フィリピン市場調査の進め方|消費の特徴と調べる順番をわかりやすく解説
フィリピン市場調査は、人口1億人を超える若い消費市場で、自社の商品が誰に、いくらで、どこで売れるかを確かめる作業です。英語の資料が多く調べやすい国ですが、買い物の仕方は日本と大きく違うため、統計だけで判断すると読み違えます。
フィリピンの消費市場の特徴と、日本企業が実際に相談している内容、調べる前に決めておく問い、費用の少ない順に進める4つのステップを図解で解説します。
この記事でわかること
- ・人口・年齢・海外からの送金から見たフィリピンの消費市場
- ・日本企業がフィリピンについて相談している内容
- ・売り場と買い方に表れるフィリピンの消費の特徴
- ・市場調査を費用の少ない順に進める4つのステップ
▼目次
1. 人口と送金から見るフィリピンの消費市場

フィリピンの消費の大きさは、人口の多さ、国民の若さ、海外からの送金の3つで説明できます。どれも市場調査の前提になる数字です。
人口は1億1,273万人
フィリピン統計庁によると、2024年の国勢調査での人口は1億1,272万9,484人です。2020年の1億904万人から約370万人増えました。地域別では、首都マニラの南に広がるカラバルソン地方が約1,693万人で最も多く、首都圏が約1,400万人、その北の中部ルソン地方が約1,299万人と続きます。この3地域だけで全人口の4割近くを占めるため、最初に調べる地域はここから選ぶ企業が多くなります。
年齢の中央値は25.3歳
2020年の国勢調査では、国民の年齢の中央値は25.3歳でした。日本の半分ほどの若さです。15歳未満が人口の約3割を占め、これから働き始め、家庭を持つ世代が厚く控えています。若い世代はスマートフォンで情報を集め、SNSで評判を確かめてから買う傾向があります。日本で中高年向けに売れている商品は、若い家族向けに売り方を変えられるかを考えてから調べると、無駄が少なくなります。
海外で働く家族からの送金は356億ドル
フィリピンでは、中東やアジア、米国などで働く人が多く、家族への送金が家計を支えています。フィリピン中央銀行によると、2025年に銀行を通じて送られた送金は約356億ドルで、過去最高でした。送金を受け取る家庭は、食品や日用品に加えて、家電や住宅、子どもの教育にもお金を使います。所得の統計だけでは見えない購買力があることを、市場の大きさを見積もるときに頭に入れておきます。
出典:フィリピン統計庁「2024 Census of Population Population Counts Declared Official by the President」(2026年10月確認),フィリピン統計庁「Age and Sex Distribution in the Philippine Population」(2026年10月確認),フィリピン中央銀行「Overseas Filipino Cash Remittances」(2026年10月確認)
2. 日本企業がフィリピンで相談していること

Digima〜出島〜には毎年4,000件を超える海外進出の相談が寄せられ、そのうちフィリピンに関する相談は6〜7%で推移しています。『海外進出白書(2024-2025年版)』で2024年度の内訳を見ると、日本企業がどこでつまずいているかがわかります。
売り先探しと会社設立が上位
相談の内容で最も多いのは販路拡大の16%で、会社設立・登記代行と海外進出総合支援がそれぞれ15%で続きます。現地に法人を置いて腰を据えて売りたい企業が多い一方で、誰に売るかが決まらないまま法人の形を先に考えている相談も少なくありません。会社設立の手続きはフィリピンの会社設立の記事で詳しく解説していますが、市場を確かめないまま法人をつくると、設立の費用と時間が先に出ていきます。
市場調査の相談は5%にとどまる
海外市場調査・マーケティングの相談は5%で、販路拡大の3分の1ほどです。フィリピンは英語が通じ、日本からも近いため、調べずに現地へ行き、展示会や知人の紹介で取引先を探す企業が目立ちます。ただ、売り先が決まらずに相談に来る企業の多くは、価格帯と売り場が自社の商品に合っていないことが原因です。販路を探す前に市場を調べておけば、遠回りを減らせます。国の全体像はフィリピン進出ガイドにまとめています。
3. 売り場と買い方に表れる日本との違い
フィリピンの消費は、統計の数字よりも、売り場と買い方を見たほうが理解しやすい市場です。日本との違いが大きい点を押さえておきます。
小さな商店と大型モールが並ぶ
住宅街には、サリサリストアと呼ばれる家族経営の小さな商店がいたるところにあり、日用品や菓子、飲み物を少しずつ売っています。一方で都市部には大型のショッピングモールが多く、休日は家族で出かける場所になっています。同じ商品でも、商店の棚に並べるのか、モールのスーパーに並べるのかで、価格も包装も変わります。どちらの売り場を狙うかを決めないと、調べる対象が定まりません。
少しずつ小分けで買う
シャンプーや調味料、コーヒーなどは、1回分ずつの小袋で売られることが多く、その日に使う分だけを買う習慣があります。日払いや週払いで収入を得る家庭が多く、まとめ買いより手元のお金で買える量が選ばれるためです。日本の容量のまま持ち込むと、価格が高く見えて手に取られにくくなります。調べるときは、競合の商品がどの大きさで、いくらで売られているかを必ず確かめます。
送金の入る時期に買い物が増える
海外で働く家族からの送金は、毎月の生活費に加えて、クリスマスや新学期の前にまとまって届きます。フィリピンのクリスマス商戦は9月ごろから始まるといわれ、贈り物や食品の売れ行きが年末に向けて大きく伸びます。新しい商品を試すなら、売れる時期と売れにくい時期を分けて反応を見ないと、結果を読み違えます。販売の計画は、この季節の波を前提に組み立てます。
英語とSNSで評判が広がる
フィリピンでは英語が公用語の1つで、商品の説明や広告も英語で通じます。日本語の資料を英語にすれば、そのまま現地の人に見てもらえるのは大きな利点です。また、FacebookやTikTokなどのSNSを使う時間が長く、口コミで評判が一気に広がります。日本の商品は品質の高さで好まれやすいため、SNSでの見せ方を調べる段階から考えておくと、売り出すときに役立ちます。
4. 調べ始める前に決める問いと規制の確認
市場調査は、問いが決まっていないと、集めた資料を使えずに終わります。調べ始める前に、次の3つの問いへの仮の答えを書き出しておきます。
| 問い | 仮の答えの例 | 確かめる方法 |
|---|---|---|
| 誰に売るか | 首都圏に住む共働きの若い家族 | 地域別の人口と、売り場の客層を見る |
| いくらで売るか | 現地の大手の商品より2〜3割高い価格 | 競合の容量と価格を棚で調べる |
| どこで売るか | モールのスーパーとネット通販 | 輸入業者と販売店に取引の条件を聞く |
仮の答えから調べる項目を決める
3つの問いに仮の答えを置くと、調べる項目が絞れます。たとえば「首都圏の若い家族に、モールで売る」と決めれば、首都圏の人口と所得、モールのスーパーに並ぶ競合の商品、輸入業者の取引の条件を調べればよく、地方の商店の事情は後回しにできます。仮の答えは調べた結果で書き換えてかまいません。何を確かめるかが決まっていることが大切です。
商品にかかる規制を先に確かめる
食品や化粧品、医療に関わる商品は、フィリピン食品医薬品局への登録や届け出が必要です。登録には時間がかかるため、売れるとわかってから手続きを始めると、販売の時期を逃します。関税は品目と協定によって変わるので、フィリピンの関税制度の記事で調べ方を確認しておきます。また、外国企業が自ら小売店を開く場合は、払込資本金2,500万ペソ以上などの条件があります。自社で店を持つのか、現地の販売店に任せるのかで、調べる内容も変わります。
出典:フィリピン食品医薬品局「Food and Drug Administration Philippines」(2026年10月確認),フィリピン上院「Republic Act No. 11595」(2026年10月確認)
5. 費用の少ない順に進める4つのステップ

市場調査は、お金のかからない方法から始め、確かめたいことを絞ってから現地へ行くと、費用を抑えられます。4つのステップで進めます。
ステップ1 公開データで地域と価格帯を絞る
最初は、フィリピン統計庁の人口や家計の統計、業界団体の資料、現地の通販サイトに並ぶ価格など、無料で見られる情報から始めます。英語の資料が多いため、翻訳の手間はほかのアジアの国より少なく済みます。ここで決めるのは、狙う地域と価格帯の目安で、細かな数字までそろえる必要はありません。考え方の全体は海外市場調査の記事でも解説しています。
ステップ2 輸入業者や販売店に聞く
次に、自社の商品と近い分野を扱う輸入業者や販売店に、売れ筋の商品と値付け、取引の条件を聞きます。オンラインの面談でも、現地で何が売れているかの手がかりは十分に得られます。聞き取りは2〜3社で終わらせず、立場の違う相手に話を聞くと、話の偏りに気づけます。ここで得た話をもとに、現地で確かめることを箇条書きにしておきます。
ステップ3 現地で売り場を見る
現地では、モールのスーパーと住宅街の商店の両方を回り、競合の商品の容量、価格、並べ方を確かめます。売り場の写真を撮り、手に取る客の年齢や買い方も記録しておくと、帰国後に社内で判断しやすくなります。現地の言葉が話せなくても、英語で店員に質問できるのはフィリピンならではの利点です。視察の日程は、ステップ2で会った相手との面談とまとめて組むと、1回の出張で多くを確かめられます。
ステップ4 小さく売って反応を見る
最後は、現地の通販サイトや催事などで、少量を実際に売ってみます。どの価格なら売れるのか、どんな声が返ってくるのかは、売ってみないとわかりません。売れた数、再び買った人の数、SNSでの反応を数字で記録し、本格的に輸出するか、現地に法人をつくるかを判断します。最初から大量に送らないことで、失敗したときの損を小さくできます。
6. よくある質問(FAQ)
Q1. フィリピン市場調査の費用はどのくらい?
公開データの確認と聞き取りまでなら、自社で進めれば大きな費用はかかりません。現地の視察には渡航費と滞在費がかかり、調査会社に消費者アンケートや売り場の調査を頼む場合は、調べる地域と人数によって費用が大きく変わります。まずはステップ1と2で確かめたいことを絞り、必要な部分だけを外に頼むと、費用を抑えられます。見積もりは複数の会社から取って比べます。
Q2. マニラ以外の地域も調べるべき?
最初は首都圏と、その周辺のカラバルソン地方、中部ルソン地方から始める企業が多く、人口も売り場もここに集まっています。ただ、セブやダバオなどの地方都市にも大型モールが増え、首都圏より競合が少ない分野もあります。商品によっては地方都市のほうが売りやすいこともあるため、首都圏で反応を見たあとに、次の候補として調べる順番を決めておくとよいでしょう。
Q3. 調査の結果、売れないとわかったら?
売れないとわかったこと自体が、大きな損を防いだ成果です。価格帯や容量、売り場を変えれば売れる見込みがあるのか、それとも別の国のほうが向いているのかを、調べた数字をもとに考え直します。フィリピンで集めた資料は、同じように若い人口を抱える東南アジアのほかの国を調べるときにも比べる材料として使えます。結果を社内に残しておくことが、次の判断を早めます。
7. フィリピン市場の調査を相談するなら
フィリピン市場の調査は、商品と売り先によって、調べるべき地域も相手も変わります。公開データでどこまでわかるのか、現地で何を確かめるべきか、調査会社に頼むならどの範囲かを、最初に整理しておくと遠回りを減らせます。
「自社の商品がフィリピンで売れるか確かめたい」「現地の輸入業者や販売店の話を聞きたい」「視察の日程を効率よく組みたい」といった段階から、Digima〜出島〜にご相談ください。フィリピンでの調査や販路開拓に実績のある支援企業をご紹介します。
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