【2018年版】北朝鮮経済の最新事情 〜制裁の今と「非核化」後の将来〜
2018年6月12日に、初の米朝首脳会談が行われ、今後の北朝鮮の動向が世界的に注目を浴びています。特に日本・中国・韓国は、北朝鮮の非核実現後の「経済援助」をする国として挙げられており、非核化への関心が高まりつつあります。
北朝鮮としても、厳しい制裁を受け外貨流入が非常に限られている中、制裁解除により、外貨の流入を増やすことができます。
本稿では、北朝鮮の今の経済状況と今後、更には近隣諸国である中国・韓国・ロシアとの関係について述べていきます。
1. 北朝鮮とは?
中国、ロシアに支えられていた北朝鮮
北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)は、1948年に政府が誕生しました。ソビエト社会主義共和国連邦(ソ連)に倣い、計画経済制度・配給制度を導入しています。
現在では、中国・ロシアも北朝鮮に対して制裁措置を実施しているため、以前より厳しい状況にあります。
人口は2,500万人程度いるとされ、全体の約3分の1が農業に従事していると言われています。しかしながら、依然国内では物資不足や食料不足が続いています。
金正恩体制の北朝鮮とは?
2011年の金正日総書記の死後、その息子である金正恩第一委員長が北朝鮮のトップとなりました。
金正恩体制下では、核や弾道ミサイル開発を進めており、「核実験」が盛んに実施され、アメリカを中心に北朝鮮に対して、経済制裁が行われています。
一方で、金正恩第一委員長の体制下では、「計画外経済」の重要性が高まってきており、外資系企業誘致の為の「経済開発特区」や民間企業の設立が見られるようになってきました。
核開発だけでなく、経済開発にも徐々に力を入れ始めるようになってきています。
2.経済制裁の影響も自由な経済活動の動きあり
北朝鮮に影響を与える経済制裁
先進国による経済制裁は、北朝鮮にどれほどの影響を与えているのでしょうか。
特に影響を受けている分野は「貿易取引」、「金融」、「投資」、「科学技術」であるとされ、貿易取引では、燃料や原油の輸入の減少や石炭の輸出ができなくなり、自国になく、必要なものを手に入れることが難しくなりました。
金融分野では、対外決済ができなくなり、海外からの投資も減少しました。科学技術では、機械装置の開発や製造が難しくなっています。
このような現状に対し、「人民経済の主体化、現代化」を掲げる北朝鮮では、金属工業や化学工業、機械工業、更には電力工業の現代化が進んでいます。
その他、科学技術分野では、ブロック暗号技術、建設分野でも環境に配慮した建設が行われるようになってきています。
厳しい制裁も自由な経済活動の動きが拡大
北朝鮮では、上記の経済制裁が行われていますが、金正恩政権下になり、ある程度自由な経済活動が見られるようになったと言われています。
首都平壌(ピョンヤン)では、高価な電動自転車に乗っている会社員や民間のカフェやレストランが見られるようになりました。更に経済成長も3.9%(2016年度)と2000年以降では、高い成長率を記録しています。
参照:CNN.co.jp(2017年12月27日)「制裁下でも進む「消費革命」、資本主義がじわり浸透 平壌」
そのような経済活動の中で「トンジュ」と呼ばれる富裕層も出てきています。
しかしながら、自由な経済活動も国家により監視されており、「自由な経済活動が広く普及しない」ように取り締まる権限が警察官に与えられています。東洋経済によると、国内市場の数や労働者数、更には取扱可能な品数や金額が最近5ヵ年で減少していることを明らかにしています。
これは、民営企業数がピークに達したことで、国家による統制を強化していることが推測されます。現在では、国営商店や国営企業の増加により、自由経済への参加が難しくなってきていることが挙げられます。
参照:東洋経済(2018年3月12日)「北朝鮮への経済制裁」現地で見えた真の影響 現地エコノミストが明かす変化と経済の展望」
3. 異なるアプローチをとる近隣諸国
「最大限の圧力」をかける中国
中国は、歴史的に北朝鮮を支援していましたが、現在ではアメリカと同様に経済制裁を続けています。
地域レベルでは、国境付近に北朝鮮の労働者を受け入れる措置をとっているともされていますが、依然として、国家レベルでは北朝鮮からの石炭・鉄鉱石の輸入を制限しています。
2018年の中国による北朝鮮の輸出額は、2年前と比較して95%も減少しており、数字的に見ても「最大限の圧力」をかけていると言えます。
今後も北朝鮮の非核化まで中国による制裁は続くとされています。しかしながら制裁中でも中国の依存度が依然として高い為、中国の制裁が今後影響を及ぼすことは不可避だと考えられます。
「南北首脳会談」を実現させた韓国
韓国も中国に次いで、北朝鮮の主要な貿易国の一つとして数えられます。
2016年までに南北交流事業として行っていた開城(ケソン)工業団地事業の稼働中断により、南北の交易は中断しています。そのため現在、韓国からの物資は支援という形式でしか流入していません。
また、韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は、北朝鮮に対して宥和政策をとっています。2018年4月に行われた南北首脳会談、今後の継続的な両国の会談により、南北間交易の再開、更には南北統一も進められるかもしれません。
「したたかに」歩み寄るロシア
ソ連時代から友好的であったロシアと北朝鮮。対北朝鮮制裁についても、アメリカとロシアの言い分は異なっており、真実はわかりません。
しかしながら、JETROのレポートによると、2017年9月に主要品目であった石炭・亜鉛の輸出を停止したこともあり、2017年度の貿易額は、前年とさほど変わらないと推測しています。
参照:JETRO「2017年度 最近の北朝鮮経済に関する調査」
現在ロシア国内では、各地に国営の北朝鮮料理を提供するレストランがあります。2017年にモスクワに北朝鮮専門の旅行会社が開設されました。ロシアは、アメリカや韓国、中国とは異なり、北朝鮮に歩み寄っていると考えられます。
4. 「非核化」が実現した場合は?
北朝鮮には多大な利益あり
以上を踏まえると、北朝鮮が経済開発特区誘致の為には、核問題の解決による制裁の解除が最低限でも必要であることが言えます。
北朝鮮は、2013年から外資系企業誘致の為、国内に22の経済開発特区を整備しました。しかしながら、制裁の為、外貨流入は非常に厳しいとしています。
また、エネルギーや石炭の輸出入の制限により、外貨獲得がより困難になっています。これは、核問題の解決、更には南北統一によって解決できると考えられます。
もし北朝鮮が経済を開放した場合、先進国からのインフラ設備や発電施設への投資、北朝鮮からの安定的な鉱物資源の供給が実現されるであろうと考えられます。
参照:Bloomberg(2018年4月25日)「韓国より北朝鮮にメリットか、朝鮮半島の平和実現なら」
北朝鮮が経済を開放した場合、インフラ設備や発電施設への投資、北朝鮮からの安定的な鉱物資源の供給が実現されるであろうと述べています。
5. 今後の動向に注目
以上、北朝鮮経済の現在と今後について見てきました。
この1年でアメリカを中心に北朝鮮へのが変わってきています。また、北朝鮮もアメリカや韓国に歩み寄る姿勢が見られるようになりました。
近い将来、北朝鮮の経済が解放され、外資系企業の進出が行われるようになれば、日本企業にも進出できる可能性を秘めています。今後も外交情勢には目を通す必要がありそうです。
(引用文献)
・外務省 「北朝鮮(North Korea) 基礎データ」
・東洋経済 「北朝鮮への経済制裁」現地で見えた真の影響 現地エコノミストが明かす変化と経済の展望」
・東洋経済 「日本人が知らない「北朝鮮経済」の表と裏」
・東洋経済 「中国は北朝鮮に相当厳しい制裁を与えている」
・CNN.co.jp 「制裁下でも進む「消費革命」、資本主義がじわり浸透 平壌」
・JETRO 「2017年度 最近の北朝鮮経済に関する調査」
・NHK 「北朝鮮と“関係強化”するロシア そのねらいは」
・毎日新聞 「北朝鮮制裁 「決議 完全に守っている」 トランプ氏主張に反発」
・Bloomberg 「韓国より北朝鮮にメリットか、朝鮮半島の平和実現なら」
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