ベトナムに会社を最短・最安で設立する方法|有限責任会社・株式会社の選択からERC・IRC取得まで全ステップ解説
ベトナムへの法人設立を検討する企業にとって、最大の悩みは「どのくらいのコストで・どのくらいの期間で完了するのか」という点ではないでしょうか。IRC(投資登録証明書)やERC(企業登録証明書)という聞き慣れない証明書の取得手順に不安を感じている方も多いはずです。
本記事では「コスト最小化とスピード優先」の視点でベトナム法人設立を解説します。法人形態の選択から各ステップの期間・費用の目安、業種別シミュレーション、経済特区の活用法、失敗パターンまで、実践ロードマップとしてお伝えします。他の東南アジア諸国との比較も交え、ベトナムが自社に合っているかを判断するための情報を網羅しました。
この記事でわかること
- ・ベトナムに会社を設立する際のコスト全体像と他国との比較
- ・有限責任会社・株式会社の選択基準とIRC・ERC取得の全6ステップ
- ・設立費用を抑えながら最短完了を目指す実践ポイントと失敗パターン
▼ 目次
1. ベトナム法人設立のコスト構造
設立費用・年間維持費の内訳
ベトナム法人設立の初期費用は、設立代行費用50〜150万円(法務・会計事務所への依頼)、書類翻訳・公証・認証費用10〜20万円(アポスティーユ取得など)、官庁手数料数万円(IRC・ERC申請)を合わせて合計100〜200万円程度が目安です。資本金は別途必要です。
年間維持費は会計・税務申告の外注費が中心で年間50〜150万円を見込んでください。ベトナムは法人税仮払申告や月次の源泉徴収申告など申告頻度が高く、現地会計事務所への継続的な外注コストがかかります。年間維持費を含めたトータルコストで計画を立ててください。
日本・他の東南アジアとのコスト比較表
| 国 | 設立期間目安 | 設立代行費用目安 | 年間維持費目安 | 手続き難易度 |
|---|---|---|---|---|
| ベトナム | 2〜3カ月 | 50〜150万円 | 50〜150万円 | 高 |
| シンガポール | 1〜2週間 | 10〜30万円 | 80〜150万円 | 低 |
| タイ | 1〜2カ月 | 30〜80万円 | 50〜100万円 | 中 |
| マレーシア | 2〜4週間 | 10〜30万円 | 30〜60万円 | 低〜中 |
| インドネシア | 2〜4カ月 | 50〜150万円 | 80〜200万円 | 高 |
(出典:JETRO「国別投資環境」・各国進出支援会計事務所公開資料を参考に作成)
ベトナムの設立コスト自体は中程度ですが、設立後の人件費・賃料の安さで運営コストを抑えられる点が最大の強みです。
2. ベトナムの法人形態と向き不向き
有限責任会社(LLC相当)と株式会社の違い
ベトナムで外資が選択できる主な法人形態は有限責任会社と株式会社の2つです。出資者が1社で将来の株式上場・譲渡を予定していない場合は有限責任会社が最適です。取締役会の設置が不要で管理負担が小さく、設立コストも抑えられます。日本企業の多くは1名出資者有限責任会社で親会社100%出資の形態を選択します。複数の投資家参加や将来の資金調達を見据える場合は最初から株式会社を選ぶことで後の組織変更コストを回避できます。
なお、ベトナム法では法定代表者のうち少なくとも1名がベトナムに居住していることが義務付けられています。現地に居住する代表者(駐在員または現地採用スタッフ)を立てる必要があり、この人件費は設立計画に組み込んでおく必要があります。
駐在員事務所・支店との比較
ベトナムでも駐在員事務所の設立が可能ですが、営利活動(販売・契約締結・収益計上)は一切禁止で、市場調査・情報収集のみに限られます。設立コストは代行費用10〜30万円程度と低いものの、事業収益を上げることが目的であれば現地法人が唯一の選択肢です。後から現地法人に切り替えると再度の設立手続きが必要になるため、最初から目的に合った形態を選ぶことが総コスト削減につながります。
業種・外資比率による規制確認
ベトナムは業種ごとに外資の参入条件が細かく定められており、条件付き業種(外資比率上限あり・政府許可が必要)や禁止業種も多数あります。小売・流通業は「経済的需要審査(ENT)」が必要なケースもあります。業種確認を怠って設立後に規制違反が発覚すると、事業停止・過料・再設立のリスクがあるため、JETROや現地法律専門家への事前確認が不可欠です。
3. 最短・最安で設立を完了する6ステップ
Step1〜3:業種確認→IRC取得→ERC取得
Step1:業種確認と外資規制チェック
投資法の「条件付き業種リスト」(200以上)で自社の事業目的を確認します。現地の法律専門家に相談しながら適切な業種コードを設定することが後続ステップを円滑に進める鍵です。
Step2:IRC(投資登録証明書)取得
外資参入時に必須の証明書で、管轄のDPI(計画投資局)に申請します。審査期間は15〜20営業日が標準。工業団地・経済特区では管理委員会が窓口となり短縮が期待できます。「法務局→公証役場→外務省」のアポスティーユ認証リレーに1カ月近くかかるケースが多発しているため、日本の書類準備はベトナム側の審査と並行して早めに着手してください。
Step3:ERC(企業登録証明書)取得
IRC取得後、ビジネス登録局へ申請します。審査期間は3〜5営業日と短く、ERCが後続手続きすべての起点となります。誤記があれば早期に訂正申請してください。
Step4〜6:税務登録・印鑑作成→口座開設→資本金払込
Step4:税務登録・印鑑作成
ERC取得後は税務コードを取得します。税務コードがなければVATインボイスを発行できないため後回しは厳禁です。同時に会社印(角印・丸印)も作成してください。
Step5:法人口座開設(DICA口座+ODA口座)
外資法人はDICA口座(資本金払込専用)とODA口座(事業収支用)の2口座が必要です。通常2〜4週間かかるため、設立登記と並行して早期着手が必須です。近年はマネーロンダリング対策強化で代表者の対面審査を求める銀行も増えており、入国タイミングもあわせて計画してください。
Step6:資本金の払込・事業開始
DICA口座開設後、ERC発行日から90日以内に資本金を払い込むことが義務です。払込完了後にDPIへ報告書を提出し、電子インボイス(e-Invoice)を登録して事業を正式に開始します。
4. コスト・期間シミュレーション(業種別)
製造業・非製造業・EC事業のケース別比較
| 項目 | 製造業(工業団地) | 一般サービス業 | EC・IT事業 |
|---|---|---|---|
| 設立期間目安 | 2〜3カ月 | 2〜3カ月 | 2〜3カ月 |
| 推奨資本金目安 | 投資規模次第(数千万円〜) | 1〜3億VND(約60〜180万円) | 1〜3億VND(約60〜180万円) |
| 設立代行費用目安 | 100〜150万円 | 50〜100万円 | 50〜80万円 |
| 法人税優遇 | 10%(免税期間あり) | 標準20% | 標準20%(ソフトウェア業は優遇あり) |
| 年間維持費目安 | 100〜150万円 | 50〜100万円 | 50〜80万円 |
製造業は工業団地に入居すれば法人税優遇で長期的なコスト回収が可能です。一般サービス業はWTOコミットメントに基づく業種規制の確認が特に重要です。EC・IT事業は外資規制が少なく設立コストも抑えやすい傾向がありますが、小売(EC)部分は外資比率に制限が設けられているケースがあります。
また、就労ビザ(LD)や投資家ビザ(DT)の取得を見据える場合は、資本金が3万USD(約450万円)程度以上あると審査がスムーズになるというのが実務上の目安です。「最安」を追求して過小な資本金にすると、後から再増資の手続き費用が発生することがあります。設立時にビザ取得要件も含めて資本金額を設定しておくことが結果的に低コストになります。
5. コストを抑えながらスピードを上げる実践ポイント
経済特区・工業団地の活用
製造業や加工業をベトナムで展開する場合、工業団地・経済特区への設立が最もコストと期間の両方を改善できる選択肢です。IRC申請の窓口が管理委員会に一本化されて手続きがスムーズになり、法人税優遇(標準20%から10%に軽減または免税期間)も適用されます。主要な工業団地は北部(ハノイ近郊・ハイフォン周辺)や南部(ホーチミン近郊・ビンズオン省・ドンナイ省)に集中しています。土地賃料はホーチミン近郊の主要工業団地で1㎡あたり100〜200USD程度が目安です(出典:JETRO「ベトナム 投資コスト比較」)。入居条件・優遇内容は団地ごとに異なるため複数候補を比較検討してください。
現地パートナー・代行業者の選び方
ベトナム法人設立では現地語(ベトナム語)での書類作成と行政対応が不可欠で、現地の法務事務所・会計事務所への依頼が実質的に必須です。選定時に確認すべきポイントは主に3つです。①自社業種の設立実績があるか:製造業・流通業・IT業では必要な許認可が異なります。②税務登録・口座開設サポートまでセットで対応するか:格安パッケージには「IRC・ERC取得のみ」で税務登録・口座開設は別料金という場合があります。後工程も含めたトータルコストで比較してください。なお、オフィスコスト削減でバーチャルオフィスを検討する場合は、ハノイ・ホーチミンの一部の区では外資法人のバーチャルオフィス登記に制限があるため、契約前に所在地の登記可否を専門家に確認してください。③日本語でのコミュニケーションが可能か:日本語で対応できる担当者がいると手戻りを防ぎやすく、スピードアップにつながります。
6. やってはいけない失敗パターン
業種確認の不備で設立後に規制違反が発覚するケース
ベトナムで最も多い失敗が設立後に業種規制違反が発覚するケースです。条件付き業種リストは200以上あり、貨物運送・一部の教育サービス・食品小売業などは外資比率の上限が設けられており、知らずに外資100%で設立すると違反となります。定款の「事業目的」欄を代行業者任せにせず、実際の事業内容と業種コードが一致しているか自社でも確認してください。
資本金払込期限・税務登録の後回しで事業が止まるケース
ERC発行日から90日以内という資本金払込期限を見落とし、銀行口座開設が間に合わないケースが起きています。設立登記の手続きと並行して口座開設に着手することが鉄則です。また税務登録を後回しにするとVATインボイスを発行できません。ベトナムでは電子インボイス(e-Invoice)が義務化されており、税務コード取得後にシステム登録まで完了して初めて請求書が発行できます。事業開始スケジュールから逆算して税務登録を早めに進めてください。
7. よくある質問(FAQ)
Q1. ベトナムに会社を設立するには最短でどのくらいかかりますか?
IRC取得に15〜20営業日、ERC取得にさらに3〜5営業日かかります。書類が整っていれば最短約2カ月を目指せますが、業種・地域・行政の混雑状況によって3カ月以上になるケースも多いです。
Q2. ベトナムで外資100%の会社設立は可能ですか?
多くの業種では外資100%での設立が可能です。ただし投資法とWTOコミットメントに基づき、外資比率に上限が設けられた条件付き業種も多数あります。設立前にJETROや現地専門家への業種確認が必須です。
Q3. ベトナム法人設立の資本金はいくら用意すればよいですか?
一般的なサービス業では1〜3億VND(約60〜180万円)が目安です。就労ビザの取得要件や事業規模に応じた現実的な金額設定が必要で、製造業は投資計画規模に応じてより高い資本金が求められます。
Q4. 有限責任会社と株式会社はどちらを選ぶべきですか?
出資者が1社で将来の株式譲渡・上場を予定していない場合は、手続きが簡略で管理負担の小さい有限責任会社(1名出資者LLC)が適しています。複数の投資家参加や資金調達を見据える場合は株式会社を選択してください。
Q5. 工業団地・経済特区に設立すると何が違いますか?
IRC審査が管理委員会で一本化されるため手続きがスムーズになり、法人税優遇(標準20%から10%または免税期間)が適用されます。製造業・加工業は特に活用を検討すべきです。
8. まとめ
ベトナム法人設立を最短・最安で進めるには、業種確認と法人形態の選択を最初のステップで正確に行うことが最重要です。業種規制の見落とし・書類不備・資本金払込期限の超過が遅延とコスト増の主な原因であり、製造業は工業団地の活用で税優遇とスピードを両立できます。代行業者は費用だけでなくサポート範囲(税務登録・口座開設まで含むか)を確認し、年間維持費も含めたトータルコストで計画を立てることが失敗しないポイントです。具体的な進出検討はぜひ「Digima〜出島〜」の専門家にご相談ください。
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参考文献
・JETRO「ベトナム 外国企業の会社設立手続き」
https://www.jetro.go.jp/world/asia/vn/invest_09.html
・JETRO「ベトナム 投資コスト比較」
https://www.jetro.go.jp/world/search/cost.html
・JETRO「ベトナム 外資に関する規制」
https://www.jetro.go.jp/world/asia/vn/invest_02.html
・外務省「公印確認・アポスティーユ」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/page22_000548.html
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