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【2019年版】タイ経済の最新状況 | タイランド4.0は経済発展を加速させるのか?

掲載日:2019年09月27日

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タイ経済の最新動向と2019年以降の経済成長の見通しについて解説します。2019年の国内総生産成長率見通しが3.8%とされているタイ。同年3月に実施された総選挙では、軍政の暫定首相だったプラユット政権が続投する結果に。現状では、2015年に同政権にて提唱された、デジタルおよびITを根幹とする次世代型産業育成を目的とする「タイランド4.0」による、イノベーション主導型の経済路線への転換が進みつつあります。

また、世界一の親日国として知られ、ASEAN諸国の中でも「先進国」とされているタイですが、高齢化による労動力の不足や、輸出依存度の高さ、さらには「中進国の罠」も懸念されているのが、タイ経済の最新状況です。

その一方で、先述の長期ビジョン「タイランド4.0」は、2036年までに1人あたりのGDPを13,000ドルまで上げることで、高所得国の仲間入りを目指す目的を掲げています。短期的には堅調なものの、中長期的には穏やかに下降傾向にあるとされているタイ経済ですが、気になるその現状とはいかなるものなのか?

タイ経済の基本情報や最新の経済動向を踏まえて、日本企業のタイ進出のメリットについても考察していきます。

1. タイ経済の最新動向と2019年の課題

短期的には堅調なタイ経済だが中長期的には穏やかに下降傾向にある

2015年辺りからタイ経済は堅調に盛り返しつつあると言われてきました。その背景には、2014年辺りまで続いていた、タクシン首相(当時)の政治運営の是非をめぐる政治的混乱が2015年にいったん終息したこと。さらに2017年からの世界経済の景気回復の影響もあり、自国経済の屋台骨である「輸出」が拡大したことが要因とされています。

事実、GDP成長率は、2014年から4年連続で対前年比を上回り、2018年には+4.1%と6年ぶりの高水準を記録しました。その内需を底上げした要因として、2016年にクーデータを経て発足したプラユット政権によって掲げられた、デジタル経済と次世代産業の育成を柱とする「タイランド4.0」が挙げられます。

「タイランド4.0」については別項にて後述しますが、2019年現在のタイ経済に目を向けてみると、同年3月に、タイ中央銀行は同月20日の金融政策委員会合で、2019年のタイの国内総生産成長率見通しを、2018年12月時点の4%から3.8%に引き下げています。

その要因としては、依然不安定なタイ国内の政権情勢と、すでに世界経済がピークアウトを迎えていること、さらには世界を悩ます「米中貿易戦争の不透明な影響」が考えられます。また、そもそも先述のタイにおける景気の上向きは短期的なものととらえられており、中長期的にはタイ国内の景気は穏やかに下降していくという見方が濃厚でもありました。

GDPの浮き沈みが激しい理由は…輸出依存度が高いため

そもそもタイは、ASEANの中でもGDPの浮き沈みが激しい国です。理由としては、もともとタイという国は輸出依存度が高いため、世界経済の景気によって左右されやすい経済システムであることが挙げられます。

最近では、中国へ盛んに輸出がされていますが、中国の経済力鈍化に伴う輸出の減少が懸念されています。そのため現在では、従来の中国でだけでなく、経済発展が著しいマレーシアやベトナムにも積極的に輸出を行っている状況なのです。

これまでも、いわゆる「チャイナリスク」が不安要素として挙げられてきましたが、前述のようにASEAN輸出を拡大することによって、そのリスクも回避できると考えられています。また、ASEANの中でも、不況知らずのベトナムやこれから経済発展の機運が高まるミャンマーへの輸出を拡大することで、GDPの浮き沈みを防げるという見方もあります。

このような経済的背景から、タイには「リスク分散型」の輸出形態が求められると考えます。タイ国内では、農業従事者が就業者の約4割を占めていますが、その生産高は非常に低いのが現状です。このため、農業における自動化や効率化を目指すことで、タイ国内の生産力の向上が可能になるという見方もあります。

不安定な内政はもはやデフォルト? 2019年3月の総選挙の結果はプラユット政権が続投

タイでは、軍主導によるクーデターや大規模な反政府デモが多く、内政が不安定であると言えます。

事実、現在、政治を動かしているプラユット政権は、2014年の軍事クーデーターで当時のタクシン元首相派の政権を倒すことで政治の実権を握った軍が主導する政権です。

しかしながら、三菱UFJリサーチ&コンサルティングのレポートによると、タイ国民の政治意識や現地に進出している日系企業のアンケートにおいては、軍事クーデターはタイ経済に影響を及ぼさないことが示されています。

タイ人の政治意識は、強権政治や金権政治の打倒目的であれば、非合法でもよいという考えがあります。また、「国家の不可分」「国王の神聖不可侵」「タイ人が信仰する仏教を国王が擁護する」という3原則があり、この原則が脅かされない限りは、軍事クーデターがタイ経済の影響を及ぼすことはないと述べています。

日系企業も3分の2以上が「クーデターによる経済の影響なし」と回答しており、さらにクーデターが多発しても、タイ社会や経済に中長期的な打撃を与えることはない、と述べています。

クーデター当初、タイの人々は社会に安定をもたらしたクーデタを支持しましたが、次第に国民と軍事政権の軋轢は増しつつありました。

2019年3月24日に実施された総選挙では、軍政の暫定首相だったプラユット氏が続投する結果となり、表面的にはこれまでの軍事政権から民政復帰という形となりましたが、いまだ軍の影響が強く残る政権であることは否定できません。

参照:「タイ経済の現状と今後の展望 ~短期的には危機の可能性小だが、中長期的には停滞の懸念もあるタイ経済~」三菱UFJ&リサーチコンサルティング(2016)

高齢化が進んでおり、労働力が不足

また、ASEANの中で唯一高齢化が進んでいると言われている国がタイです。日本と同様、タイでは、高齢化による労働力の低下が問題とされています。国際通貨研究所のレポートでは、この現象を「豊かになる前に老いる」と述べています。

参照:「豊かになる前に老いるアジア」国際通貨研究所(2017)

ASEANでは、ベトナムやマレーシア等の新興国の経済発展が著しく、これらの国々は、人件費が安く、更には若い労働力が豊富にある為、コスト的な面で考えると、タイよりもASEAN後進国への進出が魅力的だと言えます。

タイ政府は、労働力不足に対し、保育サービスの充実等による女性の就業機会の増加、高齢者の就業率の増加、外国人労働者の誘致といった施策をとっています。この労働力不足に対し、どのようにアプローチしていくかが、後述する「タイランド4.0」実現の鍵だといえます。

2. 次世代型産業育成計画「タイランド4.0」とは?

20年を想定した長期ビジョン「タイランド4.0」構想

このセクションでは、2015年にプラユット政権下によって提唱された経済発展計画「タイランド4.0」ついて解説します。

「タイランド4.0」とは、今後20年でデジタル立国を目指すという計画で、デジタル経済の発展と新世代産業の育成をふたつの柱としています。これまでの「タイランド3.0」は、従来型の重工業や工業製品の輸出に注力していましたが、「タイランド4.0」では、イノベーション主導型の経済成長へと舵を切ることを宣言しています。

具体的には、2036年までに1人あたりのGDPを13,000ドルまで上げ、高所得国の仲間入りを目指す計画です。その中で特に重視しているのは以下の10分野とされています。

・次世代自動車
・スマートエレクトロニクス
・医療・健康ツーリズム
・農業・バイオテクノロジー
・未来食品
・ロボット産業
・航空・ロジスティック
・バイオ燃料・バイオ科学
・デジタル産業 ・医療ハブ


特にデジタル産業は「タイランド4.0」達成の鍵となるため、タイ政府は上記の経済計画とは別に「タイ・デジタル経済社会開発20ヵ年計画」を策定。「デジタル立国」を目指します。また、デジタル産業推進の為、情報通信技術省から新たに「デジタル経済社会開発庁」に改組されています。

タイランド4.0構想の中核に位置づけられる「東部経済回廊(EEC)」とは?

そんな「タイランド4.0」の中核として位置づけられているのが「東部経済回廊(EEC)」です。EECとはタイ東部の3県(チョンブリ県・ラヨーン県・チャチュンサオ県)を経済特区(特定投資優遇地域)として開発する計画です。

2017年には、日本の経済産業省とタイの工業省との間で、東部経済回廊(EEC)及び産業構造高度化に向けた協力に関する覚書が署名されています。

具体的な経済特区(特定投資優遇地域)での優遇政策としては、当該地域に投資に対して最長8年間の法人税免除に加えて、その後5年間の法人税50%免除が受けられる優遇処置が決定されています。

そもそもタイ経済では、人件費の向上および生産年齢人口の減少といった問題を抱えており、これまでのような労働収益型産業への依存は厳しいとされています。つまり国内の労働市場を、「タイランド4.0」で掲げられている、次世代ターゲット産業とされる知識集約型の労働へと移行していかないと、いわゆる「中進国の罠」(※1)に陥ってしまう可能性があるのです。

ただ次世代型産業への移行には、国内での理系およびIT系人材の確保が必要不可欠です。もともと理工系学生の不足が懸念されているタイだけに、「タイランド4.0」の実現には、いまだ課題があることは否めません。

※1
中進国の罠:新興国が低賃金の労働力を原動力とし中所得国の仲間入りを果たした後に、自国の人件費の上昇や後発新興国の追い上げ、先進国との次世代型産業の格差などによって、経済成長が停滞する現象を指す

3. タイ経済およびタイの基本情報

タイの宗教・言語・政治背景

ここからは改めてタイ経済の根幹を成す、タイの宗教・言語・政治背景といった基本情報を簡潔に解説します。

タイは、約6,500万人が暮らしている仏教国です。首都はバンコクにあり、民族的にはタイ人が優勢です。少数民族としては、中国から移り住んできた華人やマレー族が暮らしています。

言語はタイ語が公用語ですが、若い人を中心に英語ができる人が増加しています。2016年には、プミポン国王が亡くなり、現在は、息子のワチラロンコーン国王が後を継いでいます。

タイの政治の仕組み

タイは、立憲君主制を採っており、国家元首は、ワチラロンコーン国王となっています。また、総理大臣と国務大臣は、国王によって任命されます。現在は、プラユット・ジャンオーチャー首相が務めています。

タクシン元首相、タクシン元首相の妹・インラック前首相が務めていましたが、彼らは、強硬的な政権運営を行っていたこともあり、それに対するクーデターや反政府デモによって打倒されました。ちなみに、1980年代初頭から2019年4月までの約40年の間、クーデターは5回(1981年・1985年・1991年・2006年・20114年)起こっています。現在、タクシン・インラック兄妹はタイを亡命。世界各国に滞在しています。

タイ経済の基本情報

セクションの最後では、タイ経済の基本情報を表にまとめてご紹介します。

■タイ経済の基本情報
タイ経済_01「タイ王国(Kingdom of Thailand)基礎データ」外務省より抜粋

4. タイ経済にも深い影響がある軍事政権について

2019年3月、5年間の軍事政権を経て民政復帰に向けた総選挙が実施

このセクションでは、タイ経済にも深い影響がある、軍事政権について、5年間の軍事政権を経て、2019年3月に実際された総選挙を通して考察していきます。

もともとタイは、軍部の圧力が強い国です。2014年のインラック政権下での軍によるクーデターから軍事政権が成立しました。現在の首相でもあり、当時のクーデターを指揮したプラユット氏は、もともと陸軍司令官です。タイでは、1932年以降の立憲民主制への転換から現在まで、約53年間も軍が政権を担っているのです。

非軍閥からも首相経験者は出ていますが、現在亡命中のタクシン氏・インラック氏は、いずれも軍のクーデターやデモによって退陣に追い込まれていることから、いかにタイでの軍閥の勢力が強いかが分かります。

しかしながら、クーデター後のプラユット軍事政権は、民政復帰のロードマップの策定、更には新憲法が国民投票によって可決され、民政移管への動きを着々と進めており、2019年3月の総選挙を経て、民政移管を果たしています。

2014年から約5年間に渡って軍事政権が続いたタイですが、この民政復帰に向けた総選挙(下院選、定数500)が実施されたことによって、形だけという見方はあるものの、民政復帰を果たしました。そして、そのプラユット政権下で掲げられたのが、先述した未来のタイ経済の命運を握る、次世代産業育成を目的とした「タイランド4.0」であるということは心に留めておくべきでしょう。

5. タイに進出するメリットとは?

日系企業が多く、協力関係を築きやすい

タイに進出している日系企業は、世界でも5本の指に入る多さです。

2018年度のタイ中央銀行の資料によると、タイへの国別の海外直接投資(FDI)において、2012~2017年までの間では日本が最大の投資国です。また、すでにタイには数多くの日系企業が進出しており、JETROによる『タイ日系企業進出動向調査2017年』によると、2017年5月時点で約5,444社が拠点を置いています。

また、首都のバンコクには、約1,700社が進出しているとされており、中国の上海に次いで最も日系企業が多い地域であるとされています。

この理由としては、インフラが整っている点、日本とFTAを締結している点、各種産業が発展している点があります。日系企業が多いことから、競争も激しいと言えますが、裏を返せば、現地法人同士での協業や提携も十分にしやすい環境であることが言えます。

最近では、製造業より非製造業の企業が多く進出しています。特に外食産業は、多く進出している為、新規参入が難しい状況にあります。

一方、競争が少ない金融や「タイランド4.0」に見られるようなデジタル産業やITの需要は高いと考えられます。考えられるサービスとしては、Fintechや決済サービス等の需要が高いかもしれません。

「日本ブランド」の需要が高い

タイは、世界で最も親日国家として知られており、「日本ブランド」の需要は非常に高いです。この為、日系企業にとってもビジネスがしやすい点があるといえます。

日本料理屋がタイに多く進出している事実から、タイでは和食の人気が高いことがわかります。日本料理やファッション、更にはアニメや漫画、映画といったポップカルチャーが人気を博しています。

また、訪日旅行客も年々増加しており、昨年度は約98万人のタイ人が日本に訪れました。全体的に訪日観光客が年々増加していることから、タイからの観光客も増加すると思われます。

その為タイ進出だけなく、タイやその他ASEAN向けのインバウンド事業にもビジネスチャンスがあります。タイ人向けの広告や展示会を通じた訪日PR等で働きかけることができます。

6. 優良なタイ進出サポート企業をご紹介

御社にピッタリのタイ進出サポート企業をご紹介します

今回はタイ経済の最新動向について解説しました。ASEAN域内では、低成長・低インフレであることから「中進国の罠」にかかっているとも言われているタイですが、それでも年3%を超える経済成長を遂げています。

タイ政府は、2036年までに、平均経済成長率年5~6%を目指したい考えです。その為には、労働力不足を補うための施策の実現、デジタル化による生産力の向上が鍵となります。

日系企業としては、ITやデジタル技術を発信することで、タイの経済発展に貢献できる余地があり、今後も有望な進出国の一つには変わりありません。

いずれにしても日系企業にとって、タイが今後も有望な進出先であることには変わりありません。タイ進出を加速させるには、現地の優良なパートナーを探すことが近道です。

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(引用文献)
・外務省「タイ王国基礎データ
・三菱UFJ&リサーチコンサルティング(2016)
タイ経済の現状と今後の展望 ~短期的には危機の可能性小だが、中長期的には停滞の懸念もあるタイ経済~
・国際通貨研究所(2017)「豊かになる前に老いるアジア

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この記事を書いた人

「Digima〜出島〜」編集部

「Digima〜出島〜」編集部

株式会社Resorz

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