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訪日シニア観光客の集客戦略|若年層と違うニーズと受け入れのポイント

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訪日シニア観光客は時間的・経済的余裕を持つ有望な客層です。若年層との行動特性の違いや、バリアフリー対応・多言語表記・安心できる接客体制など、業種別の受け入れポイントを解説します。宿泊施設・飲食店・交通/ツアーサービスの経営者向けに集客戦略をまとめました。

訪日外国人マーケティングというと、SNSでの発信力が高い若年層や、消費意欲が旺盛な富裕層への訴求が話題になりがちです。
しかし実際には、現役を引退して時間的・経済的な余裕を持つ「訪日シニア観光客」も、宿泊施設や飲食店、交通・ツアーサービスにとって見逃せない有望な客層です。
世界的な高齢化の進行により、この層は今後さらに拡大していくと見込まれています。
本記事では、訪日シニア観光客が若年層とどう異なるニーズを持つのか、そして業種別にどのような受け入れ対応が集客につながるのかを解説します。

この記事でわかること

  • ・訪日シニア観光客が増加している背景と、若年層とは異なる行動特性
  • ・訪日シニア観光客が求める3つの主要ニーズ
  • ・宿泊施設・飲食店・交通/ツアーサービスなど業種別の具体的な受け入れポイント

1. 訪日シニア観光客とは?増加する背景

世界的な高齢化と「健康なうちに旅行したい」需要の高まり

国連の人口推計(World Population Prospects: The 2022 Revision)によれば、世界全体で総人口に占める65歳以上人口の割合は2020年の9.4%から、2060年には18.7%まで上昇すると見込まれています。とりわけ日本を含む先進地域では2020年時点ですでに19.3%に達しており、2060年には29.5%まで高まる見通しです(出典:内閣府「令和6年版高齢社会白書」)。
こうした高齢化の進行は、日本国内だけの話ではありません。欧米やアジアの主要な訪日客送出国においても同様の傾向が進んでおり、時間的・経済的な余裕を持つシニア層の母数そのものが世界的に拡大しています。
加えて、定年退職を機にまとまった時間が生まれる一方、加齢に伴う体力面の不安も年々増していくことから、「元気に動けるうちに旅行を楽しんでおきたい」という意識を持つシニア層は少なくないと考えられます。こうした需要の高まりを見据えた受け入れ体制の整備は、今後の集客戦略において重要性を増していくテーマです。

若年層とは異なる行動特性・消費傾向(滞在日数・団体旅行・事前予約重視)

観光庁の「インバウンド消費動向調査 2024年 年次報告書」によれば、2024年の訪日外国人旅行消費額は8兆1,257億円、1人当たり旅行支出は22.7万円(前年比6.6%増、2019年比43.1%増)に達しました。時間的・経済的に余裕のあるシニア層は、こうした市場拡大を下支えする客層の一つと位置づけられます。
一方で、訪日外国人全体の個人旅行(FIT)比率は観光庁の調査で2012年の60.8%から2018年には78.7%まで上昇しており、団体旅行から個人旅行への移行が全体としては進んでいます(出典:観光庁調査、訪日ラボ「FITとは?」2019年)。
ただし、すべての層が同じペースで個人旅行にシフトしているわけではありません。言語面や体力面への不安から、旅行会社やOTAが手配する周遊ツアー・添乗員付きツアーを選ぶ傾向が根強く残るのがシニア層の特徴です。行程や宿泊先を早い段階で確定させておきたいという「事前予約重視」の姿勢も強く、若年層のような直前予約・現地での柔軟な行動変更とは対照的な消費行動が見られます。

2. 訪日シニア観光客が求める3つのニーズ

①身体的負担の少ない移動・宿泊環境(バリアフリー・休憩導線)

Accessible JapanとJTB総合研究所が共同で実施した、海外在住の障害のある人を対象にした日本の受け入れ環境に関する調査では、訪日旅行での困りごととして「宿泊施設にアクセシブル・ルームが少ない、またはない」と回答した割合が50%に上ったと報告されています(出典:JTB総合研究所「インクルーシブな観光立国を目指すために」2025年)。この調査自体は障害のある旅行者を対象にしたものですが、階段の昇り降りや長距離の歩行に不安を感じやすいシニア層にも通じる課題です。
観光庁もユニバーサルツーリズムの推進を国内交流拡大戦略の一環として位置づけており、宿泊・移動・観光施設のバリアフリー化を後押ししています。段差の解消やエレベーターの設置まで手が回らない施設であっても、休憩できる椅子の配置や動線の見直しなど、負担の少ない工夫から着手できる余地は大きいといえます。

②分かりやすい情報提供(大きな文字・シンプルな多言語表記)

視力の低下や、スマートフォンでの細かい情報収集に不慣れなシニア層にとって、館内表示やメニュー、案内資料の文字の大きさは満足度を左右する要素です。多言語表記についても、あらゆる言語を網羅しようとするより、自社の主要な訪日客の国籍・地域を分析したうえで英語に加えて上位2〜3言語程度に絞り、シンプルで大きな文字にまとめる方が結果的に伝わりやすくなります。
ピクトグラム(絵記号)や写真を交えた案内も、言語の壁を越えて直感的に理解できるため有効です。デジタル表示に慣れていない層も一定数含まれることを踏まえ、紙のパンフレットや対面での説明といったアナログな手段も併用しておくと安心感につながります。

③安心感のある接客・サポート体制

シニア層は、初めて訪れる土地・言語環境において「困ったときにすぐ頼れる相手がいるか」を重視する傾向があります。スタッフの語学力に自信がなくても、翻訳アプリや指差しシートを活用しながら、ゆっくりと丁寧に対応する姿勢を見せるだけで安心感は大きく変わります。
体調不良や忘れ物といったトラブル対応の手順をあらかじめスタッフ間で共有しておくことも重要です。若年層以上に「何かあったときの対応力」が事業者選びの判断材料になりやすいため、接客マニュアルにシニア対応の項目を加えておくことをおすすめします。

3. 業種別・訪日シニア観光客の集客ポイント

宿泊施設(バリアフリー客室・館内案内)

宿泊施設では、手すり付きの浴室やベッド、段差の少ない客室といったバリアフリー対応の有無を、予約前の情報として明示しておくことが集客の第一歩です。エレベーターの場所や非常口までの動線、朝食会場までの距離など、館内の移動負担が想像できる情報を写真付きで提供すると、シニア層の安心感につながります。
全客室の改修が難しい場合も、一部の客室からバリアフリー化を進め、その客室を優先的に案内する運用だけでも効果があります。館内表示は大きな文字・シンプルな配色を意識し、フロントには筆談や翻訳アプリを使える体制を整えておくとよいでしょう。

飲食店(メニューの見やすさ・アレルギー対応)

飲食店においては、メニューの文字サイズや写真の見やすさが注文のしやすさを左右します。多言語メニューに加え、辛さや味の濃さといった好みの目安を記号や写真で示すと、言葉が通じにくい場面でも注文がスムーズになります。
アレルギーや宗教上の食事制限への対応も、若年層以上に健康面への配慮を求めるシニア層にとって重要な判断材料です。使用食材を明記したメニューや、代替メニューの用意があることを事前に伝えられると、来店の後押しになります。座席の間隔にゆとりを持たせ、立ち座りしやすい椅子を用意することも小さな配慮として喜ばれます。

交通・ツアーサービス(ゆとりある行程設計)

交通・ツアーサービスでは、移動時間や観光地での滞在時間に余裕を持たせた行程設計が求められます。詰め込み型のスケジュールよりも、休憩時間を適切に挟み、無理のないペースで巡れる行程の方がシニア層には好まれる傾向があります。
集合場所や乗車位置の分かりやすい案内、荷物の持ち運びをサポートする体制なども評価されるポイントです。事前予約を重視する層が多いことを踏まえ、行程表や集合時間、注意事項を早い段階で多言語かつ分かりやすい形式で共有しておくと、当日のトラブルを防ぎやすくなります。

4. 団体旅行・旅行代理店経由の需要への対応

OTA・旅行代理店との連携で取り込む方法

シニア層は旅行会社やOTAが手配する周遊ツアー・添乗員付きツアーを選ぶ傾向が根強く残っているため、自社での直接集客だけでなく、こうした事業者との連携も集客チャネルとして有効です。まずは自社が提供できるバリアフリー設備や多言語対応の内容、対応可能な人数・時間帯を整理し、シニア層向けツアーを扱う旅行代理店やOTAに具体的に提案することから始められます。
受け入れ実績がまだ少ない事業者であっても、対応可能な内容を明文化して伝えることで、旅行代理店側も安心して自社を候補に組み込みやすくなります。ツアー行程に組み込まれた際の受け入れフローをあらかじめ整えておくことも、継続的な取引につながるポイントです。

口コミ・リピートにつながる丁寧な対応の重要性

シニア層は同世代の友人・家族との情報共有を通じて、次の旅行先を検討する傾向があります。旅行中に受けた丁寧な対応やちょっとした心遣いは、口コミやリピート利用という形で長期的な集客効果をもたらします。
団体旅行で満足度の高い対応ができれば、個人旅行や家族旅行としての再訪にもつながります。旅行代理店経由の団体客であっても、一人ひとりに向き合う姿勢を持つことが、次の集客につながる投資になります。

5. よくある質問(FAQ)

Q1. 訪日シニア観光客とは、具体的にどのくらいの年齢層を指しますか?

明確な年齢の定義はありませんが、観光業界では概ね60代以上の訪日外国人を指すことが多いです。定年退職を機に時間的な余裕が生まれ、旅行にお金と時間をかけられる層として注目されています。

Q2. 訪日シニア観光客は本当に集客する価値がある客層なのでしょうか?

世界的な高齢化の進行により、シニア層の海外旅行需要は今後も拡大が見込まれます。滞在日数が長めで、事前予約や周遊ツアーを通じてまとまった消費が期待できるため、宿泊施設・飲食店・交通/ツアー事業者にとって有望な客層といえます。

Q3. バリアフリー対応にはどのくらいの費用がかかりますか?

客室改装など大規模な工事が必要な場合は費用がかかりますが、館内表示の文字を大きくする、段差の注意書きを追加する、休憩用の椅子を用意するなど、低コストで始められる工夫も多くあります。まずは自社施設の動線を見直すことから着手するのがおすすめです。

Q4. 多言語対応は何カ国語まで用意すればよいですか?

全言語を網羅する必要はありません。自社の主要な訪日客の国籍・地域を分析し、英語に加えて上位2〜3言語程度に絞って丁寧に対応する方が、シニア層にとってはかえって分かりやすい表示になります。

Q5. スタッフの語学力に自信がなくても対応できますか?

翻訳アプリや指差しシート、ピクトグラムを活用すれば、流暢な語学力がなくても意思疎通は可能です。シニア層は身振りやゆっくりとした対応でも安心感を持てるため、丁寧な姿勢を示すことがより重要です。

Q6. 旅行代理店やOTAとの連携はどのように始めればよいですか?

まずは自社が提供できるバリアフリー設備や多言語対応の内容を明文化し、シニア層向けツアーを扱う旅行代理店やOTAに掲載・提案することから始められます。受け入れ実績が少ない場合は、対応可能な内容を具体的に伝えることが重要です。

6. まとめ

訪日シニア観光客は、世界的な高齢化を背景に今後も拡大が見込まれる有望な客層です。個人旅行化が進む訪日市場全体の流れとは異なり、周遊ツアーや事前予約を重視する行動特性を持つため、若年層と同じ集客手法だけでは十分に取り込めません。
バリアフリーな移動・宿泊環境、大きな文字によるシンプルな多言語表記、安心感のある接客体制という3つのニーズに応えることが、宿泊施設・飲食店・交通/ツアーサービスそれぞれの業種で集客力を高める鍵になります。旅行代理店やOTAとの連携、そして丁寧な対応によるリピート・口コミの獲得もあわせて意識することで、着実に集客の裾野を広げていくことができるでしょう。

7. 優良な海外進出サポート企業をご紹介

「Digima〜出島〜」には、厳正な審査を通過した優良な海外進出サポート企業が多数登録しています。

とはいえ、バリアフリー設備の整備や多言語対応、旅行代理店・OTAとの連携体制の構築を自社だけで一から進めるのは容易ではありません。訪日外国人向けの受け入れ支援に強い専門企業への相談や、無料相談窓口での情報収集、インバウンド関連セミナーへの参加から、まずは一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

参考文献

・内閣府「令和6年版高齢社会白書」第1章 高齢化の状況(国連World Population Prospects: The 2022 Revisionを引用)(2024年)
 https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2024/html/zenbun/s1_1_2.html
・観光庁「訪日外国人の消費動向 インバウンド消費動向調査結果及び分析 2024年 年次報告書」(2025年)
 https://www.mlit.go.jp/kankocho/content/001884192.pdf
・訪日ラボ「FITとは?インバウンドでは個人旅行が増加|多様化する訪日客のニーズと3つの効果的な施策をご紹介」(観光庁データ引用、2019年)
 https://honichi.com/news/2019/06/05/aboutfit/
・JTB総合研究所「インクルーシブな観光立国を目指すために」(Accessible Japan・JTB総合研究所共同調査引用、2025年)
 https://www.tourism.jp/insights/inclusive-tourism/
・観光庁「ユニバーサルツーリズムの推進」
 https://www.mlit.go.jp/kankocho/seisaku_seido/kihonkeikaku/kokunaikoryu/kaitaku/universal-tourism.html

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