【ベトナム製造業】ローラーチェーン事業のベトナム進出! 成功する現地提携の5つのカギ

ベトナムへの進出を検討するローラーチェーンメーカーにとって、現地企業との提携は成功の鍵を握る重要なテーマです。製品の品質維持、調達の効率化、そして生産コストの最適化を図るうえで、信頼できるローカルパートナーとの協業は不可欠です。しかし、単にOEMを組むだけでは十分とは言えず、品質基準のすり合わせ、技術情報の保護、現地マネジメント体制の確立といった“実務の壁”が数多く立ちはだかります。
本記事では、ローラーチェーンとは何かという基本から、なぜベトナムが注目されているのか、現地展開の際に押さえるべき5つの提携ポイント、フェーズ別の実務対応、成功事例までを体系的に解説します。製造現場を持つ企業が海外展開を図る際に直面するリアルな課題を見据え、ベトナムという市場で競争力を築くための実践ガイドとしてご活用いただければ幸いです。
▼ 【ベトナム製造業】ローラーチェーン事業のベトナム進出! 成功する現地提携の5つのカギ
1. ローラーチェーンとは?|構造・用途・ビジネスの基本
ローラーチェーンとは、主に動力伝達・搬送を目的として使われる工業用チェーンの一種で、自動車、農機、建設機械、物流装置など幅広い産業分野で活用されています。構造は、ピン・ブッシュ・ローラー・プレートといった複数の小さな部品で構成されており、それぞれが精密な寸法と加工精度で連結されています。特に負荷の大きい環境や連続稼働が求められる現場では、強度と耐久性、摩耗への耐性が非常に重視されます。
ローラーチェーンのビジネスは単なる製造にとどまらず、素材調達から熱処理・表面処理、さらには品質検査、梱包・出荷に至るまで多工程にわたるため、サプライチェーンの整備や外部パートナーとの連携が極めて重要になります。また、顧客ニーズに応じたカスタマイズ製品の開発や、高精度を要する用途への対応力など、単価よりも“対応力”が競争優位を左右する要素にもなります。こうした特徴から、進出先の国選びや現地提携企業の目利きが成功の成否を分ける要因となります。
2. なぜ今、ローラーチェーン製造業がベトナムに注目すべきか?
■ グローバル調達の拠点としてのポテンシャル
近年、グローバル企業の間で注目を集めているのが「チャイナ・プラスワン」戦略です。これまで製造拠点として圧倒的な存在感を誇っていた中国に代わる、または補完する国としてベトナムが急浮上しています。ローラーチェーン産業においても、労働集約型の工程が多く、同時に品質管理と加工精度が求められるため、人件費と技能のバランスがとれたベトナムは非常に魅力的な拠点となります。とくにホーチミン、ビンズオン、ドンナイといった工業団地では日系企業の進出が進んでおり、現地調達・現地生産体制の構築が現実的になりつつあります。
■ 鉄鋼・加工・熱処理など周辺産業も発展中
ローラーチェーンの製造には、ピンやプレートといった機械部品の精密加工だけでなく、焼入れやショットブラストといった熱処理・表面処理も不可欠です。これまでこれらの工程は日本国内または中国で対応するケースが多かったのですが、近年ではベトナム国内にも対応可能なサプライヤーが増加しており、ワンストップでの製造体制を整えることができるようになってきました。とくに日系の金属加工業者や韓国系の表面処理業者が参入しており、素材調達から最終組立までの一貫性が高まっています。このような背景から、ローラーチェーン製造におけるベトナムの“産業インフラ”は、今まさに整備段階から競争力強化フェーズへと移行しつつあると言えるでしょう。
3. ローラーチェーン事業の現地展開で必要な5つの提携ポイント
① 提携先の選定:生産委託か合弁か?
ベトナム企業との提携に際して、最初に検討すべきは「生産委託(OEM)」にするか、「合弁会社(ジョイントベンチャー)」を設立するかという提携形態の選定です。OEMであれば初期投資を抑え、フレキシブルな契約が可能ですが、自社の品質基準や納期管理が十分に伝わらないリスクもあります。
一方、合弁会社では経営権を一部共有することになりますが、その分技術指導や製造プロセスへの関与度を高められます。特に金型設計や表面処理といった技術的機密を含む製品を扱う場合は、合弁型のほうが中長期的にはブランド保護と技術流出防止に有利に働くケースもあります。企業の事業戦略やベトナム市場への定着度に応じた形態選択が必要です。
② 品質基準の共有と監査体制の整備
製造委託先との間で最もトラブルが起きやすいのが「品質基準」のすれ違いです。日本企業のQCD(品質・コスト・納期)管理をそのままベトナムに持ち込んでも、現地企業にとっては抽象的で伝わりにくいことが多く、誤解や工程ミスの原因になります。したがって、まずは製品図面だけでなく、許容公差・外観基準・工程写真・検査記録のテンプレートなどを用い、可視化・数値化された品質マニュアルを整備することが必要です。
また、定期的な品質監査の実施と、改善点の共有・是正対応までのプロセスを標準化することで、属人的な判断に頼らずに安定した品質を確保できます。初期段階での“基準の言語化”が、信頼構築の出発点となります。
③ 技術移転・知的財産保護の両立
現地生産を進める過程で避けて通れないのが「技術移転」に関する対応です。ローラーチェーンの設計図、熱処理条件、組立手順など、製品のコア技術が含まれる領域では、単なるノウハウ提供ではなく、守るべき技術要素を明確化した契約設計が重要になります。たとえば、NDA(秘密保持契約)の締結に加えて、技術供与契約を交わし、移転範囲・再利用の可否・使用目的の限定などを法的に明文化します。さらに、金型や治具といった物理的資産についても、所有権と使用条件を明確にしておく必要があります。現地との信頼関係を築きながらも、“伝える技術”と“守る技術”を明確に区別することで、事業の継続性とブランド価値の維持を図ることができます。
④ サプライチェーン管理:現地サプライヤーとの連携
ローラーチェーンは複数の精密部品の組み合わせで成り立っており、現地展開においても部品供給体制の整備が欠かせません。ベトナム国内でもピン・プレート・ブッシュなどの主要部材は調達可能ですが、品質と納期にはばらつきがあり、初期段階での全面ローカル化は現実的ではありません。そのため、日本からの部材輸入をベースにしつつ、段階的に現地サプライヤーを育成していく「ハイブリッド型調達」が有効です。具体的には、ベトナム企業に対する検査指導や加工精度のフィードバックを通じて、長期的なパートナー関係を築いていくことが求められます。また、複数業者とのネットワーク化や代替ルートの確保により、サプライチェーンのリスク分散も実現できます。
⑤ 組織文化の違いとマネジメント体制
ベトナムの労働者は勤勉で成長意欲が高く、技術吸収力にも優れていますが、日本とは異なる組織文化や職場コミュニケーションの在り方を理解することが重要です。例えば、現場判断を重視する日本式の“暗黙の了解”はベトナムでは通用しづらく、言語・習慣の違いから誤解が生まれやすい側面があります。したがって、日常の業務においては指示の明確化、進捗報告の頻度管理、フィードバックの仕組み化など、明文化されたマネジメント体制の構築が欠かせません。また、中間管理職としてローカルスタッフを登用し、日本人駐在員と連携させることで、現場と経営の両方をカバーできる“ハイブリッド型マネジメント”が実現します。人材の活用と文化理解を両立することで、組織全体の生産性を引き上げることが可能です。
4. 提携フェーズ別チェックリスト
■ 進出前(リサーチ段階
- 業界展示会や工業団地ツアーへの参加
- 商工会議所・JETROの現地レポート活用
- 現地企業の技術力・財務状況の調査
提携を検討するにあたり、まず重要なのは現地市場と産業基盤に対する十分なリサーチです。ベトナムには全国各地に工業団地がありますが、地域ごとに技術レベルや労働力、インフラ環境が異なります。最初のステップとして、業界展示会や工業団地視察ツアーへ参加することで、現地のサプライヤーや政府機関との接点をつくることができます。また、JETROや商工会議所が提供する現地調査レポートも非常に有益です。あわせて、パートナー候補企業の財務状況や納税履歴、労務環境、過去の取引実績などを調べておくことで、信頼性とリスクの見極めがしやすくなります。表面的な印象だけで提携を進めるのではなく、多面的な視点から“選定の精度”を高めることが肝要です。
■ 提携交渉〜契約締結
- 技術範囲の切り分けと守秘義務の明文化
- サンプル評価+小ロット試作の実施
- 双方の責任範囲を明確にした覚書(MOU)締結
実際の提携交渉では、技術範囲や役割分担、投資比率、責任範囲などを明確にした契約設計が重要です。特にOEM型であれ合弁型であれ、「どこまで開示するか」「どの業務に関与するか」といった線引きを、曖昧な表現で済ませると後々のトラブルの火種になります。まずは試作や小ロットのサンプル評価を通じて技術水準を見極め、その結果をもとに事前合意書(MOU)を締結して、交渉の基盤を固めます。その後、本契約へ進む際には、成果物の定義、秘密保持、品質保証、契約解除時の対応などを含めた包括的な枠組みを整備する必要があります。日越間の商慣習の違いを理解しつつ、日本側のスタンダードをローカライズして伝える工夫が求められます。
■ 立ち上げ期のトライアルとPDCA設計
- 日本人技術者の定期駐在またはリモート指導
契約締結後、すぐに本格稼働に移行するのではなく、立ち上げ初期は必ず「試作フェーズ」や「小規模生産フェーズ」を設けておくことが望ましいです。この段階では、実際の量産を想定したプロセスで、設備適合性・作業手順・品質安定性の3点を重点的にチェックします。そのうえで、日越双方の技術者による定期的なレビュー会議や不具合共有の場を設け、PDCA(計画→実行→評価→改善)を短いスパンで回す体制を整備することが大切です。また、この期間に生じたトラブル事例を蓄積し、改善対応をマニュアル化することで、現場の属人性を排除しやすくなります。初期フェーズでの“失敗を許容する文化”と“改善を仕組みに落とす体制”が、中長期的な生産安定化の礎になります。
■ 稼働後のトラブル共有と定期改善体制の整備
- 品質不良時のPDCA体制整備
- 成果・問題点を共有する月次ミーティング
現地での生産が安定的に稼働し始めた後も、課題は常に発生します。重要なのは、トラブルを一過性の問題として終わらせず、構造的な改善へと昇華させる仕組みづくりです。そのために有効なのが、月次や四半期ごとに設ける定例の振り返り会議です。この場では、不良件数・納期遅延・改善提案数などのKPIを設定し、数値ベースで進捗管理を行うとともに、双方が抱える課題とその背景を率直に共有できる雰囲気づくりが求められます。また、品質トラブルの“再発防止策”や“教育プログラム”のブラッシュアップもこのタイミングで行うことで、組織としての改善力が継続的に高まります。最終的には、現場の小さな変化を確実に拾い上げ、体制全体の進化につなげることが、持続可能な提携関係を支える基盤となります。
5. 成功企業の事例紹介
■ A社(関西エリア/搬送装置部品メーカー)
現地工業団地内にて、ベトナム中堅メーカーと合弁会社を設立。品質管理を日本側で主導しつつ、2年でローカル比率80%の生産体制に成功。納入先はASEAN全域に拡大。
■ B社(精密チェーン製造/中堅企業)
進出当初はOEM先との不良率が高かったが、監査体制と日越技術者の合同勉強会を設けることで信頼関係を構築。現在では現地法人も設立し、加工の一部をベトナムから本国に逆輸出。
6. まとめ:現地企業との「信頼」と「共創」が競争力の源泉
ベトナムでのローラーチェーン製造業の成功には、短期的なコスト削減よりも、中長期的な“共創関係”の構築が不可欠です。提携先との相互理解と技術的連携、組織面のマネジメント強化により、現地での競争力を確立していきましょう。
ベトナム進出に関するご相談は、ぜひWMH(ワールド・モード・ホールディングス株式会社)までお気軽にお問い合わせください。
この記事が役に立つ!と思った方はシェア
海外進出相談数
27000
件突破!!
最適サポート企業を無料紹介
コンシェルジュに無料相談
この記事をご覧になった方は、こちらの記事も見ています
オススメの海外進出サポート企業
-
YCP
グローバル21拠点✕800名体制で、現地に根付いたメンバーによる伴走型ハンズオン支援
<概要>
・アジアを中心とする世界21拠点、コンサルタント800名体制を有する、日系独立系では最大級のコンサルティングファーム(東証上場)
<サービス特長>
・現地に根付いたローカルメンバーと日本人メンバーが協働した伴走型ハンズオン支援、顧客ニーズに応じた柔軟な現地対応が可能
・マッキンゼー/ボストンコンサルティンググループ/ゴールドマンサックス/P&G/Google出身者が、グローバルノウハウを提供
・コンサルティング事業と併行して、当社グループで展開する自社事業群(パーソナルケア/飲食業/ヘルスケア/卸売/教育など)の海外展開実績に基づく、実践的なアドバイスを提供
<支援スコープ>
・調査/戦略から、現地パートナー発掘、現地拠点/オペレーション構築、M&A、海外営業/顧客獲得、現地事業マネジメントまで、一気通貫で支援
・グローバル企業から中堅/中小/スタートアップ企業まで、企業規模を問わずに多様な海外進出ニーズに応じたソリューションを提供
・B2B領域(商社/卸売/製造/自動車/物流/化学/建設/テクノロジー)、B2C領域(小売/パーソナルケア/ヘルスケア/食品/店舗サービス/エンターテイメントなど)で、3,000件以上の豊富なプロジェクト実績を有する
<主要サービスメニュー>
① 初期投資を抑えつつ、海外取引拡大を通した円安メリットの最大化を目的とする、デジタルマーケティングを活用した海外潜在顧客発掘、および、海外販路開拓支援
② 現地市場で不足する機能を補完し、海外事業の立ち上げ&立て直しを伴走型で支援するプロフェッショナル人材派遣
③ アジア圏での「デジタル」ビジネス事業機会の抽出&評価、戦略構築から事業立ち上げまでの海外事業デジタルトランスフォーメーションに係るトータルサポート
④ 市場環境変動に即した手触り感あるインサイトを抽出する海外市場調査&参入戦略構築
⑤ アジア特有の中小案件M&A案件発掘から交渉/実行/PMIまでをカバーする海外M&A一気通貫支援
⑥ 既存サプライチェーン体制の分析/評価/最適化、および、直接材&間接材の調達コスト削減 -
DAIHO
東南アジア事業の成長を現地から伴走支援
1989年にシンガポールで設立以来、東南アジアを中心に数多くの日系企業の海外進出と事業拡大を支援してきました。情報通信技術の普及や支援機関の増加により、過去に比べて多くの情報を容易に取得できるようになりましたが、本当に必要な情報は、依然として現地でその業界に従事する専門家にしか分からないという現実は変わっていません。
私たちは、東南アジアで長年培ってきた実績とネットワークを活かし、市場理解、海外展開戦略立案、拠点立上支援、サプライヤー探索、販路開拓(販売代理店探索)、M&A支援等、海外事業に関連する課題に対して、現地の提携先と密接に連携し、実践的かつ成果に直結するソリューションを提供しています。
私たちは、お客様の海外事業の成功を最優先に考え、貴社のパートナーおよびプロジェクトコーディネーターとして、貴社海外事業の発展に貢献いたします。 -
GLOBAL ANGLE Pte. Ltd.
70か国/90都市以上での現地に立脚したフィールド調査
GLOBAL ANGLEは海外進出・事業推進に必要な市場・産業調査サービス、デジタルマーケティングサービスを提供しています。70か国90都市以上にローカルリサーチャーを有し、現地の言語で、現地の人により、現地市場を調べることで生きた情報を抽出することを強みとしています。自社オンラインプラットホームで現地調査員管理・プロジェクト管理を行うことでスムーズなプロジェクト進行を実現しています。シンガポール本部プロジェクトマネージメントチームは海外事業コンサルタント/リサーチャーで形成されており、現地から取得した情報を分析・フォーマット化し、事業に活きる情報としてお届けしております。
実績:
東アジア(中国、韓国、台湾、香港等)
東南アジア(マレーシア、インドネシア、ベトナム、タイ等)
南アジア(インド、パキスタン、バングラディッシュ等)
北米(USA、メキシコ、カナダ)、南米(ブラジル、チリ等)
中東(トルコ、サウジアラビア等)
ヨーロッパ(イタリア、ドイツ、フランス、スペイン等)
アフリカ(南アフリカ、ケニア、エジプト、エチオピア、ナイジェリア等) -
ワールド・モード・ホールディングス株式会社
【メディア掲載】日経MOOK「中堅・中小企業のASEAN進出 2025年版」に掲載されました
私たちワールド・モード・ホールディングスは、日本で唯一のファッション・ビューティー業界に特化したソリューション・グループです。
業界に精通したプロフェッショナルが集結し、従来の枠を超えたトータルサポートを実現。戦略企画、マーケティング、プロモーション、店舗運営、人材採用・育成など、多角的な視点から実践的なソリューションを提供しています。
近年では、カフェ・飲食、小売以外の業態や海外市場にも対応領域を拡大。エリア・業種を問わず、クライアントの課題に寄り添った柔軟な支援を行っています。
今後も、「顧客に寄り添い、目標を共有するパートナー」として、そして「ワンストップで価値を届けるプロフェッショナル集団」として、進化を続けてまいります。
<グループ会社>
株式会社iDA、株式会社AIAD、株式会社フォー・アンビション、株式会社BRUSH、VISUAL MERCHANDISING STUDIO株式会社、株式会社AIAD LAB、株式会社 双葉通信社、WORLD MODE ASIA PACIFIC -
合同会社サウスポイント
アジアに近い沖縄から海外ビジネスをサポート
2017年7月日本・沖縄と海外の万国津梁の架け橋を目指して、企業の海外展開支援を目的として沖縄・那覇で設立。アジア・欧州を中心に沖縄県内・沖縄県外企業の海外進出・国際展開のサポートを実施しています。2022年7月には観光産業の伸びの著しい石垣市に八重山事務所を開設しております。
沖縄をハブに、台湾・中国・香港・ベトナム・タイ・マレーシア・シンガポール・インドネシア・オーストラリア・ニュージーランド・イギリス・ドイツ・ブラジル各国にパートナーエージェントを配置し、アメリカ合衆国・インドは提携先を設けていますので、現地でも情報収集、視察等も直接支援可能、幅広く皆様の海外展開とインバウンド事業をサポートしております。