化粧品の海外展開を成功させる「訴求開発」の完全ガイド ~各国の規制・文化を理解した魅力的な伝え方~

「日本では評判なのに、海外では全く響かない」「競合他社に埋もれてしまう」——。化粧品の海外展開において、こうした悩みを抱える企業は少なくありません。その背景にあるのが、各国の規制や文化の違いを踏まえた適切な「訴求開発」への理解不足です。
海外市場では、日本の「56項目」に沿った表現だけでは、商品の魅力を十分に伝えることができません。一方で、科学的根拠に基づいた具体的なデータや効果を明示することで、現地の消費者やバイヤーから高い信頼を得ることが可能です。
本記事では、化粧品の海外展開における「訴求開発」の基本から詳しく解説します。自社商品の価値を海外で最大化したい方にとって、必読の内容をお届けします。
▼ 化粧品の海外展開を成功させる「訴求開発」の完全ガイド ~各国の規制・文化を理解した魅力的な伝え方~
1. 化粧品海外展開における「訴求開発」とは何か
顧客との唯一のコミュニケーションツールを作ること
「訴求開発」とは、顧客と企業をつなぐ唯一のコミュニケーションツールを開発することを指します。具体的には、ポスター、商品リーフレット、Webページ、製品パッケージなど、顧客に製品の魅力を伝えるあらゆる表現方法を戦略的に設計することです。
海外展開においては、単に日本語を翻訳するだけでは不十分で、現地の文化や規制、消費者の価値観に合わせた訴求の再構築が必要となります。
訴求開発を構成する4つの核要素
効果的な訴求開発には、以下の4つの要素を総合的に検討する必要があります。
- ターゲット顧客の明確化
- 進出先でどのような顧客層に製品を届けたいのかを具体的に定義します。年齢層、性別、ライフスタイル、美容への関心度などを細かく分析することが重要です。
- 各国の文化理解
- 宗教的背景、美の価値観、色彩に対する感覚、タブーとされる表現など、現地の文化的コンテクストを深く理解する必要があります。
- 科学的データの整備
- 製品の安全性や効果を裏付ける客観的なデータが不可欠です。臨床試験結果、成分分析データ、消費者テスト結果など、信頼性の高いエビデンスの準備が求められます。
- 規制要件の把握
- 各国・地域の薬事規制を正確に理解し、表現可能な範囲と制限事項を明確にすることが重要です。
これらの要素は、薬事、マーケティング、研究開発など複数の部署が連携して取り組む必要があります。
- 各国・地域の薬事規制を正確に理解し、表現可能な範囲と制限事項を明確にすることが重要です。
2. 日本と海外における化粧品の定義・カテゴリーの違い
共通する基本的な化粧品の定義
興味深いことに、化粧品の基本的な定義については、日本と海外で大きな違いはありません。
【日本】
- 人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、または皮膚もしくは毛髪を健やかに保つために使用される、人体への作用が緩和なもの
【ASEAN】
- 人体の外部部位に使用され、清潔、芳香、外観の変化、体臭の改善、良好な状態の保護・維持を意図した物質または製剤
【EU・アメリカ】
- 同様に、洗浄、美化、外観変化、保護を目的とした製品
これらの定義を見る限り、「清潔にする」「美しくする」「外観を変化させる」といった基本概念は万国共通といえます。
重要な違い:商品カテゴリーの分類
一方で、化粧品のカテゴリー分類には大きな違いがあります。
【日本】
- 一般化粧品
- 医薬部外品(薬用化粧品、日焼け止め、石鹸など)
【ASEAN・EU】
- 化粧品(基本的にこのカテゴリーのみ)
【アメリカ】
- 化粧品
- OTC医薬品
特に日本特有の「医薬部外品」というカテゴリーは海外には存在しないため、海外展開時にはこの違いを考慮した訴求の再構築が必要となります。
3. 日本と海外で大きく異なる「訴求規制」の実態
規制策定主体の違いが生む表現の幅
日本と海外では、訴求に関する規制の策定主体が根本的に異なります。
【日本の特徴】
- 規制策定:官公庁(厚生労働省等)
- 表現範囲:56項目のフレーズに限定
- 実証方法:化粧品については明確な規定なし
【海外の特徴】
- 規制策定:業界団体(米国化粧品工業会、欧州化粧品工業会等)
- 表現範囲:科学的根拠があれば幅広い表現が可能
- 実証方法:多様な手法を認容(消費者調査、科学論文、実験研究など)
この違いにより、海外では企業が自社製品の特性や効果をより自由かつ具体的に表現できる環境が整っています。
海外で活用可能な多様な実証方法
海外市場では、以下のような多角的なアプローチでエビデンスを構築できます。
- 消費者アンケートによる満足度・効果実感の数値化
- 科学文献・市場データからの客観的情報の活用
- 実験研究(コンピューターシミュレーション、細胞実験、動物実験代替法、臨床試験等)による効果の立証
これらの手法を組み合わせることで、説得力のある訴求を構築することが可能です。
「無添加」系訴求への注意点
日本でよく見られる「無香料」「パラベンフリー」「無着色」「無添加」といった表現は、海外では業界の公平性の観点から問題視される場合があります。特定成分を配合していない商品を強調することが、その成分を使用している他社製品への間接的な批判と受け取られる可能性があるためです。
4. 各国の文化・社会情勢を踏まえた訴求上の配慮点
業界公平性への配慮
海外では業界団体が規制を策定するため、競合他社への配慮が重要視されます。特定のアプローチや成分を否定するような表現ではなく、自社製品の独自価値を前向きに伝える表現が求められます。
コンシューマーフレンドリーな配慮
現地の消費者が理解しやすい情報提供が重要です。
- 言語対応:複数言語が使用される国では、全ての公用語での併記が必要
- 文字サイズ:複数言語併記時は同じサイズで、誰もが読める大きさでの表示
- 安全配慮:子どもの誤飲防止のためのチャイルドロック、においや容器デザインへの注意
宗教・文化的タブーへの理解
【セクシャルな表現の制限】
- タイなどでは、ヌード表現、身体部位の露骨な表現、セクシャルな連想をさせる表現は避ける必要があります。
【宗教への配慮】
- 現地の宗教において神聖とされる名称を商品名に使用することは厳禁です。
【差別的表現の回避】
- 特に肌の色に関する表現(「美白」「トーンアップ」「明るさ」等)は、差別的と受け取られる可能性があるため、表現方法に工夫が必要です。また、特定の性別に過度に偏った表現も避けるべきです。
5. 海外展開成功のための実践的ステップ
セルフチェック:まず取り組むべき3つのポイント
-
自社データの棚卸し 海外では科学的根拠が重視されるため、以下のデータを整理してください。
- 臨床試験結果
- 成分分析データ
- 消費者テスト結果
- 安全性試験データ
-
56項目を超えた価値の再発見 日本の規制に縛られることなく、製品本来の価値や魅力を多角的に見直しましょう。
- 配合成分の科学的機能
- 独自の製造技術や特許
- ユーザーが実感する具体的な効果
- 他社との差別化ポイント
-
進出希望国の規制・文化調査 各国の薬事規制、文化的タブー、消費者の価値観について事前調査を徹底してください。
社内体制構築のポイント
訴求開発は単一部署で完結できる業務ではありません。以下のような部署間連携が不可欠です。
- 研究開発部門:科学的データの提供、効果メカニズムの説明
- 薬事部門:各国規制の調査、表現可能範囲の確認
- マーケティング部門:現地市場調査、競合分析、ブランド戦略
- 法務部門:契約関連、知的財産権の確認
「とりまとめが大変」「役割分担が悩ましい」といった課題を抱える企業は、外部の専門家を活用することも有効な選択肢です。
まとめ|データに裏付けられた訴求で海外市場を攻略する
化粧品の海外展開において「訴求開発」は、成功と失敗を分ける最重要要素の一つです。日本の56項目に沿った控えめな表現では、科学的データと具体的な効果を重視する海外市場で競合に勝つことは困難です。
一方で、適切な科学的根拠を整備し、現地の規制と文化を理解した訴求を構築できれば、日本の高品質な化粧品は海外でも十分に評価され、選ばれる商品となり得ます。
重要なのは、「日本で通用するものが海外でも通用する」という思い込みを捨て、現地視点で訴求を再構築することです。そのためには、現地の規制、文化、消費者心理を深く理解し、自社製品の科学的価値を最大限に引き出す戦略的アプローチが不可欠です。
海外展開は決して簡単な道のりではありませんが、適切な準備と専門知識があれば、必ず成果につながります。まずは一歩踏み出し、グローバル市場での成功を掴んでください。
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