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ASEAN物流の最新動向と戦略的活用法|相互関税時代に求められる“供給網の再設計”とは

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2025年4月、米国トランプ政権が発表した「相互関税政策」により、日本および多くのASEAN諸国から米国への輸出に高率の関税が課されることとなりました。これにより、日本企業の対米輸出戦略は大きな転換点を迎えており、従来のサプライチェーン構造の見直しが急務となっています。特に製造業や商社、消費財を扱う企業にとっては、物流の再設計と地域戦略の再構築が経営上の喫緊の課題となりつつあります。

このような中、注目されているのが「ASEAN物流」の可能性です。ASEANは地理的に中国・インド・中東を結ぶ要衝であり、かつ経済共同体(AEC)による域内統合の進展によって、陸・海・空を横断する高度な物流ネットワークが形成されつつあります。製造・販売拠点の分散と統合、通関業務の効率化、現地化対応など、ASEANの物流機能を戦略的に捉えることで、日本企業は外部環境の急変にも柔軟に対応できる体制を築くことが可能です。

本記事では、相互関税時代に求められる新たなサプライチェーンの姿を見据えつつ、ASEAN物流の現状と課題、そして日本企業が今後取るべき実践的な物流戦略について解説します。是非、参考にしてください。

トランプ政権の相互関税政策とグローバル物流への影響

「相互関税政策」とは何か? 内容と対象国の概要

2025年4月に米国トランプ政権が打ち出した「相互関税政策」は、貿易赤字の是正と米国産業保護を目的に、すべての輸入品に最低10%の関税を課し、さらに各国の対米貿易障壁に応じて最大50%までの追加関税を設定するという、極めて保護主義的な通商政策です。日本からの輸出品には24%、ベトナムには45%、タイには36%といった高率の関税が適用されており、自動車や部品、電子機器、食品などの主力品目が軒並み影響を受ける形となっています。加えて、完成車には一律25%の追加関税も上乗せされるため、特に製造業の収益構造に与えるインパクトは大きく、企業の戦略見直しが避けられない状況です。

日本企業に求められるのは「対米依存の見直し」

このような高関税措置を受けて、日本企業は従来の対米依存型のビジネスモデルからの脱却を迫られています。多くの製造業が米国を最重要市場として位置づけてきましたが、関税コストの上昇によって、従来の価格競争力や採算性が大きく損なわれるリスクが顕在化しています。そのため、販売市場の多角化と同時に、製造・物流拠点を見直す動きが本格化しています。中でもASEANは、地理的な近接性とコスト競争力、そして成長ポテンシャルの高さから、サプライチェーン再構築の重要な選択肢として急速に注目を集めている地域です。

輸出主導型の限界と、物流再構築の必要性

相互関税政策によって浮き彫りになったのは、これまでの「輸出主導型モデル」の脆弱性です。単一市場に依存した供給体制は、通商政策や地政学リスクの変化に対して非常に脆弱であり、想定外のコストや納期遅延に直面することになります。こうしたリスクを最小限に抑えるためには、サプライチェーンの再設計が不可欠です。製造と販売の分散化だけでなく、それらをつなぐ物流ネットワークの最適化が、今後の事業継続性と競争力を左右する要因となります。とりわけ、ASEAN域内での調達・製造・販売を一体化させる動きが加速しており、これに対応できる物流インフラと運用体制の整備が急務となっています。

ASEAN物流の現状と域内連結性の進化

陸・海・空に広がるインフラ整備の進展

ASEAN諸国では、近年急速に物流インフラの整備が進んでいます。タイ・マレーシア・シンガポールを結ぶ陸路輸送網の整備や、ベトナム・インドネシアの港湾拡張、さらにカンボジアやラオスといった内陸国の国際道路・鉄道整備が進行中です。とりわけ「ASEAN経済回廊」構想は、各国間を効率的に結ぶ幹線輸送網として注目されています。これにより、従来は時間もコストもかかっていた国境をまたぐ物流が、着実にスピードアップし、信頼性も向上しつつあります。また、航空貨物に関しても、タイ・マレーシア・シンガポールなどの主要空港がハブ機能を強化しており、ハイバリュー商材の高速輸送需要にも応えられる環境が整いつつあります。

AECによる関税撤廃と域内物流の自由化

ASEANは、2015年のAEC(ASEAN Economic Community)発足以降、関税の撤廃や通関制度の簡素化、原産地証明の統一といった域内経済統合を加速させてきました。これにより、ASEAN域内での物品移動における物理的・制度的な障壁が徐々に低減され、物流の自由化が進展しています。特に電子データによる通関処理や「単一通関ウィンドウ」の導入は、物流リードタイムの短縮とコスト削減に貢献しています。こうした制度的支援は、域内のサプライチェーン構築において、極めて大きな意味を持ちます。ASEAN域内に複数の製造・調達拠点を持つ企業にとっては、これらの統合的枠組みを前提とした物流設計が、競争優位性の源泉となりつつあります。

越境ECの拡大と新たな物流ニーズ

さらに近年は、ASEAN域内で越境ECの市場が急速に拡大しています。ShopeeやLazadaといった現地プラットフォームの成長に伴い、BtoCだけでなく中小企業間のBtoB取引も加速し、それに応じた“少量・高頻度”型の物流ニーズが急増しています。これに対応するため、各国ではEC事業者向けの専用倉庫や都市近郊型物流施設の整備が進められており、従来の大量一括輸送モデルから柔軟性と即応性を重視した物流体制へのシフトが見られます。こうした潮流は、ASEANの物流機能を従来の“輸送手段”から“顧客接点”として再定義する動きを加速させており、サプライチェーン上の戦略的価値がより高まっていると言えるでしょう。

日系企業が直面するASEAN物流の課題とは

地域ごとに異なる輸送インフラと港湾混雑

ASEAN全体として物流インフラの整備は進展している一方で、地域間の格差は依然として大きな課題です。たとえば、タイやマレーシア、シンガポールといったインフラ先進国に比べ、ラオスやカンボジア、ミャンマーなどでは道路舗装率が低く、長距離輸送の信頼性や効率性に不安が残ります。また、主要港湾では貨物量の増加にともない混雑が慢性化しており、輸出入に要するリードタイムが予定通りに確保できないケースも多くなっています。日系企業にとっては、輸送遅延がサプライチェーン全体の調整負担を増加させる要因となり、結果として調達コストや在庫リスクを押し上げる構造的課題に直面している状況です。

ラストワンマイルの不安定さと労働力不足

都市圏における配送網の確立も、ASEAN全体で見るとまだ十分とはいえません。とくに都市部を中心とした「ラストワンマイル配送」は、交通渋滞や人手不足、配送インフラの未整備など複数の要因が重なり、安定性に欠ける場合があります。ECの成長によって個別配送の需要が急増する一方で、ドライバーの確保が追いついていない国や都市も少なくありません。加えて、一部の国では冷蔵・冷凍対応の配送体制が十分に構築されておらず、医薬品や食品など温度管理が必要な商材の輸送においては、依然として品質維持に課題が残るケースもあります。こうした物流の“最終接点”における不安定さは、顧客体験や納期遵守率に直結するため、企業の信頼性にも影響を与える要素となっています。

国境・法制度・商習慣の違いが生む業務の複雑化

また、ASEANは経済統合を進めているとはいえ、各国の制度・商習慣の違いは依然として大きく、物流業務を一括管理するうえでの障害となっています。たとえば、関税制度や原産地規則、通関プロセスは国によって異なり、同じ商品でも通関スピードやコストが大きく変動する可能性があります。また、契約文化や支払条件の違いによって、輸送業者や倉庫業者との折衝・管理も煩雑化しがちです。加えて、各国の政治・行政環境も異なるため、突発的な規制変更やインフラストライキなど、外部リスクへの対応力も国によって異なります。これらの事情を適切に読み解き、柔軟に対応できる現地ネットワークと管理体制の構築は、日系企業にとって極めて重要な要素です。

相互関税時代のサプライチェーン再構築と“ハブ&スポーク型物流”の台頭

輸出依存型から「分散製造+域内供給」モデルへ

トランプ政権による相互関税政策が発表されて以降、日本企業の中では“輸出前提”の供給体制から脱却し、「製造と販売の地域内完結化」を図る動きが顕著になっています。とりわけASEAN域内においては、特定の国に集中するのではなく、複数国に製造・在庫拠点を分散させ、各国市場に適した供給体制を構築する動きが加速しています。これにより、特定市場への関税・規制リスクを回避しながら、需要変動に対応できる柔軟性を持った“地域内循環型サプライチェーン”の構築が求められているのです。このような背景から、物流機能は単なる輸送インフラではなく、事業継続性と競争力を左右する戦略的要素へと位置づけられています。

内陸輸送ネットワークの進展とハブの再定義

従来、ASEAN域内の物流は港湾を中心とした“海上輸送偏重型”が一般的でしたが、近年は内陸部への投資と陸路インフラの整備が進み、トラック輸送・鉄道輸送を組み合わせた複合輸送の実現性が高まっています。たとえば、タイ東部経済回廊(EEC)とマレーシア・ベトナムを結ぶ陸上物流ルートは、ASEAN大陸部の製造業を支える動脈として存在感を増しています。こうした動きに合わせて、輸出入の起点ではなく、域内輸送の“中継点”として機能する内陸型ハブの重要性が高まっています。つまり、これからの物流戦略では「どこから出すか」ではなく「どこで集約し、どこで分配するか」が鍵になる時代に移行しつつあります。

シンガポール・マレーシアの“域内統括型ハブ”としての再注目

また、地理的にASEANの中心に位置するシンガポールや、陸路・海路双方の利便性を持つマレーシアは、グローバル企業による地域統括拠点・ロジスティクスハブの立地として再評価されています。シンガポールは、港湾・空港機能に加え、税制・法制度の整備、ITインフラの高度化といった“管理機能”にも長けており、ASEAN全域をカバーする本社・倉庫・SCM機能の集約地として機能しています。マレーシアも同様に、コストメリットを活かしつつ、シンガポールとの連携によってハブ&スポーク型の供給網を構築できる利点があります。今後は“1カ国集中”ではなく、“地域を見据えた集約と分散のバランス”が求められ、その中心にハブ機能を担う国が位置づけられることになります。

日本企業の先進事例と物流戦略のアップデート

製造拠点の移転と連動した東南アジア一体型物流モデル

相互関税政策の発表以降、多くの日本企業が東南アジアにおける製造拠点の再配置を進めています。中でも注目されるのは、工場移転と同時に物流網を“国境を越えて一体化”させる動きです。たとえば、ベトナム・タイ・マレーシアの3カ国に分散していた製造ラインを、製品特性や輸出先に応じて役割分担させつつ、それらを陸路や海路でつなぐ広域的な輸送体制を構築する事例が増えています。このような「ASEAN内のマルチ拠点最適化」は、単なる生産移転にとどまらず、在庫の平準化やリードタイム短縮、調達・販売の柔軟化といった面でも大きな効果を生み出しています。

ASEAN域内を跨いだ倉庫再配置の動き

また、物流倉庫の再配置も戦略的に進められています。従来は、各国市場ごとに国内在庫を持ち、ローカル対応を重視していた企業が、域内統合の進展に合わせて、特定国に集約型の“リージョナルディストリビューションセンター(RDC)”を構築する動きが活発化しています。たとえば、マレーシアにコスト効率の高い大型倉庫を設け、そこからタイ・シンガポール・インドネシアへ中継・配送するというモデルです。こうした倉庫再編により、在庫削減やオペレーションの効率化が実現し、突発的な物流トラブルにも対応しやすくなります。加えて、越境通関や原産地規則に対応した仕組みを設計することで、RCEPやASEAN FTAといった協定のメリットも享受しやすくなる点が、制度対応面でも評価されています。

相互関税を逆手に取った“現地化型供給網”構築の可能性

厳しい関税政策を「脅威」ではなく「変革の契機」と捉え、現地化を加速させるという考え方もあります。例えば、精密機器メーカーなどにおいて、これまで日本本社からの輸出に依存していた米国向け供給を、東南アジア内の製造・倉庫・検査体制へと段階的に移行し、ASEANで部品調達と製造を完結させることで、対米関税を回避しつつ、同時にASEAN内市場の拡大にも対応できる構造を構築するといった戦略です。また、食品業界において、タイやベトナムの現地生産・加工体制を強化し、品質維持とコスト管理を両立させながら、地域横断的に供給できるネットワークを整備するという戦略も考えられます。こうした戦略に共通するのは、物流を“単なる業務コスト”としてではなく、“成長のインフラ”として再定義している点にあります。

まとめ|“地の利”を活かす企業だけが生き残る

2025年の相互関税政策は、日本企業のグローバル供給網に大きな構造転換を迫る出来事となりました。従来のような日本本社主導による対米輸出型モデルでは、関税負担や通商リスクの増大に対応しきれず、事業継続性すら脅かされかねません。こうした中で注目されるのが、ASEANを起点とした“域内完結型”の物流・供給網です。

ASEANではインフラ整備や経済統合が進み、各国をまたいだ効率的な物流設計が現実味を帯びています。ハブ&スポーク型の供給網や、マルチ拠点での分業体制、集約倉庫の活用など、戦略次第で柔軟かつ強靭なサプライチェーンを築くことが可能です。ただしその実現には、単なる“製造拠点の移転”ではなく、物流機能を含めた包括的な見直しが不可欠です。

“どこで作るか”に加え、“どう運ぶか”“どう届けるか”までを視野に入れた総合戦略こそ、ポスト関税時代の企業競争力を左右します。不安定な世界経済のなかで、ASEANの“地の利”をどう活かすか――、そこに未来を切り拓く鍵があるのです。

なお、「Digima~出島~」には、優良なASEANビジネスの専門家が多数登録されています。「海外進出無料相談窓口」では、専門のコンシェルジュが御社の課題をヒアリングし、最適な専門家をご紹介いたします。是非お気軽にご相談ください。

本記事が、ASEAN進出・現地展開を検討される日本企業の皆様にとっての一助となれば幸いです。

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