インドネシア視察で見るべき3拠点|EC市場の成長を支えるジャカルタ・チカラン・タンジュンプリオク
インドネシアへの進出を検討する日本企業にとって、現地視察は市場の実態や物流環境、進出拠点を把握する重要な機会です。特にEC市場では、マーケットプレイスへの出店、越境EC、自社ECの構築など進出方式によって必要となる機能や物流体制が異なるため、視察前に確認すべきポイントを整理しておく必要があります。
Digima〜出島〜が公表した「海外進出白書(2025-2026年版)」(4,218件の相談データを分析)によると、業種別の相談割合では卸売・小売業が36.9%と最大セグメントを占めています。インドネシアもASEAN市場のなかで、日本企業の海外進出先として注目される国の一つです。
インドネシアのEコマース市場は2024年に818億米ドル規模に達し、2029年には年平均成長率15.5%で1,681億米ドルまで拡大すると見込まれています。人口2億7,000万人超の大規模市場を背景に、今後もECを含む消費市場の成長が期待されています。
そこで本記事では、インドネシア視察で確認しておきたい3つの拠点として、EC企業が集積するジャカルタのトコペディアタワー周辺エリア、EC物流を支えるチカランの物流拠点、輸出入の玄関口となるタンジュンプリオク港を紹介します。それぞれの役割や特徴を整理し、視察先の選定やEC進出前に確認すべきポイントを解説します。
この記事でわかること
- ・インドネシアEC市場が拡大する背景と、海外進出白書・市場データから見る進出動向
- ・インドネシアEC進出前に整理すべき、マーケットプレイス出店と自社物流構築の違い
- ・インドネシア視察で見るべき3拠点、トコペディアタワー周辺・チカラン物流拠点・タンジュンプリオク港の役割
- ・インドネシア視察でよくある失敗と、目的に応じた視察先の選び方
▼目次
1. インドネシアEC市場、拡大の実態を白書・市場データで確認する
卸売・小売業が海外進出相談の最大セグメント
Digima〜出島〜が公表した「海外進出白書(2025-2026年版)」では、4,218件の海外進出相談のうち、卸売・小売業が36.9%と最大の割合を占めています。製造業の26.2%を上回っており、海外市場での販路開拓や販売チャネルの構築に対する企業の関心が高まっていることがわかります。
EC・越境ECによる海外販売も、こうした販路開拓の選択肢の一つです。特に人口規模が大きく、EC市場の成長が続くインドネシアでは、オンライン販売を起点とした市場参入を検討する日本企業にとって、現地市場や物流環境を把握することが重要になります。
出典:Digima〜出島〜「海外進出白書(2025-2026年版)」
1,681億ドル規模へ拡大が見込まれるインドネシアEC市場
市場調査会社Mordor Intelligenceの分析では、インドネシアのEコマース市場は2024年に818億米ドルに達し、2029年には年平均成長率15.5%で1,681億米ドルまで拡大する見通しです。人口2億7,000万人超の大規模市場を背景に、オンラインを中心とした消費市場の拡大が続いています。
インドネシアでは複数の主要マーケットプレイスが利用されており、モバイルを通じた購買も広く普及しています。そのため、日本企業がEC市場への進出を検討する際には、市場規模だけでなく、どの販売チャネルを選ぶのか、どのように商品を保管・配送するのかまで含めて検討する必要があります。
こうした判断を行ううえで、現地のEC企業や物流拠点、港湾などを実際に確認する「インドネシア視察」は重要な情報収集の機会になります。
出典:Mordor Intelligence「インドネシアEコマース市場」
拡大が続く日系企業の進出拠点数
外務省統計をもとにした集計では、インドネシアにおける日系企業の海外拠点数は1,911拠点にのぼります。製造業だけでなく、卸売・小売業やサービス業など、さまざまな業種で現地拠点の展開が進んでいます。
日系企業の進出が広がる一方、インドネシアでEC事業を展開する場合は、単に法人や販売拠点を設けるだけではなく、販売チャネル、在庫管理、物流、輸出入など複数の要素を検討する必要があります。特にECでは、進出方式によって必要な物流拠点や確認すべきインフラが異なります。
そのため、インドネシアへのEC進出を具体的に検討する企業は、事前に市場データを確認したうえで、実際のEC企業の集積地や物流拠点、港湾などを視察し、自社の事業モデルに適した環境かどうかを確認することが重要です。
出典:Digima〜出島〜「外務省データで見る日本企業の海外進出拠点数」
2. インドネシアEC進出前に整理すべき課題:マーケットプレイス出店か自社物流構築か
インドネシアEC進出を検討する際、まず整理したいのが「どの方式で市場に参入するか」です。マーケットプレイスへの出店を中心に始めるのか、自社ECや自社物流まで構築するのかによって、必要な投資や物流体制、現地で確認すべきポイントは大きく異なります。
そのため、インドネシア視察を行う際も、単にEC企業や物流施設を見るのではなく、自社が想定する進出方式に合わせて視察先を選ぶことが重要です。
方式1|既存マーケットプレイスへの出店
自社で大規模な販売・物流基盤を構築せず、現地の主要マーケットプレイスに出店して商品を販売する方式です。自社ECや物流拠点を一から構築する場合と比べて、初期投資を抑えながら現地市場での販売を開始しやすい点がメリットです。
一方で、販売手数料や出店条件、プロモーション施策、プラットフォーム側の物流ルールなど、事業運営がマーケットプレイスの仕組みに左右される点には注意が必要です。
この方式を検討する企業がインドネシア視察を行う場合は、現地で実際に販売されている商品のカテゴリーや価格帯、競合商品の状況、配送方法などを確認し、自社商品がどのようなポジションで販売できるかを検討することが重要です。
方式2|自社EC・自社物流の構築
自社ECサイトや自社の物流体制を構築し、販売から在庫管理、配送までを自社の事業モデルに合わせて運営する方式です。ブランドや顧客接点をコントロールしやすく、販売データを蓄積しながら長期的に事業を展開できる一方、物流拠点や配送網などへの投資が必要になります。
インドネシアは1万7,000を超える島々からなる国土を持ち、人口や経済活動も地域によって大きく異なります。ジャカルタなどの主要都市圏と地方・離島では、配送にかかる時間やコストにも差が生じるため、物流拠点をどこに置くかはEC事業の重要な判断事項です。
自社物流を検討する企業がインドネシア視察を行う場合は、倉庫の立地だけでなく、主要都市へのアクセス、港湾との距離、幹線道路などの物流インフラまで確認する必要があります。
出典:Mordor Intelligence「インドネシアEコマース市場」
進出方式によって視察すべき場所も変わる
インドネシアEC進出では、マーケットプレイスへの出店と自社物流の構築のどちらが正解というわけではありません。商品特性、販売数量、ターゲット地域、必要な配送スピード、投資可能な金額などを踏まえて、自社に適した方式を判断する必要があります。
そして、その判断によって現地視察で確認すべき場所も変わります。EC企業やマーケットプレイスの集積を確認したい場合はジャカルタ、物流拠点や倉庫の立地を確認したい場合はチカラン、輸出入や国際物流を確認したい場合はタンジュンプリオク港など、目的に応じて視察先を選ぶことが重要です。
次章では、インドネシアEC進出を検討する企業が視察候補として押さえておきたい3つの拠点を、それぞれの役割とともに解説します。
3. インドネシア視察で見るべき3拠点:トコペディアタワー周辺・チカラン物流拠点・タンジュンプリオク港
インドネシアEC進出では、販売チャネルだけでなく、物流拠点や輸出入のインフラまで確認することが重要です。そこでインドネシア視察では、EC・テック企業が集まる「販売機能」、物流・在庫管理を担う「物流機能」、海外との輸出入を支える「輸出入機能」の3つの視点から視察先を選ぶと、自社の進出方式を具体的に検討しやすくなります。
ここでは、それぞれを象徴する3つの拠点を比較し、各視察先で確認しておきたいポイントを整理します。
| 比較項目 | トコペディアタワー周辺(ジャカルタ) | チカラン物流拠点(西ジャワ州) | タンジュンプリオク港(北ジャカルタ) |
|---|---|---|---|
| 主な機能 | EC・テック企業のオフィス集積 | 工業団地内の物流・フルフィルメント拠点 | インドネシア最大級のコンテナ港 |
| 向いている企業 | マーケットプレイス出店・提携先を探す企業 | 自社物流・在庫拠点の構築を検討する企業 | 越境EC・輸出入の通関体制を確認したい企業 |
| 代表的な特徴 | 南ジャカルタのビジネス地区に位置し、EC・テック企業が集積 | 開発面積約2,000ha、約400社が入居する工業団地 | 2024年のコンテナ取扱量は約760万TEU |
| 視察で確認したいこと | EC企業の集積・提携候補・人材市場・競合環境 | 倉庫の立地・稼働状況・保管能力・物流サービスの対応範囲 | 通関フロー・港湾の混雑状況・輸送ルート・物流コスト |
①トコペディアタワー周辺(クニンガン地区)|EC企業の集積と提携候補を確認する
南ジャカルタのクニンガン地区に位置するトコペディアタワーは、現地大手ECプラットフォーム「トコペディア」のオフィスが入る高層ビルです。周辺のスディルマン・クニンガン一帯は、EC・テック系企業をはじめとする企業が集まるビジネスエリアとなっています。
インドネシア視察では、建物そのものを見るだけでなく、周辺にどのようなEC関連企業やスタートアップが集積しているのかを確認することが重要です。マーケットプレイスへの出店や現地企業との提携を検討している場合は、候補企業の所在や事業領域、人材の集積状況なども視察時の確認ポイントになります。
また、周辺エリアのオフィス環境や交通アクセスを確認することで、将来的に現地法人や営業拠点を設ける場合の立地判断にもつなげられます。
出典:Cushman & Wakefield「Tokopedia Tower」
②チカラン|DISTRIBUTION PARK MM2100で物流拠点の実態を確認する
ジャカルタ中心部から東方約30kmに位置するチカランのMM2100工業団地は、丸紅と現地マニュンガル・グループが1990年に開発した工業団地です。開発面積は約2,000ha、入居企業は約400社にのぼり、その半数以上が日系企業とされています。ソエカルノ・ハッタ国際空港まで約55km、タンジュンプリオク港まで約35kmという立地から、生産拠点と輸出入拠点を結ぶ物流拠点としての役割も担っています。
団地内では三菱倉庫が「DISTRIBUTION PARK MM2100」を運営し、食品・日用品などの入庫・保管・在庫管理から出荷・輸出までを一貫して支援しています。
インドネシア視察で物流拠点を確認する際は、単に倉庫の大きさを見るだけでは不十分です。自社商品の保管条件に対応できるか、入庫から出荷までどこまで外部委託できるか、主要都市への配送網をどう構築できるかなど、自社の物流要件と照らし合わせて確認することが重要です。
出典:丸紅「インドネシア MM2100工業団地」、三菱倉庫「DISTRIBUTION PARK MM2100」
③タンジュンプリオク港|輸出入・通関体制と物流ルートを確認する
北ジャカルタに位置するタンジュンプリオク港は、インドネシアを代表する国際港湾で、ジャカルタ首都圏の輸出入を支える重要な物流拠点です。港湾運営会社Pelindoによると、ジャカルタ国際コンテナターミナル(JICT)やニュープリオク・コンテナターミナル1(NPCT1)など複数のターミナルを含めた2024年のコンテナ取扱量は約760万TEUに達しています。
越境ECやインドネシアからの輸出を検討する企業にとって、港湾は商品の輸出入を支える重要なインフラです。インドネシア視察では、港そのものだけでなく、通関手続きの流れ、物流会社やフォワーダーとの連携、港から倉庫までの輸送ルートなどを確認することが重要になります。
特に自社で輸出入を行う場合は、想定する貨物量や商品特性を踏まえ、どの程度のリードタイムや物流コストになるのかを事前に確認しておくと、進出後の物流体制を具体的に検討しやすくなります。
出典:PT Pelindo Multi Terminal「Tanjung Priok」、Indonesia Shipping Gazette「Priok Throughput Reaches 7.6 Million TEUs」
4. インドネシア視察でよくある失敗と拠点選定の判断基準
インドネシア視察では、複数の拠点を訪問するだけでは、進出の意思決定に必要な情報を十分に集められないことがあります。重要なのは、自社のEC事業で想定している販売方式や物流体制を踏まえ、視察前に確認項目を具体化しておくことです。
ここでは、インドネシアEC進出を検討する企業が視察時に見落としやすいポイントと、視察先を選ぶ際の判断基準を解説します。
① 外島配送のコスト・リードタイムを見落とす
ジャカルタやスラバヤなど主要都市圏での配送環境だけを確認して市場全体を判断すると、地方や離島への配送にかかるコストやリードタイムを見誤る可能性があります。インドネシアは多数の島から構成されているため、販売対象地域によって必要な物流体制は大きく変わります。
インドネシア視察では、主要都市への配送だけでなく、地方・外島向けの商品配送をどのように構築するのかまで確認しましょう。物流会社へのヒアリングでは、対応可能な地域、標準的な配送日数、追加料金、返品時の対応などを確認しておくと、進出後の物流コストを具体的に見積もりやすくなります。
② マーケットプレイスの手数料構造を十分に理解しない
インドネシアのマーケットプレイスへ出店する場合、販売手数料だけを見て収益性を判断するのは危険です。広告費やキャンペーンへの参加費用、物流関連費用など、販売に伴って発生するコストを含めて利益率を確認する必要があります。
視察では、実際に出店している日系企業や現地企業から、販売手数料だけでは分からない運用コストや集客方法について話を聞くことが有効です。可能であれば、同じカテゴリーの商品を販売している企業を訪問先に組み込み、実際の販売価格やプロモーションの実態と合わせて確認しましょう。
③ 通関・輸入規制の対応を後回しにする
越境ECや自社による輸出入を行う場合、販売方法だけでなく、商品の輸入規制や必要な許認可・認証を事前に確認する必要があります。商品によっては、インドネシア国家規格(SNI)などの規格・認証への対応が必要になる場合もあります。
これらを確認せずに進出を進めると、販売開始後に追加の認証費用や通関手続きが発生し、想定していたコストやスケジュールが大きく変わる可能性があります。インドネシア視察では、港湾や物流拠点を見るだけでなく、通関業者やフォワーダーなどにも事前に相談し、自社商品の輸入に必要な手続きや想定リードタイムを確認しておくことが重要です。
④ 物流拠点を賃料だけで選ぶ
物流拠点を選定する際、倉庫賃料だけを比較してしまうと、実際の物流コストや配送効率を正しく判断できません。空港や港湾までの距離、主要都市へのアクセス、幹線道路の状況、倉庫で利用できる物流サービスなどを総合的に確認する必要があります。
チカランのように空港・港湾へのアクセスを確保しやすい工業団地は、EC事業の在庫拠点としても検討対象になります。インドネシア視察では、倉庫そのものだけでなく、拠点から主要配送先までの輸送ルートや所要時間まで確認し、自社の販売エリアに適した立地かどうかを判断しましょう。
⑤ 視察先を「有名な場所」だけで決める
インドネシア視察では、知名度の高い企業や施設を訪問すること自体が目的にならないよう注意が必要です。重要なのは、自社が解決したい課題に対して、その視察先からどのような情報を得られるかを明確にすることです。
例えば、マーケットプレイスへの出店を検討している場合はEC企業や現地パートナー、自社物流を検討している場合は倉庫・物流会社、越境ECを検討している場合は港湾・通関関連企業というように、進出方式に応じて訪問先を組み合わせます。視察前に「何を確認し、その情報をどの意思決定に使うのか」を決めておくことが、視察を成果につなげるポイントです。
視察先を選ぶ際の4つの判断基準
インドネシア視察の訪問先は、次の4つの基準から選ぶと整理しやすくなります。
- ①販売:マーケットプレイスやEC企業など、販売チャネルを確認できるか
- ②物流:倉庫・配送会社など、在庫保管や配送体制を確認できるか
- ③輸出入:港湾・通関会社など、輸出入に必要な手続きを確認できるか
- ④パートナー:現地企業との提携や事業運営に必要なネットワークを構築できるか
この4つを基準に視察先を組み合わせることで、単なる現地見学ではなく、EC進出に必要な情報収集と事業判断につながる視察計画を立てやすくなります。
5. インドネシアEC進出はDigima〜出島〜に相談
トコペディアタワー周辺のジャカルタは販売・提携機能、チカランのMM2100は物流機能、タンジュンプリオク港は輸出入機能と、それぞれ異なる役割を担っています。インドネシアEC市場への進出を検討する場合は、視察前にマーケットプレイス出店型か自社EC・物流構築型かなど、自社に適した進出方法を整理したうえで訪問先を選ぶことが重要です。
また、現地視察で得た情報を、出店契約・物流委託・現地パートナー選定・法人設立などの具体的な進出施策につなげるには、現地事情に精通した専門家やパートナーとの連携が必要になります。
Digima〜出島〜では、海外進出を検討する企業に向けて、現地専門家や物流会社、法律事務所、現地で実績を持つ日系企業などをご紹介しています。インドネシアへのEC進出についても、視察前の情報収集から、視察後の具体的な進出検討、出店準備、物流拠点の選定、現地法人設立まで、企業ごとの状況に応じた支援が可能です。
まずは、現在の事業内容や海外進出の状況から、自社に適した海外進出の方法を確認してみてください。
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