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【2020年版】シンガポール経済の最新状況 | GDPは世界経済危機以来の低成長

掲載日:2020年01月30日

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シンガポール経済の見通しおよび最新状況を、基本情報および経済政策の特徴も含めて、2020年以降の展望についても詳しく解説します。

2020年1月2日、シンガポール貿易産業省(MTI)は、2019年のGDPS成長率を前年比0.7%であると発表(速報値)。これは。2009年のリーマンショック(世界経済危機)以来の低成長となっています。

2011年には一人当たり名目GDPが5万米ドルを突破し、アジア諸国としては圧倒的なレベルでの経済成長を達成。しかし、その後5年間の平均実質GDPの成長率は+3.1%となっており、その前の5年間における驚異的な成長率の半分となっているシンガポール。

以降、成長率は徐々に減速を続けており、2019年8月、シンガポール政府は、2019年の経済成長率の見通しを、5月に発表した「1.5〜2.5%」から「0〜1%」に引き下げています。

2019年10月15日、IMFは、2019年の世界経済見通し(WEO)の成長率を、5期連続の下方修正となる3.0%と予測しました。

東京23区よりやや大きい719.9㎢の国土面積に、人口564万人が暮らす多民族国家であるシンガポールは、初代首相リー・クアンユーの一党独裁制度の下、高度な経済戦略を駆使して、世界でも類を見ない速度で今日の経済発展の礎を築きました。

世界経済が急減速する中でシンガポールはいかにして自国の経済を発展させていくのか? その最新状況について、基本情報および経済政策の特徴も含めて解説していきます。

1. シンガポール経済の最新状況【2019年版】

2019年のシンガポール経済の成長率は世界経済危機以来の低成長

2020年1月2日、シンガポール貿易産業省(MTI)は、2019年のGDPS成長率を前年比0.7%であると発表しました(速報値)。

2018年のGDP成長率3.1%から大幅に下降しており、2009年のリーマンショック(世界経済危機)依頼の低成長となっています。

また、2019年におけるGDPも分野別に目を向けると、建設が前年比2.5%増、サービス業が1.1%増だったのに対して、製造業は1.5%減という結果になりました。

現状の低成長の理由としては、先述したように、GDPの約2割を占めている製造業の不振が挙げられます。これまでシンガポールはアジアのサプライチューンとして高付加価値のエレクトロニクス製品などを周辺国に供給してきましたが、先述の米中貿易戦争のあおりもあり、その売上および利益が下降しているのが最新の状況です。

2020年の経済成長においては、シンガポールが得意とする、バイオメディカル(医薬品・医療機器)や航空の両部門の拡大が期待されています。

2. シンガポール経済の基本情報&3つの経済政策

シンガポール経済の基本情報

このセクションでは、改めて、シンガポール経済の基本情報と、その特徴について解説します。

まずはシンガポール経済の基本情報を下記にまとめたのでご覧ください。

シンガポール経済

※外務省 「シンガポール共和国(Republic of Singapore) 基礎データ」 より抜粋

シンガポール経済の3つの特徴

基本情報に続いては、シンガポール経済の3つの特徴について解説します。

シンガポールは、東京23区よりやや大きい719.9㎢の国土面積に、人口564万人が暮らす多民族国家です。1966年にマレーシアより分離しましたが、当時から資源にも乏しい国として知られていました。建国当初、初代首相リー・クアンユーは、一党独裁制度の下で驚異的なリーダーシップと高度な戦略を駆使することで、現在のシンガポール経済の礎を築きました。

今日の経済発展をサポートしたシンガポールの基本的な経済政策は以下の3つに集約できます。

■1.積極的な外資誘致

建国当初より外資企業を積極的に誘致することで、シンガポール政府は国内産業の育成を試みました。現在、シンガポールには約700社ほどの外資系企業がビジネスを展開しているとされています。

国家の安全保障にかかわる事業以外は、たとえ外資企業でも「出資制限」がなく、メディア関係などの一定の分野を除いては「業種制限」も存在しません。さらに1S$(約75円)で会社を設立することでき、最低資本金も存在しないのです。

このような積極的な外資誘致によって、今日のシンガポール経済の発展が促されたのです。ちなみにシンガポールの法人税率は17%。アジアで2番目に低率とされています。

■2. 政府系企業(GLC)の存在

シンガポールには非常に優秀な政府関連企業が存在します。それらはGLC(Government Linked Company)と呼ばれており、かのシンガポール空港や、テマセクホールディングス、シンガポールテレコム、PSA(シンガポール港の運営主体)といった蒼々たる企業がその名を連ねています。

これらのGLCは、1959年以降、シンガポール経済の推進および外資系企業の合弁先として、いわば便宜的に設立されたもので、政府または政府の持株会社から出資されており、政府によるコントロールによって経営されています。

現在に至るまで、このGLCがシンガポール経済発展に果している役割は非常に大きく、国際競争が激化する21世紀においても、その存在は必要不可欠であると言われています。

■3. 徹底した実力主義によるエリート教育

資源同様に人材も限られているシンガポールでは、国内の教育制度も、その徹底した実力主義およびエリート教育で知られています。

シンガポールにはPSLM(Primary School Leaving Examination)と呼ばれる、小学校卒業前の初等教育修了試験があり、この試験の結果によって、生徒達の進路は〝ほぼ〟決定されます。2017年9月にイギリスの教育誌が発表した「世界大学ランキング」によると、シンガポール国立大学は世界の大学の中で22位にランクインしていますが、そのPSLMで優秀な成績を収めた者の多くが大学に進学します。

そんな徹底した実力主義によるエリート教育を勝ち抜いた高度人材が、先述したGLC(政府系企業)のような優良企業に就任することで、さらなる経済の発展が促されるのです。

3. シンガポール経済における最新の5つの注目産業

シンガポール経済の基本情報と3つの特徴に続いては、シンガポール経済における最新の5つの注目産業をご紹介します。

■1. 金融サービス業

シンガポールはアジアの金融センターと言っても過言ではありません。

シンガポールに拠点を置く銀行約200行を含めて、資産運用会社、保険会社を含めると、シンガポールに存在する金融機関は1,200社以上とされています。シンガポールに統括本部を置く金融機関も年を追うごとに増加しており、アジア有数の資金調達地点としても世界から注目されています。

■2. 石油化学産業

西部にあるジュロン島は、シンガポールの石油化学産業の一大拠点としてその名を轟かせています。日本の三井化学や住友化学など、世界中の石油化学関連企業が、このジュロン島を拠点としており、進出企業は100社以上に及びます。

また、ジュロン島への投資は年々増加しており、完成した2009年には280億Sドルだったのが、現在は500億Sドルにまで拡大。2018年の石油化学産業の生産高は1,004億Sドルとなっており、工業生産高の28%を占めるほどになっています。

■3. エレクトロニクス産業

シンガポール製造業生産高の約3分の1を占めるのがエレクトロニクス産業です。

1970年代においては、半導体組み立てなどの、いわゆる労働集約型の産業でしたが、1990年代以降は、ウエハー製造やIC設計など、その製造活動に高付加価値化を加えることに成功しています。

実は、2016年上半期までは低迷基調が続いていたエレクトロニクス産業ですが、2016年下半期から車載用電子機器やスマートフォン向け部品などの外部需要が拡大。それらの地場輸出が急速に回復することで、2018年のエレクトロニクス生産高は1,313億Sドルとなっており、その内訳として半導体が1,001億Sドルとなっています。

■4. 観光産業

シンガポール政府は、自国への訪問者数増加を国家目標に掲げており、IR(統合型リゾート)開発および国際コンベンション(MICE)の誘致などに注力しています。

2008年のF1開催、2010年のマリーナ・ベイ・サンズとリゾート・ワールドセントーサの2つのIR(統合型リゾート)のオープンなど、積極的に展開を続けてきました。

2018年のシンガポールへの訪問者数は1,850万人を記録しており、これは前年比6.2%の増加で過去最高を更新。2018年の観光収入は271億Sドルと前年比1.0%の増加を記録しています。

■5. 医薬品・医療機器産業

シンガポール政府は、2000 年よりバイオテクノロジー産業を振興しており、その一環として医薬品や医療機器産業にも力を注いできました。

2010の時点で、シンガポールの医療機器生産高の国内製造業生産高全体に占める割合は 1.5%にすぎませんでした。

やがて2011年になると、シンガポールの医療技術産業は生産高43億Sドルに達しており、約9,000人の雇用創出に寄与しています。

さらに2018年においては、医薬品生産高が212億Sドル、医療機器生産高は133億Sドルと、医薬品・医療機器の全生産高に占める割合は9.5%にまで上昇しています。

4. 驚異的な高度成長を果たしたシンガポール経済が停滞(安定)した理由

2012年以降、成長率は徐々に低下

このセクションでは、「驚異的な高度成長を果たした後のシンガポール経済が停滞(安定)した理由」と題して、近年のシンガポール経済の現状を考察します。

2000年代半ばに、シンガポールの一人当たり名目 GDP が日本を超えたことが話題となりました。 2016年には日本の 38,917ドルに対して、シンガポールは 52,961ドルとなり、世界ランキング10位となるまでに成長したのです。

2006年から2016年の10年間の GDP 成長率(年平均)は、日本の0.9%に対して、シンガポールは4.7%を記録していました。

ただ、2012年〜2016年にかけての5年間の平均実質GDPの成長率は+3.1%となっており、その前の5年間における驚異的な成長率の半分となっています。以降、成長率は徐々に低下しており、このテキストの冒頭で述べたように、2019年8月、シンガポール政府は、2019年の経済成長率の見通しを、5月に発表した「1.5〜2.5%」から「0〜1%」に引き下げています。

別項にて後述しますが、シンガポール経済を支えていたのは、自国で作ったエレクトロニクス製品や化学品に加えて、コンサルティングといった企業向けサービス、貿易・物流サービス、金融サービスといった財貨・サービスの輸出でした。

しかし、2010年頃をピークに主要貿易相手国である中国の経済成長が低下したことを受けて、それらの輸出は減速していきました。さらに資源価格が低下したことで、近隣諸国であるマレーシアやインドネシアの成長も鈍化。その結果、従来から盛況だった石油採掘設備の輸出も失速してしまい、先述のような低成長が続く状況となってしまったのです。

5. シンガポール経済における新たな国家目標とは?

未来経済委員会(CFE)が2017年2月に「新成長戦略」を発表

ここまでで解説したように、以前のような爆発的な経済成長が見られなくなったシンガポールですが、2017年2月、シンガポールの「未来経済委員会(CFE: Committee on the Future Economy)」は、国家戦略としての新成長戦略を発表しました。

シンガポール政府は不定期で経済の成長戦略を立案する委員会を設置しており、この2017年のCFEは、2010年の前回委員会に続いて過去30年間で4回目の委員会となります。

この新成長戦略の大きな目標としては、「年2〜3%のGDP成長率達成」を掲げており、「各業界ごとに特化した労働生産性向上の取組を策定」し、「国を挙げてイノベーションを促進する」としています。

さらに、「次世代のパイオニア」を目指し、オープンで世界と相互接続した価値創造型の経済を構築。すべての国民に、豊富な機会、持続的な賃金上昇、有意義なキャリアを提供するという国家像を新目標としています。

それらの達成のために、以下の7つの戦略を提言しています。

① 国際的な経済関係の深化と多角化
② 労働者の継続的な技術習得とその活用
③ イノベーションと事業拡大に向けた企業能力の強化
④ デジタル技術力の強化
⑤ 活気と機会に満ち、外部と繋がった都市国家の創造
⑥ 23業種の産業変革マップの策定及び導入
⑦ イノベーションと成長を実現するパートナーシップの活用

安定成長に入ったとも言えるシンガポール経済の最新状況

前述したように、新目標発表までの過去15年間は年平均で5%を上回る経済成長を遂げてきたシンガポール。この新成長戦略では10年間で年平均2~3%の成長を目指しています。確かにこれまでのような驚異的な経済成長は望めないのかもしれませんが、見方を変えれば、シンガポール経済は、ある種の安定成長期に入ったとも言えるのかもしれません。

6. シンガポールの対外直接投資と対日投資

最後に、シンガポールの対外直接投資と対日投資について述べて、本テキストの結びといたします。

シンガポールの対外直接投資

シンガポールの2017年末の対外直接投資は8,155億Sドル。地域別だと、ASEAN(19.2%)、中国・香港(23.5%)、インド(5.1%)となっており、対アジアが半数を占めており、国別となると対中国が最大の投資先となっています。

業種別ですと、2016年末において、金融・保険(48.3%)に続いて、製造業(16.7%)、卸売・小売(8.2%)などが中心となっており、伸び率で見ると、専門サービスが前年比22.4%増と大きな動きを見せています。

シンガポールの対日投資

シンガポールの対日直接投資額は、2017年において、34億4,700万米ドルとなっており、前年比13.2%の増加となっています。

従来より、シンガポールの対日大型投資は、シンガポール政府系企業による不動産関連の投資が多く、2020年以降の東京五輪開催によって、訪日客が増加することを予測しての投資も存在します。

また、飲食関連やAIや生体認証といった最新技術を擁するキャッシュレス決済サービスを提供する企業の進出も報告されています。

また、2018年に訪日したシンガポール人は43万7,300人と過去最高を更新しています。

7. 優良なシンガポール進出サポート企業をご紹介

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今回はシンガポール経済の最新事情について解説しました。

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(参照文献)
・外務省 「シンガポール共和国(Republic of Singapore) 基礎データ
・JETRO 「シンガポール概況と日系企業の進出動向 (2019年4月)
・J.CLAIR Singapore「シンガポールの政策 経済産業政策編

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この記事を書いた人

SukegawaTakashi

助川 貴

株式会社Resorz

「Digima〜出島〜」編集部・コンテンツディレクター。 雑誌編集・書籍編集・WEB編集を経て現職。 これまでに、アメリカ・イギリス・インド・中国・香港・台湾・ベトナム・ミャンマー・カンボジア・マレーシア・シンガポール・インドネシア・フィリピン・エジプトなどの国・地域へ渡航。趣味は、音楽・スノーボード・サーフィン・ドローンほか。

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