タイのBOIとは|法人税免除などの恩典と申請の流れ・使うかどうかの判断基準
タイのBOIは、タイ投資委員会(Board of Investment)が運営する投資奨励制度です。認可を受けると、業種によって最長13年の法人税の免除や機械の輸入関税の免除を受けられます。ただし、どの企業にも得になるわけではなく、対象業種に当たるか、利益がいつ出るか、条件を守り続けられるかで判断が変わります。
タイはDigima〜出島〜の『海外進出白書(2025-2026年版)』の国別の相談で4位、7.1%を占めます。ジェトロの資料をもとに、BOIの恩典、対象業種と認可の基準、グループごとの法人税の免除、申請の流れ、使うかどうかの判断基準を解説します。
この記事でわかること
- ・タイのBOIの税務上の恩典と税務以外の恩典
- ・対象の418業種とプロジェクトの認可基準
- ・グループA1+からBまでの法人税の免除期間
- ・BOIの申請の流れと申請の時期
- ・BOIのデメリットと使わないほうがよい場合
▼目次
1. タイのBOIは投資委員会の投資奨励制度
BOIは、タイが呼び込みたい産業への投資に恩典を与える制度です。会社を設立する手続きそのものではなく、設立や投資の計画に上乗せして申請します。タイの外資規制との関係を押さえると、制度の位置づけがわかります。何を呼び込もうとしている制度なのかも確かめます。
呼び込みたい産業に恩典を与える仕組み
BOIの制度は2023年1月3日に改正され、2023年から2027年までの5カ年の投資奨励戦略に沿って運用されています。方針に挙がっているのは、既存産業の高度化、自動化やデジタル化、脱炭素化への投資、中小企業とスタートアップの強化、地域の発展などです。タイの法人税率は原則20%なので、免除を受けられると利益が出たあとの資金の残り方が変わります。自社の事業がこの方針に沿うかどうかが、最初の確認点になります。
出典:ジェトロ「外資に関する奨励|タイ」(2026年10月確認),ジェトロ「税制|タイ」(2026年10月確認)
外国人事業法との関係
タイでは外国人事業法によって、外資が過半を持てる業種が制限されています。BOIの認可を受けたプロジェクトでは、同法の第2表と第3表に当たる事業は、他の法律に定めがなければ外国人が過半数や全株式を持てます。一方、第1表の事業はタイ国籍者が51%以上を持つ必要があります。100%出資を目的にBOIを検討する企業は多いのですが、すべての業種で可能なわけではありません。自社の事業がどの表に当たるのかを先に確かめます。
2. BOIの恩典は税務と税務以外の2種類

BOIの恩典というと法人税の免除が注目されますが、機械の輸入や土地の所有、外国人技術者の受け入れといった恩典もあります。図のとおり、業種に基づく恩典に、取り組みや立地に応じた追加の恩典が上乗せされる形です。どの恩典が目当てなのかで、判断が変わります。
税務の恩典は法人税と輸入関税が中心
税務の恩典の中心は、奨励された事業の利益にかかる法人税の免除と、機械の輸入関税の免除や軽減です。輸出向けの製品に使う原材料や資材の輸入関税の免除、研究開発の物資の輸入関税の免除もあります。工場を新しく建てて機械を日本から持ち込む製造業なら、操業の前から関税の恩典が効きます。法人税の免除は利益が出てから意味を持つので、2つの恩典が効く時期を分けて計算します。
税務以外の恩典は土地と人の受け入れ
税務以外の恩典には、土地の所有の許可、熟練労働者や専門技術者の入国の許可、投資機会を調べる目的の入国の許可、外貨の海外送金の許可があります。外国企業は原則として土地を所有できないので、工場用地を持ちたい企業には大きな意味があります。BOIの投資奨励に基づいて外国人事業許可証を取得する場合、商務省への申請は要らず、BOIへのオンライン申請で済みます。法人税より、こちらを目当てに検討する企業もあります。
追加の恩典は取り組みと立地で決まる
研究開発や人材育成などに投資すると、法人税の免除期間が最長5年延びます。工業団地や奨励される工業地区に立地すると1年、1人当たりの国民所得が低い20県に立地すると3年の追加があります。チョンブリーなど3県の東部経済回廊では、指定の産業で法人税が最大15年免除される別の枠もあります。ただし、追加の恩典には合算の上限があるので、足し算だけで期間を見積もらないようにします。
3. BOIの対象業種とプロジェクトの認可基準
BOIの対象は業種ごとに決まっていて、事業の内容が業種表に当たらなければ申請できません。業種に当たっても、投資額や付加価値などの基準を満たす必要があります。申請を考える前に、業種、投資額と負債比率、付加価値と工程の順に確かめます。
対象は10区分の418業種
2025年3月時点で、BOIの投資奨励に申請できる事業は10区分の418業種です。区分と業種の数は、農業・食品・バイオが55、医療が17、機械・車両が120、電気・電子が61、金属・素材が47、化学・石油化学が32、公共事業が24、デジタルが11、クリエイティブ産業が17、高価値サービスが34です。機械・車両が最も多く、製造業に厚い制度だとわかります。区分に卸売や小売そのものはないので、販売だけの事業は当てはまらないことが多くなります。
投資額と負債比率の基準
最低投資金額は、土地代と運転資金を除いて100万バーツです。新規プロジェクトの負債と登録資本金の比率は3対1以内で、業種表に別の定めがある場合を除きます。投資金額が20億バーツを超えるプロジェクトは、可能性調査の結果を提出します。最低投資金額は高くありませんが、運転資金を含められないので、実際に工場や機械に投じる額で確かめます。業種ごとに、これより高い最低額が定められていることもあります。
付加価値と工程の基準
収入の20%以上の付加価値をつけることが基準で、農業と食品、電子と部品の事業などは10%以上です。近代的で実質的な製造やサービスの工程を持つことも求められます。機械は新品が原則で、一定の要件を満たせば輸入した中古機械も使えます。日本の工場で使っていた機械を移す計画なら、この要件を先に確かめます。環境への影響を防ぐ仕組みも求められ、業種や規模によっては環境影響評価報告書の提出が必要です。
4. グループ別の法人税免除の期間

法人税の免除は、業種の重要度で決まるグループによって変わります。図のとおり、免除の期間に加えて、免除額に上限があるかどうかでも差が出ます。自社の業種がどのグループかは、BOIの業種表で確かめます。同じ免除の年数でも、投資額によって受けられる金額は違います。
A1+とA1は免除額に上限がない
グループA1+は10〜13年、A1は8年の法人税の免除で、どちらも免除額に上限がありません。機械の輸入関税の免除や、輸出向けの原材料と資材の輸入関税の1年間の免除も受けられます。高い技術や研究開発に関わる業種が中心で、利益が大きくなるほど恩典も大きくなります。自社の事業がこのグループに入るかどうかで、BOIを使う価値が大きく変わるので、最初に確かめておきたい点です。
A2からA4は投資額が上限になる
グループA2は8年、A3は5年、A4は3年の法人税の免除で、免除額の上限は土地代と運転資金を除く投資金額の100%です。たとえば機械と建物に1億バーツを投じれば、免除できる法人税は累計で1億バーツまでです。少額の投資では、免除の期間が長くても上限に早く届くことがあります。投資額と利益の見通しを並べて、期間内に使い切れるかどうかを計算します。
Bは法人税の免除がない
グループBには法人税の免除がなく、機械の輸入関税の免除と、輸出向けの原材料と資材の輸入関税の1年間の免除、税務以外の恩典が対象です。法人税の免除を期待して準備を進めたら自社の業種はBだった、という事態は避けたいところです。それでも、土地の所有や外国人の受け入れが目的なら、使う意味はあります。何のためにBOIを使うのかを決めてから、グループを確かめます。
5. BOI申請の流れは会社設立の前に始める

BOIは計画の段階で申請するのが原則で、投資を終えたあとからでは基本的に認められません。図のとおり、会社の設立や工場の建設と並行して進めます。登記や定款の内容とも関わるので、早い段階から予定に組み込みます。認可のあとの条件の管理まで見ておきます。
業種とグループを確かめて計画を作る
最初に、自社の事業がBOIの業種表のどの項目に当たるのかを確かめます。次に、投資額、機械の内容、生産工程、雇用の人数を事業計画にまとめます。付加価値の基準や負債比率は、この段階で計算できます。定款の事業目的とBOIに申請する事業の内容がずれていると、審査で指摘を受けることがあります。設立の書類を作る担当者と、BOIの申請の担当者が別なら、内容をすり合わせておきます。
申請はオンラインで行う
BOIへの申請は、原則としてウェブサイトのe-Investment Promotionから行います。紙の申請書は2020年1月から原則として認められていません。事業開始の届出や、対象業種のISO取得の報告も同じ仕組みで行います。担当者が英語やタイ語の画面と書類を扱えるかどうかで、社内で進めるか専門家に任せるかの判断が変わります。審査の期間は案件の規模や内容で変わるので、工場の着工の予定には余裕を持たせます。
認可のあとも条件を守り続ける
認可を受けたら、その条件に沿って会社の設立と投資を進めます。条件には、操業を始める期限や、対象業種によってはISOなどの国際規格の取得が含まれます。金属を溶かす工程のプロジェクトは、法人税の免除を受ける前に規格を取得する必要があります。認可の時点と事業の内容が変わるときは、そのまま進めずBOIへの手続きが必要かを確かめます。社内の誰が条件の管理と報告を担当するのかも決めておきます。
6. BOIのデメリットと使うかどうかの判断基準
恩典が大きいからといって、すべての企業が申請すべきとは限りません。申請と管理には手間がかかり、利益が出る前に免除の期間が過ぎる場合もあります。自社にとって得になるかどうかを、手間、利益が出る時期、進出の目的の3つの点で確かめます。
申請と条件の管理に手間がかかる
BOIのデメリットは、申請書類の準備に加えて、認可後も条件の管理と報告が続くことです。認可の内容と違う事業を始めると、恩典が使えなくなることもあります。奨励された事業とそれ以外の事業を同じ会社で行うと、収支を分けて管理する負担も増えます。少人数の現地法人では、この管理を誰が担うのかが問題になります。手間を外部に任せる場合は、その費用も恩典の金額と比べます。
利益が出るのがいつかで価値が変わる
法人税の免除は、利益が出て初めて効果が出ます。工場の立ち上げに時間がかかり、最初の数年が赤字なら、グループA4の3年の免除はほとんど使えないかもしれません。設備投資が小さければ、A2からA4の上限にもすぐ届きます。売上と利益の見通しを年ごとに置き、免除される税額の合計を出してから判断します。機械の輸入関税や土地の所有のように、利益と関係なく効く恩典も別に計算します。
販売が目的なら別の進め方もある
タイで売ることが目的の企業は、BOIより先に売り方を考えたほうが早い場合があります。海外進出白書でも、タイへの相談は卸売と小売の業種が39%で最多です。まずタイの販売代理店を通じて反応を見て、現地で製造する段階でBOIを検討する順番もあります。進出の方法全体はタイ進出の記事で解説しています。売れる見込みが立ってからでも、投資の前なら申請できます。
7. よくある質問(FAQ)
Q1. BOIの認可を受ければ外資100%で事業ができる?
外国人事業法の第2表と第3表に当たる事業なら、他の法律に定めがなければ過半数や全株式を持てます。第1表の事業はタイ国籍者が51%以上を持つ必要があります。妥当な理由があれば、BOIが特定のプロジェクトに限って出資比率を定めることもあります。認可があれば必ず100%出資できるわけではないので、業種と表の対応を申請の前に確かめます。小売や卸売を合わせて行う計画なら、その部分の扱いも別に確かめます。
Q2. 中小企業でもBOIを使える?
使えます。最低投資金額は土地代と運転資金を除いて100万バーツで、大企業に限った制度ではありません。ただし、業種ごとに高い最低額が定められていることがあり、免除額に投資金額の上限が付くグループでは、投資が小さいと恩典も小さくなります。申請と管理の手間も会社の規模に関係なくかかります。投資額と利益の見通しから恩典の金額を試算して、手間に見合うかどうかを確かめてから進めます。
Q3. 会社を設立したあとでもBOIを申請できる?
既存の会社が新しい事業や拡大のプロジェクトで申請することはできますが、すでに実行した投資に恩典をさかのぼって受けることは基本的にできません。機械を先に輸入してしまうと、その分の関税の恩典は使えなくなります。BOIを少しでも検討しているなら、設立や機械の発注の前に確かめます。すでにタイで事業をしている企業は、拡大の計画が固まった段階で、新しいプロジェクトとして申請できるかを確かめます。
Q4. BOIと東部経済回廊の恩典はどう違う?
東部経済回廊はチャチューンサオ、チョンブリー、ラヨーンの3県を指定した地区で、次世代自動車やロボット、デジタルなど12の産業が対象です。指定の産業では法人税が最大15年免除され、経営者や専門家の個人所得税が17%に減免されるなどの恩典があります。製造拠点がこの地域に当たるなら、BOIの一般の枠と比べて検討します。対象の産業と立地の両方を満たす必要があるので、工業団地を決める前に確かめます。
8. タイのBOIの検討をDigima〜出島〜に相談する
BOIは業種の判定と事業計画の作り方で結果が変わり、会社の設立や工場の立地とも一緒に決めることになります。自社で進める場合と相談する場合には、それぞれ次のような違いがあります。
| 項目 | 自社で進める | Digima〜出島〜に相談する |
|---|---|---|
| メリット | 社内に制度の知識が残る | 業種の判定から専門家と進められる |
| 向いている企業 | タイに拠点と担当者がいる | 初めてタイに投資する |
| かかる手間 | 業種表と布告を英語で確かめる | 状況を伝えて候補の企業を比べる |
| 費用 | 調査の人件費がかかる | 相談と紹介は無料 |
Digima〜出島〜に相談するメリット
「自社の事業はBOIの対象なのか」「BOIを使うべきなのか」といった、申請を決める前の段階から相談できます。タイに詳しい支援企業を紹介するので、探す手間を減らせます。BOIの申請だけでなく、会社の設立、工業団地の選定、税務もまとめて相談できるので、窓口を分けずに済みます。機械を発注する前や会社を設立する前に話を聞いておくと、恩典を受け損なうやり直しも防げます。
▶︎タイのBOIを使うかどうかの判断をDigima〜出島〜に相談する
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