海外進出は「ローカライズ」が前提――テストマーケティングで計画を描く
日本の商品やサービスをそのまま海外に持ち込んでも、現地の人に受け入れられるとは限りません。海外進出の成功には、現地の消費者の嗜好や市場環境に合わせた「ローカライズ」が不可欠です。
本稿では、前稿で整理した進出国との「距離(distance)」を踏まえ、新市場の開拓がなぜ「新商品の開発」を意味するのかを解説します。そのうえで、現地に適応した商品・サービスなくして販路は開けないという事実、そしてリスクを抑えながら市場の手応えを掴むテストマーケティングの重要性について述べます。また、テストマーケティングの実施先としてマレーシアが持つ優位性についても紹介します。
▼ 前稿:海外進出におけるローカライズによる市場適応 ~進出先との“隔たり(distance)”を踏まえた展開~
海外進出におけるローカライズによる市場適応 ~進出先との“隔たり(distance)”を踏まえた展開~
▼ 海外進出は「ローカライズ」が前提――テストマーケティングで計画を描く
1. 海外市場との「3つの距離」を埋めることから始まる
前稿では、海外進出を検討する日本企業が直面する課題として、進出先との「距離(distance)」について整理しました。新しい市場を開拓するということは、すなわち現地の事情や消費者の嗜好に合った商品・サービスを開発することにほかなりません。そして、現地に適合した商品・サービスでなければ、販路の開拓は実現しません。だからこそ、地理的距離、言語的距離、心理的・文化的距離――これらの「距離」を正しく認識し、それを埋めるための具体的な計画とヒトモノカネといった資源の用意が求められます。
本稿では、この「距離」を埋めるための実践的なアプローチとして、ローカライズの考え方とテストマーケティングの重要性について掘り下げていきます。
2. 新市場の開拓は「新商品・サービスの開発」である
海外進出というと、日本で売れている商品をそのまま海外に持ち込むイメージを持つ方も少なくありません。しかし実際には、海外市場の開拓は「新商品の開発」と同義です。ここでいう「新商品」とは、必ずしもゼロから作り上げるものだけを指すわけではありません。既存の商品を現地の事情や消費者の嗜好に合わせて改良することも、立派な「新商品の開発」です。味覚、食感、パッケージのサイズや価格帯、さらには商品に込めるメッセージに至るまで、日本市場で最適化されたマーケティングが海外で通用した事実は、ほとんど見当たりません。日本で人気の甘さ控えめな菓子が、東南アジアでは「味が薄い」と受け取られることがあります。逆に、日本では一般的な大容量パッケージが、現地の購買習慣に合わず売れ残るケースも珍しくありません。海外市場に向き合うということは、現地の消費者を新たな顧客として理解し直し、その顧客に向けた商品を設計し直すことを意味するのです。
3. 現地に合った商品・サービスでなければ販路は開けない
海外での販路開拓が思うように進まない企業に共通する課題の一つが、「商品そのものが現地市場に合っていない」、「現地の消費者のニーズを把握できていない」、「そもそも『販路』に介在する業者のニーズも理解しようとしていない」という根本的な問題です。いくら販路開拓の営業活動に力を入れても、現地の消費者が求めるものと自社の商品・サービスにギャップがあれば、ディストリビューターも小売店も扱ってはくれません。「日本製だから品質が良い」、「Made in Japanの信頼がある」――こうしたブランド力は確かに存在しますが、それだけで購買行動に結びつくほど海外市場は単純ではありません。実際の事例でも日本製(Made in Japan)であることが販路開拓の効果には関係しないことが分かっています(丹下 2013、張 2012)。現地の消費者が日常的にどこで何を買い、どのような価格帯で購入の意思決定をしているのか。こうした情報を把握しないまま日本の商品・サービスを持ち込んでも、棚に並ぶことすら難しいのが現実です。販路開拓の第一歩は、「商品の流通経路を探すことではなく、現地の消費者に受け入れられる商品・サービスを用意して、それらを流通経路に乗せること」からスタートする必要があります。
4. 「海外進出」は、日本から出て現地に足を運ぶことから
では、現地の消費者に合った商品をどのように設計すればよいのでしょうか。その答えは、まず現地に足を運び、自分の目で少なくとも消費現場を見ることにあります。インターネットやレポートで収集できる情報には限界があります。実際にスーパーやショッピングモールを歩き、どのような商品が棚に並んでいるのか、どの価格帯の商品が売れ筋なのか、消費者がどのような買い物をしているのか――こうした現場感覚が無ければ必要とされない商品・サービスを展開することになります。
この「現場を見る」ことの延長線上にあるのが、テストマーケティングです。テストマーケティングとは、本格的な市場参入の前に、小規模な範囲で商品を実際に販売し、消費者の反応を確かめるプロセスです。仮説を立て、実際に試し、得られたフィードバックをもとに商品や戦略を修正する。このサイクルを回すことで、本格展開時のリスクを大幅に低減することができます。海外進出には、国内市場よりも不確定要素が多いため相当なコストが発生します。テストマーケティングは、多額の投資を行う前に市場の現実を知るための、最も合理的なアプローチといえるでしょう。
5. テストマーケティングに適したマレーシアの市場特性
テストマーケティングを進めていく上で、マレーシアは極めて優れた特性を持つ市場です。まず、マレーシアの消費者は東南アジア諸国の中で最も早期に新商品・サービスを採用するというデータがあります(倉林・新美・八波 2013)。日本では福岡県でテストマーケティングを実施する企業が多いのも同県の消費者の早期採用率が高いことが要因となっています。またマレーシアは多民族・多宗教国家であり、マレー系(ムスリム)、中華系、インド系をはじめとする多様な消費者層が共存しています。一つの市場でありながら、イスラム圏向け・中華圏向け・インド圏向けの消費者反応を同時に確認できるという、他の国にはない利点があります。その上、英語が広く通じるため、日本企業にとってコミュニケーションコストが比較的低く抑えられます。地理的にも日本からの距離は東南アジアの中では標準的であり、時差も1時間と小さいため、出張ベースでの対応も現実的です。さらに、マレーシアは前稿でも触れた「ハラールのハブ」としての地位を確立しており、ここでの成功体験は、インドネシアや中東といったより大きなイスラム市場への展開の足がかりとなります。経済水準も東南アジアの中では比較的高く、日本製品の品質に対する理解も高いので、テストマーケティングの結果を他市場に応用しやすいという特徴もあります。
まとめ|テストマーケティングによるローカライズで計画的に海外進出のステップを
海外市場は日本の延長線上にはありません。新しい市場を開拓するということは、現地の消費者に向けた商品・サービスを新たに開発することであることから「ローカライズ」を前提としています。そしてローカライズの精度を高めるために不可欠なのが、現地に足を運び、現場の声を聴き、テストマーケティングで仮説を検証するというプロセスです。
マレーシアは、多民族・多宗教の消費者層、英語が通じるビジネス環境、ハラールのハブとしての国際的な地位、そして地理的・時間的なアクセスのしやすさから、テストマーケティングの実施先として高い適性を備えています。本格的な投資に踏み切る前に、まずはマレーシアでの小規模な検証から始めてみてはいかがでしょうか。現地の「距離」を自らの目で確かめることが、海外進出成功への第一歩となるはずです。
《参考文献》
・倉林貴之・新美佑・八浪暁(2013)「国別アンケートで読み解くASEAN消費市場「ASEAN5カ国消費者アンケート調査」結果より」知的資産創造 21(8), 22-35頁
・丹下英明(2013)消費財中小企業の海外市場開拓−欧州流通業者のニーズと中小企業のマーケティング戦略−
・張又心(2012)中小企業の国際化戦略』88頁(同友館)
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沖縄をハブに、台湾・中国・香港・ベトナム・タイ・マレーシア・シンガポール・インドネシア・オーストラリア・ニュージーランド・イギリス・ドイツ・ブラジル各国にパートナーエージェントを配置し、アメリカ合衆国・インドは提携先を設けていますので、現地でも情報収集、視察等も直接支援可能、幅広く皆様の海外展開とインバウンド事業をサポートしております。 -
株式会社ダズ・インターナショナル
東南アジア・東アジア・欧米進出の伴走&現地メンバーでの支援が強み
私たちは企業の海外挑戦を設計→実行→着地まで伴走支援いたします。
これまでの企業支援数は1,500社以上です。
私たちは『どの国が最適か?』から始まる海外進出のゼロ→イチから、
海外進出後のマーケティング課題も現地にて一貫支援いたします。
※支援主要各国現地にメンバーを配置し、海外進出後も支援できる体制
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■サポート対象国(グループ別)
↳アジア①(タイ・ベトナム・マレーシア・カンボジア・インドネシア・フィリピン・ラオス)
↳アジア②(日本・香港・シンガポール・台湾・韓国)
↳アジア③(ドバイ・サウジアラビア・インドバングラデシュ・モンゴル・ミャンマー)
↳欧米(アメリカ・イギリス・フランス・ドイツ)
※サポート内容により、対応の可否や得意・不得意な分野はあります。
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■対応施策ラインナップ
①"市場把握"サポート
目的は"海外現地を理解し、事業の成功可能性を上げる"こと。
(以下、含まれる施策)
↳市場概況・規制調査
↳競合調査
↳企業信用調査
↳現地視察企画・アテンド
②"集客活動"サポート
目的は"海外現地で売れるためのマーケティング活動を確立"すること。
↳多言語サイト制作
↳EC運用
↳SNS運用
↳広告運用(Google/Metaなど)
↳インフルエンサー施策
↳画像・動画コンテンツ制作
③"販路構築"サポート
目的は"海外現地で最適な海外パートナーとの取引を創出"すること。
↳商談向け資料制作
↳企業リストアップ
↳アポイント取得
↳商談創出・交渉サポート
↳契約サポート
④"体制構築"サポート
目的は"海外現地で活動するために必要な土台"をつくること。
↳会社設立(登記・銀行口座)
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