【2024年版】香港経済の最新状況|最新のGDP成長率は3.2%
2024年における香港経済の最新状況と今後の見通しについて解説します。
2023年の香港経済は前年比3.2%の実質GDP成長を達成しました。これは新型コロナウイルスの影響からの顕著な回復を示しています。この成長率は、国際貿易の回復、インバウンド観光の増加、および地元消費の強化によって支えられた言ってよいでしょう。さらに、香港政府による積極的な経済刺激策と、海外からの投資を引き続き歓迎する政策も、経済回復に貢献しています。
本テキストでは、今日の香港経済を特徴づけた、「一国二制度」による独自の政治体制、「レッセフェール」すなわち市場主義経済政策、「コモン・ロー」に基づく法律体系という3つの重要なポイントついても解説。これらの要素が、香港のグローバルな金融センターとしての地位を維持し、世界中の企業や投資家にとって魅力的な場所であり続けるための基盤を形成していることを解説します。
加えて、香港経済の産業構造、およびタックスヘイブンとしての役割についても言及。さらには日本企業の香港への進出動向など、現在の香港経済を理解する上で知っておくべきトピックについても考察していきます。
【2024年版】香港経済の最新状況|最新のGDP成長率は3.2%
- 1. 香港経済の最新状況と今後の見通し
- 2. 現在の香港経済を形作った3つのポイント
- 3. 香港経済の特徴と産業構造について
- 4. タックスヘイブンとしての香港
- 5. 香港に進出する日本企業の進出動向
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1. 香港経済の最新状況と今後の見通し
まずは2023年を振り返った香港経済の最新状況と、2024年における今後の見通しから見ていきましょう。
2023年における香港のGDP成長率は+3.2%
2023年の香港経済は、前年比で3.2%の実質GDP成長を達成しました。この成果は、新型コロナウイルスの影響からの回復力を示すものであり、特に第4四半期には4.3%の成長が見られました。これにより、香港は4四半期連続で経済成長を記録し、前期に比べて0.2ポイントの成長率向上を実現しました。
2023年の経済活動を支えた主な要因として、インバウンド観光の回復と個人消費の増加が挙げられます。一方で、政府消費支出は前年比5.2%減少し、固定資本形成も前期に比べて減少しましたが、財の輸出入は大幅に改善し、サービスの輸出入も増加しました。
香港政府は、2023年の経済成長について、中国本土および世界各国からの観光客の回復、家計所得の上昇、さまざまな政府支援策が個人消費を後押ししたと分析しています。また、全体的な投資支出は景気回復に伴い増加しましたが、外部環境の厳しさから財輸出は減少しました。
2024年に関する見通しでは、引き続き外部環境の不透明性が財輸出に圧力を与えると予想されています。しかし、先進国経済での利下げが実現すれば、経済状況は年後半にかけて安定する可能性があるとの見方が示されています。
香港経済は、新型コロナウイルス禍の影響から着実に回復していますが、中国本土の景気減速や海外金融市場の動向など、多くの課題に直面しています。2024年の香港経済の動向は、これら外部環境に加え、インバウンド観光の持続的な回復や国内消費の動向によって大きく左右されることになります。香港政府は、これらの挑戦に対応するための政策を継続的に模索していく必要があります。
2. 現在の香港経済を形作った3つのポイント
2023年における香港経済の最新状況に続いては、香港および香港経済の基本情報について解説します。このセクションでは、今日の香港経済を特徴づけた、「一国二制度」「レッセフェール」「コモン・ロー」という3つのポイントについて述べていきます。
イギリス占領下で独自の発展を遂げた香港経済
そもそも香港の正式名称は「中華人民共和国香港特別行政区」となります。香港に中国人が住み始めたのは唐の時代からと言われていますが、現在の国際都市としてのスタートは、19世紀に入ってからとなります。
1839年に始まった第一次アヘン戦争において英国軍によって占領された香港島が、1842年に締結された南京条約によって、イギリスに永久割譲されたことが歴史の大きな転換期とされており、その後も、イギリスによる植民地経営のもと、中国人移民を受け入れ、中国大陸および華僑を結ぶ貿易基地として成長を続けてきました。
さらに1979年の中国による改革開放政策導入以降は、複数の経済特区を持つ広東省とともに、急速な経済発展を遂げることに成功したのです。
「一国二制度」「レッセフェール」「コモン・ロー」という3つのポイント
1997年まではイギリスの植民地であった香港ですが、同年7月1日に、その後50年間は資本主義体制が維持されるという、いわゆる「一国二制度」 を前提に、中国へと返還されました(※2047年には「一国一制度」になることが、いわゆる〝2047年問題〟として、若者を中心に香港市民の間に浸透しています)。
そんな香港が今日の経済発展を遂げた大きな要因のひとつに、「レッセフェール(自由放任主義)」と呼ばれる、〝政府の積極的不介入〟を掲げた経済政策があります。英領植民地期において、政庁が企業活動には介入せず、企業は市場原理にしたがってのみ活動するという原則が、香港経済に大きな活力を生み出したとされています。
また、コモン・ロー(慣習法)を踏襲する「香港特別行政区基本法」に基づく司法制度の導入も見逃せません。原則として中国本土の法律が適用されないため、中国本土とは異なる、今日の香港ならではの市場経済および資本主義体制を保持することができたのです。
3. 香港経済の特徴と産業構造について
このセクションでは、先述の3つの経済施策が形作った、現在の香港経済のおもな特徴と構造について考察していきます。
サービス業を主体とした経済構造
香港の主要産業は、商業、金融、不動産業、観光、運輸・通信から成り立っています。製造業においては、すでに生産拠点を中国本土に移転していることも香港ならではの特徴と言えるでしょう。特筆すべきは、サービス産業がGDPの9割を占めていること。まさにサービス業をメインとした経済構造となっています。
レッセフェール(自由放任)政策を背景とした規制の少なさ
先述した、2047年まで有効な「一国二制度」が採用されていることで、イギリス統治時代の「レッセフェール(自由放任)政策」が踏襲されています。その結果、政府が必要以上に規制をしない、市場経済の原理にまかせたマーケットが香港ならではとされています。
また1973年に為替管理法が撤廃されたことで、資金調達や通貨交換、海外から及び海外への送金が自由に行えるのも香港ならではと言えるでしょう。
4. タックスヘイブンとしての香港
タックスヘイブンとは租税回避地という意味です。具体的には、直接には国際取引をしない日本企業が、香港のような税負担の低い国に子会社を設立し、その子会社を通じて取引をすることで、税負担を軽減する方法が挙げられます。
「タックスへイブン対策税制」の改正に注意
仮に日本在住が1年以上であれば、国内税法(所得税)上、「居住者」として取り扱われ、全世界所得に対し課税されます。よって、香港法人から配当を受け取れば、日本において配当所得として課税されます。
しかし、香港は軽課税国(税率20%未満)に該当するので、香港法人の発行済株式のうち50%超を居住者及び内国法人が保有していた場合、当該発行済株式のタックスヘイブン対策税制の適用対象となるのです。
しかし、タックスヘイブンに本籍を有していても、その地で実質的な事業を行っていない場合は、日本で税金を納める必要があります。
日本の「タックスへイブン対策税制」は、そんな香港のようなタックスへイブン(軽課税国)を利用して租税回避を図る行為を排除する制度です。国内企業が低税率の海外子会社に所得を移転することで、日本での法人税負担を不当に軽減することを防ぐため、一定の要件に該当する海外子会社の所得について、国内企業(海外子会社の株主)の所得と合算して日本で課税するものです。
税制改正によって、「タックスへイブン対策税制」の適用要件が改正されているので注意が必要です。
シンプルな税制と低い税率
香港はアジア有数のタックスヘイブン(租税回避地)として知られていますが、その税制もシンプルです。以下、香港の税制について述べていきます
■香港域内のみが課税の対象
そもそも日本に居住する居住者は国内、国外を問わず、全世界で発生した所得に課税されるのに対して、香港は源泉地基準を採用しているので、香港域内源泉のみが課税の対象となっています。その結果、全世界所得が対象となりません。
つまり、日本のように居住・非居住で区別せず、その所得が国内で発生したものか否かというくくりで国内所得にのみ課税されます。その結果、国外所得は非課税となるのです。
■法人への課税は「事業所得」のみで、一律16.5%
■個人への課税は「所得税」のみで、実質最高15.0%
■キャピタルゲイン(株式や債券などの保有している資産を売却することによって得られる売買差益)に対しては非課税
■株式配当に対しては非課税
■相続税なし
■付加価値税(消費税)なし
ほぼないに等しい一般物品への関税
香港ではほとんどの一般物品に関税がかかりません(※酒、たばこ、炭化水素油(ガソリンなど)、メチルアルコールをのぞく)。
そもそも香港には貿易規制措置がほとんど存在せず、戦略物資、医薬品、繊維品などの一部の製品をのぞいて輸出入許可が不要となっています。許可が必要なケースでも、その手続きは簡略化されており、短い期間で許可を取得できる仕組みになっています。
5. 香港に進出する日本企業の進出動向
最後に補足情報として、香港に進出している日本企業の最新進出動向について見ていきましょう。
香港に進出している企業数は1,502拠点(2022年10月1日時点)
2022年10月1日時点で香港に進出している日系企業数は、1,502拠点となっています。
※外務省「海外進出日系企業拠点数調査|2022年調査結果」より
6. 優良な香港進出サポート企業をご紹介
貴社にピッタリの香港進出サポート企業をご紹介します
今回は香港経済の最新状況について解説しました。
香港政府は、2023年の経済成長について、中国本土および世界各国からの観光客の回復、家計所得の上昇、さまざまな政府支援策が個人消費を後押ししたと分析しています。
日本を含む世界中の企業にとって、香港が海外ビジネスにもっとも適した地域のひとつであることは間違いありません。
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(参照文献)
・「香港(Hong Kong)
基礎データ」外務省
・「香港の概況と投資環境」山口銀行国際部
・「2023年第4四半期のGDP成長率は4.3%、通年では3.2%」JETRO
・「香港経済、2023年の成長率は予想に届かず-回復ペース鈍く」ブルームバーグ
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