フィリピンの「ガソリンスタンド・フランチャイズ」ビジネスに商機アリ(!?)

本稿ではフィリピンでの「ガソリンスタンド フランチャイズ事業」の可能性について解説します。
フィリピンはガソリンが高いです。その理由は日本と同様、化石燃料のほぼほとんどを輸入供給に依存していることによります。一般的に、日本との物価格差が1/4とも1/5倍とも言われているフィリピンで考えると、庶民にとって「ガソリン料金」はかなりの高価格です。
しかし、自動車の販売台数が年々増加しているフィリピンでは、今後もガソリンの需要も増える一方です。また最近では、フィリピンでも日系資本のガソリンスタンドが開設されたとのニュースも報じられています。
以上を踏まえて、本稿では、フィリピンの石油メジャー3社の条件の比較から、フィリピンにおける「ガソリンスタンド・ビジネス」の可能性を解説します。
目次
1. フィリピンでのガソリンスタンド経営の利点とは?
フィリピンにおけるガソリン価格の推移
フランチャイズビジネスの王道とも言われる「ガソリンスタンド」。しかし先述のように、フィリピンはガソリンの価格が高いです。
どのくらい高いのかというと、日本とフィリピンのガソリン価格を2018年5月28日のデータで比較すると、日本が147.5円でフィリピンが120.7円となっています。
2015年5月のガソリン価格推移:(出典:www.globalpetrolprices.com)
しかしながら、日本と比較して、フィリピンにおけるガソリンの原価・販売価格も変わらないならば、フィリピンならではの人件費と最低賃金の安さは、大きなアドバンテージとなります。
結論を急ぐと、「フィリピンでのガソリンスタンド経営は、日本よりも利益が出しやすいビジネスモデルである」ことは間違いありません。
最低賃金が改正されてもメリットはある
2018年5月28日、フィリピンの最低賃金改正に関する法案が下院に提出されました。
具体的には、最低賃金を全国一律で日額750ペソ(約1,555円)とすることなどが盛り込まれています。法案提出の背景には、物価上昇で国民の生活が苦しくなっていると不満が高まっていることにあります。
日本のお隣である韓国では、2017年7月に、最低賃金を16.4%引き上げる法案が通りました。
しかしながら、これによって企業がコストカットのために労働者を解雇するような動きがでて物議を醸しており、政策としては賃金引き上げは徐々に行うべきであるとの見方もあります。
いずれにせよ、日系企業の海外展開という文脈のみにおいては、たとえフィリピンの最低賃金が1,555円になったとしても、日本の2時間程度の賃金であるので、そのメリットはまだまだ大きいはずです。
自動車の販売台数が年々増加しているフィリピンでは、今後もガソリンの需要の増加が見込まれています。次項では、フィリピンにおける自動車販売台数について解説します。
2. フィリピンにおける自動車の年間販売台数の推移
今後も小型車・准小型車の販売台数は飛躍的に伸びる
フィリピンにおける自動車の年間販売台数の推移を、2006年の水準と10年後の2016年を比較すると、3.5倍以上の値となっています。特に輸入車の占める割合が2014年ごろから年々増加しており、とくに日系メーカーがフィリピン市場の7割近くを独占している状況です。
上位はトヨタ、三菱、フォード、現代、いすず、ホンダと続きます。2011年以降は販売台数が毎年20%程度ずつ増加を続けており、2020年には50万台、2025年には80万台に達すると予測されています。
また自動車産業の中でも、ここ10年の間に1L未満の小型車の売上が急増しているとのデータが出ています。この小型車の中心顧客層は、月収3万ペソ(約7万円)以上の30代中間層であり、車の初購入者が多いとのこと。
人口ボーナスが2050年代まで続くとされているフィリピンでは、この中間層の割合が益々大きくなると考えられます。事実、ここ10年間で25万ペソ(※中間層の所得と考えられる額)以上の収入を持つ最高所得層の世帯の割合が2倍になっているのです。
このことから今後も小型車・准小型車の販売台数は飛躍的に伸びるものと推察できます。
また現時点ではフィリピンにおける自動車保有率は全世帯のうち6%ですが、2018年現在GDP成長率予測がASEANトップの6.7%であること考慮すると、今後も自動車の購入世帯が増加していくはずです。
(参考および出典:ASEAN Automotive Federation/国際協力銀行マニラ駐在事務所報告書/ジェトロ(日本貿易振興機構)マニラ事務所報告書)
3. フィリピンのガソリンスタンド・フランチャイズ費用
最近ではフィリピンにおいても「日系資本のガソリンスタンド」が開設されたとのニュースが報じられています。
この項では、フィリピンの石油メジャー3社である「カルテックス」「フェニックス」「イースタン・ペトロリウム」の条件の比較から、フィリピンにおける「ガソリンスタンド・ビジネス」の可能性を解説します。
カルテックス・ガスステーション(Caltex Gas Station)
「カルテックス」はシェブロン傘下の石油ブランドで世界60ヵ国で展開中。同社はすでに第二次世界大戦前の1917年頃から、地熱実験のプロジェクトを始めとする、フィリピンにおける多様な活動に関わっていました。
1936年にフィリピン支社を設立(Caltex Philippines Inc.)。1995年からはコンビニエンスストアとの併設を実施し、2009年には7-Elevenと提携してサービスを行っています。
■フランチャイズ詳細:
★施設・設備 : 約500万〜700万ペソ(1000万〜1500円程度)
■上記投資に含まれるもの
● オペレーション原資 : 約200〜300万ペソ(400〜700万円程度)
● サイトの潜在販売ボリューム : 最低 20万リットル/月(Chevron定義による)
● 最低敷地面積 : 1,200㎡
● 正面幅 : 最低40 m
● 契約期間:最低5年(一定条件の下更新5年)
● 敷地リース契約 : 最低10年
★その他
● 施設建設はChevronの標準デザインに基づき行う
● 看板等はChevronから提供される
同社の直接情報によると、通常のガソリンスタンドで6ヵ月程度の建設期間が必要であり、スタッフのトレーニングは6週間とのこと。投資額の最低額は500万ペソとなっています
フェニックス・ペトロリウム(Phoenix Petroleum)
「フェニックス」は2005年にフィリピン・ミンダナオ島ダバオ市で1号店をオープン。それから10年程度で国内450拠点まで展開を伸ばしています。
昨年2017年9月にはシンガポールに石油商品の販売等を手がける商社を設立。同社は現在フィリピンでもっとも成長スピードの早いガソリンスタンド企業とされています。
フェニックス社には2種類のフランチャイズパターンがあります。ひとつ目は、フェニックス所有で、ディーラーとして運営する方法。この場合のフランチャイズ費用は、250万ペソ〜500万ペソ(500〜1000万円)程度とされます。
ふたつ目は、通常のフランチャイズと同様で、ディーラー所有・ディーラー運営のパターン。この場合フランチャイズ費は400万〜500万ペソ(800〜2100万円)程度。両者の違いは、営業に必要な許可をペトロンが取得するか、ディーラーが取得するかというところにあります。
また建設費も、フェニックス所有ならばフェニックス、ディーラー所有ならばディーラーが支払います。どちらの場合もフェニックスが定義したスタンダードに従って建設を行う必要があります。
またガソリンの予測販売量によって、フェニックス所有の場合で35〜55万ペソ(70〜115万円)、ディーラー所有の場合で50〜100万ペソ(100〜210万円)程度のブランド料を別途払います。
ディーラが2店舗目を展開する場合は1店舗目の実績によって、フランチャイズ費が50%割引になる。同様に、3店舗目以降は35%となります。
■フランチャイズ詳細:
★フランチャイズ費
● (フェニックス所有の場合):250万ペソ~500万ペソ(500〜1,000万円)程度
●(ディーラー所有の場合):400万~500万ペソ(800〜2,100万円)程度
★契約期間
● 5年、その後実績によって5年の更新が可能
★ブランド料
● (フェニックス所有の場合):35〜55万(70〜115万円)ペソ程度
● (ディーラー所有の場合):50〜100万(100〜210万円)ペソ程度
★年間フェニックス参画料金
●(フェニックス所有の場合):50万ペソ(100万円)程度/年
●(ディーラー所有の場合):35万ペソ(70万円)程度/年
★その他
● 施設建設はChevronの標準デザインに基づき行う
● 看板等はChevronから提供される
イースタン・ペトロリウム(Eastern Petroleum)
「イースタン・ペトロリウム」社は1996年12月の創業。同社も上記フェニックス社と同様に、ガソリンスタンドの所有権に関して、イースタン所有とディーラー所有とで選択が可能です。
イースタン所有の場合はイースタンが建設費を持ち、ディーラーの場合はもちろんディーラー負担となります。イースタン・ペトロリウムの利点は、ディーラー所有の場合にスタンドのデザインや、他の収益源(コンビニ併設など)の設置をある程度自由に行えるところにあります。
他のガソリンスタンドでは、大体の場合ブランド側が正確にデザインルールを定めているのに対して、同社のフランチャイズは小型、通常、大型の3種類が用意されています。
■フランチャイズ詳細:
★フランチャイズ費
①小型タイプ (アイランド×1~2、計量器/ポンプ×2) – 投資額:200万ペソ〜
※アイランド(計量機を車から守るために、周りより一段高くした所)
②通常タイプ (アイランド×2、計量器/ポンプ× 3-4) – 投資額:500万ペソ〜
③大型タイプ(アイランド×3、計量器/ポンプ× 5以上 800万ペソ〜
★エリア諸条件
●最低エリア面積:400㎡
●最低正面幅:25㎡
※ひどい渋滞、洪水の心配がなく、河川から最低10メートル以上離れていること
(出典および参考:Pinoy Money Talk)
4. フィリピンでの「ガソリンスタンド・ビジネス」に可能性アリ
規制緩和による小売業界への外資参入のチャンスに注目
いかがだったでしょうか。フィリピンの自動差産業の成長度・ガソリン需要の安定した伸びを考慮すれば、充分に今後の可能性が期待できる分野なのではないでしょうか。
外資規制緩和による小売業界への外資参入が目前と伝えられる中、『Digima Journal オンライン』では複数回に渡って、「フィリピンにおける各種小売業界のフランチャイズ費用」を比較してきました。今後も引き続き、フィリピンにおける外資投資のチャンスに注目していきます。
■企画/構成
株式会社クリエイティブコネクションズ&コモンズ
Founder:三宅一道(ミンダナオ日本人商工会会頭)
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『Vision – 私たちが理想とする世界 -』
もっと自由に(法人・個人)新しいマーケットに挑戦できる世界
『Value – 私たちの強み -』
①伴走者かつ提案者であること
ジブンシゴト(頼まれ・やらされ仕事はしない)をモットーに、事業主人公ではない第三者の私たちだからこそできる提案力
②プロジェクト設計力と管理力
デキル化(ミエル化して終わりではなく)をモットーに、『ゴールは何か』の会話から始めるプロジェクト設計力とその後実現するための管理力
③対応力(幅広いエリアと多様な業種実績700社以上)
設計力・管理力を活かし、現地特派員や協力会社と連携による現地力モットーに、ニッチからポップまで多様な業種の海外進出に対応。
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01:伴走グローバル事業部
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『Point』
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デジタルマーケティング課題を共に考え、目標達成のために共に動くチーム
『Point』
✔︎貴社デジマ事業部の担当者として伴走
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『Point』
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『施策と料金イメージ(事例で多い価格帯となります)』
✔︎市場調査:50万円〜80万円〜120万円
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✔︎会社設立:国・形態・内容により大きく変動
✔︎現地企業マッチング:30万円〜50万円〜80万円〜120万円
✔︎プロモーションサポート:国・形態・内容により大きく変動
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