フィリピン人介護士の採用ガイド|4つの受け入れ制度とDMW・MWO手続きの進め方
介護人材の不足が続くなか、外国人材の受け入れを検討する事業者が増えています。そのなかでフィリピンは、英語力の高さやホスピタリティの文化に加え、経済連携協定(EPA)の対象国であるために4つの受け入れ制度すべてを使えるという、他国にはない特徴を持っています。
一方で、フィリピンからの採用には他国にはない独自の手続きがあります。現地の人材を企業が直接雇うことは認められておらず、政府機関を通した登録と認証が必須です。ここを知らずに話を進めると、内定を出したあとに数か月単位で足踏みすることになります。
この記事では、介護分野でフィリピン人材を受け入れる4つの制度の違い、フィリピン特有のDMW・MWO手続き、そして2025年に解禁された訪問系サービスへの従事要件までを、厚生労働省と出入国在留管理庁の公表資料をもとに整理します。
この記事でわかること
- ・介護でフィリピン人材を受け入れられる4つの制度と、それぞれの違い
- ・特定技能「介護」の試験要件と、受け入れ人数の上限の考え方
- ・フィリピン独自のDMW・MWO手続きと、直接雇用が禁止される理由
- ・2025年に解禁された訪問系サービスへの従事の条件
- ・費用の内訳と、送り出し機関・登録支援機関の選び方
▼フィリピン人介護士の採用ガイド
1. なぜ介護分野でフィリピン人材が選ばれるのか
受け入れの現状とフィリピン人材の特徴
まず数字で現在地を確認します。厚生労働省の資料によると、介護分野の特定技能外国人は令和6年12月末時点で44,367人。国籍別ではインドネシアが12,242人と最も多く、ミャンマー11,717人、ベトナム8,910人と続き、フィリピンは4,538人で4位です(出典:厚生労働省「外国人介護人材の受入れの現状と今後の方向性について」)。
最多ではないものの、フィリピンが介護分野で存在感を保っているのには理由があります。ひとつはEPA(経済連携協定)の対象国であることです。EPAに基づく介護福祉士候補者の受け入れはインドネシア・フィリピン・ベトナムの3か国に限られており、フィリピンは4つの受け入れ制度すべてを選択できる立場にあります。
もうひとつは、英語が公用語として使われる環境と、家族や高齢者を敬う文化的背景です。介護は言語と関係性の仕事であるため、利用者とのコミュニケーションに前向きな姿勢は現場で評価されやすく、実際に多くの施設が定着面での手応えを挙げています。
なお、フィリピンでは介護に関連する看護・福祉系の教育を受けた人材が一定数おり、EPAルートでは看護学校卒業者などが候補者になります。
2. 介護で受け入れられる4つの制度
EPA・在留資格「介護」・技能実習・特定技能の違い
介護分野の外国人受け入れには4つの制度があり、目的も期間も異なります。
| 制度 | 制度の趣旨 | 在留者数 |
|---|---|---|
| EPA(経済連携協定) | 二国間の経済連携の強化。介護福祉士候補者として入国し、就労・研修しながら国家試験を目指す | 3,252人(うち資格取得者452人)/令和7年3月1日時点 |
| 在留資格「介護」 | 専門的・技術的分野の受け入れ。介護福祉士資格の取得が前提で、家族の帯同が可能、更新回数の制限なし | 10,468人/令和6年6月末時点 |
| 技能実習 | 本国への技能移転。最大5年間。2027年4月に育成就労制度へ移行する予定 | 15,909人/令和5年12月末時点 |
| 特定技能1号 | 人手不足への対応。試験で技能と日本語能力を確認して入国し、通算5年間就労できる | 44,367人/令和6年12月末時点 |
実務上、即戦力として人数を確保したい事業者が選ぶのは特定技能1号です。一方、長期の中核人材を育てたい場合は、介護福祉士資格の取得を経て在留資格「介護」へ進むルートが有力になります。EPAで4年間にわたり候補者として適切に就労・研修した人は、特定技能1号へ移行する際に技能試験と日本語試験が免除される点も押さえておきたいところです。
特定技能「介護」の試験要件と人数枠
特定技能1号で介護に従事するには、3つの試験に合格する必要があります。技能水準を確認する介護技能評価試験、日本語能力を確認する国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験N4以上、そして介護現場の日本語を確認する介護日本語評価試験です。技能実習2号を良好に修了した人は、これらの試験が免除されます。
従事できる業務は、入浴・食事・排せつの介助といった身体介護等と、レクリエーションの実施や機能訓練の補助などの付随する支援業務です。
事業者側で見落とされがちなのが受け入れ人数の上限です。特定技能「介護」では、事業所単位で日本人等の常勤介護職員の総数が上限と定められています。常勤介護職員が10名の事業所なら特定技能外国人は10名までとなり、小規模な事業所ほど早く枠に達します。採用計画を立てる際は、まず自事業所の常勤介護職員数を確認してください。
このほか、受入れ機関は厚生労働省の介護分野における特定技能協議会の構成員となり、協議会や国の調査・指導に協力することが求められます。
3. フィリピン特有の送り出し手続き
DMW・MWOの役割と、直接雇用が禁止される理由
フィリピンからの採用が他国と決定的に違うのが、自国民の海外就労を政府が管理している点です。フィリピン政府は海外で働く自国民の保護を目的に、雇用の入口を国が把握する仕組みを敷いています。
中心となるのが移民労働者省(DMW)です。かつてのフィリピン海外雇用庁(POEA)が2022年に改組されたもので、いまも旧称のPOEAで解説している情報が残っているため、調べる際は注意が必要です。同様に、駐日フィリピン共和国大使館に置かれていた海外労働事務所(POLO)はMWOへと名称が変わり、東京と大阪に設置されています。
この仕組みのもとでは、DMWが認定した送り出し機関を通すことが原則で、日本の企業が現地の人材と直接契約を結ぶことは認められていません。「良い人材を見つけたので直接雇いたい」という進め方ができない点が、フィリピン採用で最初につまずくポイントです。
企業登録からOEC発給までの流れ
実際の流れは、おおむね次のように進みます。
まず受入れ企業がMWO(東京または大阪)で受入れ企業としての登録審査を受けます。会社の実在性や雇用条件が適正かを確認する段階で、必要書類はここでチェックされます。
次に、MWOから認証を受けた書類と推薦書を、認定送り出し機関を経由してDMWへ提出し、雇用主として登録します。登録が完了すると求人を出せるようになり、送り出し機関を通じた募集・選考へ進みます。
採用が決まった後は、本人が出国するためにOEC(海外雇用許可証)の発給を受ける必要があります。この手続きは受入れ企業が単独で行うことはできず、認定送り出し機関との連携が前提です。
これらはすべて、日本側の在留資格の手続きとは別に走ります。日本の入管への申請と、フィリピン側の登録・認証を並行して進めることになるため、採用決定から入職まで半年前後を見込むのが現実的です。書類の不備や機関の繁忙で遅れることも珍しくないため、配属予定日から逆算して余裕をもった計画が欠かせません。
4. 2025年に解禁された訪問系サービスへの従事
対象者の要件と、事業者に求められる5つの要件
これまで外国人介護人材は施設系サービスが中心でしたが、2025年から訪問系サービスへの従事が認められました。技能実習は令和7年4月1日から、特定技能は令和7年4月21日からです(出典:厚生労働省「外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について」)。
従事する本人には、介護職員初任者研修課程等を修了していることと、介護事業所等での原則1年以上の実務経験が求められます。入職してすぐに訪問へ出せるわけではない点に注意が必要です。
事業者側にも次の5つの要件が課されています。
・訪問介護業務の基本事項に関する研修の実施
・一定期間、責任者等が同行して行う訪問訓練
・業務内容の説明と意向確認を踏まえたキャリアプランの作成
・相談窓口の設置などハラスメント対策
・不測の事態に対応するためのICT活用を含む環境整備
さらに、申請前に巡回訪問等を実施する国際厚生事業団へ適合確認書類の提出が必要です。訪問系は利用者宅で一対一になるため、事業所として支える体制が整っているかを事前に確認する仕組みになっています。人手不足に悩む訪問系事業所にとっては選択肢が広がる一方、準備なしに始められる制度ではありません。
5. 費用と支援体制の整え方
費用の内訳と、送り出し機関・登録支援機関の選び方
フィリピンからの介護人材採用でかかる費用は、大きく4つに分かれます。送り出し機関や人材紹介会社への手数料、在留資格申請の代行費用、渡航費や住居の初期費用、そして特定技能の場合の登録支援機関への支援委託費です。支援委託費は月額で発生する継続コストになるため、初期費用だけでなく年間の総額で比較してください。
機関を選ぶ際に確認したいのは次の点です。まずDMW認定の送り出し機関かどうか。認定されていない機関を通した採用は成立しません。次に介護分野の実績です。介護は試験要件も人員配置基準も他分野と異なるため、分野特有の事情を理解しているかで進行の滑らかさが変わります。
さらに、入職後の支援がどこまで含まれるかも重要です。特定技能では生活オリエンテーション、公的手続への同行、定期的な面談といった支援が義務づけられており、これを自社で行うか登録支援機関に委託するかを選べます。介護は夜勤や利用者対応など負荷の高い場面が多く、相談先が用意されているかどうかが定着を左右します。
在留資格ごとの要件をあらためて確認したい場合は、外国人採用に必須の「在留資格」完全ガイドもあわせてご覧ください。
6. よくある質問(FAQ)
Q1. フィリピン人介護士を直接採用することはできますか?
できません。移民労働者省(DMW)が認定した送り出し機関を通すことが原則です。受入れ企業は駐日フィリピン共和国大使館の海外労働事務所(MWO)で企業登録の審査を受け、DMWへの登録を経て求人を出す流れになります。
Q2. 介護でフィリピン人を受け入れられる在留資格は何ですか?
EPAに基づく介護福祉士候補者、介護福祉士資格を取得した人が就く在留資格「介護」、技能実習、特定技能1号の4つです。フィリピンはEPAの対象国であるため、4つすべてのルートが使える数少ない国のひとつです。
Q3. 特定技能「介護」で受け入れられる人数に上限はありますか?
あります。事業所単位で、日本人等の常勤介護職員の総数が上限とされています。常勤介護職員が10名の事業所であれば、特定技能外国人は10名までです。
Q4. 特定技能で介護に就くにはどんな試験が必要ですか?
介護技能評価試験に加えて、国際交流基金日本語基礎テストまたは日本語能力試験N4以上、さらに介護日本語評価試験の合格が必要です。技能実習2号を良好に修了した人は免除されます。
Q5. 外国人介護人材は訪問介護に従事できますか?
2025年から可能になりました。技能実習は令和7年4月1日、特定技能は令和7年4月21日からで、本人が介護職員初任者研修課程等を修了し、原則1年以上の実務経験を有することが条件です。事業者側にも研修や同行訪問など5つの要件が課され、事前に国際厚生事業団へ適合確認書類を提出する必要があります。
7. まとめ
フィリピンは、介護分野で使える4つの制度すべてを選択できる数少ない国です。人数を確保したいなら特定技能1号、中核人材を育てたいなら介護福祉士資格を経て在留資格「介護」へ、というように、事業所の課題に合わせてルートを選べる点が強みになります。
一方で、フィリピン特有の手続きは避けて通れません。DMW認定の送り出し機関を通すことが原則で、直接雇用はできないこと、MWOでの企業登録とOECの発給が必要なことを前提に、日本側の在留資格申請と並行して進める必要があります。採用決定から入職まで半年前後を見込んでおくと安全です。
また、特定技能では事業所の常勤介護職員の総数が受け入れ上限になる点、訪問系サービスへ従事させるには本人の実務経験と事業者側の5要件が必要な点も、計画段階で押さえておきたいポイントです。
制度の選択と手続きの設計は、最初にどこまで見通せるかで結果が変わります。判断に迷う段階であれば、介護分野の実績がある支援機関に早めに相談することをおすすめします。
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参考文献
・厚生労働省「外国人介護人材の受入れについて」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28131.html
・厚生労働省「介護分野における特定技能外国人の受入れについて」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_000117702.html
・厚生労働省「外国人介護人材の訪問系サービスへの従事について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_56271.html
・出入国在留管理庁「特定技能制度 介護分野」
https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/nursingcare.html
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