【特集】海外で売れるための「海外ビジネスマーケティング講座」
『海外で売れるための「海外ビジネスマーケティング講座」』と銘打って、海外事業を検討している日本人ビジネスパーソンがグローバル市場で成功するために必要なマーケティング知識を解説します。
グローバル市場での成功は、良質な製品やサービスを提供するだけでは充分ではなく、海外ビジネスならではの戦略的なマーケティング知識が欠かせません。この講座では、海外市場でのビジネスマーケティングに不可欠な知識と方法について、わかりやすく解説します。
▼【特集】海外で売れるための「海外ビジネスマーケティング講座」
- 1. 海外マーケティングにおける「市場調査・分析方法」
- 2. 海外マーケティングにおける「セグメンテーションとターゲティング」
- 3. 海外マーケティングにおける「ブランドポジショニング戦略」
- 4. 海外マーケティングにおける「マーケティングミックス」
- 5. 海外マーケティングにおける「KPI設定と評価」
▼アナタの海外ビジネスを成功させるために
1. 海外マーケティングにおける「市場調査・分析方法」
海外ビジネスで成功を収めるためには、なによりも自社商品・サービスを展開する国・地域の市場を深く理解することが不可欠です。
まずは海外ビジネスマーケティングの基本の〝き〟とも言える、海外市場を調査・分析するにあたっての基本的な知識と方法について解説します。
最初に調査すべきは海外進出国の「市場規模」
海外進出を検討している国・地域の市場の規模を知ることは、その市場に進出する価値を判断する基礎となります。市場規模は、特定の製品やサービスに対する全体的な需要を示しているため、ビジネスの潜在的な収益を予測するのに役立ちます。
市場規模を評価するには、公開されている業界レポート、政府の統計データ、市場調査会社などが提供している情報を収集します。これらのデータを分析することで、市場の現状と将来の成長見込みを把握しましょう。
海外進出国の「成長性」を把握することも重要
市場規模と同様に、その国・地域に「成長性」を把握することも重要です。
海外進出国・地域の市場の成長性を調査・分析することは、ビジネスの将来的性を予測するためにも必要です。GDP成長率を始め、自社商品・サービスが該当する産業の概況および各種の業種・業態の現状などを把握しましょう。
また成長性の高い市場は、新規事業にとって魅力的な機会を提供しますが、同時に競争が激しくなる可能性もあります。したがって、市場の成長性を分析する際には、成長の原動力となる要因を理解し、それが持続可能であるかを判断する必要もあります。
海外進出国の「競合」を把握し差別化ポイントを見つける
国内同様に海外市場においても自社の競合を把握することは必要不可欠です。
進出国・地域の市場における競合を調査・分析することで、市場における自社の立ち位置を把握し、競合他社との差別化ポイントを見つけることができます。
競合分析方法としては「SWOT分析(強み、弱み、機会、脅威の分析)」(※)などを用いることが一般的です。いずれの調査においても、競合の製品やサービス、価格設定、マーケティング戦略、市場シェアなどを調査することで、自社製品・サービスのポジショニングや市場へのアプローチ方法を検討することができます。
※SWOT分析
企業の強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)を分析し、内部および外部環境を評価する手法
海外進出国の「ターゲット顧客(消費者)」を理解する
自社のターゲット顧客である消費者の嗜好やニーズを理解することは極めて重要です。
消費者調査、フォーカスグループインタビュー(※)、ソーシャルメディアでのトレンド分析などを通じて、消費者の行動パターンや購買決定要因を把握しましょう。文化的要因や地域特有の消費習慣を考慮することで、より効果的なマーケティング戦略を立案することが可能になります。
※フォーカスグループインタビュー
マーケティングや市場調査において、一定のテーマや製品に関する消費者の意見や洞察を収集するための手法です。通常、少数の参加者(約6〜10人程度)がモデレーターの指導の下、討論やフィードバックを行います
2. 海外マーケティングにおける「セグメンテーションとターゲティング」
「市場調査・分析方法」に続いては、「セグメンテーションとターゲティング」について解説します。
海外ビジネスマーケティングにおいてセグメンテーションとターゲティングは不可欠です。
セグメンテーションとは、市場を理解し分類するために必要であり、ターゲティングはその中から最もビジネスチャンスがあると判断されるセグメントを選び出し、具体的なマーケティング戦略を展開するプロセスです。
正しいセグメントとターゲティングによって、海外進出企業は自社の限られたリソースを効率的に活用することができ、その結果、進出国の顧客のニーズに合わせた製品やサービスを提供することが可能になるのです。
まずこの項では、セグメンテーションとターゲティングについて簡潔に解説します。
セグメンテーションとは
セグメンテーション(市場セグメンテーション)とは、市場を類似のニーズ、特性、行動を持つ消費者グループに分けるプロセスです。この分割は、消費者の年齢、性別、収入、地理的位置、生活スタイル、購買行動など、さまざまな基準に基づいて行われます。
セグメンテーションの目的は、市場の異なるセグメントを特定し、それぞれのニーズに合わせた製品やサービス、マーケティング戦略を開発することにあります。
ターゲティングとは
ターゲティング(ターゲットマーケティング)は、セグメンテーションの次のステップで、企業が特定の市場セグメント(ターゲット市場)に焦点を当て、製品やサービスを提供するプロセスです。
企業は、そのセグメントの潜在的な利益、アクセスのしやすさ、競争の程度などを考慮して、最も魅力的なセグメントを選択します。選択されたターゲット市場に合わせて、製品開発、価格設定、プロモーション、流通戦略を調整することが求められます。
セグメンテーションの実践方法
続いては、実際にセグメンテーションをする際の実践方法を解説します。
具体的には市場を異なるセグメントに分割する方法になります。これにより、特定の顧客層に焦点を当て、効果的なマーケティング戦略を展開できます。
海外ビジネスにおけるセグメンテーションはおもに以下の3つの方法が挙げられます。
① 地理的セグメンテーション
市場を地理的にセグメントする方法です。例えば東南アジア諸国やインド、アフリカといった発展途上国市場、中国やアメリカといった大国市場、ヨーロッパ諸国など、地域ごとに市場を分析します。地域ごとの文化、ニーズ、競合状況を考慮し、適切な戦略を選択する際に実施するセグメンテーションになります。
② デモグラフィックセグメンテーション
海外進出を検討している国・地域の市場における、年齢、性別、収入、教育などのデモグラフィック情報に基づいて分析します。若年層向けの製品とシニア層向けの製品では異なる戦略が必要なため、このセグメンテーション方法が重要になります。
③ 行動的セグメンテーション
進出国の市場における消費者の購買行動、好み、ニーズに基づいて市場を分割します。特定の商品やサービスに関心を持つ消費者を特定し、ターゲットとして選定するために必要なセグメンテーションとなります。
ターゲティングの実践方法
セグメンテーションによって識別された消費者グループの中から、自社のビジネス戦略に最適な市場を選び出すことがターゲティングです。
ターゲティングの実施においては、海外進出企業が進出国の市場に提供する製品やサービスの成功に直結するため、慎重に行う必要があります。
以下で解説する4つのターゲティングにおける選定項目を総合的に考慮し、最も魅力的であり、自社の製品やサービスが成功する可能性が最も高い進出国・地域の市場を選定しましょう。
① 成長ポテンシャルでターゲティングする
市場の将来性でターゲティングします。高い成長率を持つ市場や、まだ十分に開拓されていない市場が高いポテンシャルを持つとされます。発展途上国市場は、一般に高い成長率を示すことが多く、長期的な収益源となる可能性があります。
② 競合状況でターゲティングする
競合他社の数や市場でのポジション、価格競争の激しさなどでターゲティングします。競争が少ない市場や、自社が競争優位を持てる市場は魅力的です。しかし、競争が激しい市場でも、自社が差別化できるポイントがあれば、魅力的なターゲット市場となり得ます。
③ 市場への適合度でターゲティングする
自社製品・サービスが市場の文化、価値観、規制といった要素に適合するかでターゲティングします。例えば、特定の地域に特有の消費者行動や好みがある場合、製品はそれに合わせてカスタマイズする必要があるからです。
④ 市場へのアクセス度でターゲティングする
物理的な流通ネットワークや、進出国の規制や法律を考慮してターゲティングします。市場への物理的なアクセスが容易である場所は、製品やサービスの効率的な供給を可能にします。進出国での事業活動に関する規制やライセンスの取得、税制度の理解は必要不可欠です。
これらの要因を総合的に考慮し、最も魅力的であり、自社の製品やサービスが成功する可能性が最も高い進出国・地域での市場をターゲティングしましょう。
3. 海外マーケティングにおける「ブランドポジショニング戦略」
競争が激化しているグローバル市場で成功するためには、国内市場以上に独自のブランドポジショニング戦略が不可欠です。競合他社との差別化を図り、消費者の心に強烈なブランドイメージを植え付けることが、成功の鍵となります。
この項では、海外ビジネスマーケティングにおいて重要なブランドポジショニング戦略について詳しく解説します。
ブランドポジショニングの重要性
ブランドポジショニングは、海外市場における競合他社との差別化を図り、現地の消費者との信頼関係を築くために極めて重要です。ブランドポジショニング戦略を実施することで、以下の2つのメリットがあります。
① 差別化と競争力が向上する
ブランドポジショニングを専門的に行うことで、自社製品やサービスが他社とは異なる価値を提供していることを示し、競争力を高めます。専門的な差別化は市場での成功に不可欠です。
② 信頼性と顧客忠誠度が向上する
専門的に構築されたブランドイメージは、顧客の信頼を獲得し、忠誠度を高めます。専門的なポジショニングは、ブランドに対する顧客の信頼を強化します。
ブランドポジショニング戦略の策定方法
ブランドポジショニング戦略を専門的に策定するには、以下のステップが必要です。これらのステップを詳しく解説します。
① 独自の価値の明確化
ブランドポジショニングの最初のステップは、自社製品やサービスの独自性を徹底的に理解し、他社との差別化要因を特定することです。これには以下の手順が含まれます。
・製品やサービスの特長や利点を洗い出し、他社との比較を行う
・独自のバリュープロポジション(顧客へ提供する独自の価値)を定義する
・顧客がどのような問題やニーズを抱えているかを理解し、その問題を解決する方法を特定する
② ターゲット顧客の特定
ポジショニング戦略は、専門的にターゲット市場に合わせて調整される必要があります。以下のステップでターゲット顧客を特定しましょう。
・ターゲット市場を詳細に調査し市場セグメンテーションを行い、どの顧客グループが最も重要であるかを特定する
・ターゲット顧客のニーズ、嗜好、行動パターンを明確に把握する
・ターゲット顧客のデモグラフィック情報や購買力、地理的な要因などを考慮して、理想的な顧客プロファイルを作成する
③ ブランドメッセージの開発
ブランドメッセージはターゲット顧客に響く要素が含まれる必要があります。以下のステップで効果的なメッセージを構築します。
・独自のバリュープロポジションを基に、ブランドメッセージを明確に定義する
・ターゲット顧客の言語やコミュニケーション嗜好に合わせて、メッセージをカスタマイズする
・専門的なコンテンツや広告を使用して、ブランドの特徴を専門的に伝え、顧客の感情に訴えかける
これらのステップを経て、ブランドポジショニング戦略を成功させるためには、継続的な評価と調整が必要です。市場環境の変化に敏感に対応し、競合他社との差別化を維持することが重要です。
4. 海外マーケティングにおける「マーケティングミックス」
「ブランドポジショニング戦略」に続いては「マーケティングミックス」について解説します。
国内同様、海外ビジネスにおいてもマーケティングミックスは非常に重要です。
マーケティングミックスとは企業が行う戦略的な計画の組み合わせ
マーケティングミックスとは、製品やサービスの市場での成功を最大化するために企業が行う戦略的な計画の組み合わせです。Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)の4つの要素の頭文字をとって4Pと呼ばれています。
これらの「4P」は相互に関連しており、一つの変更が他の要素に影響を与える可能性があります。
たとえば、高級製品の価格を下げるとその製品の品質認識が低下する可能性があります。また、新しいプロモーション戦略が製品に対する需要を高めることができ、結果として流通戦略を調整する必要が生じるかもしれません。成功するマーケティング戦略は、これらの要素を適切に組み合わせて、明確な市場のニーズに対応し、企業の目標を達成するよう設計されています。
海外進出におけるマーケティングミックスは進出国の状況によってカスタマイズする
海外進出におけるマーケティングミックスは、国際的な市場での企業の製品やサービスの成功を最大化するために適応させた戦略の組み合わせとなります。
基本的な4Pの枠組みは同じですが、それぞれの要素は新しい市場の文化的、経済的、法的、技術的環境に合わせてカスタマイズされる必要があります。
以下に、Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)の4つのカスタマイズについて解説します。
① Product (製品)
国際市場では、製品の設計や機能を現地の消費者の好みや需要に合わせて調整することがしばしば必要です。また、安全規格や規制に準拠するための製品の変更、ラベルや説明書の言語の翻訳、地域に特有のデザイン要素の採用など、地域ごとの適合性を確保する必要があります。
② Price (価格)
現地市場の購買力、通貨の価値、インフレ率、競合他社の価格設定、関税や税金など、国際市場特有の要因を考慮して価格戦略を設定する必要があります。また、価格戦略は、地域ごとの消費者の価値認識や文化的な価値観にも影響を受けます。
③ Place (流通)
国際市場においては、製品を効果的に配布するためのロジスティクスと流通チャネルの確立が重要です。これには、現地の流通業者とのパートナーシップ、オンラインとオフラインの販売戦略の組み合わせ、現地の市場へのアクセス方法などが含まれます。
④ Promotion (プロモーション)
現地の文化、言語、メディア環境を理解し、それらに合わせたプロモーション活動を行うことが不可欠です。現地の祝祭日や文化的イベントを利用したプロモーション、現地の言語による広告、地域のインフルエンサーやパートナーとの連携などが考慮されます。
海外ビジネスならではの追加的な「P」とは?
これらの要素に加えて、海外ビジネスならではの追加的な「P」が考慮されることがあります。
▼ People (人々)
現地の従業員の採用、訓練、管理が成功に不可欠であり、顧客サービスやブランドイメージに直接影響を与えます。
▼ Process (プロセス)
サービスの提供や顧客体験の質を向上させるためのプロセスの標準化や最適化が該当します。
▼ Physical Evidence (物理的証拠)
物理的な店舗やオフィス、製品のパッケージングなど、ブランドの質と信頼性を消費者に証明するための要素になります。
海外市場での成功は、これらの要素を現地の文脈に合わせて適切に調整し、統合的なアプローチで実施することに依存しています。
5. 海外マーケティングにおける「KPI設定と評価」
海外市場への進出において、成功を確立するためには、成果を適切に測定し、ビジネス戦略を評価する必要があります。これを実現するのが「KPI(=Key Performance Indicators / 重要業績評価指標)」です。
具体的な数値とデータを通じて、戦略の効果を把握し、戦略の最適化を行うために「KPI設定と評価」は非常に重要です。KPIの設定と評価を確実に行いましょう。
KPIの設定方法
ビジネスでの成功を達成するために、まずは何を成功とみなすかを明確に定義します。売上の増加、市場シェアの拡大、顧客獲得数の向上など、ビジネス目標に合わせてKPIを設定します。
さらに各KPIに対して具体的な数値目標を設定します。これらの目標は、ビジネスの期待される成果に合わせて、リーチが可能でありながら挑戦的な数値にするのがおすすめです。
KPIの種類はおもに2種類
続いてはKPIの種類についてです。
KPIは量的KPIと質的KPIに分類できます。両方のKPIを組み合わせてビジネスの全体像を把握しましょう。
▼ 量的KPI
数値で表現されるKPIで、売上成長率、利益率、市場シェアなどが含まれます。これらはビジネスの数値的側面を評価します。
▼ 質的KPI
定性的な要因を評価するKPIで、顧客満足度、ブランド認知度、評判などが含まれます。これらは顧客の感情や知覚に焦点を当てます。
KPIの測定方法
KPIを測定するためには、正確なデータが不可欠です。市場調査、顧客フィードバック、競合分析などの情報源を活用して必要なデータを収集しましょう。データの品質と正確性が評価の鍵となります。
またKPIを定期的にモニタリングし、進捗状況をリアルタイムで把握することも重要です。これにより、戦略の進行状況を把握し、必要に応じて調整できます。
KPIの評価と戦略の改善
KPIを定期的に評価し、ビジネスの進捗状況を把握しましょう。KPIの結果を分析し、戦略や戦術を調整して戦略の最適化を図ります。
設定したKPIに基づいてビジネスの成果を評価し、目標達成度を確認します。達成度の分析は、戦略の成功や課題を特定するのに役立ちます。
さらにKPIの結果を分析し、戦略や戦術を調整・最適化します。成功体験と失敗から学び、戦略の改善を図ります。
「KPI設定と評価」は、海外ビジネスマーケティング戦略の実行と評価において、グローバル市場での成功を追求する上で欠かせない要素です。具体的な数値とデータを通じて、戦略の効果を把握し、戦略の最適化を行うために重要なツールです。成功を達成するために、KPIの設定と活用を確実に行いましょう。
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