【ドイツ企業の海外進出から学ぶ】中小企業の海外市場開拓
本記事では、ドイツ企業のグローバル戦略から読み取れる日本企業の海外進出に役立つ「ヒント」をレポートいたします。ドイツの経済を支えているのは中小企業の海外進出です。ドイツの例から日本の中小企業の海外進出に役立つノウハウを解説いたします。
安倍総理がアベノミクスの成長戦略のキーワードとして「海外進出」を挙げたのが3年前。多くの日本企業が海外進出に目を向け始めましたが、我々はまだ成長段階にあります。その中で、国内企業のみならず、他国のグローバル戦略から学べることは多くあるのです。本記事で注目したのはドイツ。日本とドイツはその勤勉な国民性や、敗戦から復興を果たした経済大国であることなど、共通点がしばしば指摘されます。そんなドイツ経済の今を支えているのは、「隠れたチャンピオン企業」と言われる海外進出を成功させた国内中小企業なのです。
そこで今回、ドイツの成功例から、現在の日本企業の海外進出に求められる事を紐解いていきます。
【ドイツ企業の海外進出から学ぶ】「多様性」への適応
1. 海外進出によって経済再生を果たしたドイツ
ドイツは日本と同じく、製造業を主力産業とし、人口の減少や少子高齢化が進んでいます。第2次世界大戦の敗戦から復興し経済発展を遂げ、その後日本と同じく、不況状態に陥りました。しかし、日本がまだ不況にあえぐ中、今やドイツはユーロ圏で最も高い経済力を有し、「独り勝ちのドイツ」と呼ばれるまでに経済再生を果たしました。
その経済再生の立役者こそ、ドイツ企業の海外進出の成功なのです。ドイツ企業と言えば思い浮かぶのは、BMWやメルセデス、フォルクスワーゲンといった自動車メーカーではないでしょうか。その他、ドイツ銀行やシーメンス、ミーレなど、世界的企業が多数存在します。しかし、先程述べた「ドイツ企業の海外進出の成功」は、そうした世界的企業だけを指す言葉ではありません。
2. ドイツの「隠れたチャンピオン企業」とは？
ドラッカーにも比肩すると言われるハーマン・サイモンというドイツ人経営思想家が提唱した概念として「隠れたチャンピオン企業」というものがあります。その定義は、世界市場において業種上位3位以内、またはその企業が位置している大陸のトップであり、収益は50億ドル以下、一般にはほとんど無名な企業です。なんとこの「隠れたチャンピオン企業」がドイツには日本の6倍あると言われています。こうした中小企業の海外進出の成功が、今のドイツ経済を支えているのです。
例えば、Delo社という、電子機器用の特殊な接着剤を製造している会社があります。ICカードの80%、iPhone等の携帯電話の50%には、Delo社の接着剤が使用されています。また、Tetra社は、観賞魚用餌業界で世界最大手であり、世界市場シェア60%を占めています。（出典「RIETI - 21世紀の隠れたチャンピオン」）こうした企業が、ドイツには数多くあるのです。
3. 成功の鍵はオリジナリティによる海外市場開拓
それでは、何故ドイツにはこうした企業が多いのでしょうか。それは、東西合併による企業淘汰であったり、また近隣国の安価な生産請負による競争激化などが要因となったと考えられています。そうした競争・淘汰により、技術力やオリジナリティを高め、価格競争をしない方向に舵を切った企業が、生き残っていきました。そして、彼らが海外市場に目を向け成功を収めたということです。日本の中小企業は、主に大手企業の下請けとなっている「系列企業」も多いですが、ドイツではそうした企業は少なくなっています。「系列企業」の戦略は、オペレーションの改善などによる、効率化が中心であり、ドイツの中小企業が取った戦略とは大きく異なります。この点が、ドイツが「隠れたチャンピオン企業」を日本より多く輩出している理由なのです。
4. 「系列企業」から「市場開拓企業」への転換の必要性
そして今、以前ドイツの中小企業が置かれていた状況に、日本の中小企業が直面しています。もちろん、日本にも技術力やオリジナリティを高め、価格競争をしない方向に舵を切った企業があります。そうした企業の中で、海外に目を向け「隠れたチャンピオン企業」となっている企業も多数存在します。一方で、国内のシェアに満足し、海外に目を向けていない「隠れたチャンピオン企業」候補もまだまだ存在します。
そのため、ドイツの中小企業のように、「系列企業」から「市場開拓企業」としての役割転換が今の日本の中小企業にも求められます。確かに、1企業単体での新たな市場開拓は簡単ではありません。しかし、アベノミクスから3年たった今、アジアや欧米を中心に多くの日本企業が進出を果たしています。その中で、日本企業同士が手を取り合い、「協力」することで新たな市場を開拓することができます。例えば、特にアジアでは未だ首都圏への一極集中が目立っています。その中で、首都に進出している多業種の日本企業が「協力」することで地方開拓を実現させ、新たな市場開拓が可能になるのではないでしょうか。
また、インバウンド市場の拡大により、今後開拓されてこなかった国・地域でも市場開拓されることが期待されます。2400万人を突破した2016年の訪日外国人客。今後も拡大することが見込まれており、それにより訪日後の現地でのさらなる市場開拓も見込めます。1企業1業種単体での開拓は難しいものの、日本企業同氏が「協力」することで、ドイツ企業のように日本の中小企業の「市場開拓企業」としての活躍が期待されます。
5. まとめ
「系列企業」から「市場開拓企業」へ。そして、世界でも評価の高い「日本製」というオリジナリティでの海外市場開拓チャンスが、日本企業にとって大いにあるということが、ドイツ企業の成功から読み取ることができます。日本の中小企業の「隠れたチャンピオン企業」への成長期待が膨らみます。現在、アジアでも、中国などを筆頭にした安価な生産請負などにより競争が激化する中でも、間違いなく日本企業のチャンスが広がっています。
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（参照文献）
・「21世紀の隠れたチャンピオン」RIETI
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