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ASEANでプレゼンスを高める「華僑・華人」の実態に迫る

掲載日:2018年08月31日

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華僑と華人の違いとは? 海外ビジネスにおいて華僑ネットワークと提携するメリットは?…そのような疑問にお答えすべく、本稿では、アジアでプレゼンスを高める華僑・華人の実態について解説します。

現在、全世界に6000万人以上いるとされており、全世界の上位25ヵ国目程度の人口を有する華僑・華人。 世界長者番付でも、日本人の倍以上の経営者がランクインしており、益々ビジネスにおいて存在感を増してくることが予想されます。

日系企業でも、海外進出の際のパートナーとして、華僑・華人経営者の企業と提携している企業もあります。

そのような華僑・華人はどのような人たちなのか。その違いや各地域の華僑・華人の人口状況、さらには、ビジネスにおける華僑の役割について述べていきます。

Photo by Pedro Alonso on Flickr

 

1.華僑とは? 華人との違いとは?

華僑の定義

華僑は、「中国国籍を持ったまま海外に居住する」人たちを指しています。今日では意味が転じて、長い間海外に住んでいる中国人とその子孫(華裔)を指しています。

中国政府によると、「中国大陸・香港・台湾・マカオ以外の国や地域に移住・居住している中国国籍をもつ漢民族(iFinanceより)」と定義されています。

本来の文字の意味では、「華」は中国人を表し、「僑」は仮住まいを表しており、「ある地域に仮住まいする中国人」となります。

華僑と華人との違い

華僑と同じように、海外に住んでいる中国人を指す言葉として、「華人」という言葉があります。では、華僑と華人の違いとは何でしょうか。

区別の仕方については、はっきりとした定義はなく、いまだに議論されていますが、有力な定義としては、「現地国籍を取得した中国人」を指すとしています。つまり、日本に住んでいる中国人が日本国籍を取得して、日本人になるようなイメージです。

2.各地域の華僑の状況

東南アジア

全世界の華僑・華人人口は、約6,000万人程度だとされていますが、そのうち、約70%はアジアに住んでいるとされています。

その中でも東南アジアに住んでいる華僑・華人は多く、華僑・華人が中心となり建国したシンガポールやマレーシア、タイを除くと、全人口のうち1~3%を占めています。

これは、多くの華僑・華人が中国南部出身であること、歴史的に中国の貧困地域の人々がASEAN地域に押し出されたこと、また、ASEAN地域が植民地時代に需要がありつつも現地住民が参入しなかった商業や流通に参入したことが理由として考えられます。

現在の華僑・華人がASEAN地域に多く住んでいるのは、やはり地理的要因が一番大きいと思われます。

アフリカ

アフリカでは、20年前と比べて7倍以上の中国人がアフリカに移住しています。

2012年では、110万人の中国人がアフリカ全域に住んでいるとされています。

アフリカに移住する人も変化しており、当初は小売業を営む中国人が多かったようですが、現在では、プログラミングや何らかのスキルを身につけた知識層や熟練労働者が移住しています。

アフリカに住む華僑は、短期間で多くの貯金ができる就労機会のある場所であるとみており、退職後は、7割の華僑が中国に戻るとされています。東南アジアでビジネスを興して住み続ける華僑・華人とは、異なる性質であるといえます。

南米

南米のうち、特にペルーには華僑・華人が多いと言われています。

150年以上前から、華僑・華人が住んでいたともいわれています。

全世界の華僑・華人のうち、2.5%(2011)がペルーに住んでいるとされており、華僑が多い国で唯一トップ10に南米でランクインしています。

ペルーには、日本と同様の中華街があり、中国の商品の展示即売会が行われ、年々人気になっています。

現在では、さらに華僑の人口は増加しているため、ペルーの全人口における華僑・華人の比率は高くなっていると考えられます。

日本

日本でも、在留中国人は年々増加しています。

法務省によると、2017年現在、247万人の在留外国人のうち、約70万人の中国人が日本に滞在しており、さらにそのうち24万人が「永住者」で、在留中国人では最も多い人数になります。

また、日本国籍を取得した華人は、1952年~2016年で13万人いるとしています。現在では、さらに増えていると推察されます。

日本でも数年後には、東南アジアのように華僑の影響力を増しているかもしれません。

ヨーロッパ・北米

ヨーロッパや北米は歴史的に見て古くから、中国人移民が多くみられます。

特にアメリカでは、ハワイに割合的に最も多く住んでいるとされており、人口数でいえば、カリフォルニア州に110万人以上住んでいます(ハワイ州は5万人)。またアメリカ各地には、横浜や神戸、長崎の同じような中華街があります。

ヨーロッパは、アメリカと比べて華僑・華人の人口は少なく、アメリカが350万人に対し、一番多いイギリスでも50万人程度しかいません。しかし今後、中国が主導する「一帯一路」構想に伴い、華僑・華人の人口は増加するかもしれません。

3.一帯一路の推進役?

一帯一路とは?

「一帯一路」構想とは、2013年に中国の習近平国家主席が提唱した、アジアとヨーロッパをつなぐ「21世紀のシルクロード」を目指す壮大なプロジェクトです。

JETROによると、「基本理念」として

(1)平和協力
(2)開放と包容
(3)相互学習
(4)相互利益とウィンウィン

を掲げており、中国主導で対象国との共同発展を目指す内容となっています。

したたかな華僑・華人

華僑・華人は、中国から出て行った背景から、中国を客観的に見ている人が多く、利益が見込めることがあれば、利用しようとする傾向が見られます。その為、「中国の成長のため」というよりは、「自分の利益のため」という考えの華僑・華人が多いと考えられます。

マレーシアやタイでは、中国と共同で自国内に「一帯一路センター」を設け、これを利用して、華僑・華人企業がヨーロッパに進出するケースが増えています。華僑・華人は、したたかで実利的な考え方をする人が多く、この「一帯一路」構想での推進役を図らずとも担っているといえます。

4.ASEANビジネスには必要不可欠

ASEANで存在感を増す華僑・華人企業

ASEAN地域では、華僑・華人が経営者の企業の成長が著しいと言われていますが、非上場の企業が多く、情報開示をしている企業が少ないため、統計的な数字を出すのは難しいとされています。

しかしながら、Forbes誌の世界長者番付では、1000位以内に華僑・華人の経営者が32人ランクインしており、日本(12人)や韓国(10人)を大きく上回っています。
(平賀富一「アセアンにおける華人・華人企業経営-アセアンにおける華人・華人企業のプレゼンス、華人社会の形成と特徴点-」)

このデータは、2016年のものであるため、2018年現在では、さらに華僑・華人のビリオネアは増加していると考えられます。

さらに、ASEAN地域に進出している日系企業(セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート等のコンビエンスストア等)が、現地の提携先として華僑・華人企業を選んでおり、日系企業も信頼できる有力なパートナーとして業務提携を行う会社も多く、ASEANで影響力を増しています。

華僑・華人の強み

弊社の海外コラムに寄稿頂いている、Hopewill Groupの堀明則氏によると、彼らの強みは、

1)仲間との関係性
2)分散にたいする徹底した行動
3)無頓着であると言うことに徹底的に頓着

であると述べています。
(海外ビジネスコラム 堀明則(2012年8月24日)「中国の強さ『華僑の強さを考える』」)

華僑・華人は仲間意識が強く、仲間を大切にします。

華人・華僑には、「幇(ぱん)」と呼ばれるコミュニティが2種類あります。同じ出身地のコミュニティである「郷幇(きょうぱん)」と同じ職種のコミュニティである「業幇(ぎょうぱん)」です。

このようなコミュニティにより、相互に助け合いながら、仲間を作ります。

また、彼らが最も重視しているのは、信頼・信用です。「幇」内で信頼が得られないと会社や事業を続けていくことは難しく、コミュニティ内での融資等が受けることができません。その為、仲間の関係性を重要視します。

分散に対する徹底した行動については、一極集中型ではなく、リスクを分散するような考え方をしています。また、「無頓着であると言うことに徹底的に頓着」という点は、華僑・華人が仕事を「発展における手段」として捉えており、発展するにつれて、業態やビジネスも変化させていくという点があります。

以上の3つが華僑・華人の強みだと堀氏は述べていますが、特に仲間のネットワークが強いため、ASEANでのビジネスでは、現地のコネクションを増やす点において、華僑・華人企業との連携はメリットがあると考えられます。

5.いかに華僑・華人企業とアライアンスを結ぶか?

今後も勢力拡大

華僑・華人の実利的な考え方から、ユダヤ人、インド人と並んで「世界三大商人」とも呼ばれています。

事実、華僑・華人の富裕層が年々増加していることから、商売に長けているということがわかります。

今後は、中国の「一帯一路」構想に乗じて、中国人の拡散がより加速し、より国際的な影響力が増すと考えられます。

そのような状況下で、海外進出している日系企業に求められるのは、華僑・華人企業との良好な協力関係の構築にほかなりません。

(参考文献)
・コトバンク「華僑」 https://goo.gl/Rh6c5b
・コトバンク「華人」 https://goo.gl/CCuaQn
・平賀富一「アセアンにおける華人・華人企業経営①-アセアンにおける華人・華人企業のプレゼンス、華人社会の形成と特徴点-」 https://goo.gl/rDZCHu
・アメリカ☆地域ランキング「全米・中国人比率ランキング(州別)」 https://goo.gl/AhRqQo
・Record China「在日中国人・華人の数、過去最多の92万人突破―華字メディア」 https://goo.gl/rDYYrA
・ZUU Online「中国人(華人)の多い国家トップ10、1位は米国ではなくあの島国」 https://goo.gl/5EqRUu
・Juyin Helen Wong「The Chinese diaspora: The current distribution of the overseas Chinese population」 file:///C:/Users/TEMP/Downloads/poston-wong-chinesediaspora2c2016.pdf
・China Daily「Number of Chinese immigrants in Africa rapidly increasing」 https://goo.gl/9UMdg9
・Statista「Countries with the largest number of overseas Chinese (in millions)」 https://goo.gl/25ifFj
・NHK「「一帯一路」を活用せよ 華僑の戦略」 https://goo.gl/LTCfDM
・JETRO『アジア経済研究所一帯一路構想とその中国経済への影響』 https://goo.gl/khWw17

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