【2026年最新】シンガポールでの会社設立ガイド|法人形態・手続き・費用・必要書類をわかりやすく解説
シンガポールは東南アジア最大のビジネスハブとして、世界中の企業が拠点を構えています。法人税率17%、80以上の国・地域との租税条約、政治的安定性、透明性の高い法制度など、会社設立先として非常に魅力的な環境が整っています。
2024年時点で日本企業約4,200社がシンガポールに拠点を置いており、その数は年々増加傾向にあります。本記事では、シンガポールでの会社設立を検討する日本企業向けに、法人形態の選び方から設立手続き、費用、注意点まで2026年最新情報をもとに解説します。
この記事でわかること
- ・Pte. Ltd.・支店・代表事務所など法人形態ごとの特徴と選び方
- ・ACRA登録から銀行口座開設までの設立手続きの流れ
- ・設立費用・資本金の目安と現地取締役・EP取得の注意点
▼シンガポールでの会社設立ガイド
1. シンガポールでの法人形態の種類と特徴
シンガポールで日本企業が選択できる主な法人形態は以下の5つです。事業目的や進出規模に応じて最適な形態を選びましょう。
Pte. Ltd.(Private Limited Company/非公開有限会社)
日本企業のシンガポール進出で最も一般的な法人形態です。現地法人として独立した法人格を持ち、株主の責任は出資額に限定されます。法人税率17%の適用に加え、新設法人向けの税制優遇(スタートアップ税免除スキーム)を受けられるのが大きなメリットです。
株主は最大50名まで、取締役は最低1名(うち1名はシンガポール居住者)が必要です。現地での営業活動、契約締結、収益事業のすべてを行えます。
支店(Branch Office)
日本本社の延長としてシンガポールに設置する拠点です。独立した法人格を持たず、本社と同一の法的主体として扱われます。本社の事業と同じ活動のみ行える点が特徴で、現地での債務は本社が全責任を負います。
支店の利益にはシンガポールの法人税17%が課されますが、新設法人向けの税制優遇は適用されません。既にシンガポールに顧客基盤がある場合や、本社ブランドをそのまま活用したい場合に適しています。
代表事務所(Representative Office)
市場調査や情報収集を目的とした拠点で、営業活動や収益事業は一切行えません。設置期間は最長3年間に限定されており、シンガポール市場の可能性を探る初期段階での利用に適しています。
設立手続きが比較的簡便で、Enterprise Singapore(旧IE Singapore)への申請で設置できます。本格進出前のリサーチ拠点として活用し、事業性が確認できた段階でPte. Ltd.へ移行するケースが一般的です。
有限責任パートナーシップ(LLP)・個人事業(Sole Proprietorship)
LLPはパートナー間の合意に基づく事業形態で、各パートナーの責任が出資額に限定されます。個人事業は個人名義での事業登録です。いずれも日本企業の進出形態としては少数派ですが、現地パートナーとの共同事業やスモールスタートの場合に検討されることがあります。
2. 会社設立の手続き・流れ(ステップバイステップ)
シンガポールでPte. Ltd.を設立する際の一般的な手続きを、5つのステップで解説します。
ステップ1:会社名の承認申請
まず、ACRA(Accounting and Corporate Regulatory Authority/会計企業規制庁)のオンラインポータル「BizFile+」で会社名を申請します。申請費用はS$15で、通常1時間以内に結果が通知されます。ただし、政府機関の確認が必要な名称の場合は14〜60日かかることもあります。
既存の商号と同一・類似の名称や、不適切な表現を含む名称は却下されるため、事前に候補を複数用意しておくのがおすすめです。承認された会社名は60日間有効です。
ステップ2:必要書類の準備
設立登記に必要な主な書類は以下の通りです。
・会社定款(Constitution/旧Memorandum and Articles of Association)
・取締役・株主の身分証明書(パスポートのコピー)
・取締役・株主の住所証明書
・登記住所(Registered Address)の証明書
・会社秘書役(Company Secretary)の任命同意書
・取締役の就任同意書
日本からの書類は英訳・公証が必要な場合があります。また、登記住所はシンガポール国内の物理的な住所が必要で、私書箱は認められません。
ステップ3:ACRAへの設立登記申請
BizFile+を通じて設立登記を申請します。登記費用はS$300です。必要書類に不備がなければ、通常1〜3営業日で登記が完了し、UEN(Unique Entity Number/法人番号)が発行されます。
登記完了後、ACRAから法人登記証明書(BizFile Profile)を取得できます。これが日本の登記簿謄本に相当する書類です。
ステップ4:法人銀行口座の開設
法人登記完了後、シンガポール国内の銀行で法人口座を開設します。DBS、OCBC、UOBの地場3大銀行のほか、HSBC、Standard Charteredなどの外資系銀行も選択肢です。
口座開設には取締役全員の本人確認(対面またはビデオ通話)が必要で、開設までに2〜4週間かかるのが一般的です。近年はマネーロンダリング防止の観点から審査が厳格化しており、事業計画書の提出を求められるケースも増えています。
ステップ5:税務登録・ライセンス取得・EP申請
法人設立後、IRAS(Inland Revenue Authority of Singapore/内国歳入庁)への税務登録を行います。GST(Goods and Services Tax)の登録は、年間課税売上がS$100万を超える場合または超える見込みがある場合に義務づけられます。
業種によっては個別のライセンスが必要です(飲食業、金融業、教育業など)。日本人駐在員の就労にはEP(Employment Pass)の取得が必要で、MOM(Ministry of Manpower/人材省)のオンラインポータルから申請します。
3. 会社設立にかかる費用・資本金の目安
設立時にかかる主な費用
シンガポールでPte. Ltd.を設立する際の費用の目安は以下の通りです(2026年現在)。
・会社名申請費用:S$15(約1,650円)
・法人登記費用:S$300(約33,000円)
・会社秘書役の年間報酬:S$600〜S$2,400(約66,000〜264,000円)
・登記住所の提供サービス:S$1,200〜S$3,600/年(約132,000〜396,000円)
・ノミニーディレクター費用:S$2,400〜S$6,000/年(約264,000〜660,000円)
・設立代行サービス手数料:S$1,500〜S$3,500(約165,000〜385,000円)
※1シンガポールドル=約110円で換算(2026年3月時点)
すべて自社で手配する場合はS$315(登記費用+会社名申請)のみで設立可能ですが、設立代行サービスを利用する場合は総額S$3,000〜S$8,000程度が目安です。
資本金の目安
法律上の最低資本金はS$1ですが、実務上は以下の点を考慮して資本金を設定する必要があります。
・EP申請への影響:資本金が少なすぎるとEP審査で不利になる可能性があります。最低でもS$50,000以上の払込資本が推奨されます。
・銀行口座開設:銀行によっては一定額以上の初期預入金を求めるケースがあります。
・取引先の信用:シンガポールではACRAのBizFileで資本金情報が公開されるため、取引先からの信用にも影響します。
日本企業のシンガポール現地法人では、S$50,000〜S$500,000の範囲で資本金を設定するケースが多く見られます。
4. 会社設立時の注意点
現地居住取締役の確保
Pte. Ltd.の設立には、シンガポール居住者(市民権保持者・永住権保持者・EP/S Pass保持者など)を最低1名、取締役として任命する義務があります。
自社の駐在員がEPを取得すれば居住取締役の要件を満たせますが、設立時点ではEPが未取得の場合がほとんどです。そのため、設立時はノミニーディレクターサービス(名義取締役)を利用し、EP取得後に自社社員に交代するのが一般的な流れです。
会社秘書役(Company Secretary)の任命
シンガポールの会社法では、法人設立後6ヶ月以内にシンガポール居住者の会社秘書役を1名任命することが義務づけられています。会社秘書役はACRAへの年次申告、株主総会の議事録作成、会社法上の各種届出などを担当する重要な役職です。
通常はコーポレートサービスプロバイダー(会計事務所や法律事務所)に外部委託します。
EP(Employment Pass)の取得
日本人駐在員がシンガポールで就労するには、MOMが発行するEP(Employment Pass)の取得が必要です。2026年現在の主な要件は以下の通りです。
・固定月給:S$5,600以上(金融セクターはS$6,200以上)
・COMPASS(Complementarity Assessment Framework)による評価:40ポイント以上
・COMPASSでは給与、学歴、国籍の多様性、企業の現地雇用への貢献度などが評価されます
審査期間は3〜8週間で、申請はオンラインで行います。不許可となった場合は再申請が可能ですが、条件の改善が必要です。
登記住所・会計年度の設定
登記住所はシンガポール国内の物理的な住所が必要です。自社オフィスがない場合は、コワーキングスペースやバーチャルオフィスの住所を登記住所として利用できます。
会計年度(Financial Year End)は自由に設定できますが、日本の親会社と合わせて3月末または12月末とするケースが多いです。初年度の会計期間は最長18ヶ月まで設定できます。
5. よくある質問(FAQ)
Q1. シンガポールで会社設立にかかる期間はどれくらいですか?
ACRAへのオンライン申請後、通常1〜3営業日で法人登記が完了します。ただし、会社名の事前承認や必要書類の準備期間を含めると、全体で2〜4週間程度を見込むのが一般的です。設立代行サービスを利用すれば、書類準備から登記完了まで最短1週間で対応可能な場合もあります。
Q2. シンガポールの会社設立に必要な最低資本金はいくらですか?
Pte. Ltd.の場合、法律上の最低資本金はS$1(約110円)です。ただし、EP取得や銀行口座開設の実務面を考慮すると、S$50,000〜S$100,000程度の払込資本金を用意することが推奨されます。資本金は設立後に増資することも可能です。
Q3. 日本に居ながらシンガポールで会社設立できますか?
はい、可能です。ACRA(BizFile+)への申請はオンラインで完結するため、日本にいながら法人登記を行えます。ただし、ノミニーディレクターの手配や会社秘書役の任命は現地のサービスプロバイダーに委託する必要があります。銀行口座の開設時には取締役のビデオ通話または渡航が求められるケースがあります。
Q4. シンガポールの法人税率と税制優遇はどのようなものですか?
法人税率は一律17%で、ASEANでは比較的低い水準です。新設法人にはスタートアップ税免除スキームが適用され、最初の3年間は課税所得のうちS$100,000まで75%免除、次のS$100,000は50%免除されます。また、80以上の国・地域との租税条約により、二重課税の回避が可能です。
Q5. 現地取締役は必ず必要ですか?自社で確保できない場合はどうすればよいですか?
Pte. Ltd.ではシンガポール居住者の取締役が最低1名必要です。自社で確保できない場合は、コーポレートサービスプロバイダーが提供するノミニーディレクターサービス(年間S$2,400〜S$6,000程度)を利用できます。EP取得後に自社社員へ交代するのが一般的です。
Q6. 会社設立後に必要な年次手続きは何ですか?
主な年次手続きとして、年次株主総会(AGM)の開催、ACRAへの年次申告(Annual Return)の提出、IRASへの法人税申告(Form C-S/C)があります。年間売上がS$10M以下かつ一定条件を満たす企業は簡易版のForm C-Sでの申告が可能です。
Q7. 支店と現地法人(Pte. Ltd.)はどちらがよいですか?
多くの日本企業はPte. Ltd.を選択します。Pte. Ltd.は有限責任で本社のリスクが限定され、スタートアップ税免除や政府助成金の対象にもなります。一方、支店は本社と一体の事業運営ができる点がメリットですが、本社が無限責任を負い、税制優遇が限定的です。短期プロジェクトや本社業務の延長であれば支店、本格的な現地事業展開であればPte. Ltd.が適しています。
Q8. EP(Employment Pass)はどのタイミングで申請すべきですか?
法人登記完了後に申請可能です。2026年現在、COMPASSフレームワークによる評価が適用されており、固定月給S$5,600以上(金融セクターはS$6,200以上)が要件です。審査には3〜8週間かかるため、設立手続きと並行して準備を進めることをおすすめします。
6. まとめ
シンガポールでの会社設立は、ACRA(BizFile+)を通じたオンライン手続きで比較的スムーズに進められます。日本企業にはPte. Ltd.(非公開有限会社)が最も一般的な形態で、法人税17%やスタートアップ向け税制優遇を活用できます。
設立にあたっては、現地居住取締役の確保、会社秘書役の任命、EP取得のタイミングなど、シンガポール特有の要件を事前に把握しておくことが重要です。設立費用は自社手配でS$315から、代行サービスを利用する場合はS$3,000〜S$8,000程度が目安です。
シンガポール進出を成功させるには、法人形態の選定から設立後の運営まで、現地の法制度に精通した専門家のサポートを受けることが効果的です。
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