリーリスク専門家会合において決定されるOECDの評価をもとにして国や地域の評価を決めています。「A」から「H」までの8段階となっており、最上位は「A」、最下位は「H」です。
■スタンダード&プアーズ(S&P)
アメリカの大手格付会社であるスタンダード&プアーズ(S&P)では、最上位を「AAA」とし、「AA」「A」…とランクが続きます。S&Pにおいて、格付けの最下位は「D」となっています。
■ムーディーズ
S&Pと肩を並べるアメリカの格付会社ムーディーズでは、最上位を「Aaa」とし、「Aa1」「Aa2」…とランクが続きます。ムーディーズの格付けにおける最下位ランクは「C」です。
6. 優良な海外進出サポート企業をご紹介
カントリーリスクを知り、正しく対応することが重要
今回は、カントリーリスクの基礎知識について解説しました。カントリーリスクとはどのようなものか、また、カントリーリスクの重要性と対策の必要性がおわかりいただけたでしょうか。
言葉や文化、商慣習が異なる国と取引を行うわけですから、カントリーリスクは海外ビジネスにおいて避けて通れないリスクだと言えます。
ですが、調査会社や貿易保険を利用することでそのリスクを大幅に低減させることができます。カントリーリスクを必要以上に恐れず、相手国への理解を深め、適切な対応によって海外ビジネスを成功に導いていきましょう。
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(参照文献)
・「カントリーリスクの定義」株式会社格付投資情報センター(R&I)
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ユビーク株式会社とは
1997年、マイケル・フーバーがMDH Consultants KKを設立。日本企業や日本市場へ参入しようとする外国企業にコンサルティングサービスを提供していました。2015年に社名をユビーク株式会社に変更し、創業時から「企業開発のコンサルティング」と「マーケティング支援サービス」を着実に実践し、サービスを提供してきました。また、国内外の経験豊富な専門家と連携して「ブティック」を設立し、彼らの知見や能力を活かして、サービスの拡大を続けています。ユビークの中核は、品質とお客様への情熱、そしてプロフェッショナルなサポートです。
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