CPT(輸送費込み条件)のメリット・デメリット|インコタームズでのCPTの基礎知識

CPT(Carriage Paid To / 輸送費込み条件)とは、「インコタームズ」における国際貿易の取引条件のひとつです。
CPT条件下では、売り手は、商品を目的地まで運送するための「費用」と、商品を運送人に引き渡すまでの「責任(リスク)」を負います。しかし、商品が売り手から運送人に引き渡された瞬間から、商品に関連する責任(リスク)は買い手に移転します(運送費用はそのまま売り手が負担します)。
CPTは、航空輸送、海上輸送、陸送など、あらゆる輸送方法に適用可能な条件として活用されています。
本記事では、CPTの基礎知識から、そのメリットとデメリット、さらにはCIP(輸送費保険料込み / Carriage and Insurance Paid To)との違い、そして貿易におけるCTP取引の詳細な流れまで、海外への輸出入貿易を検討している日本人ビジネスパーソンに向けて、わかりやすく解説していきます。
▼CPT(輸送費込み条件)のメリット・デメリット|インコタームズでのCPTの基礎知識
- 1. CPT(Carriage Paid To / 輸送費込み条件)とは
- 2. CPT(Carriage Paid To / 輸送費込み条件)のメリット
- 3. CPT(Carriage Paid To / 輸送費込み条件)のデメリット
- 4. CPT(Carriage Paid To / 輸送費込み条件)とCIP(Carriage and Insurance Paid To / 輸送費保険料込み)との違いとは
- 5. 貿易におけるCPT(Carriage Paid To / 輸送費込み条件)の流れについて
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1. CPT(Carriage Paid To / 輸送費込み条件)とは
本稿のテーマである「CPT(Carriage Paid To / 輸送費込み条件)」について解説する前に、まずは、CPTを始めとする様々な国際貿易の取引条件を定めた「インコタームズ」について簡潔に解説します。
異なる法制度、税体系、および商慣習は、国際貿易における障壁となります。これらの障壁を乗り越え、円滑な取引を実現するためには、共通の言語と規則が不可欠です。ここで重要な役割を果たすのが、「インコタームズ」という一連の国際貿易規則となります。
インコタームズのおもな目的は、貿易契約における買い手と売り手の間で責任とリスクの分担を明確にし、世界中での取引の透明性と効率を向上させることです。
インコタームズは、貿易契約における買い手と売り手の責任とリスクの所在を明確にし、全世界での商取引の透明性と効率性を高めることを目的としています。
そんなインコタームズ2020に基づき定義された、本稿のテーマである「CPT(Carriage Paid To / 輸送費込み条件)」は、輸出入業者がより有利な取引条件を選択し、リスクを適切に管理することができる取引条件のひとつです。
この項では、そんなCPTの基本情報とインコタームズについて解説します。
そもそもインコタームズとは
まずインコタームズとは、国際商業会議所(ICC)が制定した国際貿易における標準化された取引条件リストです。
インコタームズでは、貨物の輸送における費用とリスクの負担を、売り手と買い手の間でいつどのように分担するかを明確に定義しており、貿易取引条件を「費用負担」と「危険負担」の観点から、E、F、C、Dの4つのグループに分けています。
これらのインコタームズが定める規則によって、国際貿易のプロセスが明確化され、取引における売り手と買い手の双方が、輸送に関わる費用とリスクの負担を事前に納得できる形で取り決めることができるのです。
最新の「インコタームズ2020」では、全11の取引条件を定義し、国際貿易における契約を明確化しています。インコタームズで定められた条件は国際間での取引において広く認知されており、スムーズで効率的な貿易を実現するための指針となっています。
CPTの基本情報
CPT(Carriage Paid To)はインコタームズで定められた貿易取引条件のひとつです。
CPT条件下においては、「輸送費込み条件」という日本語訳通り、売り手が商品を指定された目的地まで輸送する費用を負担します。
しかし、商品が売り手から運送人に引き渡された瞬間、リスクは買い手に移転します。ただし、その後のリスク負担は買い手となりますが、運送費用はそのまま売り手が負担します。
CPT条件は、航空輸送やコンテナ輸送を含む、あらゆる輸送方法に適用されます。
CPTの「費用負担」と「危険負担」の範囲について
CPT取引では、売り手は商品の準備、輸出通関手続き、そして商品が指定の目的地まで運送されるための費用を負担します。
この運送費用には、商品を運送人に引き渡す地点までの輸送コストと、そこから目的地までの費用が含まれます。
一方で、商品が売り手から運送人へ引き渡される時点で、リスクは買い手に移転します。
したがって、買い手は商品が輸送中に遭遇する可能性のあるリスクをカバーするための保険への加入を検討する必要があります。また、商品の輸入通関に伴う費用や手続きも買い手の責任範囲内となっています。
2. CPT(Carriage Paid To / 輸送費込み条件)のメリット
このセクションでは、買い手と売り手のそれぞれの立場から見たCPT(輸送費込み条件)のメリットについて解説します。
買い手にとってのCPTのメリット
CPTでは、買い手は、商品が指定された目的地まで運送される費用について予め知ることができます。これにより、買い手は予算計画を立てやすくなり、想定外のコストに悩まされることが少なくなります。
また、売り手が輸送の手配を行うため、買い手は物流の複雑さを気にすることなく、商品の到着を待つことができます。これは、物流の専門知識が乏しいケースが多い買い手にとって大きなメリットとなります。
売り手にとってのCPTのメリット
売り手にとって、CPTを選択する最大のメリットは、輸送プロセスにおけるコントロールの強化です。
売り手は輸送手段を自ら選択し、輸送の手配を行うことができるため、貨物の安全かつ効率的な輸送を確保できます。さらに輸送費用を事前に把握し、価格設定に反映させることができるため、コスト管理も容易になります。
3. CPT(Carriage Paid To / 輸送費込み条件)のデメリット
CPT(輸送費込み条件)が国際貿易において便利な取引条件であることは確かですが、注意すべきデメリットも存在します。
このセクションでは、CPT契約に伴うリスクや課題に焦点を当て、買い手と売り手が直面する可能性のあるデメリットを解説します。
買い手にとってのCPTのデメリット
CPT条件下で買い手が直面するおもなデメリットは、輸送中のリスク管理の課題です。
CPTでは、商品が売り手から運送人に引き渡される瞬間から、すべてのリスクが買い手に移転します。これは、買い手がその後の輸送においてリスクを監視し、適切に対応する必要があることを意味します。特に、運送途中の事故や遅延が発生した場合、買い手はこれらの問題を自身で解決する必要があり、追加のコストや手間が発生する可能性があります。
また、買い手は自ら保険に加入することが推奨されますが、これには追加の費用がかかります。
売り手にとってのCPTのデメリット
売り手にとってのCPTのおもなデメリットとしては、目的地までの輸送費用の増加が挙げられます。
売り手は、商品が指定された目的地まで運ばれる費用を全額負担するため、長距離の輸送の場合、予期せぬ物流コストの増加の可能性を考慮しなければなりません。
また、売り手は輸送プロセスを管理する責任があり、輸送手段の選定や物流会社との交渉など、物流作業がより多岐に渡ることもデメリットとして考えられます。
さらに、CPT条件下では、商品が運送人に引き渡されるまでのリスクに関しては、売り手側が負うため、この期間中に発生するあらゆる問題に対処する必要があります。
4. CPT(Carriage Paid To / 輸送費込み条件)とCIP(Carriage and Insurance Paid To / 輸送費保険料込み)との違いとは
インコタームズの中でも今回解説している「CPT(輸送費込み条件)」と「CIP(輸送費保険料込み条件)」は、よく比較される取引条件です。
この項では、CPTとCIPの基本的な違いと、それらの取引条件が貿易においてどのように機能するかを解説します。
CIP(輸送費保険料込み条件)とは
CIP(Carriage and Insurance Paid To)、すなわち「輸送費保険料込み条件」は、その名の通り、売り手が、商品を指定された目的地までの輸送費用と、輸送中に発生するリスクをカバーする保険料を負担するインコタームズ条件です。
CIPは、特に高付加価値の貨物や、輸送途中での損害リスクが高い商品の貿易取引において需要があります。
CPTとCIPの違いとは?どちらを選択すると良いのか?
CPTとCIPのおもな違いは、輸送中のリスクに対する保険の提供の有無にあります。
CPTでは、売り手は商品を目的地まで輸送する費用を負担しますが、保険の手配は含まれません。これに対し、CIPでは、売り手は輸送費用のほかに、輸送中のリスクをカバーする保険料も負担します。
したがって、輸送中の損害リスクが懸念される場合や、商品の価値が高い場合はCIPを選択することが推奨されます。
一方で、買い手が自身でリスクを管理し、保険に加入する能力がある場合や、輸送リスクが比較的低いと判断される場合は、CPTが適切な選択肢となるでしょう。
5. 貿易におけるCPT(Carriage Paid To / 輸送費込み条件)の流れについて
ここまで解説したように、CPT(輸送費込み条件)を適用した貿易取引では、売り手と買い手の間で輸送費用とリスクの分担が明確に定義されています。
最後のセクションでは、CPT条件が適用される一連の貿易プロセスを段階ごとに見ていきましょう。
① 契約の締結
貿易取引が始まる際、売り手と買い手はCPT条件を含む契約を締結します。この契約で、商品の数量、価格、輸送の条件、目的地、およびリスクと費用の負担に関する具体的な条項を明確に定めます。契約締結には両当事者の合意が必要であり、これによって取引の法的枠組みが成立します。
② 商品の準備と出荷
次に、売り手は契約に基づいて商品を準備し、梱包します。商品は輸送に適した方法で梱包され、輸出通関のための書類が準備されます。その後、事前に定められたスケジュールに従って商品は出荷されます。
③ 輸送と保険の手配
売り手は、契約で定められた目的地まで商品を運ぶための輸送手段を選定し、必要に応じて輸送中のリスクをカバーするための保険に加入します。CPTでは、輸送費は売り手が負担しますが、保険の手配はCPT条件自体には含まれません。
④ 船積みと運賃の支払い
商品が出荷港で船に積み込まれると、売り手は運送会社に対して運賃(船賃)を支払います。積み込みが完了した時点で、売り手は買い手に積載証明書(Bill of Lading)を提供します。
⑤ 輸送と追跡
商品が出発点から目的地に向けて輸送される間、売り手および買い手は、提供される追跡システムを通じて貨物の進捗状況を確認できます。これにより、輸送の透明性が保たれます。
⑥ 到着と輸入通関手続き
商品が目的地港に到着した後、買い手は商品の受け取りと通関手続きを行います。この段階で必要な書類には、売り手から提供された積載証明書、保険証書、商業請求書などが含まれます。
⑦ 保険の適用
輸送中に商品に損害が発生した場合、CPT条件下では売り手の責任は運送人に商品を引き渡した時点で終了しますが、買い手が独自に加入した保険や売り手が任意で手配した保険が適用される場合もあります。
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今回は、CPT(Carriage Paid To / 輸送費込み条件)の基礎知識として、そのメリットとデメリット、さらにはCIP(輸送費保険料込み / Carriage and Insurance Paid To)との違い、そしてCPT取引の詳細な流れについて解説しました。
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(参考文献)
・「インコタームズのFOB、FCA、FAS、CIFの違い 海上輸送の貿易条件【図解あり】」DEXTRE
・「インコタームズ(INCOTERMS)の輸送費込(CPT)」税金Lab税理士法人
・「インコタームズ2020(貿易条件)」SANKYU 物流情報サービス
・「【インコタームズ】FCAとCPT、貿易取引で輸入者が仕切りやすいのはどっち?」みんなの仕事Lab(シゴ・ラボ)
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