フィリピン人材の能力を引き出す効果的なマネジメント方法とは?

フィリピンは、優秀な人材と高い英語力を武器に、IT開発やBPO産業の拠点として注目される国です。一方で、フィリピン特有の文化や価値観、労働環境は日本とは大きく異なるため、従来の日本式マネジメントでは現地の人材の能力を十分に引き出せないことがあります。
フィリピン人材の能力を最大限に発揮させるためには、文化的背景や働き方を理解し、それに合わせた柔軟なマネジメント手法を採用することが不可欠です。本記事では、フィリピン人材の特性を活かし、効果的にチームのパフォーマンスを向上させる具体的なマネジメント方法を解説します。
▼ フィリピン人材の能力を引き出す効果的なマネジメント方法とは?
1. フィリピン現地にローカライズした人材マネジメントを心がける
フィリピンでのオフショア拠点運営や事業拡大において、現地の文化や労働環境に適応したマネジメントスタイルを採用することは非常に重要です。特に、日本企業特有の堅苦しいマネジメントスタイルが現地の労働者にネガティブな印象を与えることが多い中で、フィリピン人材が持つ特性や価値観を理解し、それに合った運営を行うことが重要です。
この章では、現場でのマネジメントをローカライズする具体的な方法について解説します。
現場のマネジメントはフィリピン人マネージャーに一任する
日本式ではなくローカライズしたマネジメントスタイルが求められます。フィリピンでは、"日本企業=マネジメントスタイルが堅苦しい"というイメージを持たれていることも多く、そのネガティブイメージを適切に崩すマネジメントスタイルを確立させることが成功要因の1つとなります。特に、現地従業員の働きやすさやモチベーションを高めるためには、柔軟性と信頼に基づいた運営が重要です。
そのためにも、現場のマネジメントは極力フィリピン人マネージャーに一任し、彼らが自主的に運営できる環境を整えることが必要です。また、月次の1on1でエンジニアから出た細かなリクエストや課題を見逃さず、迅速な意思決定と対応を行うことで、現場の効率性と従業員の信頼感を高めることができます。
このようなアプローチは、単に効率的な運営を可能にするだけでなく、フィリピン人材との長期的な信頼関係を築く基盤にもなります。
2. フィリピン特有の労働文化や価値観およびコミュニケーションスタイルを理解する
フィリピンで事業を成功させるには、現地の労働文化や価値観を理解し、それに合わせた対応が求められます。この章では、フィリピン特有の働き方やコミュニケーションスタイルを解説します。
仕事より家族を優先する「労働文化」を理解する
フィリピンの労働文化と日本の労働文化の違いとして挙げられることは、まずフィリピンは仕事より家族を優先する点があります。これは仕事を疎かにするという意味ではなく、人生において家族を犠牲にするという考え方が文化として無く、どの国でもこの基本姿勢は変わらないと言えます。
一方で自分の責任の範囲の仕事はしっかりこなす姿勢も強く、個々の責任と役割の範疇を明確にしておくことが重要な点となります。
エンジニアの開発プロセスにおいては、プロジェクトの開始時のキックオフミーティングで各自の役割と責任(Role&Responsibility)を詳細に取り決める事でミスコミュニケーションを防ぎ、フィリピン人エンジニアが各自の*R&Rをベースに責任を持った働き方が意識しやすくなります。
プロセスよりも結果を重視する「価値観」を活用する
フィリピンでは、プロセスより結果を重視する傾向があります。そのため、日本のようにプロセスを重視し、慎重に物事を進めるために多くの社内プロセスに時間を要するやり方は、現地では理解されにくい場合があります。特に、迅速な成果を求めるプロジェクトでは、過度に細かい手順や報告を求めるとストレスを感じることがあるため注意が必要です。
一方で、結果を重視する文化をうまく活用すれば、プロジェクトの効率化やチームの成果向上につなげることが可能です。例えば、明確な目標設定と達成基準を提示し、成果を評価する仕組みを導入することで、フィリピン人材のモチベーションを高めることができます。このように、柔軟かつ結果志向のマネジメントを意識することが重要です。
5W1Hのフレームワークを意識したコミュニケーションを心がける
フィリピンは日本と同じアジア圏とは言え、欧米文化の影響を強く受けている市場でもある為、業務上のコミュニケーションは明確かつローコンテクストなコミュニケーションを心がける必要があります。
オフショア開発における日本企業の典型的な失敗例として、日本の商習慣をそのまま海外に持ち込んでハイコンテクストかつ不明確なコミュニケーションをしてしまう事が非常に多く、これが原因でミスコミュニケーションが発生します。
例として、日本人同士の会話の場合には、“あたりまえ”や“言わずもがな”といった前提条件の上で間接的なコミュニケーションを取っています。特にオフショア開発のように日本と海外を跨いだプロジェクトを進める上でこのコミュニケーション方法は絶対に避けるべきです。
その際に5W1H等のフレームワークを意識したコミュニケーションを心がけるとミスコミュニケーションは起こりにくくなるでしょう。
- When(いつ?)
- Where(どこで?)
- Who(誰が?)
- What(何を?)
- Why(なぜ?)
- How(どのように?)
3. フィリピン人材の効果的なマネジメント3つのポイント
フィリピン人材を効果的にマネジメントするためには、現地の文化や価値観を踏まえたアプローチが欠かせません。適切なマネジメントは、チームの信頼関係を築くだけでなく、プロジェクトの成功率や生産性を大きく向上させます。具体的には、対面コミュニケーションを活用したチームビルディング、ポジティブかつ詳細なフィードバックの提供、そして労働法を遵守した労務管理の仕組み作りが重要です。
この章では、それぞれのポイントについて具体的な方法を解説します。
① 対面コミュニケーションを導入したチームビルディング
有効なチームビルディングの施策として、両国のプロジェクトメンバーの対面でのコミュニケーションが非常に効果的な施策となります。
効果が高かった事例としては、規模の大きなプロジェクトではフィリピン側のアサインメンバーを日本に招待し、クライアントの現場に訪問したり、日本メンバーと対面でコミュニケーションを取る機会を作る事が相互理解の促進とプロジェクトの成功確率を高める有効な取り組みとなります。
また、プロジェクト単位でプロダクトのリリース後には、プロジェクトメンバーに対し、会社からランチや差し入れ等の気遣いをする事もモチベーション向上に非常に重要な取り組みです。これは欧米企業では日常的な取り組みとなりますが、フィリピンにおいても会社が取り組むべき施策となります。
② 詳細かつポジティブなフィードバック
個々の人材へのフィードバックは月次の1on1でマネージャーが行う他に、プロジェクト単位やスプリント単位で必ず詳細な振り返りを行う事が求められます。
ここは絶対に疎かにせず、成功したプロジェクトでの必ず細かな改善点がある為、チームリーダーやマネージャーが率先して振り返りをリードしていく事でチームの生産性向上や成功プロセスの再現性が生まれます。
また、上手くいかなかったプロジェクトの場合は、マネージャーがネガティブフィードバックを行うのではなく、次の改善の為に繋がるポジティブなフィードバックをすることを意識しましょう。
これによって、各プロセスの可視化と振り返りによる問題箇所の特定と改善方法が明確になり、次回以降もしくは他チームでのプロジェクトで同様のケースが見受けられた際の早期解決の仕組み作りに繋がります。
③ 労働法に基づいた残業や休日出勤の仕組み作り
日本企業がしてしまいがちな過ちとして、現地の労働基準法を無視して日本のサービス残業を課してしまう事があります。これはフィリピンだけでなく、一般的に海外ではサービス残業や土日出勤は基本的には避けなければならない事であると認識する必要があります。
しかしながら、海外事業において業務の遅延等が起こる事はよくある事と言えます。
その際の対策として、残業は必ず事前申請制にすることで、後から残業が発覚する事を防ぐことができ、さらに労務問題のリスクヘッジにもなります。
残業や土日出勤が必要な場合は、必ず本人とマネジメント側の双方合意の下で、労働基準法に基づいた残業代や休日出勤代を支給する仕組みを作りましょう。
4. フィリピン人材マネジメントに成功した日本企業のサポート事例
最後に、私たち「Social Zero」が支援した、日本企業のフィリピン人材マネジメントのサポート事例をご紹介します。
フィリピンでのオフショア開発拠点設立をしたA社は、フィリピン特有の文化や労働環境に対する理解が不十分で、現地チームの定着と生産性の向上に課題を感じていました。
サポート事例:日本のIT企業A社
■課題
労働文化への適応不足:
フィリピンの労働者が家族を重視する文化や残業が当たり前の日本の働き方は海外では一般的ではない等の文化を理解できず、働き方の柔軟性を欠いていた。
コミュニケーションの不一致:
日本人特有のハイコンテクストなコミュニケーションや役割と責任の範疇が不明確なままプロジェクトを進める事が原因で、フィリピン人材との間にミスコミュニケーションが発生していた。
モチベーション管理の困難:
結果志向の価値観に基づく評価体系が未整備で、従業員の意欲を引き出せなかった。
■提供したサポート
文化適応プログラムの導入:
フィリピンの労働文化を尊重したマネジメントスタイルをクライアントの経営層に提案。柔軟な勤務時間と家族を重視した福利厚生を導入しました。
コミュニケーションフレームワークの整備:
5W1Hを活用したコミュニケーション研修の実施および各プロジェクトメンバーの役割と責任の明確化をマニュアル作成を実施し、日本とフィリピン間の意思疎通を改善しました。
評価制度の見直し:
結果を重視し、達成した成果に基づいて評価する新たな社内制度を構築。社員のモチベーション向上に寄与しました。
■成果
この企業はフィリピン拠点の離職率を同業界水準35%から12.5%まで減少させ、プロジェクトの生産性や品質の大幅な向上ができ、現地チームのモチベーションも改善しました。特に、生産性をもう慮しつつも柔軟な労働環境と成果志向の評価制度が好意的に受け入れられ、従業員の満足度が大幅に向上しました。
また、ミスコミュニケーションが減少し、プロジェクトの進行がスムーズになりました。これにより、同社は事業拡大の基盤となる体制構築ができさらなる多国展開を予定しています。
5. フィリピン進出なら「Social Zero」にお任せ下さい
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今回は「フィリピン人材の能力を引き出す効果的なマネジメント方法」について解説しました。
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複数の現地法人でCEOを務め、多国籍チームの組織づくりや、現地スタッフの採用・マネジメントにおいて豊富な実績を有しております。
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*欧米&アジアエリアへの海外進出を伴走サポート*
私たちは日本企業の欧米・東南アジア・東アジアへのグローバル展開をサポートします。
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『Mission - 私たちが海外に進出する企業に果たすべき使命 -』
新しいマーケットでビジネスを創める・広げる・深める・個人を伴走型でデキル化支援
『Vision – 私たちが理想とする世界 -』
もっと自由に(法人・個人)新しいマーケットに挑戦できる世界
『Value – 私たちの強み -』
①伴走者かつ提案者であること
ジブンシゴト(頼まれ・やらされ仕事はしない)をモットーに、事業主人公ではない第三者の私たちだからこそできる提案力
②プロジェクト設計力と管理力
デキル化(ミエル化して終わりではなく)をモットーに、『ゴールは何か』の会話から始めるプロジェクト設計力とその後実現するための管理力
③対応力(幅広いエリアと多様な業種実績700社以上)
設計力・管理力を活かし、現地特派員や協力会社と連携による現地力モットーに、ニッチからポップまで多様な業種の海外進出に対応。
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01:伴走グローバル事業部
海外ビジネス課題を共に考え、目標達成のために共に動くチーム
『Point』
✔︎貴社海外事業部の担当者として伴走
✔︎BtoB・BtoC・飲食店開業など幅広くサポート可能
✔︎各国現地駐在スタッフやパートナー企業と連携が可能
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02:伴走マーケティング事業部
デジタルマーケティング課題を共に考え、目標達成のために共に動くチーム
『Point』
✔︎貴社デジマ事業部の担当者として伴走
✔︎デジマ業務をゼロから運用まで幅広くサポート
✔︎各分野に対応するスタッフやパートナー企業と連携
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03:稟議書作成サポート
海外ビジネスのはじめの一歩を作る、稟議書策定サポート
『Point』
✔︎あらゆる角度から、フィジビリティ・スタディ(実現可能性)を調査・設計
↳過去類似事例(失敗・成功どちらも)から判断材料を調査
↳当社現地スタッフやパートナー企業による調査
↳現地特定の有識者を探索し、インタビュー調査
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04:スポットサポート
海外ビジネス・デジタルマーケティング課題を部分的に解決
『施策と料金イメージ(事例で多い価格帯となります)』
✔︎市場調査:50万円〜80万円〜120万円
✔︎現地視察:国・期間・内容により大きく変動
✔︎会社設立:国・形態・内容により大きく変動
✔︎現地企業マッチング:30万円〜50万円〜80万円〜120万円
✔︎プロモーションサポート:国・形態・内容により大きく変動
✔︎ECサイト制作:80万円〜150万円
✔︎ECサイト運用:20万円〜40万円(月額)
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サイエスト株式会社
海外ビジネスプロシェッショナルが長年培った人脈・ノウハウをフル活用し、貴社のもう一人の海外事業部長として海外事業を推進します。
全ての企業と個人のグローバル化を支援するのが、サイエストの使命です。
サイエストは、日本の優れた人材、企業、サービス、文化を世界に幅広く紹介し、より志が開かれた社会を世界中に作り出していくための企業として、2013年5月に設立されました。
近年、日本企業の国内事業環境が厳しい局面を迎える中、アジアを筆頭にした新興国が世界経済で存在感を増しています。
それに伴い、世界中の企業がアジアなどの新興マーケットの開拓を重要な経営戦略のひとつと位置付け、一層注力の度合いを高めています。
サイエストは、創業メンバーが様々な海外展開事業に携わる中で、特に日本企業の製品、サービス、コンテンツには非常に多くの可能性を秘めていると、確信するに至りました。
ただ、海外市場開拓の可能性はあるものの、その実現に苦労している企業も少なくありません。
我々はその課題を
(1)海外事業の担当人材の不足
(2)海外事業の運営ノウハウの不足
(3)海外企業とのネットワーク不足
と捉え、それぞれに本質的なソリューションを提供してまいります。
また、組織を構成する個人のグローバル化も支援し、より優れた人材、企業、そしてサービスや文化を世界中に発信してまいります。
そうして、活発で明るい社会づくりに貢献することで、日本はもちろん、世界から広く必要とされる企業を目指します。
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