高市首相の台湾発言で揺らぐ訪日観光市場を読む
2025年11月7日、高市早苗首相は衆議院予算委員会で「台湾有事は日本の存立危機事態になり得る」と答弁しました[1]。これは、日本が集団的自衛権を行使できる法的な「存立危機事態」を台湾情勢にも適用し得ると明言したもので、歴代政権が避けてきた踏み込んだ発言でした[2][1]。中国政府は直ちにこの発言を「極めて誤った危険な挑発」と非難し、発言撤回を強く要求しました[3][4]。中国外務省は日本大使を呼び出し、「さもなければ全ての結果は日本が負うことになる」と警告するなど、日中間の緊張が急速に高まっています[5]。
こうした中、中国側の対抗措置が次々と打ち出されました。中国駐大阪総領事がX(旧Twitter)で「汚い首は一瞬のちゅうちょもなく斬ってやるしかない」と投稿する暴言[6]や、中国国防系メディアが「日本全体が戦場となる危険がある」と威嚇する論評を掲載するなど、中国国内では対日強硬論が噴出しました[7]。中国外務省も公式Xアカウントで「火遊びをするな。身を滅ぼすぞ」といった攻撃的メッセージを発信しています[7]。日本政府は中国側に抗議しましたが、中国は「日本の指導者による武力威嚇だ」と位置づけており[3]、今回の日中外交摩擦はかつてない厳しい局面となっています。こうした政治的緊張は、安全保障のみならず経済や観光分野にも波紋を広げています。
▼ 高市首相の台湾発言で揺らぐ訪日観光市場を読む
中国本土からの旅行・留学自粛要請の直接的影響
高市首相の発言直後、中国政府は日本への渡航自粛を国民に呼びかけました。中国外務省は11月14日、「日本で中国人の身の安全に重大なリスクが生じた」と主張し、短期的に日本行き渡航を控えるよう注意喚起する声明を発表しました[8]。この声明では高市発言を「露骨な挑発」と非難し、日中交流の雰囲気を著しく損なうものだとしています[9]。実際、中国政府は2012年にも尖閣諸島国有化を受けて日本渡航自粛を呼びかけた前例があり、今回も外交的圧力の一環として観光分野を利用した形です[10]。
渡航自粛通達を受け、中国の航空各社では日本行き航空券のキャンセル料免除措置が相次ぎました。中国国際航空は11月15日から年末まで東京・大阪・沖縄など日本各都市行き便のキャンセル手数料を無料化すると発表し、中国東方航空や南方航空も同様の対応を取っています[11]。
さらに報道によれば、中国大手旅行会社の一部は日本ツアー商品の販売停止に動き始めました[12][13]。すでに中国人団体客の予約キャンセルも出始めているとの情報もあり[14]、影響は具体的な数字となって表れつつあります。10月には中国からの訪日客が約71万1500人と前年同月比22.8%増を記録し、コロナ後の力強い回復軌道に乗っていました[15]。中国人観光客は訪日外国人全体の約4分の1を占める最大の市場であり[16]、年間消費額は約2兆円規模に達すると試算されています[13]。それだけに今回の渡航自粛は、日本のインバウンド需要に大きな打撃を与える可能性があります。
実際、野村総合研究所の木内登英エコノミストは、今後1年間中国本土と香港からの訪日客数が2012年尖閣諸島事件時並みに25%減少すると仮定した場合、日本が失う旅行消費額は約1兆7900億円(名目GDPの0.29%相当)に達し得ると試算しています[17][18]。これは日本国内の雇用や企業収益にも波及し、景気下押し要因となりかねません[19]。中国教育省も11月16日付で「日本留学の慎重な検討」を学生に通知し、現在在日中の留学生にも警戒を促しました[20][21]。この留学自粛呼びかけは渡航自粛に続く“第2弾”の措置とみられ、人的・文化的交流も制限する動きです[21]。日本の大学に在籍する中国人留学生は全外国人留学生の約4割を占める最大勢力であり、これが減少すれば大学経営や地域経済への影響も避けられません[22]。とはいえ、中国政府の警告がどこまで中国人旅行者・留学生の実際の行動に影響を与えるかは不透明との指摘もあります[23][24]。中国人観光客は日本の治安の良さをよく知っており、「日本で本当に危険があるとは思えない」との見方もあるためです[25]。
日本政府は外交ルートで中国側に冷静な対応を求めていますが、観光業界としてはこの動向を注視しつつ早急に手を打つ必要に迫られています。観光庁の村田長官も「影響を注視していくことに尽きる」と述べつつ、「中国人旅行者は我が国インバウンド市場で大きな比重を占めており、10月まで非常に好調だった」ことを認めています[26][27]。業界全体に緊張感が広がっている状況です。
中華圏旅行者の反応:本土・香港・台湾の動向
今回の事態に対する中華圏からの反応は、一様ではありません。まず中国本土では、政府系メディアの煽りもあって反日世論が高まっています。中国のSNS上では「日本はまた軍国主義の野心を見せている」「日本製品をボイコットせよ」といった強硬な投稿が相次ぎました[28]。特に若い世代の利用者ほどナショナリズム色の強い書き込みが目立ち、「日本旅行なんてやめておけ」という声も拡散しています[29]。一部には「文化と政治は別」「それでも日本旅行の魅力は捨て難い」といった穏健な意見もありますが、政府による情報統制が強まる中では表立って支持を集めにくい状況です[29]。中国政府による公式な渡航自粛呼びかけに沿う形で、大手旅行サイトの掲示板などでも「しばらく日本行きは控えるべき」とのコメントが目立っています。もっとも、日本国内では中国外務省の過剰反応に対し「いつもの威圧的な言葉」と冷ややかに受け止める向きも多く、中国側の脅し文句がかえって日本世論の結束を強める結果にもなっています[30][31]。
香港でも11月15日、当局が住民に対し「日本へ渡航する際は警戒を強め、安全に留意するように」と注意喚起を出しました[32]。これは中国本土の外務省通知を受けた措置とみられ、香港においても事実上の「渡航注意」が発令された形です[32]。香港政府は「今年半ば以降、日本で中国市民への襲撃事件が増加傾向にある」と説明していますが[32]、具体的な統計は示されていません[33]。多くの香港市民にとって日本は人気旅行先であり、この呼びかけに困惑する声もあります。実際、日本に滞在中の香港人旅行者からは「特に危険は感じない」「報道を過剰に気にせず楽しみたい」といった声も伝えられています。一方で、香港も中国本土と同様に団体旅行が再開されたばかりであり、旅行会社を通じた訪日ツアーには一部キャンセルが出る可能性があります。今後の推移によっては、香港からの訪日者数にも減少が生じるリスクは否めません。
これに対し、台湾の反応は対照的です。台湾政府は中国による一連の対日圧力について、「政治的目的に基づく複合的な威嚇だ」と厳しく批判しました[34]。頼清徳(ライ・チンター)総統は11月17日に「中国の日本に対する複合的な攻撃が地域の平和に打撃を与えている」と述べ、中国が日本産水産物の輸入停止や観光制限など複数の手段で報復している現状を非難しました[35]。さらに台湾側は、日本を支持する明確な意思表示として、国民に対し「訪日旅行や爆買いで日本を応援しよう」と呼びかけています[35]。頼総統自身、11月20日には昼食に寿司を食べる写真を公開し、日本産食品への支持をアピールしました[36]。また台湾政府は21日、日本産食品の輸入規制を全て撤廃する決定を下し、中国とは真逆の姿勢で日本との連帯を示しています[37]。台湾の駐日大使に相当する台北経済文化代表処の代表も「日本の農水産品をみんなで爆買いしよう」とSNSで訴え、日本産品や観光への積極支援を呼びかけました[38]。与党・民進党の立法委員(国会議員)らも記者会見を開き、「今こそ日本に旅行して経済面で支えよう」と国民に促しています[38]。台湾世論には「高市首相には感謝する」という声も聞かれ[39]、日本の安全保障上の姿勢を評価する向きが強いようです。ただし台湾国内でも野党など一部には「高市首相が緊張を煽った」と批判する意見もあり[40]、政局によって論調は分かれています。それでも訪日観光に関しては、台湾からの旅行需要が冷え込む兆しは今のところ見られず、むしろ日本支持ムードが追い風となって訪日意欲が高まる可能性も指摘されています。台湾は日本にとって中国本土に次ぐ重要市場であり(2024年は国別訪日客数で中国に次ぐ第2位[41])、この層の動向は今後一層注目されます。
日本の観光業界の懸念と対応策
今回の中国による渡航自粛要請は、日本の観光業界に少なからぬ不安をもたらしています。中国人観光客はコロナ前には訪日客数・消費額ともに首位を占め、地域経済への寄与が大きかっただけに、その減少は各方面に影響します。大手旅行会社HISは「今後、団体旅行客への影響が懸念される」としており、予約状況の推移を注視しています[42]。実際問題として、中国人団体客のキャンセルが今以上に増えれば、ホテル・旅館や観光バス会社、土産物店に至るまで幅広い業種で売上減少は避けられません。浅草など中国人観光客が多いエリアでも、「現時点で目に見える減少はないが、影響が出るとすればこれから。数週間様子を見たい」と地元関係者は不安を隠しません[43]。江の島(神奈川県藤沢市)の観光協会によれば、市内観光客の4割近くが中国人であり、「このまま減れば打撃は大きい」と危機感を示しています(※Mainichi記事より)[44]。
一方で、過度な中国市場依存を見直す契機と捉える向きもあります。観光庁内では近年から「中国依存の緩和」が議論されており[45]、今回の措置でその必要性が一段と明確になったと言えます。実際、ここ数年日本の主要観光地は中国人旅行客の急増によるオーバーツーリズム問題に直面していました。京都や鎌倉では早朝から観光客で溢れ住民生活が圧迫され、富士山周辺ではドローン無断飛行やゴミ放置などマナー問題が顕在化[46]。地方都市でも大型バスで訪れる団体客による騒音・混雑が課題となっていた上、最近は中国経済減速で「節約志向」の旅行が増え一人当たり消費額が低下する傾向も指摘されていました[47]。団体ツアー誘致は量の割に地域にもたらす利益が薄く、宿泊料金のディスカウント競争もあり「人が多いだけでは意味がない」との声が業界内で高まっていたのです[48]。こうした背景もあり、一部の観光関係者からは「今回の件は観光再設計の好機だ」という声も上がっています[49]。例えば京都の旅館業者は「本当に戻ってきてほしいのは、日本文化を理解し価値を見出す層だ」と述べ[50]、また鎌倉の住民は「混雑が緩和すれば観光客と住民の共存モデルを作り直せる」と期待を寄せています[51]。北海道の事業者からは「団体より体験型観光に力を入れたい」という意欲的な発言も聞かれ、沖縄でも「過密状態が緩めば環境負荷軽減につながる」と歓迎の意見が出るなど[52]、現場からは観光の質へ転換するチャンスとの前向きな受け止めもあります。観光産業の専門家も「観光は量から質へという潮流は世界の主流であり、日本もその転換を迫られている」と指摘しており[53]、インバウンド政策の見直しを求める声が強まっています。
政府も訪日客数の単純増ではなく、欧米・東南アジア・オセアニアなど多様な市場から富裕層やリピーターなど高付加価値の旅行者を呼び込む戦略へのシフトを打ち出し始めています[45]。今回の中国市場の減速は日本観光の構造改革を後押しする「外圧」となる可能性があり、「逆説的だが外交緊張が日本観光の成熟化を促している」との見方すらあります[54]。もっとも、短期的には地方の免税店や百貨店、ドラッグストアなど中国人の購買力に頼っていた業種では売上減が避けられず、痛みを伴うのも事実です。観光業界全体としては、目先の損失に対応しつつ中長期の市場戦略を練り直すという難しい舵取りを迫られています。
続く緊張がもたらす観光へのリスクと長期展望
今後もし日中関係の緊張が長期化・先鋭化すれば、日本の観光業への影響は一段と深刻化する恐れがあります。まず考えられるのは、中国からの団体旅行が再開不能となり、個人旅行も大幅に減少したまま低迷するシナリオです。2012年の尖閣諸島国有化を巡る対立では、中国人訪日客数が翌年にかけて約25%減少しました[55][18]。しかし2015年頃には関係改善に伴い爆発的な訪日ブーム(いわゆる「爆買い」現象)が再燃し、一時はV字回復しました。今回も外交関係が修復すれば中国客は戻ってくる可能性がありますが、台湾問題という中国にとってよりセンシティブな要因が絡むだけに、簡単には元通りにならない懸念もあります。むしろ中国政府が高圧的な対日姿勢を続ける限り、官製不買や渡航抑制が常態化し、訪日需要が構造的に縮小するリスクがあります。
特に2027年以降は台湾情勢を巡る米中対立の緊迫が予想されており、その波及で日本が「危険な国だ」というイメージを植え付けられると、中国のみならず他国からの観光客にも敬遠されかねません。観光は平和産業であるだけに、地政学リスクの高まりは事業継続性そのものを脅かします。万一台湾海峡で軍事衝突が発生するような事態になれば、日本への観光は一時的にほぼ完全に途絶えることも想定されますし、そうでなくとも有事への不安が広がれば旅行マインドは冷え込むでしょう。国際航空路線やクルーズ客船も安全上の理由から日本寄港を避ける可能性があります。
長期的な視点では、日中関係の行方次第でリスクシナリオとベースシナリオが大きく分かれます。リスクシナリオでは、政治的緊張が常態化して中国人観光客が激減し続け、日本の観光業が「脱中国」に本格的に舵を切らざるを得なくなるでしょう。先述のNRI試算のようにGDP押し下げ効果が0.3%近くにも及ぶインパクトが毎年続けば、日本経済にとっても看過できない痛手です[17]。観光業のみならず、日本の対中ビジネス全般に波及し、例えば中国側がレアアース禁輸や日本企業への締め付けなど報復を強めれば、相乗的に景気押し下げ要因が増えていきます[56]。
一方、ベースシナリオとしては、一定期間の冷却期間を経て双方が経済関係の重要性を再認識し、中国当局も渡航制限を徐々に緩和する可能性があります。中国人消費者にとって日本旅行の魅力(近距離で文化体験や買い物を楽しめる点など)は依然高く、政府が目を光らせる中でも個人旅行客が細々と訪れる展開も十分考えられます。実際、中国政府が渡航自粛を呼びかけた後も、日本在住の中国人留学生らの中には「家族や友人の訪日旅行を思いとどまらせるつもりはない」という人もいます。「日本は治安が良く、過剰に心配する必要はない」という声もあり[25]、民間レベルの交流は完全には絶たれないでしょう。
日本の観光業界としては最悪の事態(長期的な中国インバウンド消失)も念頭に置きつつ、状況好転に備えて受け入れ環境を維持し、他方で代替市場の開拓に注力する二正面作戦が求められます。幸い近年は東南アジアや米欧豪からの訪日客も増加傾向にあり、多角化戦略は奏功しつつあります。中国人観光客についても、訪日経験が豊富な富裕層やリピーター層は引き続き個人で訪れる余地があるため、質の高いサービスを提供してリピーターを繋ぎ止める努力が重要です。また、中国以外の中華圏(台湾・香港・シンガポール・マレーシア華人など)や、欧米在住の華人コミュニティなど新たなターゲットにも目を向け、マーケットのすそ野を広げる必要があります。
中華系コミュニティとSNSを活用した集客戦略の可能性
このような逆風下で注目されるのが、在日中華系コミュニティやSNSプロモーションを活用した新たな集客戦略です。日本国内には約80万人とも言われる在日中国人・華人コミュニティが存在し、彼らは訪日旅行の「生きた広告塔」となり得ます。実際、ある調査では在日中国人の約85%が直近1年以内に自国から来日した友人や家族を案内した経験があると報告されています[57]。彼ら在日コミュニティのメンバーが発信する情報や口コミは、中国本土を含む中華圏の人々にとって信頼性が高く、有力な旅行先選定の参考資料となっています。上記調査によれば、在日中国人が訪問客を案内する際、約85%が小紅書(RED)や抖音(Douyin/中国版TikTok)、微信(WeChat)など中国国内のSNS上の情報を参考にしていることがわかりました[58]。つまり在日中国人自身が中国語SNSを駆使して情報収集・発信し、日本の魅力や安全性を伝えているのです。こうしたネットワークを観光プロモーションに取り込むことは、効果的な戦略となります。
具体的には、日本各地の自治体や観光施設が在日中国人のインフルエンサー(KOL=キーオピニオンリーダー)を招いて体験ツアーを実施し、その内容を中国語SNS上で発信してもらう取り組みが増えています。例えば愛媛県では、中国SNS「小紅書(RED)」の人気ぶりに着目し、在日中国人インフルエンサーを招聘して県内の観光地を巡るプロモーション施策を行いました[59][60]。招かれた数名の在日中国人クリエイターたちは松山城や道後温泉、しまなみ海道などを体験取材し、グルメや絶景スポット情報を小紅書に投稿[61]。その結果、小紅書内で「愛媛県」に関する投稿件数や検索数が大きく伸び、中国本土のユーザーへの認知度向上に繋がったといいます[62]。この施策は、中国人訪日客数が順調に回復しつつあったタイミング(2025年初め、中国が国別訪日客数で単独首位になる月もあった[63])で行われており、愛媛への誘客に一定の成果を上げました。自治体のみならず、民間の観光施設やブランドショップなども在日中国人ネットワークを活用したマーケティングを進めています。たとえば在日中国人留学生や働く若者をモニターとして店舗体験に招き、彼らに中国語でSNS発信してもらうことで、現地にいる潜在顧客へリーチする手法です[64]。日本にいながら中国国内のユーザーにリーチできる点で、在日コミュニティ活用は「インバウンドプロモーションの盲点を突く」有効策とされています[65]。
SNSプロモーション面では、小紅書(RED)や微信、微博(Weibo)、抖音など主要プラットフォームで日本旅行のポジティブ情報を発信する取り組みが鍵を握ります。小紅書はユーザー数が2億人を超え、特に若年層の旅行先選びで絶大な影響力を持つと言われます[66]。在日中国人のみならず、訪日経験のある台湾・香港の旅行者や在米華人など、多様な中国語話者の口コミ投稿を増やすことで、「行ってみたい日本」のイメージを維持することができます。例えば「#日本旅行安全」「#日本グルメおすすめ」といったタグで良質なコンテンツを拡散したり、日本の観光地・企業の公式アカウントが現地語で発信を強化したりすることが考えられます。中国政府による情報規制の網の目を縫う形で、純粋な旅行情報や文化紹介を届ける工夫も必要でしょう。ここで在日中国人や華人インフルエンサーの出番です。彼らは政治的プロパガンダではなく、自らの体験に基づいた等身大の日本の姿を発信できます。それは中国本土のユーザーにとって「友人の紹介」に近い感覚で受け取られ、信頼性が高いのです。事実、「在日中国人の投稿や口コミのおかげで日本旅行を決めた」という本土旅行者も少なくありません(筆者ヒアリング)。このように人的ネットワークとデジタル技術を組み合わせた草の根の集客戦略は、一朝一夕に効果が出るものではありませんが、長期的には着実に中華圏からのファンを育てることにつながります。
専門家の見方: エバコアISIの中国マクロ分析責任者ネオ・ワン氏は「中国人観光客の消費力という古い手段を使って高市氏に代償を払わせ、日本国内で台湾問題に慎重な世論を醸成しようという狙いが中国にはある」と指摘しています[67]。まさに観光産業が政治カードに使われている状況ですが、日本側が受け身になるだけではなく、創意工夫で打開を図ることが重要です。日中間の政治的軋轢が続くとしても、人の交流まで完全に途絶えさせないために、民間レベルで信頼の橋を繋ぎ留める努力が求められます。その意味で、在日中華系コミュニティとの連携やSNSを活用した情報発信は、単なるマーケティング手法に留まらず「観光立国日本」のレジリエンス(復元力)を高める戦略と言えるでしょう。
おわりに
高市首相の発言を契機とした日中間の緊張激化は、日本の観光業界にも大きな試練を突きつけました。短期的には中国からのインバウンド需要減少という痛みを伴いつつも、長期的には観光の質向上や市場多角化を進める契機ともなっています。安全保障上の発言が観光に波及する今回のケースは、観光がいかに国際情勢と無縁でいられないかを示しています。同時に、観光交流そのものが外交関係を緩和し得るソフトパワーでもあります。日本の観光業界は冷静なリスク分析の上で、柔軟かつ前向きに対応策を講じていく必要があります。幸い、日本を訪れたいと願う人々は中華圏を含め世界中に数多く存在します。その声に応えるべく、安全・安心で魅力的な受け入れ体制を整え、多様なチャンネルで日本の価値を発信し続けることが重要です。今回の困難を乗り越え、より持続可能で強靭な観光立国を目指す契機とする――それが観光業界関係者に課せられた使命と言えるでしょう。[54][19]
[1] [6] [7] [25] [30] [31] 〖コラム〗やり過ぎた中国、高市首相の政策遂行手助け-リーディー - Bloomberg https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-11-19/T5XWKIT96OSK00 [2] [32] [34] 香港 「日本への渡航」注意呼びかけ 台湾は「複合的な威嚇」と中国の反応を批判 | TBS CROSS DIG with Bloomberg https://newsdig.tbs.co.jp/articles/withbloomberg/2291467?display=1 [3] [4] [5] [8] [9] [11] [16] [67] 中国、日本への渡航自粛呼び掛け-台湾巡る高市首相発言に反発強める - Bloomberg https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-11-14/T5P3OYKJH6V400 [10] [28] [29] [45] [46] [47] [48] [49] [50] [51] [52] [53] [54] 高市首相の「台湾有事」発言に中国が激しく反発 渡航自粛の余波は日本の観光地に“静かな追い風” - coki (公器) https://coki.jp/article/column/63083/ [12] [13] [14] 中国“渡航自粛”通告で揺らぐ「2兆円弱」インバウンド需要、日銀利上げ判断に新たな不透明要因か | 高市政権発足! 経済・市場・政策に衝撃 | ダイヤモンド・オンライン https://diamond.jp/articles/-/377442 [15] [26] [27] 中国の渡航自粛、観光庁長官「影響を注視」 10月は71万人と2割増 | ロイター https://jp.reuters.com/markets/japan/7RJMYJ3YNNPMZOAUFCF5WWFVEQ-2025-11-18/ [17] [18] [19] [55] [56] 〖訂正〗中国政府の日本への渡航自粛要請で日本の経済損失は1.79兆円、GDPを0.29%押し下げ | 木内登英のGlobal Economy & Policy Insight | 野村総合研究所(NRI) https://www.nri.com/jp/media/column/kiuchi/20251118.html [20] [21] [22] [23] [24] [33] 中国、日本への留学自粛を呼びかけ 高市首相の台湾発言を受けて - TRT 日本語 https://www.trtnihongo.com/article/763ae9814d7c [35] [36] [37] [38] [39] [40] 台湾、中国を非難し日本は支持|全国海外|神戸新聞NEXT https://www.kobe-np.co.jp/news/zenkoku/compact/202511/0019735343.shtml [41] [57] [58] 在日中国人のインバウンド消費影響力が明らかに!約85%が直近1年間に日本国内のアテンド経験あり、商品購入・店舗来店を検討する際に参考にするメディアは、圧倒的な差をつけて「RED(小紅書)」がトップ | アライドアーキテクツ株式会社 https://www.aainc.co.jp/news-release/2024/02593.html [42] [43] [44] 「影響これから」不安募るインバウンド関連業界 中国の訪日自粛要請 https://mainichi.jp/articles/20251117/k00/00m/020/256000c [59] [60] [61] [62] [63] [65] [66] 愛媛県、話題の中国SNS「RED」を活用し、観光プロモーションを強化!unbotが在日中国人インフルエンサーの招請をサポート | 株式会社unbotのプレスリリース https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000073.000030089.html [64] 日本最大級の在日中国人コミュニティ BoJapan(ボージャパン) https://www.cnmlab.jp/bojapan/
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■サポート対象国(グループ別)
海外進出支援や活用・生活を支援する対象とする国は以下の通りです。
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■海外進出(前)支援
日本企業の海外ビジネスのゼロイチを共に考え、目標達成のために共に動くチーム
対象法人:これから海外進出を開始する企業 / 海外事業担当者不在、 もしくは海外事業担当者が不足している企業
契約形態:①伴走支援(月額 10万円〜)②スポット支援(施策により変動)
『ポイント』
✓ゼロ地点(「海外で何かやりたい」のアイデア段階)から伴走サポート
✓BtoB・BtoC・店舗開業など幅広い進出支援に対応
✓現地で対応する駐在スタッフを各国に配置
✓現地で専門分野に特化したパートナー企業・個人と提携
『対応施策』
⚫︎海外進出の準備・設計・手続き/申請サポート
↳各種市場調査・事業計画設計(稟議書策定) /会社設立/FDA等申請等
⚫︎BtoC販売促進サポート
↳マーケティング企画設計/分析/SNS運用/ECモール出品〜運用
↳プロモーション(広告運用/インフルエンサー施策含む)/各種制作
⚫︎BtoB販路開拓サポート
↳現地パートナー起業候補の探索〜交渉〜契約/展示会サポート
↳セールスマーケティングキット制作
⚫︎飲食店開業サポート(ほか店舗開業サポート含む)
↳エリアマーケティング〜テナント居抜き探索
↳現地人材候補の探索〜交渉〜契約/現地店舗運営代行
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■海外進出(後)支援
現地日系企業の現地での集客課題を共に考え、目標達成のために共に動くチーム
対象法人:すでに海外へ進出済みの企業 / マーケティング関連業務の担当者不在、もしくは不足している企業
契約形態:①伴走支援(月額 500ドル〜)②スポット支援(施策により変動)
『ポイント』
✓丸投げ(担当者もいない・知識もない)ウェルカムの代行サポート
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✓現地で専門分野に特化したパートナー企業・個人と提携
『対応施策』
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↳各種マーケティングリサーチ
↳デジタルマーケティング全般の企画設計/分析/PDCA改善
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↳MEO/SEO/リスティング広告/インフルエンサーマーケティング
↳EC運用/SNS運用
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合同会社サウスポイント
世界と日本をつなぐ架け橋「沖縄」から海外展開を支援しています
2017年7月日本・沖縄と海外の万国津梁の架け橋を目指して、企業の海外展開支援を目的として沖縄・那覇で設立。アジア・欧州を中心に沖縄県内・沖縄県外企業の海外進出・国際展開のサポートを実施しています。2022年7月には観光産業の伸びの著しい石垣市に八重山事務所を開設しております。
沖縄をハブに、台湾・中国・香港・ベトナム・タイ・マレーシア・シンガポール・インドネシア・オーストラリア・ニュージーランド・イギリス・ドイツ・ブラジル各国にパートナーエージェントを配置し、アメリカ合衆国・インドは提携先を設けていますので、現地でも情報収集、視察等も直接支援可能、幅広く皆様の海外展開とインバウンド事業をサポートしております。 -
トレーディネート株式会社
台湾への貿易ならお任せください
【貿易の壁を越え、アジアビジネスをつなぐプロフェッショナル】
トレーディネート株式会社は「貿易を通じて人と人をつなげる」という理念のもと、
海外展開を目指す企業と海外市場を結ぶ架け橋として2015年に創業しました。
台湾・タイを中心としたアジア市場に特化し、
物流と営業代行を融合させた独自のサービスで、
これまで多くの企業の海外進出を成功に導いてきました。
■ グローバルサポートの強み
【圧倒的な台湾ネットワーク】
創業以来、台湾に毎月渡航し構築してきた強固なパートナーシップにより、
他社では提供できない販路開拓ルートを確保。食品、酒、米、庭木、観賞魚などの特殊分野でも確かな実績を持ち、
あらゆる商材の輸出入をサポートします。
【貿易業界の"異端児"としての挑戦】
常識にとらわれない発想で、通常の貿易会社では対応困難な案件にも果敢に挑戦。
生き物・植物の輸出入や、特殊貨物の取扱いなど、
専門性の高いサービスを提供しています。
【両方向のビジネス支援】
日本から海外への展開支援だけでなく、海外企業の日本進出もサポート。
輸入→保管→ピッキング→発送までのワンストップ物流体制により
、EC販売やオムニチャネル展開もスムーズに実現します。
■ サービス展開
海外(台湾・タイ・シンガポール他)での営業代行
グローバル輸出入サポート(コンテナ手配、通関手続き等)
現地マーケットリサーチ・プロモーション支援
特殊貨物(食品、植物、生物等)の輸出入対応
展示会・商談会の出展代行・同行サポート
EC向け国際物流管理(保管・ピッキング・発送)
「貿易をしたくてもできない」という壁を取り除き、
中小企業でも海外市場で成功できるよう、専門知識と情熱をもってサポートします。
特に台湾市場では、日本製品への高い信頼と円安傾向が追い風となり、
ビジネスチャンスが広がっています。
挑戦を迷っている方、まずはお気軽にご相談ください。
貴社の製品・サービスの強みを活かした、オーダーメイドの海外展開戦略をご提案いたします。
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プルーヴ株式会社
貴社の海外事業進出・展開をサポートさせていただきます
プルーヴは世界市場進出における事業戦略の策定と実行のサポートを行っている企業です。
「グローバルを身近に」をミッションとし、「現地事情」に精通したコンサルタントと「現地パートナー」との密な連携による「現地のリアルな情報」を基にクライアント企業様の世界市場への挑戦を成功へと導きます。






























