シンガポール物流の基礎知識 | コンテナ取扱量は過去最大を記録!シンガポール港がグローバルなロジスティクスとサプライチェーンを支える
「シンガポール物流の基礎知識」として、シンガポール物流の最新事情、アジアのグローバルロジスティクスハブとしての優位性、陸海空の物流インフラから考察するシンガポールの物流事情について解説します。
世界銀行によるLPI(物流パフォーマンス指標)ランキングでは常にトップクラスのシンガポール(2007年と2012年のLPIランキングで世界1位)。
2030年の第5ターミナルオープンで世界最大級の国際空港となる「チャンギ国際空港」、2040年の移転で最新の先端技術を導入した最大の次世代港となる「シンガポール港」を擁し、2031年に開通予定のシンガポールとマレーシアのクアラルンプール間の350キロを最短90分で結ぶ高速鉄道計画(HSR=High Speed Rail)も控えています。
そんなさらなる発展を遂げるシンガポール物流の最新事情についても併せて解説していきます。
▼シンガポール物流の基礎知識 | グローバルロジスティクスハブとしての最新物流事情
▼シンガポールでの海外ビジネスを成功させるために
1. シンガポール物流の基礎知識 / グローバルロジスティクスハブの優位性
アジアのグローバルロジスティクスハブ「シンガポール」の優位性
シンガポールは、金融・交通・情報・教育といった多岐にわたる分野のアジアのハブとして知られていますが、こと貿易および物流においては「アジアのグローバルロジスティクスハブ ※」としての地位を確立しつつあります。
シンガポールがそのような物流全般におけるグローバルハブとして位置づけられる理由としては、その地理的優位性およびハードインフラの整備に加えて、円滑かつ効率的な物流を実現させるために必要な制度が整っているということが挙げられます。
※ロジスティクス:
原材料の調達・生産・保管・梱包といったサービス業務・販売などの、モノを作って消費者に届けるまでの、モノの流れを一元管理すること
世界銀行によるLPI(物流パフォーマンス指標)ランキングでは常にトップクラスのシンガポール
事実、世界銀行が発表している、世界の物流サービスの品質やインフラの整備状況などを評価・順位付けした報告書(物流パフォーマンス指標/ The Logistics Performance Index=LPI)において、シンガポールは常に上位にランクインしています(2007年と2012年のLPIランキングでシンガポールは世界1位)。
また、国として貿易に関わる制約も寛容で、輸出入の手続きも迅速に行えることが利点とされており、通関手続きの効率化も徹底されており、税関は10分以内に電子許可申請の90%を処理し、物理的な貨物の90%を8分以内に処理できるポテンシャルがあるとシンガポール政府が述べているほどです。
さらにグローバルな物流輸送チャネルのインフラにおいても、港湾インフラでは、123ヵ国の600港および200社の海運会社がシンガポールに接続されており、国際空港であるチャンギ空港は7つの貨物ターミナルからなる航空貨物センターを備えており、その貨物年間取扱量は300万トンという報告もあります。
2. 陸海空の物流インフラから考察するシンガポールの物流事情
アジアのグローバルロジスティクスハブとしてのシンガポールの優位性の解説に続いては、シンガポールの4つの輸送インフラ状況から、国内の物流事情を考察していきます。
以降より順番に、「海上輸送・港湾整備(海路)」「航空貨物輸送(空路)」「鉄道インフラ・貨物運送(陸路)」「陸上運送・道路整備(陸路)」の4つの観点から見ていきましょう
①「海上輸送・港湾整備(海路)」について
そもそもシンガポールは、多くの船舶会社がグローバルハブとして位置づけており、アジアを含めた世界中の航路設計やコンテナ船の運行管理を行っていることで知られています。
そのような背景から、シンガポール政府は、シンガポールを世界の物流ハブとしてのプレゼンスをさらに高めるべく、企業に対して税制面の優遇などをはじめとする様々な支援策を導入しており、海運業者に対しても、国内のオペレーションを拡充させるために、法人税軽減などの支援スキームを実施しています。
具体的には、シンガポール海事港湾局(MPA)は、「シンガポール港」の国際競争力を高めるため、規制緩和や手続きの効率化、コスト削減などを推進しています。また、貨物の需要増に対応し、コンテナターミナルの開発を随時進めており、コンテナ取扱能力は5,000 万 TEU (=Twenty foot Equivalent Units / 20フィートで換算したコンテナ個数を表す単位))にも増加すると予測されています。
またシンガポールの「海上輸送・港湾整備」の大きな特徴として、「積替え」の貨物量が非常に多いことが挙げられます。
積替えとは、収集運搬業者が積載物を運搬する過程において、一旦荷物を降ろして積み替えすることを指します。具体的には、降ろした積載物を別の車両に積み替えたり、ある一定量までの荷物を集積してから再度運搬したりすることで、効率の良い運搬が可能となるのです。
さらに、世界主要港の積替え貨物の取扱量も、シンガポール港が第 1 位で約 2,500 万 TEU(全取扱貨物量の84.3%)と推計されています。このことからも、シンガポールがASEAN域内の随一の積替え拠点として位置づけられていることがわかります。
②「航空貨物輸送(空路)」について
シンガポールは東京都とほぼ同じくらいの面積として知られていますが、その国土の小ささから、国内航空は存在しておらず、国際航空のみとなっています。
また、シンガポールにおける民用空港は「チャンギ国際空港」と「セレター空港」がありますが、後者のセレター空港は、マレーシアなどの近隣諸国への短時間フライトのみとなっており、実質的に国際空港は前者の「チャンギ国際空港」のみとなります。
先述した国土面積と同様に、国内市場も小さく、観光資源にも乏しいというハンディを持つシンガポールでしたが、港湾施設同様に、国際航空の自由化と国際ハブ化を基本とした政策を実施してきました。
具体的には、2010年に、国内航空産業のさらなる発展および国際的な競争力の確保を目的とした、1億シンガポールドルの航空開発基金(Air Development Fund)を創設。
2012年には、定期貨物便着陸料を20%減額。さらにチャンギ航空貨物センターでのテナントリース料も20%減額。加えて2013年1月~6月には、定期貨物便着陸料を50%減額するなど便宜を図ってきました。
加えて、航空自由化政策として、40ヵ国以上とのオープンスカイ協定も締結。アジアにおける金融・貿易の中心地としての経済政策と併せて積み重ねることで、ASEAN地域における航空ハブとしての地位を確立していきました。
現在も、チャンギ空港の機能・サービスの向上に加えて、新規に寄港する航空会社の誘致、新規路線の開設、航空関連企業および人材開発関連企業の誘致にも積極的に取り組むことで、自国の航空産業の持続的な成長を推進しています。
③「鉄道インフラ・貨物運送(陸路)」について
シンガポールの鉄道は、島内の主要路線であるMRT(Mass Rapid Transit)、MRTに連結する地域市街周回路線であるLRT(Light Rapid Transit)から成り立っています。
2030年までに、シンガポール政府は、現在の鉄道網の総延長178kmから、約2倍となる360km にする拡大計画を発表および実施しています。
この拡大計画によって、今後20年でMRT利用者の想定される需要を上回る供給が可能となり、計画通りに全ての鉄道網が完成すると、シンガポール国内の10世帯のうち8世帯が駅まで徒歩10分以内にアクセスできるとしています。
また、シンガポールとマレーシアのクアラルンプール間の350キロを最短90分で結ぶ高速鉄道計画(HSR=High Speed Rail)は、現在2020年5月31日までの建設計画の延期に両国政府が合意しています。HSRの開業予定は、当初計画の2026年までから2031年までに変更されていますが、このHSRが開通すれば、シンガポールの「鉄道インフラ・貨物運送」がさらに発展することは言うまでもありません。
④「陸上運送・道路整備(陸路)」について
先述したようにシンガポールの国土は狭く、東京23区とほぼ同じ面積です。陸上運送の面から見ると、島内にはりめぐらされた幹線道路が存在するので、島内のほとんどの地区へのアクセスは良好といえるでしょう。
また島の中心部および一部の幹線道路、さらに隣国マレーシアを結ぶ越境道は、時間帯により渋滞が発生します。
シンガポール政府は2013年1月より、国内で販売される全ての新車、輸入中古車を対象に、二酸化炭素を排出量を軽減した車両に補助金を支給したり、同じく二酸化炭素量が多いを車両には自動車税を追加で課税したりしていますが、そもそも国内での車両台数を政府が規制しているため、通勤時間帯を除けば大規模な渋滞は発生しないようになっています。
また物流の面から見ても、主要コンテナターミナルからの移動時間は、都市中心部から車で移動すると最短で15分程度、遠方であっても国内の車移動であれば約1時間程度での移動が可能とされています。
3. さらなる発展を遂げるシンガポール物流の最新事情
2030年の第5ターミナルオープンで世界最大級の国際空港となる「チャンギ国際空港」
2017年、チャンギ国際空港は、年間1,600万人の旅客収容能力を誇る第4ターミナルをオープン。積極的にゲートの自動化などを推進したこともあり、空港全体で8,200万人の処理能力を持つほどに成長しています。
さらに、先述の第4ターミナルで検証している自動化も含めた新システムをすべて機能させるべく、新たに203年に開業予定の第5ターミナルの建設も開始しています。
予定通り第5ターミナルが2030年頃に完成した際は、空港全体の処理能力が年間1億5,000万人となり、これは現在世界最大の空港とされているアメリカのアトランタ国際空港の旅客数(年間1億425万人)を超える、世界最大級かつもっとも自動化の進んだ国際空港が完成することになります。
2040年の移転で最新の先端技術を導入した最大の次世代港となる「シンガポール港」
2020年4月現在、シンガポール港は、シティとパシルパンジャンの2つのエリアに分かれていますが、将来的には島の南西部に建設中のトゥアス港に移転することが決まっています。
すでにシンガポール政府は、国内に5カ所あるコンテナターミナルを、最終的にトゥアス港に集約する計画を建てており、2021年には部分的に開業する予定としています。
トゥアス港は、多岐にわたる先端技術を導入した次世代港となる計画となっており、導入が予定される先端技術として、コンテナを移動させるヤードクレーンの自動化や、ドローンやデータ分析の活用、船舶交通管理システムなどが挙げられています。
2040年頃に移転が完了する際には、年間6,500万TEUという現状の約2倍以上(2018年通年のコンテナ取扱量は約3,660万TEU)のコンテナの取り扱いが可能となります。
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今回は「シンガポール物流の基礎知識」として、シンガポール物流の最新事情、アジアのグローバルロジスティクスハブとしての優位性、陸海空の物流インフラから考察するシンガポールの物流事情について解説しました。
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